2017年5月15日 第178回「今月の言葉」
●(1)アメリカ・ファースト!メーク・アメリカ・グレート・アゲイン、ディール!
とにかく型破りな、というか破天荒な、というか、世界ナンバーワンの国だから、当面は何を言っても、何をやっても、ひとまずは、世界の指導者たちは首をすくめて従うのではないでしょうか。しかし、そういう乱暴なやり方が、果たして何年も続けられるのでしょうか? 私(藤森)には極めて疑問です。私と、多分、同じような視点に立つであろう専門家は、長く持たないと言います。しかし、トランプ大統領の資質を高く買う専門家は、驚くほど高い評価をしています。 ●(2)さて、とんでもない事案が発生しました。 FBI長官の解任問題です。今まで、トランプ大統領の破天荒な政策は、様々なトラブルを起こしたり、裁判を起こされたりしましたが、その政策を支持する人はたくさんいました。しかし、今回の長官解任問題はかなり 深刻な問題に発展しそうな雲行き・・・・・というか、私には深刻な問題になりそうに思えてなりません。 擁護論といい、解任理由といい、2月に辞任したマイケル・フリン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の辞任理由(ロシアとの関係性)といい、さらには、共和党の内部からも批判されていることといい、これは大問題に発展しそうな臭いがプンプンしますが、はてさて、いかがでしょうか。 |
●(3)平成29年5月12日、産経新聞「【FBI長官解任】トランプ氏、露疑惑で自身への捜査3度確認 前長官の解任は正当化」
【ワシントン=加納宏幸】トランプ米大統領は11日、クリントン元国務長官の私用メール問題の捜査をめぐる不手際を理由に連邦捜査局(FBI)のコミー長官を不適任とした司法省高官の勧告がなくても解任の判断に至っていたと述べた。コミー氏に3回、自らがトランプ陣営とロシアのつながりに関するFBIの捜査対象になっているかどうかを確認したことも明らかにした。NBCテレビのインタビューで語った。 トランプ氏はコミー氏解任の理由を「目立ちたがり屋で派手な振る舞いをしたがる。ずっとFBIが混乱していた」と説明。「勧告があったかに関わらず、コミー氏を解任していただろう」と述べた。 また、トランプ氏はコミー氏との夕食中に1回、電話で2回、「可能なら教えてもらいたい。私は捜査されているのか」と質問していたと説明。コミー氏は「あなたは捜査対象ではありません」と否定した。 トランプ氏はコミー氏に解任を通告する書簡で「3回にわたり私が捜査対象でないと知らせてくれたことに本当に感謝している」と記したが、自分から問いただしたと認めたのは初めて。自らの周辺が対象になっている捜査について確認することも、捜査機関のトップが対象ではないと伝えることも異例だ。 一方でトランプ氏は「ロシアが何かをしたというのなら私も知りたい」として、捜査の継続を容認。重ねて大統領選干渉疑惑でのトランプ陣営とロシア政府の共謀を否定した。 サンダース大統領副報道官は11日の記者会見で、コミー氏の解任でロシアをめぐる捜査の完了は早まると発言。米メディアは、私用メール問題を理由に解任したとするホワイトハウスの当初の説明と矛盾が生じていると指摘している。 ●(4)平成29年5月12日、東京新聞夕刊「ロシア疑惑で米大統領」 <捜査対象か3回確認> <解任前、前FBI長官に> トランプ大統領は11日のNBCテレビのインタビューで、連邦捜査局(FBI)長官のコミー氏を解任する前、FBIが自分を捜査対象としているかをコミー氏に3回確認したと明らかにした。トランプ氏は捜査中止を求めたことは一度もないと主張しているが、捜査の独立性を尊重すべき大統領が、FBI長官に圧力をかけたとして批判が高まっている。 <略> また、コミー氏について「目立ちがり屋で、スタンドプレーをしたがるので、FBIは混乱していた」と批判し、解任を正当化。コミー氏に解任を通告した9日の書簡では、司法省の進言に基づいて判断したとしていたが、「進言に関係なく、解任するつもりだった」と説明を一転させた。 ホワイトハウスは、コミー氏の解任理由としてクリントン元国務長官のメール問題を巡る不手際を挙げているが、トランプ氏がロシア疑惑を巡る捜査を逃れるために解任したとの疑惑が広がっている。 <「支持得ていた」コミー氏を擁護、長官代行が反論> ロシア政府による昨年の米大統領選への介入疑惑の捜査については「とても重要度が高い。FBIが最後まで精力的に捜査を継続するということが私の信念だ」と強調。捜査妨害などがあった場合は連邦議会に報告するとした。 |
