2009年5月15日第82回「今月の言葉」「自分が跨いでいる枝を切ると?②」
投稿日 : 2018年3月8日
最終更新日時 : 2018年3月8日
投稿者 : k.fujimori
2009年5月15日 第82回「今月の言葉」
●(1)4月15日、第81回の続きですが、「自分が跨(また)いでいる枝を切ると?」は、2008年12月26日号の週刊ポスト「昼寝するお化け」の<枝はどこから切るべきか>から、私がズバリと言い切りました。
さて、前回(第81回)の最後に、井沢元彦氏の「逆説の日本史」をご紹介しましたが、その最後の部分を再録します。 <<現代の社会にたとえてまとめると、米沢藩の内情は次のようになる。
「営業収入は最盛期の八分の一の十五億円。しかし安定せず五億円しか入らない年度もある。しかし人員は一切リストラせず、経費、交際費は最盛期のまま。社員の給料は一律六十パーセントカットしたが、借金はトータルで六十億円はあって利息の支払いすらままならない。城や土地は幕府からの「預かり物」で売れない。特産品もろくなものがない。そのうえに赤字事業(お手伝い)を押しつけられた。この欠損は五億円以上だ――」
今と違うのは、この「社員」たちは自分たちの「給料」をカットされた分を、農民をしぼり上げることでカバーしようとした。これは農民から見れば「隣国は税率五十パーセントなのに、ウチは六十であり七十だ」ということになる。当然、逃散(ちょうさん:農業を放棄して逃亡)ということにもなる。残った者も「地獄」だ。
「社会更生法」があればいいが、そんなものは無い。こうした中、森平右衛門のような奸臣(かんしん)も出る。しかし、彼にもし言い分を聞けば「八方塞がりでどうしようもないじゃないか」と言ったかもしれない。その平右衛門が改革派に斬られた。重定はもう藩主を続けて行く気力がなくなり「領土返上」を決意したが、これは家中の大反対にあった。
そこで、かねてから養子にしていた鷹山にすべてを任せる形で隠居した。鷹山は、「平右衛門斬り」の首謀者でもあった、藩医の藁科松柏(わらしなしょうはく「貞祐・さだすけ」)の教育で、米沢藩の問題点をよく掌握していた。そこで藩主になってすぐに国元に「大倹約令」を伝えた。
ところが返ってきた反応は「そんなバカなことができるか」であった。>> |
●(2)<<返ってきた反応は「そんなバカなことができるか」であった。>>
この続きは紹介するまでも無い事ですので割愛しますが、皆さんは、内容がどんなにくだらないことか想像できることと思います。
上記のように、米沢藩は最盛期の八分の一になったのです。仮に月収500万円だとすると、その八分の一は63万円です。それでも月収500万円の生活をしているために実質的に財政が破綻しています。当然、財政が成り立つように切り詰めなければなりませんが、その「大倹約令」を「そんなバカなことができるか」です。
大倹約をしなければ、本体が倒れてしまいます。小学生でもわかる論理を、米沢藩のエリートたちは、「そんなバカなことができるか」と言うのです。つまり、自分が跨いでいる枝を切り落としても、本体の木に手をつけさせないという信じられないバカですね。でも実際はこういうことが巷に溢れています。
特に昨今の金融危機のような、米沢藩に近い状態になると、それが浮き出てきます。AIGの問題や、日本が沈没しそうだというのに、官僚の天下り禁止や組織の縮小問題などを骨抜きにすることなどにも現われています。
新聞をかなり賑わしましたので、多くの方がご存知かと思われますが、敢えて掲載したいと思います。 |
●(3)平成 21年3月17日、朝日新聞<天声人語>
