2015年8月15日 第157回「今月の言葉」
集団的自衛権についての一考察

●(1)安倍首相の生い立ちは、脚本分析的にはかなり厳しい生い立ちです。

 生後すぐに母と離別、若くして父も失って「孤児同然に育った」(本人談)という晋太郎は、「家族への愛情表現が苦手」(安倍の養育係の久保ウメ)(野上忠興著、平成27年6月12日、週刊ポスト)

 安倍晋三首相は、幼い頃に両親と別れたお父さんからはスキンシップというものがほとんど全く無しで育ったようです。それが「寂しさ」という東洋医学でいう「肺系」の「大腸炎」の原因であるというのが、私(藤森)の見方です。
 そして、「晋三」の「晋」の字は、高杉晋作から取ったとのことですが、その高杉晋作は「肺結核」です。NHK大河ドラマ「花燃ゆ」を見ると、高杉晋作も寂しい育ちであることがうかがえます。

 寂しさが根底にあるが故に、大河ドラマを見る限り、高杉晋作は、主人公・文(ふみ)の夫・久坂玄瑞と虚勢の張り合いばかりをやっていましたし、役者の高良健吾の細身の体が、私のイメージにピッタリです。この虚勢を張るところは、「晋」の一字をもらった安倍晋三首相ととても似ています。
 安倍首相の兄は、安倍家の跡取り、弟の三男は、岸家に養子に行き、岸家の跡取りになっただけでなく、5歳の幼児にとって、突然、弟がいなくなるということは、当然のことですが、かなりダメージを受けたようです。

 「長男の寛ちゃんは安倍家の跡取りと見られていたし、岸家は弟の信夫君が継ぐことになった。子供心にもやっかみがあったのでは」
 信夫の誕生直後、養子に出すのに抵抗したのがまだ5歳にならない安倍だったという。
 信夫は岸が首相時代の59年4月に晋太郎・洋子夫妻の三男として生まれた。が、「3人目が男なら養子に出す」と岸家との間で交わされていた“約束”に従い、信夫は岸の長男(洋子の兄)信和の養子となり、岸家を継ぐことになった。(野上忠興著、平成27年5月29日、週刊ポスト)

 ここに書かれている内容で、安倍首相のほぼ全ての人間性がうかがえます。それが安保法案の種々の不備・・・・・内容だけでなく、対応においても、いろいろな問題点を表わしているように思われます。
野党議員の発言中に
「早く質問しろよ!」発言。これは、私もちょうど中継を見ていましたが、数の力で押し切れる自信に満ちているころのことです。また、国会答弁も、準備がかなり不足していて、閣僚も含めた答弁がかなりチグハグな印象がありますが、人気・実力ともに絶頂のときで、矛盾に満ちていようが平気の平左という感じでした。
しかし、お題目は立派ですが、どうやら・・・・・

 ・・・小泉・竹中が「改革」の名の下に規制緩和を進めたが、「郵政民営化」「不良債権処理」「三角合併解禁」など、いずれも米国の対日圧力文書「年次改革要望書」に沿ったものだった。TPPはこうした“エセ”改革の延長線上にある。
そして、対日圧力要望の“防衛版”が、
「アーミテージ・ナイリポート」だ。その2012年度版には、<集団的自衛権の禁止は同盟の障害だ><ホルムズ海峡に掃海艇を派遣すべき>などと書かれていて、いずれも今度の安保法案に盛り込まれている。これだけで、安倍が主張するような「日本を守るため」の法案ではなく、米国と一緒に戦争をし、米国の防衛力を肩代わりするための法整備だということは明確だ。
菊池英博氏にあらためて聞いてみた。
「富を金持ちに集中させても、彼らはカネを国民のために使わない。新自由主義で経済はよくならなず、結局、軍事支出を増やして経済活性化を図るようになり、戦争を招く。これが新自由主義が生まれた米国で繰り返されていることです。そして、新自由主義はグローバリズムであり、とどのつまり帝国主義なのです。日本は米国によって
植民地化され、食いつぶされるでしょう。安倍さんは『妖怪』にとりつかれて国益に反することを盲目的に進める、危険極まりない首相です」(平成27年8月10日、日刊ゲンダイ)

