2017年9月15日 第182回「今月の言葉」
(投影)
●(1)<第167回「得失一如とは何か?③ー①(癌とは何か?対策編⑫)」>~<第169回「得失一如とは何か?(補足③ー③)」>の続きです。
ここでの主題は、宅急便の創業者、ヤマト運輸の小倉昌夫氏の分析で、上記の中の一部を下記に再録します。それから、今回のテーマ「投影」を解説します。 <<<最近、バーチャルリアリティーという言葉がよく使われますが、まさに私たちは(私流に言えば)バーチャルリアリティー(仮想現実)な世界に生きていると言っても過言ではありません。 簡単に言えば、私たちが見ている物事(ここでは主として対人関係)・・・・・表面に現われ、見たり感覚できるものは主として「バーチャル」なもので、バーチャル的とは「投影」という言葉に置き換えられるかもしれません。表面に現われているものは「投影(バーチャル)」である可能性が高く、投影されたものをもとに、「深層心理」に隠されている「本音」を探索することが「リアリティー」だと言えるのではないでしょうか(「バーチャルリアリティー」という言葉を使っての仮説とお考えください)。>>> <<<玲子さんは均整の取れたスタイルで、外見はいかにも健康そうに見えたが、森氏の著書によると、五十代で狭心症を患い、ニトロを持ち歩いていらしたという。夫が財界の伝説的名経営者ともなれば、どんなに一見穏やかそうな家庭に見えても、それなりの大きな配慮で心の休まる時もなかったのだろう。家族のこと、食事の配慮、親戚づきあいなど、気を配らねばならないこともさぞかし多かったろう、と思う。そしてやがて心配されていた玲子さんの病状は、深刻な事態になった。五十九歳で急逝されたのである。>>> <<<夫が財界の伝説的名経営者ともなれば、どんなに一見穏やかそうな家庭に見えても、それなりの大きな配慮で心の休まる時もなかったのだろう。家族のこと、食事の配慮、親戚づきあいなど、気を配らねばならないこともさぞかし多かったろう、と思う。 <<<「心身医学用語事典」(編集・社団法人 日本心身医学会 用語委員会、医学書院) <虚血性心疾患>p52 このうち狭心症は一過性に起こる心筋虚血に基づいて起こる胸痛(胸部不快感)発作で、診断上は胸痛時に虚血性ST変化の起こることを確認することが肝要である。しかし一般には運動負荷(トレッドミルなど)試験やホルター心電図などで虚血性変化発生の再現や冠動脈造影による病変の確認、RI検査による虚血巣の検出などにより診断される。なお近年注目されている自覚症のない無痛性虚血性心疾患も治療の対象とされるようになってきた。 <タイプA型行動パターン>p149 日本では敵意、攻撃性などの表出に乏しく仕事中毒的傾向の著しいいわゆる日本的タイプA行動パターンの存在が注目されており、また広くストレス関連疾患の心理社会的要因をみる1つの視点としてタイプA行動パターンを評価しようという見解も出されている。>>> <<<小倉氏は寛容、謙虚、自然、そして物事の関係を端正に正す方だった。どれも、現世で芳香を放つ強力な力を持つ徳なのである。>>> 以上の再録をご覧の上、非常に興味深い下記の潜入ルポをご覧ください。 |
●(2)平成29年3月24日・31日、週刊ポスト「潜入ルポ アマゾン、ユニクロより過酷な宅配ドライバーの現実」
