2009年1月15日 第78回「今月の言葉」
~賢者は歴史に学び、愚者は体験に学ぶ~
私たちは、今回の正に未曾有の「新型ウイルス危機」を、過去の「歴史」から学ぶか、「体験」してから学ぶ(のでは手遅れですが)か、どちらでしょうか?それはあなたの考え方、受けとめ方一つにかかっています。
12月はカセットテープレコーダが壊れるまで複製し、ご縁のある方々にと準備しました。今月は、目をショボショボさせながら、可能な限り十分な情報を、ご縁のある方々にお伝えしたいと思い・・・・・かなり詳しくご紹介しています。 できるならば、全てをご覧いただきたいと思っていますが、十分な時間を確保できない方は、下記の目次から、まず、興味ある項目をご覧ください。下記のご紹介の中で、しばしば登場する「国立感染症研究所の岡田晴恵先生」は、テレビのインタビューで、「三年以内に発生する確率は99%」であると明言しています。 万が一、或いは百万が一、「新型ウイルス危機」が訪れなかったとしても、「それで良かった!!」と思えるような準備をしたいと、私(藤森)は思っています。長期間の「籠城準備」が必要ですが、2週間分でもかなり大変な量になります。まるで宇宙のどこかへ移住するかのような大変な準備が必要になります。自転車で何度も買出しに出かけ、整理をしていると、なんとなくおかしくなって、笑いが出てしまいます。 笑って済んでしまう結果になれたら、それは本当に嬉しいことですが、ウイルスは変異し続けるわけですから、笑って済ませるような嬉しい結果になる可能性は、知れば知るほど、無いような大変残念な気がしてきます。目次<前半><後半は、今月の映画「感染列島」(1月31日)をご紹介する中で、紹介します>(1)~(4)・・・・・平和ボケ日本のいろいろ <以下の(5)~(31)は「パンデミック・感染大爆発」(浅井隆著、第二海援隊)の本の内容のご紹介です> (5)・・・・・・・・「パンデミック・感染大爆発」浅井隆著、第二海援隊の中の<プロローグ> (6)「パンデミック・感染大爆発」の著者、浅井隆氏は・・・・・ (7)<グローバル化が呼んだ黒死病・・・ペスト> (8)<大航海時代が疫病を世界中に撒き散らす・・・梅毒> (9)<文明開化がもたらした疫病・・・コレラと結核> (10)<第二章 人類史上最悪の疫病・・・スペイン風邪の脅威> <人類史上最悪のパンデミック> (11)<「スペイン風邪」という名前の由来> (12)<アメリカ全土を襲った「スペイン風邪」の恐怖> (13)<エボラ出血熱を思わせる凄惨な症状> (14)<社会機能も麻痺状態> (15)<人から人への感染のカウントダウンが始まった> (16)<中国ではすでに人から人への感染が発生していた!?> (17)<SARS騒動の教訓> (18)<医療も年金もない農民たち> (19)<恐るべき感染スピード> (20)<国家プロジェクトとして取り組む必要性> <いつ起きてもおかしくない新型インフルエンザの爆発的感染> (21)<各国の被害想定内容とその対策> (22)<アメリカ、パンデミック・ワクチンの早急な製造と対策> (23)<スイス、プレパンデミック・ワクチンによる予防> (24)<危機意識の乏しい日本> (25)<新型インフルエンザの基礎知識> <正しい知識こそ最大の防御策> (26)<新型インフルエンザはどこから来るのか> (27)<高病原性ウイルスの恐ろしさ> (28)<ワクチンと薬の効果は> (29)<プレパンデミック・ワクチンとは何か> (30)<抗インフルエンザ薬とは> (31)<パンデミックになった時、どのようなことが起きるのか> (32)2008年11月21日、NHK首都圏ネットワークで、東京都の「新型インフルエンザ対策」を放映。その要点 |
●(1)新型鳥インフルエンザの脅威について、これからご紹介したいと思いますが、私たちは専門家ではありませんので、専門的・医学的な詳細は必要ありません。概要が分かれば十分ですので、下記の本を参考にこれからご紹介したいと思います。
