2015年2月15日 第151回「今月の言葉」
「交流分析」の「ラケット感情」とは?⑥-⑤

●(1)前回の⑥ー④では、下記の(4)Ⅲ:ラケットの性質>3)魔術的な信念に基づいている・・・・・A)二つの魔力が信じられている・・・・・までを解説しました。
今回は、B)から最後までを解説したいと思いましたが、本音で、かつ本気で解説をしてみますと、お読みになる方にとってはかなり強烈な感じがしますので、もう1回、延長します。
思い当たることがたくさんあって、本気で読むと結構辛いものがありますが、辛いままで一生を生きることを考えたならば、トゲを抜くときに痛みはしても、トゲを抜いたほうが一生は遥かに楽になります。
辛いでしょうが、是非、じっくりとご覧下さい。
質問がありましたら、ご遠慮なくどうぞ。あなたの人生を変えるチャンスです。とは言え、気が小さい方は、読むのを止めたほうが良いかも知れません?私(藤森)自身が実際に体験してきたことで、理論や理屈を申し上げているのではありません。私の半世紀の反省記です。
●(4)Ⅲ:ラケットの性質>

1)自然な感情をカムフラージュしている
A)自然な感情を正しく感じとることを学習しなかったためにラケットができあがる。
(例)弟の誕生・・・・・・・しっと心 → 思いやり、やさしさ
母親の病気・・・・・楽しみ → ゆううつ、孤独感
男は三年三口・・・やさしさ → 冷淡、頑迷

上記の例で言いますと、「弟」が誕生すると、上の子は、止むを得ないことではありますが、「弟」と比べて、愛情ある触れ合いが極端に少なくなります。赤ちゃんには、オムツを交換したり、オッパイを上げたり、また、ぐずれば、直ぐに対応しますが、上の子が甘えても、放っておかれたり、叱られたりしかねません。

私は、よく、小さな二人のお子さんを連れている母子連れを観察します。止むを得ないとは言え、上の子は可哀想だなと、いつもハートを痛めています。
下の子・・・1歳か2歳くらいの子・・・は、お母さんに抱かれて、無邪気に、心地良さそうにキャッキャ、キャッキャと喜んでいますが、一方、上の子・・・3歳か4歳か5歳くらいの子は、疲れているのを我慢して、健気にあるいています。恐らく、この子は「敵意」を抱いているはずです。弟の偉そうな、生意気な態度・振る舞いに!!

しかし、お母さんに愛されるために、下の子の面倒を見たり、疲れていてもしっかり(?)歩いたりするでしょう。でも、無意識の内に(殺意)を抱いても不思議ではありません。私たち、心理の専門家は、こういう上の子の「敵意」や「怒り」を十分に汲み上げて差し上げることが大切です。

私事ですが、私のために子供の頃、かなり「割を食う」体験が沢山あったはずの兄を、今、大切に思って対応しています。4歳違いの兄は、私のために、かなり、我慢を強いられたはずです。その兄に対して、たとえわずかであっても、このような気持ちで対応できるようになったことを有り難く感じています。

B)“代用”感情・・・おきかえられたニセの感情
その奥に“禁じられた感情”が不燃焼の状態で残っている。

C)人工的な感情
現在の生活状況に対して起こす、自然なFCの反応ではない。

2)相手に圧力をかけてストロークを得ようとする
A)犯罪行為、ゆすり、恐喝に似ている。
(例)泣き落とし戦術、かんしゃく玉、かみなり、寂しそうな姿(可哀想で見ていられない)、混乱・・・わかりません、お願いします。

B)自ら責任をとりたくないという気持ちから生ずる、強引な威圧的な交流。

 3)魔術的な信念に基づいている
A)二つの魔力が信じられている
①この不快な感情をじっと長く味わっていると、きっと誰かが私に何かをしてくれる(ストローク)。
②今のように、この感情を感じていれば、これ以上の不運は私にやってこないだろう。

例えば、母親のラケット感情である「虚しさ」を植えつけられて(投影されて)、子供の頃、しばしば、ラケット感情を味わうと、母親は放っておけなくて、とても優しく対応してくれます。つまり、「虚しい」というラケット感情は、ストロークを得る手段として成功しています。

そうすると、社会人になっても出てきますが、周囲は、何故、虚しそうにするのか理解ができず、虚しくなるたびに、周囲に理解できず、さらに「虚しく」なってしまいます。
そういう時に、例えば、学校の先生であったり、セミナーの講師であったり、カウンセラーであったり、恋人であったり、同僚であったり・・・・・そういう人が、同様の「ラケット感情」を持っていると、
素晴らしい関係になります。

つまり、「ラケット感情」を刺激しあえる関係、共有関係です。これが一般に親しいとか、親友とか、恋人とか、夫婦関係とか、素晴らしいカウンセラーだとか・・・・ラケット感情を強化し合える関係ができます。昔でいう「駆け落ち」などはまさにそうです。こう言いますと、味も素っ気もありませんが、でも、残念ながらそうです。

