2011年11月15日 第112回「今月の言葉」
脚本分析・オバマ大統領は大丈夫か&TPP

●(1)私(藤森)がオバマ大統領の脚本分析を下記の6回に分けて書きましたが、その時に紹介したメディアの記事や、私が分析したときに使った言葉などが実際になりつつあるのには、正直驚いています。

 それを考えますと、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」も、一般に考えられているような流れにはならないし、さらには国会での論戦も単なる「建て前論」であり、あまり参考にはならないように思われます。
 「TPP」は「トピックス」で独立して書きたかったのですが、「TPP」の問題が重大な局面に突入していますし、オバマ大統領の問題にも深く関わりますので、この二つを一緒に書いてみたいと思います。

●(2)<2010年2月15日、第91回「今月の言葉」「脚本分析・・・オバマ大統領は大丈夫か?①」>では、オバマ大統領の「脚本(生い立ち)」の分析と、オバマ大統領に関わるアメリカの「政治情勢」などを紹介しました。

 <2010年3月15日、第92回「脚本分析・・・オバマ大統領は大丈夫か?②」>では、「脚本の分析」を中心に「反オバマ運動」「国民皆保険」などを紹介しました。

 <2010年4月15日、第93回「脚本分析・・・オバマ大統領は大丈夫か?③」>では、2008年11月の大統領「受託演説」やオバマの「金権選挙」ぶり、また、オスカー女優・ハル・ベリーの「生い立ち」などを紹介しました。

 <2010年6月15日、第95回「脚本分析・・・オバマ大統領は大丈夫か(補足)」>では、大統領候補には(当時のレイトで)「補助金90億円」が出るにも関わらず、オバマは「史上初の受け取りを拒否」の記事やメキシコ湾の原油流出事故などを紹介しました。

 <2010年7月15日、第96回「脚本分析・・・オバマ大統領は大丈夫か(補足②)」>では、オバマ大統領に多い「史上初」「アフガン戦略」などを紹介しました。

 <2010年8月15日、第97回「脚本分析・・・オバマ大統領は大丈夫か(補足③」>では、オバマ大統領夫人の「豪遊問題」やオバマの内面の分析などを紹介しました。

●(3)さて、私(藤森)は、ハドソン研究所主席研究員・日高義樹氏の情報を信頼しています。

 その日高氏の最近の著書「アメリカの歴史的危機で円・ドルはどうなる」(徳間書店刊)を紹介したいと思います。

 その著書発行で、夕刊フジが「インタビュー特集」として、日高氏のインタビューを載せています。非常に興味深いので、まず、それを紹介します。

 ここで紹介されている日高氏の言葉が、私が上記の「脚本分析」で紹介した内容ととても似ているところがあるのには、ただただ、驚いています。まず、日高氏の言葉を紹介し、その後で「脚本分析」の内容の一部を再録したいと思います。

●(4)平成23年11月1日、夕刊フジ「日高義樹氏インタビュー」

 <オバマ政権下で破滅的に財政赤字は拡大しており、いまやアメリカは歴史的な危機にまっしぐら

 アメリカが揺れている。連日のニューヨーク・ウオール街でのデモは全米に波及し、そしてついに全世界に飛び火した。失業率は下がらず、生活苦にあえぐアメリカの低所得層がついに立ち上がった。来年には大統領選挙を控え、果たしてアメリカはどこに向かうのか。最新著「アメリカの歴史的危機で円・ドルはどうなる」で、ワシントンから緊急リポートを寄せた日高義樹氏は、大恐慌以来の危機が目前に迫っていると警告する。

 <もはや大恐慌は避けられない・・・最大の被害者は誰か>

「私はもはや大恐慌は避けられないと思います」と、開口一番に恐ろしいことを口にした日高氏。「オバマ政権下で、破滅的に財政赤字は拡大しており、いまやアメリカは歴史的な危機に直面している」という見方をしているからだ。

 そして、来年には大統領選挙が迫っている。オバマ再選か、共和党の政権奪回かで、その後のシナリオはガラリと変わるのだが、それについても日高氏はこんな見方を披瀝した。「もうオバマの再選の目はなくなったのではないですか。いまなら共和党から誰が立っても勝てる。いや、それどころか、民主党内からも再選立候補をさせない動きが出てきた。ヒラリー・クリントンでいいという意見が出ているんですよ。彼の再選を望むのは、3年前にも資金を出したウオール街だけですよ」

 日高氏によれば、3年前の大統領選挙でオバマ大統領を支えた資金源は、いま大衆の批判の矛先が向けられているウオール街だという。そして、オバマ大統領は公的資金導入でブッシュ政権末期のリーマンショックで窮地に陥っていたウオール街を救った。

 以来、オバマ大統領の3年間は失策の連続だったと、日高氏は指摘する。イラクから手を引いたのはいいが、アフガンでさらに戦争を拡大。極め付きは、アメリカ始まって以来の国民皆医療保険の導入も、財源不足と司法から憲法違反との見方も出て来て、頓挫しかねない状況だ。経済も一向に回復の兆しを見せないから、何一つ成果を上げないまま歴史的な危機に向かってまっしぐらに落下しているのが、オバマ政権下のアメリカの現状だと、日高氏は新著でリポートしている。

 <四面楚歌に破れかぶれ>

 「アメリカ初の黒人の大統領として誕生したオバマ政権だが、この3年間にしたことは、黒人とヒスパニックなど貧困層とウオール街救済だけ。でも、失業率も好転せず、経済も回復せず、八方ふさがり。大多数のアメリカ人は不満を持っています。それが右はティー・パーティーから、左はウオール街のデモとなって現れているわけです」