さて、1年前から私(藤森)は関心をもっていましたが、でも何かのきっかけがなければ、これほど深く関心をもつことはなかったように思われます。そういう意味で私自身も同様ですが、「新型インフルエンザ」の脅威がわかればわかるほど、日本人の多くの方々が、あまり本気で関心を持たない「平和ボケ」はかなり深刻であると思っています。 ●(2)日本は長らく平和な時間を過ごしてきました。恐らく、世界史的にみても、これほど「飢餓」や「疫病」や「戦争」などによる「死の恐れ」の少ない平和な時代はなかったのではないでしょうか?その結果として、「平和ボケ」現象が現われています。 今回の「新型インフルエンザ・・・H5N1」は、誠に強烈な大問題で、連日のように、何らかの形(例えば、マスクや備蓄品の紹介など)で、メディアで取り上げていますが、多くの人が、「対岸の火事」のように思っているようです。例えば、アフリカで何百万人が難民になっているとか、餓死しているという報道に接しているような「他人事」のようにしか感じていないような感じがします。 それがどれほど恐ろしい事か、これから下記の著書を参考にご紹介したいと思いますが、その前に、2008年10月9日、あるテレビ番組に登場した、国立感染症研究所の岡田晴恵先生は「3年以内に新型インフルエンザが発生する確率は99%」だとおっしゃいました。公の立場の専門家がテレビで公言したのですから、これには驚きました。 ●(3)ある有力な情報によりますと、中国とインドネシアが一番危ない、つまり「発生源」になるだろうと言われています。それは生活環境からきます。昔の日本もそうでしたが、普通の家で普通にニワトリを飼っていました。場合によっては豚も飼っていました。それをさらに拡大したような生活環境があるために、発生しやすいようです。 2009年1月7日の朝日新聞、9面にも掲載されていました。 北京市衛生局は6日、北京市朝陽区在住の女性(19)が、鳥インフルエンザウイルス(H5N1)型に感染して死亡したと発表した。新華社通信によると、女性患者と接触した116人について調べた結果、1人の看護師が発熱していたが、すでに回復していたという。 この記事から何がわかるかと言いますと、本の紹介の中で詳しくご紹介しますが、鳥インフルエンザのウイルスが鳥から鳥の段階から、鳥から人に感染する段階になっていることです。 ●(4)さて、日本がいかに平和ボケしているか、朝日新聞の次の記事で、現実の日本の姿をご覧ください。大なり小なり、日本の会議の実態は、ほとんど下記の区議会の議論と同様です。意味のない議論に大きな時間を割き、意味のあることは「忌み(?)嫌われる」強い傾向にあります。何故ならば、日本の伝統は、どんな内容のことを発言したかが重要ではなく、誰が発言したかが重要です。それは役職であったり、社会的な地位や名誉、財産、権威、受賞や受章などの経歴が自分より上か下かが、この国では一番重要です。 朝日新聞、平成21年1月5日「議会・未来・不要論を超えて①」 <市長逆質問を・議員ドキッ> 地方議会では、質問内容の事前通告を受けた役所側が議員とすり合わせたうえで答弁を用意するのが普通。それがなれ合いを生み、議会の「儀式化」を招いているという批判だ。 国会も含めて、こういうことで成り立っているのですね。バカバカしくて話になりません。こういう議員さんたちが、百年に一度の未曾有の危機に対応できるわけがありませんし、「新型インフルエンザ」対策についても果たして頼れるのでしょうか?「自衛」ではないでしょうか。 |
○(5)「パンデミック・感染大爆発」浅井隆著、第二海援隊(以下、同じ)
