2013年12月15日 第137回「今月の言葉」
カウンセリングとは何か(ファンタジー)

●(1)「ファンタジー」とは、「空想。幻想。白日夢。」(広辞苑より)

 「Fantasy」とは、「とりとめもない想像、空想、夢想、幻想、白日夢;気まぐれ、【心】空想《過去のイメージをもとに新しいイメージをつくり出すこと》・・・動詞として、空想にふける」(リーダーズ英和辞典・研究社)とあります。

●(2)さて、私たち親は、育児の中で、子供の将来を考えますが、子供の将来を考えているつもりでいて、実は、私たち親は、子供の将来を考えるよりも、自分自身が果たせなかった夢を空想する傾向があります。

 「自分が○○をすることができなかったから、自分の子供に○○をさせてあげたい」という気持ちになります。ある意味で、これはとても大事なものですが、しかし、往々にして、これが過ぎてしまいがちです。

 例えば、自分がピアノをやることができなかったから、自分の子供にやらせたいなどは典型的です。子供にやらせてあげたいと思う程度までは良いのですが、いつの間にか、それが「義務」「強制」になっている場合があります。

 ある音楽関係の大学を卒業された方をお世話したことがありますが、その大学の「学生寮」では、かなり精神的に傷んでいる学生が多いらしいことを聞きました。
しかし、ある意味で、これは当然のことです。

 何故ならば、音楽関係の大学に入ろうとするような人は、多分、5歳前後から習い始めるのでしょう。スタート当初は、おもしろいので進歩するでしょうが、数年もすると飽きてきたり、自由に遊びたくなったり、進歩が遅れてイヤになったりする子が多いはずです。私(藤森)自身のいろいろな体験から想像すれば、物事が順調に進歩するようなことは、ほとんど無いように思えます。

 挫折したこの時点で止める側になるか、ピアノも買ったし、無理矢理、継続させる側になるかでかなり違ってきますが、多くの親御さんは、無理に継続させようとするはずです。
 本来は、子供の将来を考えて育児しているはずであるにもかかわらず、嫌がる子供に無理にやらせようとする親御さんの深層心理は、子供のためと思いながら、実は、「自分のファンタジー」の世界に浸っているものです。

 子供の将来を考えて・・・・・やっているにもかかわらず、嫌がる子供に無理に○○をやらせようとすることは、「子供の将来」を考えているつもりが、「自分のファンタジー」であった・・・・・ということに気付くことがとても重要です。
 何故ならば、子供のために○○をやらせるのであれば、どんなに無理にやらせても、それは正しいことになります。子供のために、ですから。

 ですから、ここで極めて重要なことは、子供のやりたいことなのか、親自身のやりたかったことなのかを区別できる「成熟した自我」を育てることが、親子関係はもちろん、夫婦の関係においても、そして人間関係全般においても、とても大切なことです。

 これは心理学でいう「自他の区別」をつけることです。私たちは、「自他」の区別をつけるなどといきなり言われますと、多分、多くの方は怒り出すはずです。そんなことは当然できると。
 しかし、私たちは、多くの場合、自分自身のことなのか、あるいは、それは「相手の方(子供であったり、配偶者であったり)」のことなのか、意外にも区別が明確にできていないものです。もちろん、物理的なものは、見てわかりますから、誰でも明確に「区別」がつきますが、心理・精神的なものは、目で見えないものですから、それは「自分の感覚」なのか、「相手、特に子供の感覚・・・つまり、投影」なのか、結構わからないものです。

 今回は詳しく説明しませんが、区別がしっかりできていなかったと気付いた方は、かなり「自我」が成熟している方だといえます。

 今回のタイトル的に言いますと、「自他の区別」がしっかりついていないところを指摘し、理解していただき、「自他の区別」がつくようにご指導申し上げることが「カウンセリング」では極めて大切なことです。かく申し上げる私(藤森)自身の未熟さを反省しながらであることは当然のことです。

く文責:藤森弘司>

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