 つまり、四面楚歌の状況だ。そのためにもはや破れかぶれになっているのか、警護するシークレット・サービスの警告にも耳を貸さないので、関係者は暗殺に危機感を持つほどだという。「知り合いのシークレット・サービスのOBが心配していましたよ。凶弾に倒れて歴史に名を残そうという気ではないかとさえ思えてくるほどです」(日高氏)

 ここまで事態が深刻だと、オバマ再選か否かで破局が避けられるわけではないと言うほど、日高氏は深刻な見方をしている。「共和党が政権をとれば、すぐに緊縮財政になって、株は大暴落、ドルもアメリカ国債も紙切れ同然という大恐慌の再来となります。一方、まかり間違えてウオール街の力を借りてオバマ再選なら、一時しのぎの末に赤字はさらに拡大して、将来より一層大きな恐慌を招きます。どちらに転んでも、歴史的な危機ですよ」

 <米国債を最も買っている中国と日本は・・・・・>

 大恐慌再来となったら、最大の被害者は誰か。「日本と中国ですよ」と、日高氏。「アメリカは過去、独立戦争、南北戦争、大恐慌と国を二分する歴史的危機を乗り越えてきたから、今度も乗り越えますよ。それだけの柔構造を持っている。でも、米国債を最も買っている中国と日本は、紙切れとなったドルの影響をもろに受けます。アメリカ主導のTPP(環太平洋経済協定)などにうつつを抜かしている場合じゃありませんよ」

 アメリカは前の大恐慌を対日戦争で乗り切った。果たして、今度は・・・犠牲となるのは誰か。日高氏の新著はそれを明らかにしている。

 <日高義樹氏(ひだか・よしき)・・・・・1935年生まれ。東京大学英文学科卒業後、59年にNHK入局。ニューヨーク、ワシントン支局長、米国総局長を歴任後、ハーバード大学客員教授。現在はハドソン研究所主席研究員のかたわら、テレビ番組「ワシントンの日高義樹です」でおなじみ。国際関係の著書多数>

●(5)日高氏の発言と、私(藤森)の「脚本」の内容を比較しながら紹介したいと思います。

日高氏・・・・・民主党内からも再選立候補をさせない動きが出てきた。ヒラリー・クリントンでいいという意見が出ているんですよ。

「第92回の脚本分析」・・・・・さて、私(藤森)の「脚本分析」は・・・・・上記のように、一番穏当なものは、一期4年で終わることでしょう。私としても、そうであってほしいと願っています。オバマ大統領の「脚本」を分析してみると、一期4年を全うすることが、望みうる最高の結末であると思います。
 これだけの脚本を持ち、かつ、これだけの経過をたどれば、一期4年を全うして、大統領職を終えれば、白人社会に風穴を開けたこともあり、最高の結末です。
 ・・・・・
 私がこれまで他の本たちで書いてきたとおり、アメリカのオバマ政権は長くは保たないだろう。金融危機の責任を取らされて、バラク・オバマは任期半ばで辞任してゆく。
 次の大統領はヒラリー・クリントンが取って代わる。2010年末にはアメリカは恐慌に突入する。
 そして2012年に「ドン底」がやってくる(ドル亡き後の世界)。

日高氏・・・・・彼の再選を望むのは、3年前にも資金を出したウオール街だけですよ

「第95回の脚本分析」・・・・・<オバマへの政治献金 1ヶ月で150億円>
 たった1ヶ月で1億5000万ドル(約150億円)・・・・・オバマ候補が米大統領選で集めた政治資金だ。8月には大統領選史上最高の6600万ドル(約66億円)を集めたばかりだが、当選確実となって、9月に一気に倍のカネが集まったのである。

日高氏・・・・・オバマ大統領の3年間は失策の連続だったと、日高氏は指摘する。イラクから手を引いたのはいいが、アフガンでさらに戦争を拡大。

「第96回の脚本分析」・・・・・<第2のベトナム化><これはオバマの命取りになる>
オバマ大統領がアフガン駐留米軍トップのマクリスタル司令官(55)を更迭し、後任にぺトレイアス米中央軍司令官(57)を起用すると発表した。マクリスタルの解任はオバマ政権の高官への批判が原因だ。今月発売の米誌「ローリング・ストーン」で、米軍増兵に反対したバイデン副大統領やジョーンズ大統領補佐官をバカにする発言をしたのである。・・・・・

 アフガン駐留の米軍はこの7月から大規模作戦を実施する予定で、作戦を準備してきたのがマクリスタルだった。作戦は米軍がアフガンで仕掛ける最後の“切り札”だった。軍事ジャーナリストの神浦元彰氏が解説する。
 「タリバンの拠点であるカンダハル州の掃討作戦です。従来のような空爆や砲撃ではなく、民家やビルなどを一軒ずつしらみつぶしに調べて、武器庫や弾薬庫、仕掛け爆弾、タリバンの資金源であるアヘンを押さえる特殊作戦。かなりの兵員を要しますが、完了すればタリバンの壊滅につながるため、昨年からマクリスタル氏が着々と準備を進めてきたのです」・・・・・
 いわゆる“ローラー作戦”。成功すれば、アフガンの治安は一気に良くなる。米軍は作戦を完了させ、来年7月にアフガンからの撤退を開始する予定だ。

 <大規模作戦の直前なのに・・・・・>
ところが、この特殊作戦が失敗する可能性が出てきた。特殊作戦のプロであるマクリスタルの抜けた穴が大きいというのだ。

 「マクリスタル氏以外の将兵はそのまま残留して作戦にあたりますが、不安は大きい。タリバンが激しく抵抗したら、マクリスタル氏を欠いた米軍は迷走する可能性が出てくる。すでにアフガン戦争は01年から約9年におよぶ戦闘で、あのベトナム戦争より長い。1110人の米国人が死亡するなど、まさに泥沼。起死回生を狙った今回の作戦が失敗したら、アフガンからの撤退も延期せざるをえなくなり、戦闘状態がさらに長引きます。泥沼から抜け出せると期待している軍人や米国市民の失望は大きいでしょう」(神浦元彰氏)・・・・・
 作戦が失敗したら、オバマ大統領は万事休す。退陣の可能性もなくはない。就任して1年半。オバマは大ばくちを打った・・・・・。