B)楽しいものではないが、一生用いる価値がある。

<以下が今月分です>

4)古い、昔の感情生活にしがみついている
A)幼時に条件づけられた、あなた特有の感情態度
B)ラケットは、あなたを常に過去の中に留めおこうと企んでいる。
C)一種の歪んだ信念から、ラケット・システムができ上がる。

「ラケットは、あなたを常に過去の中に留めおこうと企んでいる」とは・・・乳幼児期(精神分析や交流分析では6歳まで)に形作られたラケット感情は、その後の人生・・・つまり、一生、嫌なことがある度に、無意識的かつ強制的に、ご主人様(?)に味わわせようとします。
そのために、本人は、それが、まさに「正しい感情」・・・
実感だと信じ込み切ってしまいます。しかし、それは、残念ながらラケット感情ですから、仮に、3歳の時に完成したラケット感情であれば、いつも3歳の時の嫌な感情を体験することになってしまいます。

大変困難を伴うことではありますが、この事実を知ることが自己成長には不可欠ですが、それをご理解いただくことは、困難を極め、猛烈な抵抗に遭います。ご両親からも抵抗を受けますので、心理の専門家は、まさに、孤軍奮闘・・・多勢に無勢の中で、矢尽き刀折れても耐え切る根性が要求されます。「知性」よりも「体力」勝負です?
ですから、本物の心理の専門家は、格闘技(?)的な
ガッツが要求されます(苦笑い)。

 5)ラケット常習者
A)2つのタイプ
①無力感・・・わたしはOKでないが、あなたはOKです。
②救援型・・・わたしはOKで、あなたはOKでない。

「無力感・・・わたしはOKでないが、あなたはOKです」・・・とは、無力感を味わっていると救援者・・・例えば母親・・・がいるものです。ですから、無力感を味わっていると、「どうしたの?」という優しい愛情(ストローク)が来るものと信じ込んでいますので、辛いときは、すぐに「無力感」を味わおうとします。

しかし、前述のように、ラケット感情は「過去の中に留めおこうと企んでいる」ものですから、仮に3歳の時であれば、3歳の「無力感」を味わっています。
しかし、3歳の時は、自分のことを非常に詳しく、そして「神」の如くに理解してくれる母がいましたが、成人後は、母が側にいませんから、そんな無力感を味わっているあなたを誰も理解できません。

そうすると、ドップリと無力感・虚しさを味わい続けますので、人生を荏苒(じんぜん)と過ごすことになります。そして、うっかりすると、いつまでも自立できず、自立できない我が子(わたしはOKでない)を面倒を見る甲斐性のある母親(私はOK)・・・ということになりかねません。

ここを抜け出していただこうとすると、「冷たいカウンセラー」と看做されてしまいますし、それを知った母親はさらに、我が子をお世話したくなります。ここが難しいところです。しかも、今の時代は経済力がありますので、気心の知れた我が子と一緒にいると、双方の癒しになりますから、ますます、自立が困難になります。

野生の動物は、我が子が自立しないと自分の餌が確保できなくなるので、オートマチックに追い出しますね。辛いシーンですが・・・・・。

6)人はなぜラケットを持ち続けるのか?
A)ラケットの機能
①ストロークを貯えるため・・・・・寂しい時に、寂しさを紛らわせてくれます。夫婦喧嘩も同様で、絡み合って、寂しさを紛らわせています。
②人を操作してストロークを得る・・・・・分かりやすい例が「怒り」です。相手を思い通りにするのに大変都合が良いです。
③罪悪感(やるべきことをやらないでいるために生じる)を避ける
・・・・・例えば、虚しさを味わうことで、罪悪感を避けることができます。
④もともと“いけない感情”に罪悪感なしに浸る
⑤ラケットよりも危機で、苦痛で、恥ずかしい感情を避ける
・・・・・より強い苦痛を避けるために、長年、味わい慣れていて抵抗力があるラケット感情で誤魔化す。

B)ラケットと交流
①人の最大の“飢え”は刺激に対する飢えである・・・・・キリスト教でいう「パン」のみではないというのがこれです。私たちが群れるのもそうです。海水浴が素晴らしいと言いますが、シーズンが過ぎて、誰もいない海辺で一人で海水浴をしても寂しいですよ。ですから、海水浴は楽しいですが、それ以上に群れる楽しさです。
②ゲームは、ラケットを支えるために、二人以上の人が交流することである・・・あなたと私のラケットが出合うこと
・・・・・いつも同じパターンで夫婦喧嘩をすること、つまり、パターンがある「こじれた関係」をゲームと言い、そこで演じた結果、得られる嫌な感情をラケット感情と言います。私が若いとき、散々やった夫婦喧嘩が典型例です。
ゲームを演じ合える相手を選んで一緒に生活をするのが結婚です。ゾッとしますが、芸能界に限らず、世間を見れば、納得せざるを得ませんね、残念ながら。

そんな馬鹿な!!!と思われることと思います・・・が、あなた方のご両親の人生を考察してみてください。時代が違うために分かりにくいことと思いますが、ご両親の関係が醸し出すメロディーは、あなた方ご夫妻の間に流れるメロディーとそっくりなはずです。そこに気付くことが重要です。