<人間は欲に手足の付いたる物ぞかし>と、江戸時代の浮世草子の作家、井原西鶴は鋭く突いた。<世には銭ほど面白き物はなし>とも言っている。大阪の商家の生まれだけに、金銭をめぐる人の性(さが)を見る目は光っていた▼その西鶴も、金融危機の震源になった米国ウォール街の、この期に及んでの強欲ぶりには脱帽だろう。巨額の公的資金を受けて再建中の保険最大手AIGが、幹部らに計約440億円ものボーナスを支払うと米メディアが報じている▼公的資金は半端ではなく、あれやこれやで16兆円を超す。むろん税金だ。普通の神経なら粗衣粗食で失態を恥じるところだが、ウォール街流は違うらしい。賞与の最高額が6億円と聞けば、「欲に手足」ぶりも極まった感がある▼昨年9月、米政府は証券大手リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)を見捨てた。その翌日、AIGには救いの手を差し伸べた。「大きすぎてつぶせなかった」からだ。だが、溺(おぼ)れかけて公金という浮輪にすがるなら、それなりの節度が必要になる▼さすがに、米国内でも批判は強いそうだ。サマーズ国家経済会議議長は「この1年半で色々ひどいことが起きたが、これが最も言語道断」だと憤る。オバマ大統領も就任後、こうしたお手盛りを「恥」と難じていた。腹に据えかねているに違いない▼貸し手は常に借り手より記憶がいい、という。血税をつぎ込んだ企業を米社会はおいそれと忘れまい。AIGがそれに鈍感なら、今後の公金投入への支持は冷めて、米経済は手痛いしっぺ返しを食うはめになる。 |
●(4)平成21年3月18日、日刊ゲンダイ「盗人に追い銭、オバマも激怒」
<AIGの巨額ボーナス日本支社ではどうなのか>
破綻危機にある米保険大手AIGの幹部社員約400人に、2億2000万㌦(約216億円)ものボーナスが支給されたことが分かって、世界中で大ブーイングが起きている。さらに来年3月までに、2億3000万㌦(約225億円)が払われるという。狂気の沙汰だ。オバマ大統領も激怒して、支払い阻止を支持したのも当然だ。
AIG日本法人にも関係の子会社があるから、まさか、”恩恵”にあずかる日本人が何人かいるんじゃないのか。AIG日本法人に問い合わせたら、こんな答えが返ってきた。
「今回ボーナスを支給されたのは、米AIGの英国子会社『AIGファイナンシャル・プロダクツ』(AIGFP)の幹部社員。日本AIGグループの金融事業子会社とはまったく関係ありませんし、400人の中にも、日本人はひとりも含まれていません。今回の件では日本法人の社員たちの間でも、『本社のCEOすら年間給料1㌦で、ボーナスも返上しているのに、なんで彼らだけが……』と呆れる声が続出しています」(日本AIGブループ広報)
AIGFPは、金融危機の引き金となったデリバティブ商品を扱い、08年に405億㌦(約4兆円)もの損失を計上、AIGを破綻寸前に追い込んだ”札付き子会社”だ。それなのに幹部社員たちは、ブタ箱に放り込まれるどころか、ボーナス支給は、公的資金注入前に決まっていたと訴訟までちらつかせ、2年で1人平均1億1000万円、最高額で6億3700万円ものボーナスをふんだくった。AIGでは、こんな社員契約が当たり前だったのか。
「日本法人では、社員のボーナスは業績に応じて支払います。AIGFPのように、働く前から何年も先のボーナスが決まっているということはありません」(前出の広報)
メリルリンチ証券でも昨年12月に、幹部160人が総額4億4700万㌦(約438億円)ものボーナスを受け取っていた。アメリカの金融マンというのは、こんな盗人たけだけしい連中ばかりなのか。羊のような日本人が、カモにされ続けてきたのもうなずける。 |
●(5)平成21年3月20日、日刊ゲンダイ「米AIG幹部に上院議員がハァ?な苦言」
<“腹切りサムライ”と混同?>
公的資金で救済されながら「AIG」の幹部が億単位のボーナスをもらっていた問題。”強欲経営者”たちを巡り、米国は上を下への大騒ぎだが、上院議員が彼らに向けた発言がちょっとした波紋を呼んでいる。
「日本の経営者を見習って自殺しろ」
発言の主は、アイオワ州選出のチャールズ・グラスリー上院議員(75=共和党)。
地元のラジオ局のインタビューにこう話し、「日本の失敗した経営者なら、まず深々と頭を下げ、謝罪する。そしてその上で、辞任するか、自殺するものだ」と解説したというのだ。
この過激な発言の後、CNNやMSNBCといったTVのインタビューに真意を問われたグラスリー議員。「もちろん自殺して欲しいと思ってはいない。しかし、日本は社会の要求もあり、経営者は全責任を取る」と持論を展開した。
しかしこの話、日本人からすると、「えーっ」ではないか。