日高氏・・・・・極め付きは、アメリカ始まって以来の国民皆医療保険の導入も、財源不足と司法から憲法違反との見方も出て来て、頓挫しかねない状況だ。

「第92回の脚本分析」・・・・・今年1月に行われた米国マサチューセッツ州の上院補欠選挙で、民主党が47年にわたり維持してきた議席を無名のブラウン共和党候補に奪われた出来事は、米国ばかりか世界の今後にも影響が大きい・・・・・ブラウン氏が医療制度改革に反対して補選に勝利したことと、世論調査によれば国民の6割が医療改革に反対なことだ。これでは強行は難しい・・・・・だがこれは厄介な問題だ。2期を務めたクリントン大統領も皆保険だけは実現できなかった。なぜなのか。答えは医療についての国民意識に帰着する。これは伝統の問題なのだ。

「第93回の脚本分析」・・・・・国民の保険加入を義務付けた同法は、「個人の自由と州の主権を侵害し、憲法違反だ」というもので、ビル・マッキカラム同州司法長官がテキサスなど他の12州の長官の提訴を取りまとめた。

日高氏・・・・・経済も一向に回復の兆しを見せないから、何一つ成果を上げないまま歴史的な危機に向かってまっしぐらに落下しているのが、オバマ政権下のアメリカの現状

「第92回の脚本分析」・・・・・しかし、「世界最大かつ最高のアメリカ大統領になり、そして、「最高のノーベル賞を受賞したならば、若いオバマにとって、その次の目標は何でしょうか????・・・・・
 どうやら、この経過を辿ると・・・・・飛行機の離陸に喩えてみますと、幼児期は、滑走路を飛び立つのに苦労しながら、やっと離陸に成功。それからドンドン機首を上げていき、加速しながら「垂直に上昇するような軌跡」を辿っています。
その次にあるのは、一体、何でしょうか???・・・・・喩えて言いますと、公園の小川の中に置いてある飛び石というのでしょうか、それをポンポンと順調に飛んでいって、最後の石(大統領とノーベル賞)の次には何もない
「ドボン」を暗示しています。

日高氏・・・・・警護するシークレット・サービスの警告にも耳を貸さないので、関係者は暗殺に危機感を持つほどだという。「知り合いのシークレット・サービスのOBが心配していましたよ。凶弾に倒れて歴史に名を残そうという気ではないかとさえ思えてくるほどです」(日高氏)

「第92回の脚本分析」・・・・・<オバマは暗殺されるのか>
 就任前から「暗殺」が懸念されてきたオバマ大統領。1年目の2009年は、なにごともなく過ぎたが、危険性が弱まったわけではない。むしろ、懸念は強まっている。
 ワシントン・ポスト紙の元記者、ロナルド・ケスラーの新著「大統領のシークレットサービスの内部」によると、大統領就任以来、「殺すぞ」といった脅迫は1日30件もあるという。ブッシュ政権時代の3倍以上だ。
 ・・・・・
 「バラク・オバマ大統領は、ホワイトハウスの執務室にいて、日常たった3人の人間としか口をきかないそうである。この3人とは、奥さんのミシェルさんと、大統領首席補佐官のラーム・エマニュエル(恐ろしいイスラエルとの二重国籍の男)と、経済学者のラリー・サマーズNEC(国家経済会議。大統領直属の諮問委員会)委員長である。」(ドル亡き後の世界)。

以上の内容とは直接関係ありませんが、オバマの苦境を考えると、下記のミシェル夫人の無神経さは「異常」そのものですね。日本の同じ民主党の前総理大臣ご夫妻と非常に似ていると思いませんか?

「第97回の脚本分析」・・・・・ミシェル・オバマ米大統領夫人(46)と次女サーシャさん(9)が4~8日、スペインの超高級リゾートで休暇を過ごしたことに対し、米メディアから「失業などで国民が苦しんでいるのに不謹慎だ」との批判が噴出。その「豪遊」ぶりを「まるで(フランス革命当時の)マリー・アントワネット妃のようだ」と揶揄する報道まで飛び出し、支持率低下に悩む大統領にとって頭痛の種となっている。

 夫人らは、スペイン南部の海辺の町マルベリャに滞在したが、米メディアによると、1泊の宿泊費が6500ドル(約56万円)の超高級リゾートホテルもあった。ホワイトハウスは、「個人的な休暇なので、ホテル代や食事代はすべて自己負担」としているが、往復に使用した政府専用機は、運航費用が約18万ドル(1550万円)に上ったにもかかわらず、夫人らの負担額は民間機のファーストクラスの運賃相当額のみ。公費で賄われるシークレットサービスによる身辺警護の費用への「無頓着」ぶりもやり玉に挙げられた。
 ブッシュ前大統領のローラ夫人は私的休暇で海外旅行をしたことはなく、米国内の国立公園で休暇を過ごすことが多かった。

●(6)平成23年9月13日、日刊ゲンダイ「もぎたて・海外仰天ニュース」

 <ヒラリーを大統領に?>

 <チェイニー前副大統領がベタ褒め>

 来年11月に大統領選を迎えるアメリカ。民主党は現職オバマ大統領が再選を目指し、共和党からはロムニー候補をはじめ、主要8候補が出馬している。

 民主党はオバマ大統領の再選で一応党内がまとまっているが、支持率は40%台前半で「楽勝」とは程遠い。そこでヒラリー・クリントン国務長官を大統領選に推す動きが出ている。しかも長年の政敵であるディック・チェイニー前副大統領が米ABCテレビでこんな自説を披露したのだ。  「彼女は自分では(大統領に)なりたいと発言していないが、悪い考えではない。オバマ氏の評判は最高とは言い難いし、経済状況もかんばしくないので彼女が出てくる素地はある。恐ろしいくらい優秀な人だから」
 “ベタ褒め”なのである。

