2009年8月15日 第85回「今月の言葉」
●(1)朝日新聞に掲載された、ドビルパン仏前首相のインタビューがすばらしいので、全文を下記に掲載します。 彼の考え方は、一人の人間の「成長(自己成長)」に通じるものがあります。下記のインタビュー記事の後に、私たちが、いろいろな課題に直面して、それを達成していくプロセスをダブらせて、解説してみたいと思います。 まずは、今年の2月、読売新聞に掲載された全文をご覧ください。 |
○(2)読売新聞、平成21年2月3日「この危機 文明の転換期」
<ドビルパン前仏首相インタビュー> <世界の共存 正義の理念こそ必要> ・・・・・どのように「正義」を新理念として実現させますか。 |
○(3)<イラク戦 仏は「ノン」通した>
・・・・・仏外相としてイラク戦争の回避に動いた時、正義は通用すると思っていましたか。 ・・・・・当時、いつ「戦争は避けられない」と思いましたか。 |
○(4)<オバマの米国 協力の時代へ>
・・・・・米国にオバマ新大統領が誕生した意味は何でしょう。 ・・・・・米国の単独行動主義も終わりますか。 |
○(5)<日本と中国 未来築く関係を> ・・・・・イラク戦争で、日本は米国に追従しました。 いや、政治的歴史的に難しい日本の立場はよく理解していた。重要なのは、当時の経験から教訓を引き出すことだ。 伝統を維持しつつ近代化を達成した日本は今も活力を保っており、私にとって一つのモデルだ。間違いなく世界は日本から多くを学ぶことができる。 また、日本は最も大きな変化を迎える地域の中心に位置している。アジアは、何世紀もの繁栄の後に衰退期を迎え、今再び巨大な能力を備えて浮上しつつある。国際社会が中国と関係を持つ際、日本の役割は極めて重要だ。日本が中国と未来に向けた関係を築くことができれば、この2国で多くの問題を解決できる。地域のリーダーシップを発揮して欲しい。 ・・・・・地域のリーダーに必要な資質は何でしょう。 歴史と地理、文化を踏まえつつも、新しい関係を築く自由な発想だ。伝統と新しさ、正当性と独創性といった相反するものの融合だ。これら二つの間の境界を乗り越える能力こそ、世界が必要としているものだ。 |
●(6)さて、上記のインタビューの中から、私(藤森)が中心テーマとしている「自己成長」に関係していると思われるものを拾い出してみます。 まず、最初の枠の中からピックアップしてみます。 <<新たな理念は何か。私は「正義」であるべきだと考える。>> 家庭の中で、何か、問題が発生したとします。例えば、子どもが「不登校」になった、「ウツ」になった、「拒食症」「過食症」、或いは「イジメの問題」、「夫婦関係の歪み」等などが発生したとします。 このときに、「新たな理念」、つまり、今まで、その家庭の中で支配していた「理念」、その「理念」から発生した歪みを是正するための「新たな理念」が必要になります。多くの親御さんは、従来の「理念(価値観)」を維持したまま、発生した「歪み」を是正しようとします。そのため、「歪み」はますます増幅されてしまいます。 その家庭の中に潜んでいる「歪んだ理念(歪んだ価値観)」は何か、それに気づいて、「新たな理念」を構築することが重要です。 そして、その新たな理念は、もちろん、抽象的ですが、「正義」です。「歪んだ理念」を正すこと、つまりそれは「正義」です。 <<不正義をただすことで「身勝手な力が世界を支配する時代は終わった」と内外に示すことができる。>> ある家庭に、問題が発生した場合だけでなく、問題が表面化していなくても、その「源(影)」は、存在するのですが、私たちは表面化しないと、「潜んでいる歪み」に気づくことはできません。 <<紛争解決能力を持つ軍隊も国連に必要だ。>> 軍隊が必要です。もちろん、家庭ですから「軍隊」ではありません。「腕力」「暴力」が必要です。もちろん、「正義の腕力」、「正義の暴力」です。長年の癖を修正するのに、話し合いなどではとても解決しません。どうしても、「正義の腕力」「正義の暴力」が必要になります。それは国連でも同じはずで、「腕力」「暴力」の裏づけの無い国連の調停は、踏みにじられる可能性が大きいものです。 現実の国際紛争は、軍隊の出動無しにはどうにもならないでしょう。仮に、軍隊が出動しなくても、軍事力の裏づけが必要です。私(藤森)は、軍隊が無くても良い地球になってほしいと願っていますが、現実には、軍事力が無くては、つまり丸腰外交では通じないでしょう。日本が、アメリカのサイフ、51番目の州などと言われるのも、アメリカの軍事力の庇護の下にあるからではないでしょうか。 |
●(7)<<戦争が起きた時、それが国際的なお墨付きを得たものではないことを明確にする目的もあった。>>
子どもの身勝手な行動を、今すぐにどうすることもできなくても、それを「黙認」しているのではない。あくまでもいけないものはいけない、という姿勢を貫く必要があります。 <<世界を分断する争いにしてはならなかった。>> 世界を分断・・・・・子どもは、夫婦(両親)の分断、つまり仲たがいが一番辛いものです。私たちは、ついつい、子どもの前で夫婦喧嘩をしてしまいますが、子どもにとって、これはとても辛いものです。 <<人生と歴史の中では「ノン」と言える時がなくてはならない。あの時フランスはその使命を担っていた。>> 「ダメなものは、ダメ!!!」と、頑固なほど、「ダメだ」と主張する必要があるときがあるものです。そして、その使命を担っているのが、父親です。もちろん、正しい場面である必要があることは、当然ですが、その場面であるか否かを判断する能力が無いとき、安全策を取って、優しい父親という軟弱な位置に甘んじてしまうものです。戦後のそれも最近の日本は、それが目に余るようになってきました。 |
●(8)<<差別と格差を乗り越える力の象徴だ。恐怖と困難に直面した時に人びとを結集する能力>>
<差別と格差>私たちは、差別や格差など家庭には無いと思いがちですが、じつは、大いにあるものです。それが「不正義」で、家庭の中にある「差別や格差」を発見することが重要です。その差別は、「兄弟間」であったり、「親子間」であたり、「夫婦間」であったりです。 <<恐怖と困難に直面した時に人びとを結集する能力>> <<米国とイランの対話はきっと成果を生む。>> さらにこじつけっぽいですが、子どもが問題(不登校やウツなど)を起こしたときは、米国とイランならぬ、仲の悪い夫と妻が真剣に話し合うことが必要です。そこに「不正義」が存在していることに気づくはずです。 家庭の中には、その家庭なりの<<「正義」の存在が不可欠>>です。 それにしても、日本の政治家とはかなり様子が違いますね。 ●(9)平成21年8月16日(日)午後9時からの「NHKスペシャル」で、「気骨の判決」という番組がありました。読売新聞の「試写室」を転載させていただきます。 <戦時下に冷静な判断> 「翼賛選挙」と呼ばれた戦時中の総選挙に無効判決を下した裁判官(吉田久)の葛藤を描く。 <藤森注・・・・・正義ではないでしょうか> |
<文責:藤森弘司>
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