<プロローグ> <致死率最悪60%を超える感染症が迫っている> 人類史上最大の危機が迫っています。それこそ、新型インフルエンザの大流行による「パンデミック」です。パンデミックとは、ある感染症が全世界で大流行するという意味です。「感染爆発」ともいいます。 本文でも詳しく見ていきますが、パンデミックの対策を国家プロジェクトとして取り組んでいる国とそうでない国とに分かれます。国によって対策に温度差があるのが現状です。本当にパンデミックはやってくるのか・・・・・いまや、そういった認識は極めて甘いと言わざるを得ません。新型インフルエンザはもはや起きるか起きないかといった次元の問題ではありません。世界保健機関(WHO)の専門家は「ほぼ間違いなくやって来る」と断言しています。起きることを前提に、いまやどうやって被害を最小限に食い止めるのかというアプローチが求められているのです。 <藤森注・・・・・別の資料によりますと、公式の死亡者数は4千万人ですが、当時は第一次世界大戦であったために、兵隊が多数死んでいるそうです。①兵隊の死者は報告されないのと、②中国でも発表されていないために、一説によりますと、8千万人とも1億人とも言われているようです。また、③スペイン風邪は弱毒性ですが、今回の新型インフルエンザは強毒性ですので、致死率はさらに高まります。その上に、④当時は交通網が未発達でしたが、交通網の観点からは、今や、世界はほとんど一つといっても良いでしょう。 |
○(6)「パンデミック・感染大爆発」の著者、浅井隆氏は・・・・・
「・・・・・しかし、人間なんて目に見えないほど小さなウィルスによってあっという間に食い殺されてしまうほど、ちっぽけな存在でしかないのです。そんな」恐ろしい情景を、いまあなたは頭の中ですぐに想像できるでしょうか?実は私(浅井隆氏)はその恐怖を、近い将来の映像としてはっきりイメージしています。 <藤森注・・・・・病理学者でない浅井氏がパンデミックがやって来た場合、どう対処するべきかという社会科学的見地から執筆するにあたり、多くの専門家の書籍を参考にされたようです。特に人類とパンデミックの歴史の関係を調べるにあたり、立川昭二氏著『病気の社会史』(岩波現代文庫)、岡田晴恵氏著『感染症は世界史を動かす』(ちくま新書)からは多くの知見を得、また、新型インフルエンザに関しては、岡田氏の多くの著書を主に参考にされたようです。 |
○(7)<グローバル化が呼んだ黒死病・・・ペスト>
記録上はっきりとしたペスト・パンデミックは、6世紀に発生しました。エジプト地方で発生したペストが東ローマ帝国に侵入。アラビア商人たちの交通路に乗って首都ビザンティウム(現在のトルコの都市イスタンブール)に達しました。ビザンティウムでは半年近くも流行が続き、1日に1万人以上の死者が出たと記録されています。埋葬場所がなくなったため、城壁の塔に遺体を無差別に投げ込むと、ほとんどの塔が遺体で一杯になったのだそうです。 さらに13世紀になると、チンギスハン率いる騎馬部隊によってユーラシア大陸を覆う広大なモンゴル帝国が誕生します。モンゴル帝国は経済政策を重視し、交易ルートを保護したので、ヒトとモノの往来が盛んになります。これまでシルクロードを通じて細々と交易していた東洋と西洋が、巨大帝国の出現で一気に距離が縮まったのです。旅行者も多くなり、東方見聞録で有名なマルコ・ポーロもこの時代の人です。言わば、世界史上最初のグローバル化といえる社会変化でした。 14世紀に入ると、気候変動により世界中が寒冷化しました。特に元朝の中国では、1320年代から1330年代にかけて、冷夏や干ばつ、洪水、地震や蝗の大量発生などの災害が続発し、大規模な飢饉が発生しました。さらに、恐ろしい疫病発生が重なり、500万人が死亡したとも言われています。この疫病がペストだったと見られています。 当時のヨーロッパの都市は城壁に囲まれていましたが、その城壁の中を、夥しい数の死体が埋め尽くしました。墓場には、毎日のように大量の死体が運び込まれ、やがて大きな穴の中に死体を投げ捨てるだけの状態になりました。それすらもたちまち溢れ、市街では家族の遺体を路傍に投げ捨てたり、全滅した一家の死体はそのまま放置されました。 この黒死病パンデミックは、14世紀だけで3回発生し、ヨーロッパを覆い尽くしました。死の恐怖から人々は集団ヒステリーに陥り、狂ったように踊り騒ぎました。これをモチーフにして、骸骨が生者のように踊る姿を表現した「死の舞踏」と呼ばれる絵画が、ヨーロッパ各地に残っています。当時のヨーロッパ人は、まさにこの世の終わりを実感していたのです。 |