 ヒラリーは08年の大統領選で、オバマと予備選の最後まで一騎打ちを繰り広げた。一度は大統領になることを夢見ているだけに、まんざらでもないというのが周囲の声。今でも彼女の根強いファンは多く、「2012年ヒラリーを大統領に」と題するウエブページが多数立ち上げられ、署名活動を始めている人たちもいる。あとは彼女のやる気だけか。

●(7)平成23年7月12日、夕刊フジ

 <オバマ米大統領・養子に出されるところだった!?>

 オバマ米大統領が母親アンさんのおなかにいるとき、ケニア人の実父はオバマ氏が生まれたら養子に出そうと計画した・・・。
 米紙ボストン・グローブは10日までに、移民局の文書に残された実父の発言を基に伝え、もし養子計画が実現していたら、オバマ氏の人生は今のままではなく「米政治の歴史が変わっていたかもしれない」と報じた。

 同紙によると、当時18歳で大学生だったアンさんは、ケニアからハワイに留学中の実父と知り合い妊娠。実父はケニアに残した妻と子供2人の存在を隠して、1961年2月に当時妊娠5ヶ月のアンさんと結婚した。

 移民当局や大学は、実父の女性関係の多さを問題視、重婚ではないかと問いただしたが実父は「離婚した」と否定した。その際「まもなく生まれる子(オバマ氏)は養子に出すつもりだ」という説明が移民局の文書に残されていた。

 結婚から半年後にオバマ氏は生まれ、養子に出されることはなかった。父は、アンさんと幼いオバマ氏を残して間もなくハワイを離れた。実父もアンさんも亡くなっており、養子計画が実際にあったかどうかは不明。(共同)

 <藤森注・・・・・この記事の内容は、私のように「深層心理」を専門にする人間にとっては、極めて重要な意味を含んでいます。私の推測では、移民当局や大学の心配は妥当・・・・・というより「正解」だと思います。「脚本分析」の中でも取り上げましたが、オバマは両親から「見捨てられた」と思っています。
さらには、移民局に文書が残されています。その上、実父はハーバード大学留学後に生地のケニアに帰国しています。実母の両親はケニア人の黒人と結婚したことを残念がっています。つまり、望まれない結婚だったのです。そして、事実、離婚しています。
オバマは少年のころアイデンティティに悩み、ドラッグに手を出しています>

●(8)平成23年10月5日、日刊ゲンダイ

 <オバマ「私は負け犬」>

 <大統領の劣勢認める>

 オバマ米大統領は3日、ABCテレビとのインタビューで、来年の大統領選に関し、経済問題で劣勢に経たされていることを認め、共和党から選ばれる対抗馬に対して自身が「負け犬」の立場にあると語った。

 ABCとワシントン・ポスト紙が同日公表した世論調査では、オバマ大統領の再選を予測する人は37%にとどまり、オバマ氏が1期限りの大統領になるとの回答が55%に上った。

 これについて、「負け犬の立場にあると思うか」と問われた大統領は「もちろん」と即答。「負け犬になるのは慣れている」と語った。(時事)

藤森注・・・・・これもオバマの性格傾向を如実に表しています。私の人生も負けだらけですが、負け犬には慣れないですね。それでも私の場合は、「いい思い」をしたことが無い分、多少は慣れているかもしれません。
しかし、オバマは人生の前半は
最悪、人生の後半は、遣ること為すことが大成功の連続、やがて世界一の大統領になり、世界一のノーベル賞を受賞しています。慣れているどころか、ダメージは計り知れないはずです。
オバマは
アイデンティティに苦しみ、ドラッグにまで手を出しています。今後の人生の「内面の悲惨さ」は想像を絶するものがあるように思えてなりません。これだけ情報が豊富にあれば、私にはかなりの予想ができます。
人間というものは一生を考えたならば、自分の
「身の丈」に合った人生が一番ですが、若いときは、これが一番難しいことかもわかりません。>

●(9)「脚本分析・オバマ大統領は大丈夫か」については以上です。
 次に、「&TPP」の部分に移ります。  「TPP」の問題は、「脚本分析・オバマ大統領は大丈夫か」の内容(意味合い)に負うところが大であると、私(藤森)は思っていますので、以上の内容を十分に理解されることが重要です。  日高氏の「アメリカの歴史的危機で円・ドルはどうなる」の中に、次のような文章があります。

 <<<つまり、アメリカのドルの有効性と利便性がドルを基軸通貨にしているというわけだが、このドルに対する信任が薄らいできたのはオバマ大統領のせいである。オバマ大統領があまりにも多くの紙幣を印刷し、しかもアメリカ経済を拡大することに失敗したからである。>>>

 <<<ルーズベルト大統領は、ニューディール政策で有名だが、彼が行なった政策の中で最も効果があったのは、金本位制の廃止だった。ルーズベルト大統領は、ニューディールと呼ばれる、公共投資と社会福祉を混合させた積極経済政策によってアメリカを不況から立ち直らせたといわれる。だが実際には、ニューディールではなく第二次世界大戦が、アメリカ経済を立ち直らせたのである。>>>

 <<<フランクリン・ルーズベルトは日本を戦争に誘い込み、戦争という、とてつもなく大きな浪費経済を強行し、アメリカの豊かな資源を惜しげもなく使って、自らの政治的な意図を成功させた大統領だった。戦争という国家的な大事業が、金本位制から脱却した国家の紙幣政策によって実行されたのである。