 しかし、礒崎首相補佐官の「法的安定性は関係ない」発言、嘉田由紀子前知事のところで脱ダム運動のペーパーを作ったりしていた武藤貴也自民党議員のSEALDsへの中傷ツイッター、岩手県知事選で出馬表明していた平野達男参院議員の立候補取り止め、新国立競技場建設問題や五輪エンブレムのコピペ疑惑問題、SEALDsだけでなく、MIDDLEs(ミドルズ)やOLDs(オールズ)などいろいろなグループが立ち上がっています。

さらには、「今月11日、教員や学生、OBが呼び掛け人となり、<安全保障関連法案に反対する
創価大学・創価女子短期大学関係者 有志の会>を開設。賛同署名は2日間で500人を突破。その後もみるみる増え、13日夜時点で700人まで膨らんでいる」(8月15日、日刊ゲンダイ)

 7月16日、映画人446人が安倍政権が進める安全保障関連法案に反対するアピールを発表、女優の吉永小百合さんや倍賞千恵子さん、大竹しのぶさんのほか、映画監督の高畑勲さん、降旗康男さんらが参加した(8月15日、日刊ゲンダイ)

●(2)本日(8月17日)はGDPがマイナス1・6%で、個人消費のマイナスが大きいようです。
しかし、これは当然のことで、去年の総選挙ではアベノミクスが最大の売りだったにもかかわらず、少なくても、見える形で、経済を立て直す一生懸命の姿勢が、素人の私にはあまり感じられません。私の素人考えでは、経済の活性化というのはもはや無理な時代に突入しているのではないかと思っています。

 今の生活をいかに維持するかであって、景気をよくするという時代ではないのではないかと思います。日本では少子高齢化や大借金問題、そして地球規模での開発や人口増加は、もうすでに限界に達しつつあるように思えます。

 昨年、消費税がアップし、それが「外税」であるために、スーパーのレジでの支払い時に負担の大きさを実感します。さらには、デフレ下で耐えていた値上げを、円安をきっかけに実施する商品が多いことも個人消費をマイナスにしているはずです。
 また、企業の内部留保が大きくなっているにもかかわらず、設備投資を抑制していますが、企業は個人消費が伸びないことを予見しているからでしょう。

 むしろ、オリンピックが終了した後、日本が廃墟のような状況になりはしまいかと心配になります。2600億円もする競技場を建設するようなことはもはや時代遅れで、むしろ、日本のデフォルトを心配する経済の専門家は、内外にかなりいるようです。

 これから日本は、色々な面で大変な状況になるのかもしれません。そこに、官邸で安倍首相が嘔吐情報があったりして、かなり追い詰められているのではないかと推測します。
 安倍首相の談話が比較的好評のようですが、こういうあいまいな談話になることは、かなり予想されたことです。これが勢いを挽回するキッカケになるのでしょうか?

 安保法案は、ここは一度廃案にして、再度、ジックリ、国民的な議論をまき起こした方が良いように思われます。

●(3)平成27年8月11日、日刊ゲンダイ「読むメジャーリーグ」

 <民意を軽視する安倍首相は祖父の岸信介と瓜二つ>

 1957年6月に渡米した岸信介首相は、アイゼンハワー大統領の歓待を受け、60年に期限を迎える日米安全保障条約の改定の要請を受けたことは広く知られるとおりだ。
 アイゼンハワーが岸に対してワシントン郊外のバーニング・ツリー・カントリークラブでのゴルフという「贈り物」を用意したことも、周知といえよう。

 プレーが終わったのち、アイゼンハワーが「大統領をしていると嫌な人間とも会わなければならないが、嫌な人間とはゴルフはしない」と述べ、「岸を気に入った」という意思表示を示したことは、日米外交史を華やかに彩る逸話の一つである。
 米国の意を受けた岸は国会の内外からの強い反対にもかかわらず、日米安全保障条約の改定を実現させる。その際、国会を取り巻く学生を中心とする20万人を超える群集を前にして「国民の声なき声に耳を傾ける」と不退転の決意を示したことは「民意の軽視」として批判され、安保改定後の辞職の遠因となった。