<ヤマト・佐川に潜入3ヵ月> <私が働いてわかった「仁義なき宅配」> <1日の休憩時間は「10分> ヤマト運輸で10年以上セールスドライバーとして働く、40代の青木隼人氏(仮名)はこう話す。 首都圏のサテライト店で働く青木氏の2月中旬の持ち出し個数は、約180個。台車を押して配達しながら、70個強の集荷も行なう。取扱個数の合計は約250個。朝8時前から働き始め、退勤するのは午後10時30分すぎだった。その間の休憩時間は15分。車を停めてお昼ご飯を食べる時間はない。宅急便センターで荷物を積み込みに行くときに、煙草を本吸ったのが、休憩時間の15分だった。 首都圏で働くヤマト運輸の別のドライバー河野弘樹氏(仮名)の3月の持ち出し個数は、150個強。民家や団地が中心のコースなので、不在による再配達も多くなる。 先の青木氏はこう続ける。 ヤマト運輸のドライバーがお昼の休憩時間を取れないことは、数年前から状態化しており、佐川急便が2013年に運賃が安いことを理由に契約を打ち切ったアマゾンの荷物をヤマト運輸が引き受けるようになってから、この傾向はさらに悪化した。 私は、ヤマト運輸や佐川急便だけでなく、ユニクロやアマゾンの労働現場に潜入取材をした経験がある。肉体を使った労働においては、休憩時間と食事の時間が唯一の楽しみになることを身をもって実感した。働いている間、心の中では「次の休憩時間まであと〇×分」と考えていた。いつもカウントダウンをしながら働いている自分に気がついた。その労働者にとって唯一の楽しみであるお昼ご飯と休憩時間を取ることができず、文字通り朝から晩まで働かざるを得ない点に、ヤマト運輸の労働環境の過酷さが凝縮されている。 <くも膜下出血で倒れたドライバー> 宅配関連のニュースが数多くある中で、最も重要なのは、ヤマトが労働者7万人超に過去2年にさかのぼってサービス残業代を支払うというニュースである。 なかでもサービス残業が多くなるセールスドライバーの数は5万人超。一人当たり50万円を支払うとしても、250億円超という数字となる。250億円という数字は、ヤマト運輸の今期の予想営業利益である580億円の2分の1近くに相当する金額である。ヤマト運輸を傘下に収めるヤマトホールディングスの売上高に占める人件費の割合は約5割を占める労働集約型の企業である。未払い残業代の支払いは、単に時期の決算数字が違ってくるだけでなく、今後の財務諸表にも大きな影響を与えることになる。ヤマトの経営を根幹から覆すような破壊力のあるニュースなのだ。 ヤマト運輸は、自社のホームページで3月4日、「一部の報道機関において、当社の未払い残業代の清算に関する報道がありましたが、記事に掲載されている『未払い残業代』については、当社からの発表に基づいたものではありません」として、まだ支払いの時期を正式に発表していない。 しかし、私の手元には、「平成29年1月18日付」で「人事戦略部」が出した「神奈川主管支店の皆さまへ」と題したA4サイズ2枚の社内文書がある。それによると、「平成27年1月度~平成28年12月度の2年間」にわたり、サービス残業代を支払う、とある。「支給日は、3月24日の予定です」と明記してある。また、サービス残業の支払いの手続きを終えたという元ドライバーからも話を聞いて、サービス残業代の計算をした資料も手にしている。 ヤマトが近々に、労働者に対して巨額のサービス残業代を支払うということは、疑いのない事実である。 ヤマト運輸の配送車への横乗りから、佐川急便の深夜の長距離トラックの横乗りまでやった。ヤマトと佐川の集配センターでの夜勤のアルバイトとして合計3カ月潜入取材をして分かったことは、いずれの現場でもギリギリのやりくりが求められていた、ということだった。 横乗りをしたヤマトの集配者のドライバーは、その夏の繁忙期に連日200個の宅急便を配り続け、くも膜下出血で倒れた。佐川の長距離トラックに同乗した時は、ドライバーと一緒に800個以上の荷物を手積み、手降ろしして、3日で関東-関西間を往復してへとへとになった。 ヤマトの旗艦センターである羽田クロノゲートでアルバイトとして働いた1ヶ月間は、夜10時から朝6時まで、クール宅急便の仕分け作業をやった。日給は、夜間手当を含めても9000円に届かない。そのアルバイト代の安さに、日本人だけでは成り立たず、半分近くを東南アジアからの留学生が占めていることを知った。 