 かくしてルーズベルト大統領は、歴史上に不滅の名前を残すことができたが、登場した時「フランクリン・ルーズベルト大統領のようになりたい」と言ったオバマ大統領は、第二のルーズベルトになりそこねた。ニューディール政策を真似て、公共土木事業や福祉政策に資金を注ぎ込んだが、経済は回復せず、失業者も減らない。>>>

●(10)不思議にも「符号」が一致しませんか。

 ルーズベルト大統領が日本を戦争に誘い込んだのは有名な話です。「真珠湾攻撃」を知っていてわざと攻撃させ、それを口実に反撃する作戦だったようです。ただし、あまりにも見事な攻撃で、被害が甚大過ぎたのは誤算だったようですが。

 さて、「フランクリン・ルーズベルト大統領のようになりたい」と言って登場したオバマ大統領は、今、やはり、日本を戦争に誘い込もうとしています。日本の富を収奪しようとする「貿易戦争」です。

 しかも、オバマ大統領は<四面楚歌に破れかぶれ>の心理状態です。政治的、外交的に音痴な野田総理大臣を脅かすことは、ほとんど「赤子の手」をひねる程度のものでしょう。

 その証拠に、喜び勇んで「TPP交渉参加に向けた協議に入る」と言ったにも関わらず、オブザーバーとしてさえも「TPP会議」に参加させてもらえませんでした。さらに「譲歩」させるために「ビンタ」を一発喰らわせたと解釈できるのではないでしょうか。
もうひとつの証拠として、野田首相がオバマ大統領に表明した内容をわざと誤訳(?)して発表しました。

 それは、「大統領は全ての物品およびサービスを貿易自由化交渉のテーブルに乗せるとの野田首相の発言を歓迎した」とホワイトハウスが発表した。
外務省は同日夜、「そのような発言をした
事実はない」と否定するコメントを出したが、アーネスト副報道官は記者会見で、「両首脳が非公開で行なった発言と野田首相や日本政府の公式見解に基づく発表」、ホワイトハウスは「発表を訂正する予定はない(11月16日、日刊ゲンダイ)。

 こうやって仕組まれた(?)報道が「規定路線」になるはず・・・・・あるいは、アメリカの本音で、「こういう方向でやれよ!分かったか!」という「脅しの往復ビンタ」だったと推測せざるを得ません。

 野田首相は「会談の場で、そのような発言はひとことも言っていない」と国会で、自民党の山本一太議員の質問に答えましたが、内外に正式に発表されたら、そんな言い訳は通用しません。日本の外交がいかに「乙女チック」であるかの証明が、またひとつなされました。

 ルーズベルト大統領を真似ているのですから、「真珠湾」を先制攻撃させて、日本を戦争に誘い込んだように、「TPP」という「貿易戦争」から絶対に逃がさないように、往復ビンタという脅しをかけてきたと解釈するとよく理解できる、と私(藤森)は思っています。

 それにしても「好い面の皮」ですね。これだけ「国論」を二分した大問題を政治決断したにも関わらず、日本ほどの大国に対しての、この「ケンモホロロ」の扱いは、惨め以外の何ものでもありません。つまり、「TPP」に参加することの「本質」がここに暗示されていると思うほうが自然ではないでしょか。
 個々の分野がどうのこうのというレベルの問題ではないはずです。

 11月14日の「TVタックル」で、「TPP」参加賛成派の民主党の松原仁衆院議員が「対等な日米関係なのだから、納得できなければ撤退すればいい」と発言しました。
 私(藤森)のように雑学程度の知識しか持っていない人間にとっても、この発言にはビックリ仰天です。わずか1行のこの発言の中に、巨大な間違いが2つもあります。

 ひとつは、「TPP」の協議に参加したら、途中で参加を止めることができないのが常識です。さらに、同じ「TVタックル」の中で、「TPP」賛成派の三宅久之氏が、松原議員の隣に座っていたにも関わらず、堪らずに発言しました。
 「日米関係は対等ではありません!!!」

 常々、アメリカの属国だとか、51番目の州だとか言われている日本が、アメリカと対等の関係だなどとテレビで発言できる国会議員、しかも新人ではありません。中堅の国会議員が存在するということが不思議でなりません。
 日本は、今までに、アメリカの「年次教書」に沿って、どれだけの要求に応じてきたのだろうか。

 以上の経緯をみても、野田首相や閣僚や民主党の有力な幹部が日本の富を差し出そうとしていると解釈する以外に無い・・・・・と思わざるを得ません。

●(11)さて、「TPP」は・・・・・。

①アメリカが置かれている政治的、経済的状況・・・・・基軸通貨としての信任が揺れている「ドル」であり、経済が最悪に近づいている現状など。

②オバマ大統領が置かれている「窮状」

③一国の最重要課題である「国防」をアメリカに委ねてきた脆弱性

④その結果として、「戦争」のような「修羅場」を意識の外に置きながら国家を繁栄させることができた。そういう最大の恩恵に浴することができた結果、国民性や国会議員の根性が地に堕ちてしまった。だから「国家観」や「国益」よりも、「政権の延命策」や「自己保身策」が優先するという大変醜い国になってしまった・・・・・つまり、「能天気」になってしまった。

⑤そのために、「外交能力(擬似戦争的能力)」が著しく低下した日本が、「TPP」に本気で取り組んでいるアメリカを相手に、まともな交渉ができるはずがない・・・・・と私(藤森)は思っています。

⑥そういう「能天気」な日本であるが故に、自民党の長期政権を許してきてしまいました。いかなる権力も必ず「腐敗」します。自民党が長期に政権を維持した結果、どこに最大の歪みが出ただろうか?
 私(藤森)は、「官僚」「大マスコミ(記者クラブ制度)」の2つに現れていると思っています。大マスコミが健全であれば、つまり、彼らが偉そうに言いたいであろう「社会の木鐸」であるならば、日本はもっともっと健全な国であったように思えてなりません。