 <ヤンキースタジアムの始球式より アイゼンハワーとのゴルフ

 ところで、岸の渡米時にアイゼンハワー政権が用意したもう一つの「贈り物」は、6月23日にヤンキースタジアムで行われたニューヨーク・ヤンキース対シカゴ・ホワイトソックス戦の始球式だった。
 大リーグにおける始球式は、試合前の余興というよりは試合の幕開けを告げる象徴的な意味を有しており、始球式の投手を務めることは大変な名誉である。

 一方、太平洋戦争開戦時の商工大臣として東條英機内閣の一員であり、A級戦犯として極東軍事裁判の被告人となった経験もある岸に対する米国の世論の評価は概して低いものであった。それだけに米国民の娯楽である野球、しかも大リーグを代表するヤンキースの主催試合で始球式を務めたことは、岸が米国民から肯定的な評価を与えられたことを意味した。

 しかしながら当の岸は始球式が持つ意義を理解しなかったのか、アイゼンハワーとのゴルフの話はしても、始球式について言及することはまれであった。その意味で岸はアイゼンハワー政権の意図を見逃したといえるだろう。
 これに対し、岸の孫である安倍晋三首相が今年4月の訪米時に上下両院合同会議で日本の首相としては初めて演説を行う栄誉を受けたこと、さらにオバマ政権から集団的自衛権の行使を中心とする安全保障関連法制の整備を要請されたことは、58年前の状況と酷似している。

 しかも、岸が米政府の意向を尊重して日米両国の民間が示した意思を見逃したことは、国民の理解が進んでいないことを認めながら安保関連法案の成立を進める安倍政権の姿と瓜二つだ。
 岸を手本とすることを公言してはばからない安倍首相は、民意を適切に受け止められない側面も岸から受け継いだといえる。それだけに、安倍政権も民意の軽視が政権の最期につながった岸と同じ道をたどる可能性は決して皆無とはいえないだろう。

 <アメリカ野球愛好会副代表、法大講師>(藤森注・・・著者の名前が見当たらないので、新聞社のミスではないかと思われます)

●(4)「集団的自衛権、安倍政権はなぜそこまで急ぐのか?」(メルマガ配信・著者/ヤス)

 支持率が低下しても、何かにとり憑かれたように集団的自衛権にこだわる安倍政権。その理由はなんなのでしょうか。『未来を見る! 「ヤスの備忘録」連動メルマガ』が様々な角度から分析しています。

 <アメリカの圧力>

 実は安倍政権が「集団的自衛権」の成立を急ぐ背景には、アメリカの強い圧力があったからだとの見方が次第に広まりつつある。
 たとえば、米国在住のノンフィクション作家で、「ニューズウィーク日本版」のニューヨーク支局長も務めた青木冨美子氏は、8月4日、日本記者クラブで講演し、次のように述べている。

 「戦後の米占領時代はGHQが日本のグランドデザインを決めていたが、今でもそのようなことが続いているかもしれない。現在論議されている新安保法制も、現在の事態に至るまでには誰かがグランドデザインしてこんな感じになっていると思う。たとえば集団的自衛権で言うと、(早期の実現へ)「憲法を変えなくてもいい」と、かつてアーミテージ(元米国務副長官)が言っていたことだ。積極的平和主義などという言葉も、(英語の)翻訳のような気がする。駐日米国大使館CIA(米中央情報局)の中に、誰かキレ者がいてやっているのかなと思う。今になって思うともっと早めに気が付いていればよかったと忸怩たる思いはある」
 このように述べ、「集団的自衛権」の成立には「ジャパン・ハンドラー」のリチャード・アーミテージやCIAがかかわっている可能性を示唆している。

 <「第3次ナイ・アーミテージレポート」>

 一方、これは青木氏の憶測ではなく、ジョセフ・ナイとリチャード・アーミテージなどのアメリカの「ジャパン・ハンドラー」の実質的な関与があったことが示す文書がすでに公開されている。それは、2012年夏に発表された「米日同盟:アジアに安定を定着させる」というレポートで、通称「第3次ナイ・アーミテージレポート」と呼ばれているものだ。これは、軍産複合体のシンクタンクで、「ジャパン・ハンドラー」の拠点の「戦略国際問題研究所(CSIS)」が、日米同盟の提言としてまとめたものである。
 2012年夏といえば、民主党の野田政権の失速が始まっており、政権交代への期待が高まっていた時期だ。現在の安倍政権は、この年の12月の総選挙で自民党が圧勝し成立した。

