2013年11月15日第136回「今月の言葉」
カウンセリングとは何か(P・A・C)

●(1)「交流分析」の基礎用語である「P」「A」「C」を用いて「カウンセリングとは何か」を説明します。

「交流分析」は、「精神分析」の「口語版」と言われるように、非常に簡単、かつ、分かりやすい理論であると言えます。しかし、実際にこなしてみますと、理論というよりも、実生活にピッタリの「職人的理論」です。
ですから、理論よりも「実践」が重要で、実践無き理論はナンセンスそのものです。

その「交流分析」では、一人の人間は、3つのパーツからできていると考えます。それが表題の「P」「A」「C」です。
①「P」・・・・・「PARENT(親)」の意味で、父親的な「P」の部分を「FP」(Father Parent)、母親的な「P」の部分を「MP」(Mather Parent)と言います。

②「A」・・・・・「ADULT(大人・成人)」の意味で、この部分は、1つです。

③「C」・・・・・「CHILD(子)」の意味で、自由な「C」の部分を「FC」(Free Child)、順応した「C」の部分を「AC」(Adapted Child)と言います。

●(2)<あなたの中の3つの私と5つの働き~自我状態診断の手がかり~>

①ー①「P」・・・・・「PARENT(親)」の意味で、父親的な「P」の部分「FP」(Father Parent)の解説

a)言語的診断・・・・・「~すべきである」「~する義務がある」「~しなければいけない」「~してはいけない」「当然でしょう」「だめだ」

b)行動的診断・・・・・「拳で机をたたく」「人を鼻であしらう」「相手をさえぎって、自分の言葉をはさむ」「押しつけ調で話す」「額にしわをよせた厳しい顔つき」

c)社会的診断・・・・・「相手の挨拶に応えない」「意見を異にする人を排斥する」「ことさら相手のミスを指摘する」「特別扱いを要求する」「相手の従順さをたたえる」

d)生活史的診断・・・・・「私の几帳面さは父から受けついだものです」「これは父がよく使った言葉です」「これは私の家のやり方で、変えるつもりはありません」

①ー②「P」・・・・・母親的な「P」の部分「MP」(Mather Parent)の解説

a)言語的診断・・・・・「~してあげよう」「よくできたよ」「あなたの気持ちわかるわ」「可哀そうに」「まかせておきなさい」「がんばりましょう」

b)行動的診断・・・・・「背中をさする」「手をさしのべる」「気配りがゆきとどく」「抱いてあげる」「握手で相手を迎える」「愛撫する」

c)社会的診断・・・・・「相手の世話をやく」「ゆっくり相手の話に耳を傾ける」「泣く相手にティシュペーパーをさし出す」「相手の面子をつぶさぬ形で忠告する」

d)生活史的診断・・・・・「頼まれたら断れないのが、私のたちなのです」「私のこんなところは母とよく似ています」「そんな冷たい態度は私にはとても取れません」

「A」・・・・・「ADULT(大人・成人)」の意味の解説

a)言語的診断・・・・・「誰が?」「なぜ?」「いつのことですか?」「どうやって?」「~と思う」「私の意見では~」

b)行動的診断・・・・・「姿勢がよい」「能率的」「落ち着いた態度」「論理的」「言葉が選ばれている」「計算されている」

c)社会的診断・・・・・「対等な話し合い」「相手の目を見て冷静に話す」「必要な場合、互いに沈黙して考えをまとめる」「相互の情報の収集」

d)生活史的診断・・・・・「両親ともほとんど感情的になったことはありません」「母は教師で、理性的でした」「百科事典を読むのが趣味でした」

③ー①「C」・・・・・「CHILD(子)」の意味で、自由な「C」の部分「FC」(Free Child)の解説

a)言語的診断・・・・・「ワァー、キャー」「好きだ、嫌いよ」「~がほしい」「お願い!」「~をしたい」「うれしい!」

b)行動的診断・・・・・「自由な感情表現」「よく笑う、ふざける」「明るいユーモア」「自発的、活発」「のびのびした態度」「ときに空想的」

c)社会的診断・・・・・「素直に甘える」「一緒に楽しんでいる」「相手に遠慮せずにものを頼む」「慰めを受けている」「くったくのない関係」

d)生活史的診断・・・・・「母も私も歌うのが好きで・・・」「父は欲しいものがあるとどうしても手に入れる人でしたから、私も・・・」「父には無邪気なところがありまして・・・」

③ー②順応した「C」の部分「AC」(Adapted Child)の解説

a)言語的診断・・・・・「~してもいいでしょうか」「~できません」「だめなんです」「どうせ私なんか」「ちっともわかってくれない」「もういいです」

b)行動的診断・・・・・「遠慮がち」「いわゆるイイ子」「気を使う」「迎合的」「ときに攻撃的、反抗的になる」「過剰な適応」

c)社会的診断・・・・・「相手の顔色をうかがう」「真意を述べずに相手に合わせる」「相手の同情を誘う」「すねる、ひがむ、恨むなど、甘えの変形を示す」

d)生活史的診断・・・・・「長子として、いつもがまんを強いられました」「反抗などしたことのないイイ子でした」「いつも親の顔色を見て育ちました」

<以上は「交流分析研究講座」(講師・杉田峰康先生、自己回復総研発行)より>

●(3)上記の特徴は、良し悪しで判断するのではなく、状況々々に合った使い方ができているか否かが重要です。

例えば、「③ー②のc)『相手の顔色をうかがう』」というのがあります。一般に「相手の顔色をうかがう」というのはネガティブな感じがしますが、相手がワンマン社長であれは、ワンマン社長の顔色をうかがいながら話をすることは大切です。

また、頑固親父で、気に食わなければガミガミ言われるのならば、その場は、顔色をうかがいながら事を進めたほうがベターだと思います。

「③ー①のb)『自由な感情表現』」とありますが、一般に良いものとされていますが、これも、時と場合によっては、ヒンシュクを買うことがあります。

大切なことは、状況々々によって適切に使い分けられる人間性を育てることが大事です。

勉強も重要ですが、勉強だけが重要ではありません。しかし、1週間に4回も5回も塾や稽古ごとに通わせれば、理屈ではなく、体に沁み込む価値観は、塾で習うものに偏りすぎてしまいます。

「遅刻」することは、もちろん、いけないことですが、でも、状況によっては「遅刻」することのほうが良い場合もあります。たとえば、体調が悪ければ、体調を優先させるべきです。

その時、その時の状況により価値観は動くべきですが、多くの場合、価値観は「固着」している傾向があります。
体調が悪くなったり、ウツや不登校になったりするのは、身体が異変を教えてくれている
大切なサインにもかかわらず、大切なサインを無視し、学校へ行ったり、元気でいることが良いことだという固着した「価値観」にこだわってしまう傾向が私たちにはあります。

しかし、長い間、それらの価値観にこだわって生きてきた方が、その価値観を手放すということは、生木を裂かれるかのように辛いし、難しいものです。でも、少しずつ、少しずつ、固着している価値観を手放してもいいという「良い意味での諦め観=諦観」に至るようにご指導申し上げることが、カウンセリングではかなり重要なことです。いや、これが全てと言っても良いかもしれません。

逆に言いますと、ある価値観に固着しているために、別の価値観を受け入れにくくさせていて、それこそが人生を楽に生きさせない原因であることに気づく・・・・・深層心理に横たわる「防衛」「影」の存在を実感することこそが「自己成長」「自己回復」にとって最も重要なことです。

く文責:藤森弘司>

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