そうした現場での取材から見えてきたのは、宅配便という社会のインフラが、砂上の楼閣の状態にあり、いつ崩壊してもおかしくないという事実だった。そこで描いた最悪のシナリオが今、現実のものになりつつあるのを目の当たりにしている。 <アマゾンで「豊作貧乏」に> 現場が疲弊する最大の理由は運賃の低下にある。 そのなかでも、アマゾンからヤマト運輸が受け取る運賃は300円前後となり業界で最安値の水準にあるといわれている。しかし、出荷個数は3億個前後で、ヤマト運輸の取扱個数の約2割を占める。宅配便業界が“豊作貧乏”に陥っている理由がここにある。 2016年に辞めたヤマトのドライバー2人は、「アマゾンの荷物がなければ辞めてなかっただろう」と口を揃える。 アマゾンからの荷物は、数が多いだけではなく、荷物が各宅急便センターに届くタイミングも遅い。通常、センターには、毎日3回、センターごとに仕分けされた荷物が配達されてくる。朝が午前6時前後、昼が午後2時前後、夕方が午後5時前後。アマゾンからの荷物は、5時頃の便で大量にやってくる。40個や50個が運ばれてくることもある。6時頃に出庫する際の残貨が80個を超えると危険水域だ。民家への配達は1時間で20個前後。そうなると最終の夜9時までに配り終えるのは難しい。焦ったドライバーが、日付が変わって寝静まった民家に誤って配達して「こっぴどく怒られた」という話も聞いた。 <佐川は年末に「パンク」> ならば、アマゾンと手を切った2番手の佐川急便は安泰かというと、決してそうではない。 全国紙の社会部の記者はこう語る。 しかし、この事件は佐川急便の現場の士気を著しく低下させた。それは配達能力の低下にまでつながっている。 「通常なら、会社のトップが記者会見を開き謝罪するような案件にもかかわらず、佐川急便はあくまで社員が勝手に行ったこととして、社員を突き放しました。その結果、会社が守ってくれないことを不安に思った大量のドライバーが、逃げるように会社を辞めていったんです」 佐川急便は2016年12月22日、「弊社従業員の略式起訴処分について」というプレスリリースで、「11月22日に警視庁に逮捕されました従業員が、交通違反に係る犯人隠避の容疑で略式起訴されたことは誠に遺憾であり、関係者の方々にご迷惑とご心配をおかけしましたこと、お詫び申し上げます」と発表するにとどまっている。 城東営業所、城北営業所、板橋営業所、練馬営業所などでドライバーの離職が相次いだ。その結果が、2016年の年末の“パンク”となる。 「通常なら、年末の最後の10日間が、最も忙しくて、それをチームで力を合わせて乗り越えるんですが、昨年は、その最後の10日の忙しさが、10月、11月、12月と3カ月続いた感じですね。要は人手が足りないのです。200人前後のドライバーを抱えるうちの営業所では、年末の繁忙期を前に5人が辞めたんですけれど、営業所が人員を補充しないため、人手不足となりました。その分、負担が大きくなる、10月から12月については、10万円程、特別手当でももらわないと、割に合わない気持ちになりましたね」 佐川急便は、昨年末、東京や埼玉、愛知、大阪を中心に配送に遅れが出るという、いわゆる“パンク”を起こした。同社は12月22日、ホームページに、「年末の荷物量の増加による集配遅延について」という告知を出した。「年末の荷物量の増加に伴い、全国的に集荷・配達の遅延が見込まれます」、「時間により管轄営業所へのお電話もつながりにくい状況となっております」・・・・・という内容。この数年、年末や年度末では見慣れた光景となった。 ヤマト運輸、佐川急便というトップ2社の現場は、明らかに疲弊しており、その度合いは増す一方である。この流れを変えるには、大手荷主の大口割引の幅を極力減らし、運賃単価を上げていけるのかどうかにかかっている。運賃が上がれば、自社のセールスドライバーや、下請けの長距離トラック企業、仕分けセンターへのアルバイトへの待遇を改善することもできる。 そのためには、利用者である消費者にも応分の負担が求められる場面も出てくるだろう。ネット通販への大口割引がなくなれば、送料無料が有料に切り替わるかもしれない。再配達に料金を受け取るという案も出ている。それを、宅配便というインフラを守るための必要な出費ととらえることができるのかどうか。その点に、宅配業界の今後の行方は大きく左右される。 |