 さらに、「官僚の腐敗」はもう極めたと言っても良いのではないでしょうか。幕末に「安政の大獄」があり、尊王攘夷運動を狂熱化させたように、勝次官を筆頭に官僚が調子に乗りすぎ、横暴を極めているために、改革派の「(元)官僚」や「国会議員」や「都道府県知事」などが大きく台頭してくることを期待したいです。

 今、「改革派の元官僚」たちが、大阪市長選で橋下前府知事を挙って応援しているらしい。詳しいことは分かりませんが、橋下市長が誕生すると、改革派の官僚が・・・・・そして国会議員たちも少しは「狂熱化」・・・つまり、活躍してくれるように思うのですが、甘いでしょうか。
 橋下氏は、自分を「独裁者」だと言っているそうですが、先頭を走る人間はそのくらいでなければ、全体を引っ張れないでしょう。

 以上の諸点から、私(藤森)は「TPP」に反対です。

 それらを証明する3つの記事を紹介します。

 次の(12)(13)は、いかに「TPP」が危険なものかを窺わせてくれます。

 さらに(14)では、約4年前の「週刊ポスト」の記事ですが、いかに「官僚」が日本を牛耳っているのかを理解するのに最も相応しいと思いますので、<「トピックス」第57回「小沢裁判と幕藩体制」の中の(7)>と併せてご覧いただければ幸いです。

●(12)平成23年20月8日、日刊ゲンダイ「日本経済、一歩先の真相」(高橋乗宣)

 <米国の大規模デモはパラダイムシフトのシンボルだ>

<略>

 今や米国の国内には、第一次産業しかない。ハイテクや軍需産業もあるにはあるが、部品や人材は世界から調達している。国内産業と呼べるものは、広大な土地から効率よく生み出される農畜産物ぐらいだ。3億人を超える国民が豊かさを享受するには物足りない。米国国税局によると、人口の15%にあたる4618万人が貧困にあえいでいるそうだ。
失業率は9%を超え、高止まりを続けている。不満の爆発は当然の流れだろう。

 <略>

 <藤森注・・・・・アメリカが日本から輸入する余地はあまりないようです。もちろん、ひとつ、ひとつを見れば、「TPP」に参加したほうが、より大きなビジネスができる会社は沢山あるでしょう。しかし、全体を見れば、アメリカは、あるいはオバマ政権は、日本に輸出攻勢をかけたり、「簡保」などの富を収奪したいはずです>

●(13)平成23年10月15日、夕刊フジ「鈴木棟一の風雲永田町」

 <田中康夫「TPPはブロック経済」>

 TPP参加反対の急先鋒は新党日本の田中康夫氏。13日、こう論じた。
 「TPPは自由貿易でなく、時代錯誤の保護貿易であり、ブロック経済だ」
 その論拠は。

 「日本も加わって10カ国になると、GDPの7割が米国、21%が日本、豪州4・3%で残り4・2%が他の7カ国。米国主体の、米国だけが1人勝ちする米連邦をつくろうとしている」
 米、日、豪を除くと小国ばかりだ。

 「初め4カ国が集まった。シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリ。シンガポールは1次、2次、3次産品を全部輸入しているのでTPPをやっても痛くもかゆくもない。他の3カ国は1次産品の輸出国。他国がたくさん買ってくれればハッピーだ。米国の隣国のカナダ、メキシコが不参加(藤森注・最近参加を表明している)」。日本の隣の中国、韓国、台湾も。4大新興国のロシア、インド、ブラジル、中国、それにEUももちろん入らない」

 オバマ米大統領の戦略は。
 「昨年11月の横浜でのAPEC演説にすべて出ている。①米国は今後5年で輸出を倍増させる国家輸出戦略を進める②アジア地域への輸出を増やしたい③巨額の貿易赤字がある国(日本など)は輸出への不健全な依存をやめ内需拡大策をとるべきだ。いかなる国も米国に輸出さえすれば、経済的に繁栄できると考えるべきではない・・・。オバマは輸出振興はするが、輸入はしない、と言っているのだ」

 日本の立場は。
 「関税ゼロの“聖域なき自由化”に困惑している。非関税障壁を取っ払え、という。医療、電波、通信、保険、金融、公共入札。ドーハランドがうまくいかなかったのに、急に飛び乗るのか」
 バスに乗り遅れるな、との声がある。

 <途中では抜けられない>

 「セットメニューは日本にとって不利。お隣の韓国はコメを例外とするFTA(自由貿易協定)を米国と結んだ。外務省や経産省に、なぜ米国とFTAをやらないのか、と聞くと『米国がイエスと言ってくれない』と。外交は韓国の方が一枚上手だ」
 交渉に加わって途中で降りる手は。

 「玄葉外相も『条件が合わないから抜けるとは簡単には言えない』と会見した。例えは悪いが、賭けマージャンでレートが高いから途中で抜けるというわけにはいかない。外交で『とりあえず』はないのだ。」
 (政治評論家)

●(14)平成20年1月25日、週刊ポスト<短期集中連載・「役人天国ニッポン」解体新書>(武冨薫・ジャーナリストと本誌取材班)(最終回)

 <「官僚は大臣より偉い!」>

 <閣議さえ支配する「主権在官」の構造>

 

 ・・・・・いかにして事務次官は政策決定への「拒否」という特権を手にしたか 選挙で国民に選ばれた国会議員や、首相に任命された大臣たちまでもが霞が関の役人のいいなり。政治主導での「改革」が繰り返し叫ばれてきたが、官僚たちは巧みな抵抗を続け、握った権力を決して離そうとはしなかった。「主権在官」――それがこの国の真の姿だ。