○(8)<大航海時代が疫病を世界中に撒き散らす・・・梅毒>
コロンブスが新大陸から持ち帰った3つの土産は、「タバコ」「トウモロコシ」「梅毒」と言われてます。 ・・・・・・・・・・ <文明を滅ぼした疫病・・・天然痘> 北米大陸に入植した白人たちが、ネイティブアメリカンたちを圧倒していったのも、天然痘が大きな要因のひとつでした。18世紀にイギリスとフランスが植民地支配権を争ったフレンチ・インディアン戦争では、フランス側と同盟を組んだネイティブアメリカンに対してイギリス軍は、天然痘を一種の生物兵器として使用したほどです。 |
○(9)<文明開化がもたらした疫病・・・コレラと結核>
21世紀の科学文明の中に生きる私たちから見ると、文明が発達するにつれて医学が進歩し、病気が次々と克服されるように思いがちです。しかし歴史を振り返ると、これがまったくの錯覚であることに気づかされます。むしろ、文明が発達する段階ごとに新たな病気の大流行を引き起こしているのです。 <藤森注・・・・・私はこれと全く同じ意見を持っています。今の時代は「癌」の撲滅に必死になっていますが、上記のように「結核」が克服(また流行り出しているようですが)された後に、「癌」が大流行しています。つまり、結核なり、癌なりが克服された、あるいは克服されつつあるだけで、常にそれと同等の病気が新たに出現して、結局は、いつも何かの病気に襲われているのが人類です。その根本は何か?という視点が抜け落ちていて、現象的なものばかりを追いかけています。車を運転しているとよく体験する「逃げ水」のように、何かを克服したつもりでも、次にまた何かが待ち構えていて、本来の意味での「克服」はできないことを悟るべきです> <産業革命と結核> 結核は、菌が肺を侵して咳や喀血を伴う「肺結核」が一般的なイメージでしょう。しかし実は肝臓、腎臓、腸や髄膜、脳など全身のあらゆる部位に感染する病気なのです。骨や脊椎へ感染するとカリエスという病名になります。ドイツで発掘された9000年前の人骨や3000年前のエジプトのミイラには、このカリエスの病根が残っているため、結核が古くから世界各地に広まっていたことが分かっています。日本では古くは「労咳」と呼ばれていました。 当時のイギリスのある報告書によると、工業都市の伝染病死者数は農村の3倍に達し、肺病による死者数は都市が農村の2・5倍、麻疹や天然痘などによる子供の死者数は4倍に達したと言われています。当時の工業都市の労働者階級の平均寿命は、わずか15歳~19歳だったほどです。 こうして結核は「国民病」となり、日本人を長い間苦しめ続けたのです。 |
○(10)<第二章 人類史上最悪の疫病・・・スペイン風邪の脅威>
<人類史上最悪のパンデミック> 1918年、世界はとてつもない規模の疫病の流行に見舞われました。1918年3月、第一次世界大戦中、アメリカ国内で発生したインフルエンザは、米軍のヨーロッパ進軍とともに大西洋を渡り、5月中にはフランス全土を席巻、スペインにも飛び火していきます。強力な感染力を持ったこのインフルエンザは止まるところを知らず、その後も猛烈な勢いで人から人へと染まっていき、6月にはヨーロッパ全土に広まり、海を挟んだイギリスも災禍を免れることはできませんでした。 ・・・・・当時の世界人口20億人のうち、5億人が発症した。犠牲者数は、アメリカ55万人、イギリス20万人、ドイツ23万人、イタリア50万人、ロシア45万人といわれる。