●(5)<ロシアゲートがまた政権を直撃>(日刊ゲンダイ、3月6日)
予備選当初からトランプ氏を支えてきたジェフ・セッションズ司法長官が、大統領選挙後に駐米ロシア大使と2度にわたり会談を行っていながら、上院の承認公聴会でその事実を隠していたことが問題になっている。民主党は宣誓下での虚偽証言は偽証罪に当たるとして、セッションズ長官の即日辞任を求めている。 これに反論したのが昨日のトランプ砲だ。トランプ大統領は上記のツイートと相前後して、「セッションズ氏は正直な人間だ。彼は何も悪いことはしていない。ただ正確な話をしなかっただけだ」と、氏を全面擁護する姿勢を見せている。 セッションズ氏はもともとアラバマ州の司法長官を経て連邦上院議員を務めたコテコテの保守派政治家。政治の素人集団のトランプ政権にあって、首席戦略官・上級顧問のスティーブ・バノン氏と並び政権の理念的支柱のような存在だ。しかし、白人至上主義団体のKKKを容認するなど差別的発言もあり、多くの物議を醸してきた。 しかし、それ以上にセッションズ氏の存在を際立たせているのが、司法長官というポストだ。司法長官は連邦捜査局(FBI)を傘下に持ち、事実上の指揮権を有している。トランプ政権が選挙期間中にロシア政府と密に意思疎通していたという疑惑は、NSAやCIAなどの情報機関からリークされたものとみられているが、情報機関はアメリカ国内の捜査権を持っていない。 トランプ政権のロシアゲート(一部ではクレムリンゲートとも)にメスが入るかどうかは、セッションズ司法長官の腹次第だった。そして今、セッションズ氏自身に疑惑が生じたとなると、状況は大きく変わらざるを得ない。既にセッションズ氏はこの問題を調査することになった場合、自分は関与しない意向を示している。当たり前の話だが、それほどこのロシアゲート問題はトランプ政権のアキレス腱になる可能性があるデリケートな問題なのだ。 |
●(6)トランプ氏が大統領としてどれほど優れているか否かは、私(藤森)には分かりませんが、時代の大転換期には、人格障害くらいの人格でないと無理なのかもしれません。そういう意味で、トランプ氏の大統領としての資質は私には分かりません。
ただ、精神医学的に見てみると、人格的に問題があるように思えてなりません。日本の脳科学者・中野信子氏はサイコパスの特性が極めて高いと診断しています。また、インターネットで探した次の(7)で紹介する資料は劇的です。 <「サイコパス」か否か>(中野信子、医学博士・脳科学者) <略> トランプ氏の言動をいちいち分析していくと、サイコパスの特性が極めて高いことが分かる。 一方で、トランプ氏が本当にサイコパスであるならば、サイコパスならではの「弱点」も持っていることになる。 2つ目は、彼自身が大統領の仕事を飽きて投げ出すというリスクだ。 いずれにしても、興味深い人物である。今後の展開に目が離せない。<2月10日、夕刊フジ> |
●(7)<トランプは悪性の人格障害!?米で精神科医らが解任求める>(ダイヤモンド・オンライン、矢部武・ジャーナリスト、4月17日)
トランプ大統領は6日、化学兵器の使用が疑われるシリアのアサド政権に対する攻撃を命じた。軍事作戦をためらったオバマ前大統領と違い、決断力と実行力があると誇示したかったのかもしれないが、はたしてこの「即断」は正しかったのか。国連決議や国際社会の支持を得ることなく、主権国家攻撃の根拠もシリア内戦終結の戦略も示さないまま、単独で武力行使に踏み切るのはかなりの危うさをはらんでいる。 また、トランプ大統領は北朝鮮の核や弾道ミサイル開発をめぐり、中国の対応によっては米国が北朝鮮への軍事攻撃に踏み切る可能性をほのめかしている。もし米国が攻撃すれば、北朝鮮の報復によって韓国が火の海になるだけでなく、日本も甚大な被害を受ける可能性がある。そのリスクが大きすぎるために、米国の歴代政権は北朝鮮への軍事攻撃に踏み切らなかった。問題は気まぐれで衝動的なトランプ大統領が大惨事のリスクをすべて考慮に入れて、軍事的選択肢をテーブルの上に載せているのかということだ。 実は米国ではいま、トランプ大統領の自己制御がきかない衝動性や精神不安定性に対する懸念が高まっている。きっかけは2月半ばに35人の精神科医らが連名でニューヨーク・タイムズ紙に送った、「トランプ氏は重大な精神不安定性を抱えており、大統領職を安全に務めるのは不可能だ」とする内容の投書だった。 