●(3)平成29年8月19日、東京新聞「ヤマトに団交申し入れ」
<男性社員 長時間労働改善求め> 労働組合「ブラック企業ユニオン」は18日、東京都内で記者会見し、ヤマト運輸(東京)に勤める組合員で40代の男性社員が、残業が月80時間を超えることもある長時間労働の改善などを求め、同社に団体交渉を申し入れたと明らかにした。ヤマト運輸の広報担当者は「申し入れには誠実に対応する」とコメントしている。 会見に同席した男性は20年前からドライバーとして同社に勤め、現在、兵庫県内の営業所に所属。1日当たりの労働時間が長く、月の半分は11~14時間に上るという。特にお中元シーズンだった今年7月中旬~8月中旬は残業が月80時間を超えた。 ヤマト運輸を巡っては、サービス残業が横行していたとして、親会社のヤマトホールディングスが計約5万9千人のグループ従業員・・・・・(この後のわずか数行の切り抜き部分を紛失!!!残念) ●(4)今回のテーマ「投影」の結論です。 私たちの人生全ては「投影」で成り立っています。「投影」から脱却することが、仏教のテーマ「空観」を体得することになります。 しかし、「空を体得する」と簡単に言っても「空」を体得するためには、「投影」していることを「体得」する必要があります。しかし、私たちは、自分自身の「内面」を含めて、今現在、見える物、それを通して考え、認識することが「投影」であることを「体得」することは文字通り、至難の業です。 今回は、その困難な課題の一部、「投影」について、分かり易い実例がありますので、それをもとに解説します。 宅急便の創始者、小倉昌夫氏は、曾野綾子先生の言葉を借りれば、下記のように極めて優れた人格者です。 そして、妻の玲子氏は、激務をこなして、なんと59歳で狭心症で亡くなりました。 さらに、上記の(2)で紹介した週刊ポストの潜入ルポをご覧の上、下記をご覧ください。 ここから何が分かるでしょうか? 私たちは、自分の「深層心理」を見るための修行をしないと、自分にとって極めて大切な人を犠牲にしてしまうものです。玲子氏の場合は、第168回で、このことを説明しましたが、創業の会社までブラック企業化させるほど強烈な「投影」をしていることには驚きました。 以前、新聞か週刊ポストかで読みましたが、小倉昌夫氏は、奥様と現役を退いた後に、全国の営業所を回って厳しい指導というよりも、しっ責して回ったらしいですが、私に言わせれば、猛烈な勢いで投影されて、幹部社員がそういう会社にせざるを得なかった可能性が強いはずです。 とにもかくにも驚くことは、経営規模にかなりの差がある二番手の佐川急便が、運賃が安すぎて断ったアマゾンを引き受けて、さらにブラック企業化する会社が、<<<小倉氏は寛容、謙虚、自然、そして物事の関係を端正に正す方だった。どれも、現世で芳香を放つ強力な力を持つ徳なのである。>>>と言われるほどの人格者であるという不思議なことを、常識的に理解できるでしょうか? 私たちは、「投影」を十二分に理解し、「体得」しないととんでもないことになります。もちろん、私(藤森)も同様の深い反省があります。 |
く文責:藤森弘司>
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