 「集団的自衛権」に関して、このレポートには明確に次のように書かれている。
 「日本の集団的防衛の禁止に関する改変は、その矛盾をはっきりと示すことになるだろう。政策の変更は、統一した指揮ではなく、軍事的により積極的な日本を、もしくは平和憲法の改正を求めるべきである。集団的自衛の禁止は同盟の障害である。3.11は、我々2つの軍が必要な時にいかに軍事力を最大限に活用できるかを証明した。平和時、緊張、危機、及び戦争時の防衛範囲を通して完全な協力で対応することを我々の軍に許可することは責任ある権限行動であろう」
 このようにこのレポートでは、「集団的自衛の禁止は同盟の障害である」と明確に述べ、憲法改正、ないしは「集団的自衛権」を早急に成立させるように求めている。

 <自衛隊の活動>

 では、「集団的自衛権」で海外派遣が可能になった自衛隊はどのような活動を展開することが要請されているのだろうか? これも明確に示されている。以下である。
 「ホルムズ海峡を閉鎖するというイランの言葉巧みな意思表示に対して、すぐさま日本はその地域に掃海艇を一方的に派遣すべきである。日本は、航行の自由を保証するために、米国と協力して南シナ海の監視も増やすべきである」

 ホルムズ海峡の掃海艇の派遣、そして南シナ海における中国の監視活動を米軍とともに実施せよという要求である。
 さらに自衛隊には広い活動範囲が求められ、以下のようにある。
 「東京はイランの核開発などによってもたらされた、海賊行為に対する戦闘、ペルシャ湾の海運業の保護、シーレーンの確保や地域の平和の脅威への対処といった、多国籍の取り組みに積極的に参加すべきである」

 ここでは、「海賊行為にたいする戦闘」とあり、自衛隊の任務がもはや後方支援には限定されない「戦闘行為」も含むことが示唆されている。

 <政府答弁と基本的に同じ>

 このようにこのレポートでは、「集団的自衛権」の適用地域として、特に「ホルムズ海峡の掃海艇派遣」と「南シナ海における中国の監視活動」の2つをあげている。これは、「集団的自衛権」の必要性を説明する政府の国会答弁と基本的に同一である。
 これは、「集団的自衛権」成立の要請の圧力がアメリカからあり、いま日本政府はこれに基づいてい動いていることを如実に示してはいないだろうか? 「集団的自衛権」への方針変更は日本政府の単独の判断ではない。

 <それにしてもなぜここまで急ぐのか?>

 だが、このように「集団的自衛権」がアメリカの圧力の産物だとしても、なぜ安倍政権がこの成立をここまで急ぐのか説明にはならない。たっぷりと時間をかけ、憲法に違反しないように行う方法はいくらでもあったはずである。
 たとえば、2004年に成立した「イラク特措法」がある。この法律は期限が決まった時限立法で、戦闘が行われていない地域に、「人道支援活動」を実施する目的で自衛隊を派遣するものであった。

 もちろんこのときも議論はあったが、これが違憲であるとする議論はほとんどなく、国民的な反対運動は起こらなかった。「人道支援活動」の一環として戦闘が行われていない地域に自衛隊が派遣されたので、少なくとも建前は、憲法に禁止されている軍隊の海外派兵ではなかったからだ。これも「ジャパン・ハンドラー」などのアメリカからの要請であったことは間違いない。

 もし「ホルムズ海峡の掃海艇派遣」と「南シナ海における中国の監視活動」の2つを要請されているのであれば、2003年の「イラク特措法」と同じく、期限が決まった時限立法とし、戦闘行為には一切かかわらないことを条件にした純粋な後方支援活動として、これらの地域に限定して実施する法律を成立すればよかったはずだ。そのような方法であれば、違憲となる「集団的自衛権」を持ち出す必要性はなかったはずだ。

 ところが今回は、時限立法ではなく恒久法として「集団的自衛権」を成立し、世界のあらゆる地域に米軍と一緒になって自衛隊を派兵することを可能にしている。これは明白に憲法に違反している。このため多くの国民の怒りを買うことになったのである。
 安倍政権はなぜあえてこのようなことを急いで行っているのだろうか? その本当の目的はなんだろうか?