 <総理がいなくても閣議はできる>

 自民党で長く行政改革に携わってきた町村派のベテラン議員は、福田康夫氏の一言に耳を疑った。
 「総理大臣に閣議の発言権なんか与えるからこんなことになるんだ」

 05年夏、小泉純一郎・首相(当時)の郵政民営化への賛否を巡って自民党内が真っ二つに割れた際に、反対派議員を説得に来た福田氏は、「どうして小泉首相を止められないのか」という問いに不機嫌になってそう答えた。
 郵政民営化法案はその年の通常国会で自民党の大量造反を招いていったん否決され、小泉首相は解散・総選挙に踏み切り、反対派に刺客候補を差し向けて大勝したことは記憶に新しい。

 なぜ、小泉首相は自民党内や霞ヶ関に反対が強かった郵政民営化を強行できたのか。ひとつの法改正が伏線になっている。
 「官僚主導から政治主導へ」を合い言葉に99年に内閣法が改正され、第4条に、
〈内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる〉
 と、盛り込まれた。

 逆にいえば、それまでは政府の最高意思決定機関である閣議に、総理大臣が政策を提案できるという規程はどこにもなかった。閣議は実質的に官僚に支配されてきたのである。小泉首相は「内閣法4条」をテコに、郵政民営化問題で一度はそこに風穴をあけた。
 「当時、官房長官を辞任していた福田さんは、そうした政治主導に否定的だった。その福田さんが総理になって、官僚主導の政治を変えることができるのか疑問がある」(前出のベテラン議員)

 ワンマンといわれた小泉氏でも、霞が関と戦うための《伝家の宝刀》ともいえる4条を抜いたのは郵政公社の民営化の時だけだった。その後も閣議の官僚支配の実態はほとんど変わっていない。
 定例閣議は毎週火曜日と金曜日の朝8時から開かれるが、議題はすべて前日に開催される事務次官会議で決められる。同会議は満場一致の慣例があり、一人でも反対すれば、その政策は閣議に提案されない。
 ちょうど国連の安全保障理事会で米、英、仏、露、中の5か国が拒否権を持つように、1府13省庁の事務次官14人(警察庁と金融庁は長官)は国の政策決定に事実上の「拒否権」を持っているに等しい。

 一方、大臣は次官の上司にもかかわらず、閣議の「サイン係」に過ぎないというのが実情だ。
 小泉内閣当時の閣僚経験者の一人は明かす。
「閣議の席で大臣は事務次官会議を経て各省から提出される法案などの書類に順番に『花押』とよばれる署名をするのに追われる。閣議案件が改めて議論されることはない」
 その事務次官会議を主宰するのが霞が関官僚のトップにいる事務の官房副長官(現在は二橋正弘・元自治事務次官)だ。

 <国会質疑は官僚の「自作自演」>

 事務次官会議に逆らった総理大臣はどうなるか。好例がある。
 昨年3月27日、安倍晋三・首相(当時)は江田憲司・代議士が提出した官僚OBへの天下り斡旋についての質問主意書に対して「国民の目から見て、押し付け的なものも含まれている」という答弁書を閣議決定した。

 その前日の事務次官会議は紛糾した。当時の漆間厳・警察庁長官、藤井秀人・財務事務次官、北畑隆生・経済産業事務次官らが答弁書の内容に強く反対し、閣議に提出しない方針を決めたのだ。だが、安倍首相は報告を受けると、
 「事務次官会議なんて法律のどこにも規定されていない単なる連絡機関だ。方針通り閣議決定する」
 と、一蹴して天下り規制を推進したのである。

 安倍政権の命運はそれを機に一変した。松岡利勝・元農水相の自殺などの閣僚スキャンダルが相次ぎ、現在まで続く「消えた年金問題」が発覚、参院選に大敗し、退陣に追い込まれたのである。
 「あの答弁書以来、霞が関は安倍内閣の政策にサボタージュを決め込み、閣僚のスキャンダルが流された痕跡はある。官僚社会の報復が安倍政権の寿命を縮めたといえるでしょう」
 元通産官僚で橋本内閣の総理主席秘書官を務めた江田代議士はそう見る。
 行政府だけではない。国会も霞が関にコントロールされている。

 福田政権発足間もない昨年10月2日、衆議院第二議員会館地下1階の会議室の前に100人以上の官僚が押しかけ、騒然としていた。
 集まっていた官僚の1人が声を荒げる。
 「急げといわれても困る。何人順番を待っていると思ってるんだ。そちらに報告できるのはいつになるかわからない」
 本省の担当者からの催促電話に、携帯で怒鳴り合う声があちこちに響いていた。

 喧騒の理由は翌日に予定されていた民主党の長妻昭・代議士の代表質問である。どんな爆弾質問が出るのかを探る「質問取り」のために各省から官僚が派遣されていたのだった。
 代表質問で長妻氏は福田首相に93項目の質問をぶつけたが、役所側は国会質疑の前には、総理や大臣が答弁に窮したり、役所の方針と違うことをいわないように答弁書を作る。
 「そのために国会中は毎日霞が関の役人2000人が徹夜する」(渡辺喜美・行革担当相)という。

 福田首相も答弁書を手に、のらりくらりと長妻質問をはぐらかした。
 与党議員の質問になると完全に官僚の自作自演。
 「委員会の前に役人を呼び、『2つ3つ質問を持ってきてくれ』と伝えると、翌日には質問書と答弁書ができてくる」(自民党の1年生議員)
 まるで国会質疑の自動販売機ではないか。

 かつて自由党と連立を組んだ小渕内閣は、国会を与野党の政治家の政策論争の場に変えるという方針を掲げ、副大臣や政務官の新設と、官僚が大臣に代わって答弁する政府委員制度の廃止を決めた。
 だが、政治家同士の政策論争が実現するどころか、現在も国会では大臣答弁を役人が作り、答えられない時は役人が「政府参考人」として助け舟を出す。官僚支配はびくともしなかったのだ。