米国精神医学会(APA)は「精神科医が自ら診察していない公的人物の精神状態について意見を述べるのは非倫理的だ」とする規定を設けている。しかし、この投書の後、「危険性について認識しながら、沈黙しているのは逆に倫理に反する」として多くの精神医療の専門家(精神科医、臨床心理学者、ソーシャルワーカーなどを含む)が立ち上がり、トランプ大統領の解任を求める運動に加わっている。彼らが口を揃えて指摘するのは、「現実と空想の区別がつかない妄想症で、サイコパス(反社会性人格障害)の人物が核のボタンを握っていることの怖さ」である。 <現実と空想の区別がつかない「妄想症」> トランプ大統領は就任後も選挙戦中と同様、根拠のない発言を繰り返している。たとえば、就任式の参加者数がオバマ前大統領の時より少なかったと報じたマスコミを「嘘つきだ!」と非難し、「過去最大規模の人出だった」と主張した。CNNテレビなどが流した両者の就任式の映像を比べればトランプ氏の方が少ないことは明らかなのに、また、就任式当日のワシントンの地下鉄の乗降者数でもトランプ氏の方が少なかったことが報道されたにもかかわらず、トランプ氏は主張を変えなかった。 選挙結果にしても、トランプ氏は選挙人数で民主党のヒラリー・クリントン候補を上回ったが、総得票数ではクリントン氏より約300万票少なかった。この事実を受け入れられなかったのか、トランプ氏は何の根拠も示さずに「得票数で負けたのは300万~500万人の不法移民が不正に投票したからだ」などと突拍子もないことを言い出した。 ジョンズ・ホプキンス医科大学での精神療法を含め、35年以上の実績と経験を持つジョン・ガートナー精神科医はトランプ氏の一連の言動をこう分析する。 「自分はベストで偉大だと思い込む誇大妄想の傾向が強いので、そこそこの勝利では我慢できないのだと思います。普通なら、“選挙に勝って大統領になったのだから十分だ”と考えるだろうが、彼の場合は“選挙人数でも得票数でも勝っていた”と主張しないと気がすまないのでしょう。就任式の参加者数でも同じことが言えます。トランプ氏は自分に都合の悪い現実を受け入れることができない。本当に危険なのは、彼が事実をねじ曲げ、自分の空想と一致するような“もう1つの事実”(嘘)を作り上げてしまうことです」 トランプ氏は選挙戦中からずっと事実と異なる発言(嘘)を繰り返してきたが、目的を遂げるためなら平気で嘘をつき、それに対して自責の念を感じることも謝罪することもないというのが多くの専門家の意見だ。実際「トランプ氏の選挙戦中の発言のうち、77%は嘘だった」(『ポリティファクト』)との調査結果もある。 そして、ロシアによる米大統領選介入にトランプ陣営が関わっていたのではないかとするFBI調査で追い詰められる中、トランプ氏は国民やメディアの関心をそらそうとしたのか、新たな暴言を吐いた。3月4日の朝、「なんということだ。オバマが投票日直前、トランプタワーを盗聴していたことがわかった。何も見つからなかったが、これはマッカーシズム(赤狩り)だ」とツイッターでつぶやいた。さらにこの後、「神聖な選挙戦の最中、私の電話を盗聴するとはオバマはどこまで落ちたのか。ニクソンのウォーターゲートと同じ悪い奴だ」などと立て続けに3回書き込みをした。 結局、トランプ大統領からは何の証拠も示されず、FBIのジェームズ・コミー長官は「盗聴は起きていません」と議会で証言し、「トランプ大統領が言う盗聴を裏づける証拠はない」と明言した。
カリフォルニア州ロサンゼルスで精神科クリニックを約25年開業しているリン・メイヤー医師(臨床心理学博士)は最近、トランプ大統領の「精神障害」について他の医師と話す機会が多いが、ほとんどの人は「自己愛性人格障害」(NPD=Narcissistic Personality Disorder)を疑っているという。 NPDは誇大妄想症、過剰な賞賛欲求、共感性の欠如などによって特徴づけられる人格障害である。米国精神医学会(APA)の「NPDの定義」によれば、多くの人は「自己愛性」の特徴を持っているが、そのうちNPDと診断される人は1%程度。次の9項目のうち5項目以上があてはまると、相当するという。 1.自分の実績や才能を誇張する。 2.無限の成功、権力、才能などの空想にとらわれている。 3.自分は「特別」であると信じている。 4.過剰な賞賛を求める。 5.特権意識をもち、特別な取り計らいを期待する、 6.対人関係で相手を不当に利用する。 7.