確かに2000年前後の金融危機では、経営破綻した日債銀の社長や旧そごうの副社長らが自殺している。が、その後の小泉・竹中路線で経営者の責任を問わず公的資金が注入された。責任を取って辞任するような潔い経営者だって少なくなっている。
日本=腹切りサムライのイメージが強すぎるようだ。 |
●(6)平成21年3月25日、日刊ゲンダイ「幹部73人はなぜ返還しないのか」
<米AIG巨額ボーナス事件>
<日本社会では考えられない米金融マンの強欲のうらにあるもの>
世界的ニュースになっている米保険最大大手「AIG」の仰天ボーナス事件。不可解なのは、総額210億円を受け取った幹部73人の神経だ。日本だったら、「破綻して国有化された企業の社員が、何が破格ボーナスだ」と非難され袋だたきにあったら、ギブアップするものだが、連中は知らんぷりだ。アメリカの金融マンの神経はどうなっているのか。
「幹部がもらったボーナスは、契約を交わした時点で発生していた権利。契約社会のアメリカでは『公的資金で救済されているのに』という”モラル”は通用しません。今後AIGや政府が控訴を起こし、裁判で決着しない限り、返還される可能性は極めて低いでしょう。誰かが善意で返せば、返還控訴全体が不利になる場合もあるから、仲間のことを思って、率先して返す者も出てこない。全員が”オレが真っ先に返す必要はない”と思っているのです」(海外金融業界にも詳しい株式評論家・大山巌氏)
米国系証券会社の元幹部はこう言う。
「AIGの幹部たちは、社外のディーラーやトレーダーも部下に抱えている。彼らは、高度な数式を使った『金融工学』で取引を手掛けるスペシャリスト。このスタッフをつなぎ留めておくには、カネがいるという事情があるのです」
複雑なデリバティブでAIGを儲けさせてきた幹部連中は、現在その損失処理の真っ最中だ。儲けさせてもらったAIGは結局、損失の尻ぬぐいも彼らにオンブに抱っこの状態そこに付け込まれているという。
「AIGのリディCEOも会議の公聴会で、『複雑な取引は理解も運用も難しいから、金融部門の社員は入れ替えられない』と認めたように、彼らがいないとニッチもサッチもいかないのです。それに幹部たちがライバル会社に移ることも恐れているから、余計強く出られないのです」(大山巌氏=前出)
だからといって、民衆は納得しない。17兆円もの税金が投入されたAIGのデタラメに、怒りはエスカレートするばかりだ。幹部たちには脅迫状が送りつけられ、ついに最高額の6億1600万円(640万㌦)を受け取った金融商品部門の幹部が返還に応じたと、一部で報じられた。幹部の自宅への嫌がらせ”見学ツアー”も始まった。厚顔無恥のAIG幹部たちは、いつまで耐えられるか――。 |
●(7)2009年3月20日、朝日新聞「我々の手で処罰」「良心痛まぬか」
<政権揺さぶる高額賞与>
<AIG米公聴会>
巨額の税金投入で破綻(はたん)を免れた金融機関の当事者たちが高額ボーナスをもらうのは許せない――。米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)をめぐる混乱が、オバマ政権を揺るがしている。政治問題化した高額報酬は、今後の米国の危機対応をも左右しかねない。
(西崎香=ワシントン、丸石伸一=ニューヨーク、吉原弘樹)
「政府が対応できないのなら、我々の手で処罰するぞ」
そんな脅迫まがいの講義が相次ぎ、高額ボーナスをもらった幹部らの身の危険を感じるほどだと、AIGのエドワード・リディ会長兼最高経営責任者(CEO)は18日の米下院の公聴会で明かした。抗議のメールや電話は、米政府や会議にも殺到しているという。
「経済危機で職や家を失う人が増えているのに、高額ボーナスを受け取って良心は痛まないのだろうか」。議員たちは公聴会で「庶民の声」を代弁した。
ボーナスをもらったのは、米大手金融機関のなかでも断トツの総額約1733億㌦(約17兆円)の公的資金注入を受けたAIGの、その実質破綻の原因をつくった金融子会社の幹部たちだ。本来は事業失敗の責任を負わされるべき人たちともみられる。皮肉なことに、リディCEOはボーナス支給を撤回できない理由の一つに「有能な幹部をやめさせないこと」を挙げた。彼らは複雑な金融派生商品(デリバティブ)の専門家で、その商品が多額の損失の元凶になった。政府の救済後、損失を最小限に抑えるためにデリバティブの契約解消を進めているが、その作業に彼らが必要だというのだ。