 <「日本会議」の明確なアジェンダ>

 時限立法としてではなく、恒久法として憲法にからめて「集団的自衛権」を持ち出した理由は、安倍首相が現行の憲法で「集団的自衛権」を規定の事実にしてしまい、これによって、自衛隊を将来いつでも海外派兵できる「国防軍」にするきっかけにしたいという野心からではないかと見られている。
 たしかに、安倍首相の個人的な野心が背景にあることは間違いないだろう。しかしながら、急ぐべき理由はこれだけではないことは、安倍政権の最大の支持母体である「日本会議」の明確なアジェンダを見ればだいたいはっきりする。

 「日本会議」がどのような存在なのかは、第338回の記事に詳しく配信したので詳述はしないが、「日本会議」とは戦前をモデルにした憲法に改正し、「天皇制国家」の復権を目指す右翼的な組織が結集した一大プラットフォームのことである。
 「日本会議」のサイトやその他の文書から、この組織は安倍政権こそ憲法改正を実現できる最後の機会ととらえていることが分かる。そのため、憲法改正は安倍首相の任期中になんとしてでも達成しなければならない最重要課題である。それには、2016年7月に行われる参議院選挙で自民党が3,000万票を越える得票で圧勝し、すでに自公が絶対安定多数の衆議院と合わせて憲法改正に必要な3分の2の議席を確保する。そして一気に憲法改正を実現するという計画だ。

 安倍政権は、「日本会議」のこのアジェンダを念頭において動いていることは間違いない。とするなら、「集団的自衛権」の成立をことのほか急ぐ理由もこの辺にありそうだ。
憲法96条の改正
 もちろん、参議院選挙で自民がたとえ圧勝したとしても、憲法改正のハードルは高い。憲法96条では、衆参両院の3分の2の賛成と、国民投票における過半数の賛成を必要とする。現在自民党は衆議院で291議席を獲得しているが、3分の2の317議席には届いていない。公明党の35議席を合わせると326議席となり3分の2に達するが、公明党が反対した場合、憲法改正の発議はできない。

 そのため、憲法96条を先に改正して衆参3分の2の賛成が必要とする改革条件を緩和し、過半数の賛成があれば憲法改正を発議できるように変更することを狙っている。
 いま参議院では、自民は242議席のうち115議席しか獲得していない。過半数にも届いていない。もし2016年7月の参議院選挙で自民党が圧勝して3分の2の議席数になれば、憲法96条の改正は容易に実行できる。それを実現した後、一気に憲法改正に乗り出すという意図だ。これが「日本会議」のアジェンダに沿った自民党のプランだ。

 <「集団的自衛権」の既成事実化と「国防軍」>

 そして、憲法改正をスムーズに進めるための方策として見られているのが「集団的自衛権」の早期の成立である。
 もし2016年7月の参議院選挙までに「集団的自衛権」を恒久法として成立できていれば、自衛隊の海外派兵はいつでも可能となる。これは、もっぱら「専主防衛」を基本とする「自衛隊」を、先制攻撃もできる他の国と同じような「国防軍」に実質的にしてしまうことを意味する。つまり「集団的自衛権」の成立は、「国防軍」の既成事実化だと見てよい。

 もちろん「集団的自衛権」には、国民の予想以上の反対があり、自民党の支持率は大きく下がっている。このままの情勢では、たとえ安倍政権が来年まで続いたとしても、来年の参議院選挙で過半数の議席を獲得できる可能性はかなり低い。ということは、「日本会議」のアジェンダにある憲法改正は困難だということになる。
 他方、自民党の掲げる憲法改正の重要なポイントのひとつになっているのは、「自衛隊」の「国防軍化」である。もし自民党が来年の参議院選挙で負けたとしても、いまの時点で「集団的自衛権」を成立させておけば、これは実質的に達成したことになる。

 <米軍産複合体の支持と従属国家化の進展>

 おそらくこれが、安倍政権が「集団的自衛権」の成立を急いでいる理由であろう。
 また、もともと「集団的自衛権」は米軍産複合体の日本に対する要求項目の1つである。ということは、これが成立すると、「日本会議」と安倍政権が目指す憲法改正に米軍産複合体の間接的な支持が得られる可能性が高くなる。