共感性の欠如。 8.よく他人を妬み、または他人が自分を嫉妬していると思い込む。 9.傲慢で横柄な行動や態度を示す。 メイヤー医師は、「トランプ氏の場合、9項目すべてが当てはまるように思う。学校の成績でいえば“オールA”です」と話す。 「就任式の参加者数のことでメディアを批判したのは、どれだけ多くの人が自分を賞賛しているかを示す意味で重要だからです。一方、自分を批判する人に対して激しく攻撃するのは、批判を受け入れられないからです。褒めてほしい欲求が強すぎて批判に耐えられない、これもNPDの兆候です」 さらにメイヤー医師はNPDを疑われる人物が核のボタンを握っていることについて警告する。 「最も注意しなければならないのは、結果をよく考えずに行動してしまう衝動性です。外国の指導者から否定的なことを言われたり、批判されたりした時に激しい怒りを抑えられず、行動に移す可能性があります。このような人物が核のボタンを握っているのは米国にとっても世界にとっても非常に危険だと思います」 たしかにトランプ大統領が真夜中の執務室で核のボタンとツイッターを前にしている姿を想像するとぞっとする。世界最強の軍事力を誇る米国は7000個以上の核弾頭を所有するが、それを使用するかどうかは大統領の決定にかかっているのだ。 <「世界でも最も危険な指導者になる」> 「現実と空想の区別ができない妄想症のため、相手が攻撃を仕掛けてくると勝手に思い込み(現実は違うのに)、“想像上の敵”に向かって攻撃するかもしれない。このような人物に核のボタンを握らせるべきではないと思います」 さらにトランプ氏の怖さはそれだけではない。豊富な診療経験を持つベテラン精神科医で心理学者のガートナー医師は、トランプ氏は非常に稀で深刻な「悪性の自己愛性人格障害(MNPD=Malignant Narcissistic Personality Disorder)」ではないかと推測する。MNPDは主にナルシシズム(自己愛性)、パラノイア(偏執病)、反社会性、サディズム(他人を傷つけて喜ぶ)の4つの要素を持ち、治療はほぼ不可能だという。 「パラノイアは移民やマイノリティへの侮蔑発言やメディアへの敵視などに現れ、反社会性は人々の権利を侵害したり、嘘をついても自責の念がまったくない所に現れています」 MNPDという病名を最初に使ったのはナチスドイツの迫害から逃れた心理学者のエリック・フロム博士で、1964年にヒトラーなどファシズム指導者の精神構造を解明するために考え出した。そのため、MNPDは「ヒトラー型の人格障害」とも呼ばれているそうだ。 <ガートナー医師はこう続ける。> 「これまで多くの人格障害患者を診てきたが、トランプ氏のケースは“最悪の最悪”と言ってよいでしょう。普通のNPDなら、問題はあってもなんとか大統領として4年の任期を全うできるかもしれません。でも、彼は悪性のNPDですから、それよりはるかに病的です。パラノイドで反社会的で妄想的で、現実と空想の区別ができない。精神医学の見地から言っても非常に危険です。たとえば、精神医学の研究所で“世界で最も危険な指導者をつくる実験”をしたとしても、彼以上の危険な“人格”をつくり出すのは難しいでしょう。彼は意図的に混乱をつくり出し、人を傷つけることに喜びを感じているのですから」 にもかかわらず、トランプ大統領は今でも40%前後の支持率(4月11日のギャラップ調査で41%)を維持している。それについてガートナー医師は、「全ての人を常に騙すことはできないが、一部の人を騙すことはできる」というリンカーン大統領の言葉を引用しながら、「だからこそ、彼の危険性についてより多くの人々に知ってもらわなければならない。それを行うのは私たち精神科医の責任だと思っています」と話す。 ガートナー医師は2月半ば、他の精神医療の専門家と一緒に「警告義務の会」(DTW)を結成した。DTWはトランプ大統領の人格障害や危険性についての情報をメディアや政治家に提供したり、憲法修正第25条を適用して職務不能を理由に解任を求める署名運動を行ったりしている。3月末の時点で3万人を超える精神医療の専門家が署名したという。 第25条には「職務不能を理由に大統領を解任し、副大統領を代理に据えることができる」と規定されている。具体的には、「副大統領と閣僚の過半数が“大統領は職務上の権限と義務を遂行できない”と判断した場合、副大統領が直ちに職務を遂行する」というものだ。 精神医療の専門家に連動するかのように、議会でも大統領の解任に向けた動きが出ている。