危機の深刻化前なら、金融マンの高額ボーナスは当たり前だった。だが、昨秋の公的資金の注入後、金融大手のCEOたちは軒並み「年俸1㌦」を受け入れ、幹部たちの報酬カットも打ち出した。破格の待遇が過去のものとなりっつつある中で、AIG問題はかつての「ウォール街の強欲さ」を改めて示した。
<財務長官の辞任要求も最高額受給の幹部、返金>
強まる批判の矛先はオバマ政権にも向かう。特にガイドナー財務長官に対しては「辞任するか罷免されるべきだ」(野党共和党のマック下院議員)と辞任要求も出始めた。
AIGを直接監視しているのはニューヨーク連邦準備銀行だ。ガイドナー氏は長官就任前、そのニューヨーク連銀総裁を務めていた。
オバマ大統領は18日、「ガイドナーには全幅の信頼を寄せている」と記者団に反論。早急に決着させる考えだ。
「(支給には)法的義務がある」(リディCEO)とされるボーナスをどうやって返却させるのか。検討されているのは①ボーナス受給者への課税を強化する②高額報酬の制限条項を盛り込んだ金融救済関連法にもとづき返却を迫る③投入を決めた公的資金から支給額を差し引く④訴訟で返却請求する――などだ。
課税強化は議会が検討。AIGと名指しはしないが、政府保有の株式比率などで対象を同社に事実上特定。受給者に該当するように、一定額を超える臨時収入があった人の所得に追加課税する案で、ほぼ全額回収を狙う。ただ、受給者の氏名特定にはAIGの協力が必要なうえ、英国など外国の居住者が目立ち徴税権が及ばない可能性がある。
オバマ政権は議会の動きをにらみつつ、②~④を検討。②は条件となる「公共利益」に反したかどうかが認定しにくい、③は受給者からの返却につながらない可能性があるうえ、公的資金の目減りで追加支援を迫られかねない、④は裁判費用がかかりすぎる、とそれぞれ問題がある。
リディCEOは18日、「ボーナスで10万㌦(約960万円)以上もらった従業員に対して、少なくとも半分は返却するよう求めた。一部は全額返却を申し出た」と発言。19日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙によると、最高額を受け取ったダグラス・ポーリング執行副社長(48)が返金に応じた。手詰まりに近い政府も立法措置などをちらつかせながら、返却を迫るしかなくなる可能性がある。
オバマ政権は、来月には主要銀行への資本注入に向けた準備を本格化させるシナリオを描く。金融救済法で認められた公的資金を使い切れば、7500億㌦の追加資金を議会に求めることも想定している。しかしボーナス問題で噴出した金融救済への不満は政権への逆風になっており、極めて難航しそうだ。
<略>
<日本でも世論反発>
金融機関の経営陣の報酬は「失われた10年」の日本でも大きな問題になった。国民の反発をよべば公的資金の活用は難しくなるが、事前にルールがなければいったん払われた報酬を返還させるのが困難なことも、日本の経験は示す。
公的資金6850億円を投じた住専(住宅金融専門会社)問題。96年の国会では経営陣への退職慰労金が批判された。「戻すか戻さないかは第一義的に本人の心の問題」。橋本首相(当時)は苦しい答弁に終始した。国民の反発の強さを目の当たりにし、政府・与党は公的資金の活用に尻込み、97年11月に山一証券などが破綻する危機を招いた。
政府は98年10月~12月、日本長期信用銀行と日本債権信用銀行の一時国有化に乗り出したが、ここでも両行の旧経営陣に支払われた退職慰労金が批判を浴びた。
柳沢金融相(当時)は退職慰労金は功労金の性格を持つと強調。「経営を悪くして何が功労なのか」と返還を求めた。だが、長銀では計約19億円のうち1億5220万円が返されただけだった。
02年10月に竹中金融相(当時)が打ち出した金融再生プログラムでは、公的資金注入行への監督を強め、ボーナス支給のルールも作った。実質国有化されたりそなグループでは、辞任した持ち株会社と傘下銀行の首脳に慰労金を出さず、他の退任取締役は返上した。 |