 来年の参議院選挙までには憲法改正に乗り出す準備ができていなければならない。いま安倍政権が「集団的自衛権」の成立を急ぐのには、米軍産複合体の横槍が入らないように彼らの支持を固めておくという理由もあることだろう。
 いずれにせよ、米軍産複合体の要求と支持におもねることでアメリカの従属国家化の方向は強化される。

 このように見ると、「日本会議」と安倍政権が目指す「日本の独立」とは、もはや実質的に独立国とさえ言えない状況にまで対米従属を徹底的に強化しながら、米軍産複合体の保護のもと、「天皇主権」による偉大な日本という幻想に酔いしれる自由を享受したいということではないのだろうか? 少なくとも筆者にはそのように見えてしかたがない。

 <著者/ヤス・・・早稲田大学卒。企業の語学研修、IT関連研修、企業関連セミナー、コンサルティング等を担当。世界の未来を、政治経済のみならず予言やスピリチュアル系など利用可能なあらゆる枠組みを使い見通しを立てる。ブログ『ヤスの備忘録』で紹介しきれない重要な情報や分析をメルマガで配信。

●(5)防衛庁長官や自民党憲法調査会の特別顧問を務め、党内きっての改憲論者とされてきた山崎拓・元副総裁が「三角大福中(三木、田中、大平、福田、中曽根)」と呼ばれた総理たちと安倍思想の本質的な違いを改めて語る。
「安倍総理の憲法解釈変更は日本の安全保障上の必要性ではなく、自らの
名誉心を満たすためのものだと考える。<略>・・・という保守政治家としての共通の信念があった。それを安倍総理は閣議決定という手法で解釈変更をやってみせた。法治国家のあり方をねじ曲げてでも、三角大福中でさえできなかったことをやってのけたという名誉心を満足させることを優先している。その結果、本当に必要な憲法改正が却って遠のいてしまったといえる」<略>(平成27年8月14日、週刊ポスト)

●(6)政治評論家の野上忠興氏は「コンプレックスの裏返しによる名誉欲だろう」とこう突き放した。
 「村山談話、小泉談話ができなかった歴史の見直しを自分がやった。それによって、歴史認識を変更させて、戦後レジームを転換させた。こうして歴史に名を残したいのでしょう。もちろん、これは岸家の野望でもある。錚々たる人物を輩出した家系で常に孤独コンプレックスを感じていた安倍首相にはことさら、『見返してやりたい』『認めてほしい』という気持ちが強いように思います」
 要するに、自己満足なのだが、その動機が何にせよ、安倍は戦後レジームの転換を着々と進めている。その思想ではなく、狂信性にゾッとするのだ。(平成27年8月8日、日刊ゲンダイ)

藤森注・・・・野上忠興氏は日刊ゲンダイ、週刊ポストで、安倍首相の幼児体験を詳しく解説しています。それから導き出された安倍首相の論評は、私の立場からすると最も的を射ているように思っています。>

●(7)「アメリカ最優先の保守政治家」

 <略>

 安倍首相のやっていることは日本を裏切った岸信介と同じだ。安倍首相が敬愛する岸信介もアメリカに従属していた。ピュリツァー賞を受賞した記者が書いた「CIA秘録」によると、CIA工作員だった駐日大使と通じていたためか、岸信介はA級戦犯容疑者だったのに巣鴨刑務所から釈放され、CIAから資金の援助も受けていたという。要するにCIAのエージェントだったのだろう。

 「戦後、保守と呼ばれる政治家の多くは、皇室よりアメリカに顔を向けてきたのが実態です。アメリカ政府も、将来、日本のリーダーになるような政界、財界、官界の人材をアメリカに留学させ、アメリカの役に立つように巧妙に教育してきた。
 いま日本の中枢を占めている人物は、ほとんどアメリカ留学の経験があるはずです。しかも、アメリカに逆らった政権はことごとく潰されてきた。恐らく安倍首相も、アメリカに従っていれば政権は安泰、逆らったら崩壊すると考えているはずです。実際、安保法案にしても、TPPにしても、安倍首相が“日本の国益のためだ”と説明するからつじつまが合わないのであって、正直に“すべてアメリカのためだ”と説明すれば、理屈が合います」(立正大学名誉教授・金子勝氏=憲法)(平成27年7月25日、日刊ゲンダイ)