さらに中国では400万~1000万人、インドでは1200万人~2000万人が死亡したと推定されている。日本でも、38万人の犠牲者が出た。 スペイン風邪が大流行した当時、ヨーロッパでは1914年から始まった第一次世界大戦の最中でした。この戦争はそれまで行なわれたものとはまったく次元の異なる悲惨なものでした。毒ガスや戦車、飛行機といった最新兵器が初めて導入され、兵士たちは何ヶ月もの間、銃弾が飛び交う中、塹壕に立てこもり、そして多くが死んでいきました。特に西部戦線におけるドイツ軍と連合軍の戦力は拮抗し、長期にわたって膠着状態が続いていたといいます。 戦況に変化の兆しが見られたのは1918年の春です。ブレスト・リトフスク条約が結ばれ、ロシアが第一次世界大戦から離脱します。これにより、東部戦線から開放されたドイツは、西部戦線に兵力を集中し攻勢に出ました。フランスの首都パリを陥落すべく総攻撃をかけるのです。 同年5月、フランス軍の塹壕でインフルエンザが爆発的に広がっていきます。西部戦線でにらみあっていた連合国軍およびドイツ軍の両陣営で爆発的に広がり、まもなくフランス全土を覆い、やがてスペインへと広がっていきました。6月には欧州大陸から英国へと渡り猛威を奮っていきます。 重篤な症状の場合には、患者の肺に水がたまり、たいていの場合は1週間もたたないうちに肺が水で一杯になってしまいます。若くて戦闘能力の高い兵士が敵と戦う前にインフルエンザウイルスによってバタバタと倒れていきました。 そんな中、ドイツ軍は7月に起死回生を狙って再度侵攻作戦を試みるものの失敗。ドイツ軍がこの戦争に勝利する望みを完全に絶たれてしまうのです。8月になると連合国軍はついに前線を突破、ドイツ軍に敗戦ムードが漂い始めます。 |
○(11)<「スペイン風」という名前の由来>
第一次世界大戦で中立国だったスペインでは、報道規制がなかったために、国内での大流行が世界中に知れ渡りました。しかし、他の参戦国は戦時下ということで報道規制が敷かれて何も報じませんでした。否定的な報道や志気を損ないかねない報道は一切行なわれなかったのです。そのため、スペインで発生したインフルエンザが広がっているかのように、広く世界に報道されてしまったことから、「スペイン風邪」と呼ばれるようになったのです。 |
○(12)<アメリカ全土を襲った「スペイン風邪」の恐怖>
「スペイン風邪」が最初に世界のどの場所で発生したのかはっきりとは分かっていません。記録にある最初の患者はアメリカで発生しています。1918年3月4日、第一次世界大戦に参戦するためカンザス州のファンストン基地に集結していた兵士の中から発熱・頭痛を訴えるものが出たとあるのが最初の記録です。症状は喉の痛み・発熱・頭痛だったといいます。その終末までに多数の兵士から同様の報告がありました。 9月、市内の病院はすべて患者で埋め尽くされ廊下にまでベッドが設営されていました。患者の顔色は青く、咳には血が混じっているようなひどい状況だったようです。そんな中、マサチューセッツ州ではインフルエンザ流行の事態を重く見て、非常事態宣言を発令したといいます。 9月28日、フィラデルフィアで自由国債募集パレードが開催されました。感染症の専門家や医師たちがインフルエンザの蔓延を防ぐため、パレードを中止するように市当局に要請しましたが、聞き入れられませんでした。パレードは愛国心を煽り、士気を高めるために大いに効果がありましたが、それと同時にインフルエンザが猛威を奮う絶好のチャンスでもあったのです。 パレード終了後、フィラデルフィアではインフルエンザ患者は爆発的に増えていきます。当時の記録によれば、10月第一週には700人が亡くなり、第二週には2600人、第三週には4500人もの人が亡くなっていったといいます。保健所はインフルエンザの蔓延を防ぐため、協会・学校・劇場の閉鎖を命令します。数え切れないほどの人が体調を崩し病院には患者が溢れかえっていました。