●(8)平成21年5月9日、日刊ゲンダイ「日本経済、一歩先の真相」(高橋乗宣・相愛大学学長著)
<米国の自動車労組に匹敵する日本の公務員組合>
破綻した米自動車大手クリスラーの純損失が、08年は168億ドル(約1兆6800億円)に達していたことが明らかになった。同時に159億ドル(約1兆5900億円)の債務超過に陥っていたことも判明した。
何とも、気が遠くなるような数字である。オバマ大統領は、ヘッジファンドなど一部債権者が最後まで抵抗したことが法的整理を招いた原因とした。だが、債権者の抵抗がなかったとしても、破綻は時間の問題だったのだ。それほど経営は悪化していた。
破綻の元凶は、強すぎる労組にあるとされている。米国の産業別労組の中でも、全米自動車労組(UAW)の力は最強だ。今回の破綻劇でも、退職者向け医療費の会社負担を大幅に減額する見返りとして、UAWは新生クライスラー株の55%を取得することで合意した。クライスラーとの提携に踏み切る伊フィアットの持ち株は20%。両者が新体制で足並みを揃えられる保証はない。
いくら労組が頑張っても、会社が潰れると手も足も出ないのが普通である。そんな常識はUAWには通用しないらしい。
7日には、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が、7四半期連続の赤字となったことが明らかになった。すでに政府から154億ドル(約1兆5400億ドル)の融資を受けているが、赤字体質からの脱出は不可能に近いだろう。追加支援を受けるには追加リストラが必要だが、ここでも労組が強硬に反対しているようだ。
<自らの利益追求だけでは許されない>
日本では、労組はあってないようなものになっている。春闘の交渉は「えっ、やったの?」という感じで終わった。今年、ストライキを実行したのは、航空会社のパイロットぐらいのもの。企業あっての組合との考えが浸透し、労使協調がが当たり前になっている。
ただ、職場を失う心配のない公務員の組合は違う。唯一、日本で存在感を維持している。はたして彼らは、行政のサービス向上についてどう考えているのだろうか。
国と地方はベラボーな赤字を抱え、リストラが急務になっている。一方で、医療や介護など行政に力を入れてもらわなければならない仕事は山のようにある。そんな中、自分たちの待遇向上だけを追求することは許されない。
組合が残り自治体が破綻では困るのだ。 |
●(9)平成21年2月20日、日刊ゲンダイ「わたり禁止を鼻で笑う“天下り役人どもの狡猾”」(フリージャーナリスト・堤和馬著)
<人事院総裁が守る“天下り・わたりの既得権”>
政府は公務員制度改革の一環として、キャリアの人事を内閣人事・行政管理局に一元化するための法案を3月に国会に上程しようとしている。これによって大幅に権限が削られる人事院が猛反発、国民には何が対立点なのかよくわからないが、霞ヶ関の官僚たちの喝采を浴びている。
人事院は世間的には知名度が低いが特別の役所だ。行政機構の中央省庁は国家行政組織法で設立されているが、人事院は国家公務員法を根拠として設立されている。国家公務員はストライキ権がないので、それを埋め合わせるため“雇用者”の政府とは一歩置いた「第三者機関」として設置され、給与や人事を所管するのだ。
人事院総裁は3人の人事官から選任される。1人は民間から起用するのが慣習のようになっているが、あとの2人は官僚OBが就く。天皇から認証を受ける認証官で、格の高い“役人”なのだ。国家公務員の給与や人事を決めるのだから、官僚OBの「指定席」というのもわかるような気がするが、実際には天下り・わたりポストのひとつになっているのが実情だ。
現在の谷公士総裁は郵政事務次官まで務めたバリバリのエリートで、退官後は財団法人の「マルチメディア振興センター」「郵便貯金振興会」「日本データ通信協会」の理事長を渡り歩き、04年に人事官となった。この間、公務員時代に退職金も含めて5億3040万円。退官後の給与・退職金の合計は約3億円で合計8億円以上の生涯収入だ。人事院総裁としての年俸は2611万円。各省大臣と同額である。