③真実の感情に気づいていないと“飢え”が生じる・・・ラケット常習者の目的:交流を継続すること

7)ラケットは身体症状として現れることがある
①主として、恐怖や敵意の抑圧によって、自然な動作や呼吸が制限され、感情が遮断され、筋肉の緊張ができ上がる(ローエン)・・・・・心身医学で言うところの「心身症」や、東洋医学の「指圧」「鍼」などが主として対応するのがこれです。筋緊張(きんきんちょう)が強い人は、強烈な指圧をしないと効きません。しかし、体に相当の負担をかけますので、しばしば、翌日、もみ返しが必要になります。
②生体エネルギー分析・・・・・多数ある心理療法の技法の中の激しさでは最右翼の一つが「生体エネルギー法」と言われる「ボディーワーク」です。心理の専門家、例えばカウンセラーや心身医学者、心理学者など、理論を専門にする専門家が、ボディーワークの最右翼である「生体エネルギー法」の実体験を積むと、さらに効果的な対応ができます。
理論と同時に体験的な「ボディーワーク」の
併用が重要です。

●(5) <Ⅳ:ラケットとラケット感情>

1)ラケット感情(スチュアート、ジョインズ)
A)いろいろなストレス状態で経験される、馴染み深い感情
B)子供時代に学習され奨励された感情
C)成人の問題解決の手段としては不適切な感情

2)ラケット
A)自分がラケット感情を感じるようにお膳立てして、その感情を感じる過程(当人はその過程に気づいていない)
B)脚本の思い込みを正当化する過程
①一組の脚本化された行動
②環境操作の手段として、意識せずに用いる
③ラケット感情の経験を伴う

3)ラケットと脚本
A)ラケット感情を経験するとき、あなたは脚本の中にいる
B)ラケット感情は、「今、ここ」での問題解決には役立たない
C)何故あなたに重要か・・・幼少時と同じ支持を得たい(環境操作)(他者変容)

4)ラケット感情と真実の感情
A)ラケット感情は幼少時に禁止された別の感情の代用品である
B)ラケット感情は本物の感情を覆い隠すために使われる
C)真実な感情とは・・・①怒り②悲哀③恐怖④喜び

5)未完の状況とラケット感情(トムソン)
A)ラケット感情の表出は「今、ここ」での問題解決には役立たない
B)真実の感情は、問題の状況を完結させる
①正当な怒り  ②悲哀の仕事

 6)ラケット行動(イングリッシュ)
A)タイプⅠa・・・無力(悲しげに哀れを誘う人)・・・すねる、ひねくれる
B)タイプⅠb・・・ガキ(マイナスのCP)・・・・・・・・・・かみつく、くってかかる
C)タイプⅡa・・・援助(マイナスのNP)・・・・・・・・・・おせっかい、過保護
D)タイプⅡb・・・ボス的(マイナスのCP)・・・・・・・・問い詰め
*ラケット感情は、しばしばゲームに変形する(藤森注:ゲームとは、こじれた人間関係の交流)

7)スタンプ
A)あとでまとめて使うために、ラケット感情をせっせと貯めること
B)八つ当たり、お門違い、玉砕

8)転移(土居)とラケット感情
A)転移・・・治療関係において、患者の最も内奥にある精神感情がそこに暴露されたもの(患者の生身)
患者の幼時の本能的感情生活そのもの

B)抵抗・・・裸の精神になることへの躊躇
本当の裸の姿を見まいとする自己防衛的態度が無意識の中に働いている

C)なぜ転移は治療に対する最大の抵抗となるか
①患者は幼児的な状態に退行している
②対象の判然としない母子関係の再現
③幼児の生活状況の再現

●(6)<Ⅴ:ラケット・システム>

1)~5)は省略

6)ラケット・システムの例
A)脚本の基になる信念と感情
①信念(思い込み)
a)自分について
*私は大事な人間ではない
*私はまったく一人ぼっち
b)他人について
*他人は大事な人ばかりだ
*誰も私のことなんか必要としていない
*誰も私を愛していない
c)人生について
*人生は困難で、淋しいところだ
*人から好かれ、愛されるためには、人の世話をすることだ
*それを自分でするしかない

②抑圧された感情
*傷心
*怒り

B)ラケットの表われ方
①観察される行動
*悲しい姿         *静かさ(沈黙)
*一人で時間を過ごす  *すべての仕事を一人でやる
*相手の目を見ない   *他人のニードを代わって訴える
*自分のためには要求しない

②身体内感覚
*首筋がこる・・・感じたことを言わないでおく
*頭痛

③ファンタジー
*一人淋しく老後を迎える
*人の世話をしてきたので、皆から感謝される

C)強化因子としての記憶
*兄弟の方が私より優先する
*悲しそうな母・・・私の面倒をみる余裕がない
*友だちがあまりいない
*相手にされない、無視される
*皆の仲間に入れてもらえない、招かれない

く文責:藤森弘司>

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