 <藤森注・・・・・仮に、岸元総理がエージェントないし、それに近い存在であったとしたならば、その孫の安倍晋三首相が若いころに留学したとき、あのCIAが放置するだろうか?
さらには、私がいつも不思議に思うことですが、憲法改正や戦後レジームの転換を声高に叫びながら、アメリカの
属国化政治を行う矛盾です。アメリカに押しつけられた憲法だと言いながら、そのアメリカに言いなりになっている矛盾を何故メディアは追及しないのだろうか?>

●(8)「小林よしのり“わしを呼ぶなと圧力をかけた自民党の劣化はもう止まらない”」(平成27年7月17・24日号、週刊ポスト)

 <略>

 「安倍首相は保守でも愛国者でもない」

 憲法とは国民が権力を縛るための法規だ。これがないと権力は暴走する。現に安倍政権は暴走している。
 自称・保守たちは「国の存立が脅かされる危険」をしきりに唱えるが、本当にそうか。中国の台頭や北朝鮮の核開発をいうなら、これまでもその程度の危機はあった。米ソ冷戦や核開発競争によって、日本は米ソ中という核大国に囲まれた。それこそ日本が核武装しなくてはいけないくらいの危機だったはずだ。中国は台湾にすらいまだ手が出せないでいる。その中国が尖閣に上陸するとは思えないが、そうなれば日本は個別的自衛権で守るしかないのだ。これから危機が増していくというのなら、それこそ時間をかけてきちんと憲法改正すべきだ。

 なぜ嘘をつく必要があるのか。それは安全保障法制が本音ではアメリカのご機嫌取りだからだ。自衛隊を米軍の一部隊とすることで、アメリカにアジアへの関心を持たせ続けようとしている。何がなんでもアメリカに抱きつく属国主義だ。

 そのために解釈改憲という姑息な手段を用いるとは国賊である。よくそんな人物を「保守」が支持するものだ。わしは1951年9月8日にサンフランシスコ講和条約が締結されたときから日本で真の保守は失われ始めたと思っている。

 同日、吉田茂首相は旧日米安保条約に署名した。米軍の日本駐留を認め、基地を無償で提供する属国条約だ。吉田は同行した池田勇人に対し、「政治家がこれに署名するのはためにならん。俺一人で署名する」という趣旨の発言をしたと伝えられている。吉田は日本国民が将来、これが属国条約だと気づく時が来ると怯えていた。吉田には当時そういう思いがあった。

 ところがその後、岸信介内閣が日米安保改定でやったことは、自主独立ではなく、米軍に日本防衛義務を負わせただけだった。その程度のことを「双務的」にしたといっているのが、「岸神話」の実態だ。神話とセットで岸の座右の銘、「千万人といえども我行かん」が紹介されることが多いが、そんなに勇ましい話だろうか。

 安保法制議論で推進派が集団的自衛権の合憲根拠としてあげる「砂川判決」は岸内閣時代に出た。それは集団的自衛権を認めた判決ではない。判決文に日米安全保障条約が「高度な政治性を有するものというべきであって、(中略)一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のもの」とある通り、最高裁が違法判断を避け、三権分立を支える違憲立法審査権を放棄した恥ずべき判決だ。米軍駐留は「憲法の外にある」と認めたも同然だ。安倍政権がそれを今持ち出して「最高裁も合憲と認めている」とのたまうとは悪い冗談である。

 安保改定は日本の米国依存が確定した条約であり、それ以降、憲法改正の気運はしぼんだ。そして自称・保守は大量破壊兵器がなくともイラク戦争でアメリカを支持する。侵略でも構わない、アメリカに従うことが行動原理になった。

 安倍首相に「戦後レジーム」からの脱却などできない。それどころか属国化を一層進めて戦後レジームを完成させようとしているだけだ。彼は真の保守ではないし、愛国者でもない。愛国をいうなら最低限、国家主義を取り戻し、真の独立国家を目指すのは当たり前のことだ。

 暴走する安倍政権に国民はお灸を据えねばなるまい。そのためには民主党は党内で政策を一致させ、自民党に対抗する軸となるべきだ。

く文責:藤森弘司>

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