<人事官はエリート官僚と大マスコミOBの指定席>
年収700万円の比較的恵まれた国家公務員が定年まで勤務しても、ノンキャリアなら生涯賃金はせいぜい3億円だ。谷総裁は国家公務員を代表して麻生内閣に抵抗しているように見えるが、実際は高級官僚の天下り・わたりという既得権を守ろうとしているだけである。
人事院の人事官はおいしい天下りポストだが、次官経験者のようなトップ官僚には「狭き門」という面白い現象がある。人事官は「その中の2人が同一の大学学部を卒業した者となることとなってはならない」という決まりがあるからだ。キャリア官僚の多くは「東大法学部卒」だからバッティングしてしまうのだ。
また、民間出身の人事官は、実は大手マスコミOBの「指定席」になっている。現在は日経新聞の元常務で、これまでに読売新聞2人、朝日・毎日・NHK・日経が1人ずつ就いている。これでは人事院の天下り追及などできるはずがない。
<藤森注・・・当時、自民党の有力閣僚が谷総裁に天下り問題で電話をしたときに、両者が電話で怒鳴りあったという報道がありましたが、自民党の有力閣僚に対してすら、大きな態度が取れるのはこういう理由からだったことがわかりました> |
●(10)平成21年5月13日、日刊ゲンダイ「それでも、この補正予算を通すのか!?」
<森元首相の地元に巨額の新幹線予算>
「過去最大の景気対策」をウリに、麻生政権が早期成立をもくろむ15兆円の09年度補正予算。
自公与党は13日にも衆院で強行採決するハラだが、冗談じゃない。民主党が「国営のマンガ喫茶だ」と批判した117億円の「メディア芸術総合センター」建設を筆頭に、その中身は壮大なバラマキ、途方もないムダ遣いのオンパレードなのだ。
<選挙大苦戦>
15兆円補正予算のデタラメが次々と明らかになっているが、ドサクサ紛れで、「整備新幹線」の事業費がアップしたことも見過ごせない。建設中の北陸新幹線(長野~金沢、総事業費1兆7900億年)などで、過去最高の1100億円が補正予算案に盛り込まれるj方針なのである。
「北陸新幹線」の開業予定は14年度。経済効果が出てくるのは5年程度も先の話で、「何が緊急経済対策だ」と言いたくなる。
しかも、予算付けの動機が不純だ。北陸新幹線といえば、民主党の美人新人候補に追い上げられている森元首相が積極的に絡む。
新幹線建設では地方が事業費の3分の1を負担することになっているが、森元首相は4月7日、新たな交付金で10分の1に軽減されるとの見通しを示した。財政難の自治体負担を軽くし、工事を急ピッチで進める狙いが見え隠れする。新幹線で得票を見込んでいるのは明らかだ。
地元民の評判もいまひとつ良くない。
「北陸新幹線の“売り”は『東京と金沢が2時間半』ですが、開業中の長野までの本数は1時間程度だから、金沢まで開通しても同程度が関の山。早期完成を喜ぶのは主要停車駅の金沢や富山ぐらいで、小松に延伸されても、さらに本数の少ない各停が止まるだけ。北陸本線の特急が少なくなる弊害の方が大きいと思います」
ちなみに北陸新幹線は、安上がりの「スーパー特急方式」(既存の線路を活用)だったが、森首相(当時)がフル規格に格上げした。
度重なる計画変更で、無駄になったトンネルの残骸を見て欲しい(写真略)。
こうして膨らんだ工事費を今回の緊急経済対策で穴埋めするわけだ。
国土交通省の役人は、自民党政治家とタッグを組み、道路と鉄道、空港を競うように造っている。二重三重投資だ。これが景気対策なんて、チャンチャラおかしい(取材協力・ジャーナリスト横田一) |
●(11)平成21年5月18日、日刊ゲンダイ「職業能力開発協会・本紙に開き直り」
<不正支出ゾロゾロ>
<宴会にコンパニオンは一般的です>
「福井県では宴席にコンパニオンを呼ぶのは普通なんです」・・・・・
公金を使った不正支出がゾロゾロ出てきた厚労省の所管法人「職業能力開発協会」。福井の協会は、宴席にコンパニオンを呼んでドンチャン騒ぎしていたことが発覚したが、本紙の取材にこう開き直ったから驚いた。