 <議員の「生殺与奪権」をも握る>

 閣議を支配し、国会を操る官僚は、役所の味方になる「族議員」と呼ばれる親衛隊政治家を養成してきた。
 地元に公共事業を増やすのが政治家の力とされ、票も伸びる。そのことを熟知する官僚たちは、大臣や副大臣、政務官が就任すると、その議員の地元にドカンと予算をつけて取り込みをはかる。相場は“大臣1人100億円”といわれる。

 野田聖子氏が小渕内閣の郵政大臣当時、選挙区であるJR岐阜駅前に旧郵政省の『ぱるるプラザ岐阜』が誘致された。総事業費108億円(01年完成)だった。野田氏は郵政族の看板議員として頭角を現わし、小泉内閣の郵政民営化方針にも、役所側に立って強硬に反対した。
 ところが、役所は族議員が力を持ちすぎていうことをきかなくなったり、逆に役に立たないとわかると簡単に切り捨てる。野田氏が郵政民営化の攻防に敗れて自民党離党に追い込まれると、郵政公社は赤字続きだったぱるるプラザ岐阜をオープンからわずか5年後の06年に閉館し、岐阜市にわずか10億円で売却したのである。

 もっと露骨な工作を仕掛けられたのが鈴木宗男氏だろう。
 自民党外交族の実力者だった鈴木氏は、外務省を「伏魔殿」と呼んで歴代次官を更迭した田中真紀子・外相とのバトルを演じた。が、その過程で外務省から鈴木氏がロシア側と日本政府の方針とは違う北方領土の2島返還交渉を行なっていたことを示す内部文書が流出し、それを機に鈴木批判が一気に高まった。

 鈴木氏は林野事業をめぐる収賄容疑で逮捕(公判中)されるが、その後、流出資料は目の上のたんこぶだった鈴木氏を失脚させるための外務省内で改竄(かいざん)された疑いが強いことが判明した。外務官僚は機密費疑惑の解明に乗り出そうとした田中外相と、力をつけすぎた鈴木氏を戦わせて相次いで失脚させた。
 「族議員」になれば、役所から予算というアメを与えられるが、同時に生殺与奪の権を握られるのである。

 人事院はこの夏、民間のサラリーマンがサービス残業に苦しめられている中で、公務員の労働時間を8時間から「7時間45分」に短縮する勧告を出すことを検討している。働かない役人がまた増えるのだ。
 そうした役人のお手盛り特権を拝するために、これまで「政治主導」が叫ばれてきたのではないか。鈴木内閣の土光臨調(※)以来、歴代内閣は足掛け30年にわたって行政改革を掲げてきた。しかし、行政府と立法府を支配する官僚が高給と生涯保障の天下り特権を手放すことはなく、改革を骨抜きにし、あるいはそれを逆手にとって今も天下り先を増殖させている。
 前出・江田氏は「天下り規制も首相が決めたことだから官僚は一応従う。しかし彼らは都合よく骨抜きすることに長けている」と懸念する。
 厄人天国ニッポン――このままではこの国は400万人の公務員に食い潰される。


※土光臨調/1981年に発足した第二次臨時行政調査会の通称。会長を務めたのが経団連名誉会長の土光敏夫氏だったことから土光臨調と呼ばれた。「増税なき財政再建」を目指し、国鉄、電電、専売の3公社民営化を答申するなどし、行政改革のさきがけとされている

 ●(15)さて、以下の詳細は、11月30日の「トピックス」に回しますが、結論から言いますと、「TPP」は、アメリカの現状、過去の日米関係や、野田政権の国家観の無さ、「外交音痴」などを見ると、日本の富をアメリカが収奪するために利用されると思っています。個々の分野の損得をいくら議論しても意味がないものと、私(藤森)は思っています。

 そのように言うと多くの人は、「それでは日本は今のままでいいのか?」とおっしゃる。

 それは全く違います。日本は「大改革」する必要があります。今や「幕末」とソックリになってきたのではないでしょうか。詳細は「トピックス」に回しますが、幕末のお粗末な官僚が、お粗末な外交をしたために、どれほど明治政府が苦労したか。歴史の天才・井沢元彦氏がそのあたりを喝破しています。

 今の民主党・野田政権にまともな外交能力があるとはとても思えません。その政権が「TPP」に参加することは、アメリカにいいようにやられてしまうでしょう。もうすでに惨めな思いをしています。

 ではどうしたら良いのか。当然、「農業改革」は断行すべきです。また、電力会社の「発電と送電」の分離や「年金問題」「官界の大改革」「記者クラブ制度の廃止」・・・・・などが徹底的に必要です。

 そのために「剛腕」は必要不可欠でしょう。
 今、国会でも「仕分け」に取り組んでいますが、今の日本を浦賀に「ペリー来航(TPP)」した時期に見立てる必要があります。そうすると10年、最大限15年で明治維新くらいの大改革が必要でしょう。
 それを考えると、政治家の意識は余りにも低すぎる。今の「10倍の規模」を、「10倍のスピード」で仕上げないと「ゆで蛙」になるはずです。
 多分、日本の政治家、特に民主党の「松下政経塾」出身や左翼系国会議員のような「能天気政治家」が中心にいる限り、日本の未来は無いでしょう。
 松下政経塾は、第1回の卒業生で、もうすでに「アホ塾」が証明されてしまいました。ただ、演説がうまかっただけで、故・松下幸之助氏の単なる道楽塾に過ぎなかったことを一期生の一番優秀な生徒が証明しているのです。次の「総理候補」ナンバーワンが「口先番長」です。

 そして、それらの連中が日本を沈没させようとしています。1人の金持ちの道楽人間が、道楽で創った「政経塾」が。
 彼らは、間違ってできた人間ではなく、「松下政経塾」の存在そのものが腐っているから、非常時の日本に、特に民主党に大量生産されたのです。

く文責:藤森弘司>

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