野党・民主党のアール・ブルメンナウアー下院議員は2月半ばに憲法修正第25条の適用に備える会を立ち上げ、「妄想症で偏執病の大統領には本条項が適用される可能性はあると思います」との声明を発表した。 また、医療助手として働いた経験を持つカレン・バース下院議員は、「トランプ氏の衝動性と自己抑制の欠如、精神不安定性は米国にとって非常に危険である」として、「トランプ大統領に精神科医の診断を求める」署名運動をchange.orgで始めた。「ダイアグノス・トランプ(DiagnoseTrump)」と呼ばれるページには、4月14日の時点で3万6882人の精神医療の専門家が署名している。 前述の「警告義務の会」と合わせて6万6000人以上の専門家が(一部は重複しているかもしれない)、トランプ大統領の「精神障害」を懸念し、職務能力に疑問を持ち、政府や議会に適切な対応を求めているのである。 憲法修正第25条はこれまで一度も適用されたことはなく、しかも副大統領や閣僚が「大統領にノーを突きつける」というハードルの高さを考えると、現実的には難しいかもしれない。しかし、トランプ大統領は他に自らのビジネスとの利益相反問題や選挙中のロシアとの不適切な関係など、弾劾訴追の大きな火種をかかえており、憲法第2条(弾劾規定)の適用を受けて解任される可能性はある。 ロシア関連の調査は現在、FBIと上下両院の情報委員会で進められており、疑惑はどんどん膨らんでいる。そのため、トランプ大統領がシリア攻撃に踏み切ったのは、ロシア疑惑から国民の関心をそらす目的もあったのではないかとの指摘も出ている。 「公共政策世論調査」(PPP)が3月30日に発表した調査では、ロシア疑惑について国民の44%は「米国大統領選の介入でロシア政府とトランプ陣営は“共謀”したと思う」と答え、「そう思わない」(42%)を上回った。そして、「もし証拠が出たら、トランプ大統領は辞任すべきだ」と答えた人は53%にのぼった。 与党・共和党が議会両院の多数を握っている現状では、普通に考えればトランプ大統領の弾劾は難しいかもしれない。しかし、ロシア疑惑の調査や「利益相反裁判」(トランプ氏は政治倫理監視団体から訴えられている)の行方次第では、世論が一気に高まる可能性はある。そうなれば、共和党の議員たちも「トランプ弾劾」に向けて動かざるを得なくなるだろう。そうしなければ、共和党は2018年11月の中間選挙で惨敗し、代わって多数を握った民主党が弾劾に向けて動きだす可能性が高いからである。 ガートナー医師は最後に、「民主党が過半数を握ればトランプ大統領の弾劾訴追を行うでしょう。こちらの方が第25条より可能性は大きいと思います」と話した。 |
●(8)「米大統領、イスラム国に関する機密情報をロシアに提供」[ワシントン 5月15日 ロイター]
トランプ米大統領は先週、ホワイトハウスを訪問したロシアのラブロフ外相とキスリャク駐米大使に、過激派組織「イスラム国」に関する機密情報を漏らした。米ワシントン・ポスト紙が複数の米政府高官の話として15日に報じた。 同紙によると、トランプ大統領は、情報共有合意に基づき同盟国から提供された機密情報を開示同意を得ずに提供した。今後、イスラム国掃討を巡り、同盟国との連携に影響が出る可能性がある。 大統領は、ラブロフ外相とキスリャク駐米大使との会合で、予定されていた内容から離れ、機内持ち込みのノートパソコンを使ったイスラム国の攻撃に関する情報の説明を始めたという。 政府高官の1人は、情報はトップシークレット扱いで、一部の諜報機関職員しかアクセスできない安全な場所に管理されていると明らかにした。大統領が情報をロシア側に提供したことを受け、政府高官は直ぐに中央情報局(CIA)と国家安全保障局にこの件を伝えたという。 一方、会談に同席したマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は「大統領とロシア外相は、航空分野への脅威など、テロ組織による共通の脅威について協議した」と述べ、公表されていない軍事作戦などの情報が提供されたことはないと主張した。 また、ティラーソン米国務長官は、トランプ米大統領とラブロフ外相との会談では、テロ対策での共通の取り組みや脅威など広範囲にわたる問題についての議論があったとの声明を発表した。 *内容を追加しました。 |
く文責:藤森弘司>
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