協会が05年までの4年間に開いた“コンパニオン宴会”14回に上る。役員だけが集まる会合にもコンパニオンを呼んでいたほか、2次会と称して、スナックで計80万円を使っていた幹部もいた。これら宴会につぎ込まれた公金は990万円。カネの出どころは国からの補助金、つまりはわれわれ国民の税金だ。それなのに、協会側はこう言い訳するのである。
「協会では総会や研修会後の意見交換のため、たびたび懇親会を開いています。会場はたいていホテルで、出席者の人数は多いときで80人くらい。ただ、福井のホテルは料理や酒を運ぶ従業員を大量に抱えているところは少ない。それで、コンパニオンに配膳の仕事を頼むのが一般的なんです。料金はコンパニオン1人につき、8000円から1万円程度(2時間)。多い日は8人のコンパニオンを呼んでいました。ごく普通のコンパニオンです」(事務局長)
<天下り官僚は月給94万円>
ア然というほかないが、デタラメをやっていたのは福井の協会だけじゃない。全国の協会を束ねる「中央職業能力協会」と、傘下8協会の不正支出額は総額5700万円。全国をシラミ潰しに調べれば、どれだけ不正額が膨れ上がるか、分かったものではないのだ。
「しかも、この協会には天下り官僚がゾロゾロです。中央協会の理事長は厚労省労基局長も務めた青木豊氏、常務理事の3人も厚労省出身です。理事長は月約94万円、常務理事は約80万円の高給をむさぼっている。ボーナスや諸手当を含めると、信じられない“破格の待遇”になります」(霞ヶ関事情痛)
麻生政権はこんな協会に、15兆円の補正予算のうち7000億円を基金として流そうとしている。舛添大臣は新型インフルエンザで大騒ぎする前に、この連中の“やりたい放題”に打つワクチンを考えた方がいい。 |
●(12)さて、これからが私(藤森)が一番言いたいことです。
アメリカの「AIG」や「GM」、「日本の政治や官僚の天下り」など、新聞を読めば読むほど、腹が立つやらおかしいやら、ほとんど理解不能なほど妙なことが多いものです。
しかし私たちは、他人のおかしさはよくわかるのですが、自分のことになるとなかなかわからないものです。
私(藤森)自身、若い頃(もちろん今でもかなり残っていますが)、典型的におかしな人間でしたので、私の若い頃に照らし合わせればよくわかることではありますが、カウンセリングをしていて、まさに「自分が跨いでいる枝を切る行為」をなかなか止めようとしないものです。
長年、思い込んできた「確固たる信念」が体に染み付いてしまうもので、一旦染み付いてしまうと、自分の人生がどんどん損しているにもかかわらず、その生き方をなかなか変えようとしません。いくら指摘しても、いくら頭ではわかっても、損する生き方、人生観を変えようとしないものです。まさに上記の「そんなバカなことができるか」です。 そのことがトコトンわかるまで、人間は、自分の生き方、考え方を変えようとしない不思議な生き物です。それが「認知の歪み」<2007年12月15日、第65回「今月の言葉」の「認知療法とは何か?」~第75回「認知の歪みー最終回」>であり、また、あらゆる心理学が言わんとしていることです。
私自身も同様だったので、決して偉そうなことは言えませんが、上記(1)~(11)までをおかしなことだと思われた方は、是非、ご自分の生き方、考え方を振り返ってみませんか?お互いに結構おかしなことをしているものです。
長年、私(藤森)は、「人の振り見て我が振りなおせ」を実践してきました。しかし、残念ながら「我が振り」は直せませんでしたが、「我が振り」を反省できるくらいにはなりました。
あなたの中には、どんな「自分が跨(また)いでいる枝を切る」ような行為がありそうでしょうか?ご自分の人生をあまり損をさせないために、ご自分が跨っている枝をしっかりチェックしてみることが大事なように思えます。 <次回の第83回は「裁判員制度について」を予定しています。一言で言いますと、あまりにもバカげています。その理由は次回に・・・>
<また、「新型インフルエンザ」についての情報も発信していきます。今回の「新型インフルエンザ」は、今後の展開に注意すべきです> |
<文責:藤森弘司>
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