しかし、医者と看護婦が戦争でヨーロッパにかり出されており、満足な治療を受けられることはほとんどありませんでした。 1918年10月になると東海岸だけでなく、西海岸でも急速にインフルエンザ患者が発生していきます。サンフランシスコでは、全ての市民にマスク着用を義務付ける条例が可決されました。この条例では、人が集うところでは常にマスクをしていなければならないことやマスクはガーゼ4枚重ねのもので、ひもはしっかり結んで着用することなどと定められていました。マスク着用条例の施行当初はインフルエンザ患者の報告数が目に見えて減りましたが、あまり効果をあげることができませんでした。 <藤森注・・・・・何故、マスク着用が効果をあげなかったのか?それは今回の「新型インフルエンザ(H5N1)」で詳しくご紹介します> |
○(13)<エボラ出血熱を思わせる凄惨な症状>
このように、甚大な被害をもたらしたスペイン風邪ですが、人々を恐怖に陥れたのは患者たちの症状でした。インフルエンザに罹った人たちはそれまで誰もが経験したことのない凄惨な症状を患っていたのです。 アメリカ国内でのスペイン風邪の蔓延の状況を克明に記録した『グレート・インフルエンザ』(ジョン・バリー著、平澤正夫訳、共同通信社)には次のように描かれています。 そのほとんどは鼻血で、中には咳き込んで血を吐く水兵もいた。耳から血を流している者もいた。ものすごい咳き込みようだったので、死後、検死解剖してみたら、腹筋があばらの軟骨から離れてしまっている者さえ見られた。その多くが苦悶のあるいはうわごとでも言うように七転八倒し、意思疎通のできる者のほとんど全員が、目のうしろの頭蓋骨に楔(くさび)を打ち込まれたかのような頭痛と、骨が砕けるかと思うほど激烈な体の痛みを訴えた。少数ながら嘔吐する者もいた。死のまぎわに、皮膚の色が変わる水兵がいた。唇の周りや指先が青みを帯びているだけなのだが、その色が濃すぎて、白人なのか黒人なのかちょっと見分けがつかないような者さえいた。黒色といってもおかしくなかった。 米陸軍の兵営では、入院した兵士の5%~15%がエボラのような出血性ウイルスによる鼻血・・・鼻から出血・・・に苦しんでいた。鼻血はときとして1メートル先まで飛ぶほどの勢いだったという報告が多数あった。<中略>ある患者の場合、500ccもの鮮血が鼻から噴き出した。 |
○(14)<社会機能も麻痺状態>
スペイン風邪の影響は社会の至るところまで及びました。多くの人がインフルエンザに罹り、欠勤したために、会社や工場が通常通り機能しなくなっていきました。また、ゴミの収集が行なわれずそのまま放置されていたり、運転手が不足して電車やバスが動かなくなったりしました。あまりに死者が多く、火葬場には死体の山ができ、ついには穴を掘って埋めるというところも出たそうです。このパニックが、アメリカ中あちこちの街で起こったのです。 『グレート・インフルエンザ』では、 死体は葬儀屋に滞り、葬儀屋の建物の至るところにあふれ、住居にまで押し寄せてきた。病院では、死体安置所に置かれる死体が廊下にまであふれていた。町の死体安置所でも死体が通りまであふれ出ていた。そして家庭にも死体が滞って、玄関、押入れ、廊下の隅、ベッドの上などに横たわっていた。 ノースカロライナ州ゴールドボロのダン・トンケルは「息をするのも怖かった。劇場も閉鎖されていたため、人混みに入ることはできなかったし、まるで卵の殻の上を歩いているようだった。外へ出るのも怖かった。(中略)実際、みんなひどく怖がっていて、家から出ようとしなかった。人と話すのを恐れていた。まるで私の顔に息をかけるな、私の顔を見るなと言っているようだった。毎日次は誰が死亡リストに載ることになるかわからなかったし、人はこんなにもあっけなく死んでいくものなのかと、それが恐ろしかった」と述懐した。 このスペイン風邪は、日本にも襲いかかってきました。船、電車、汽車等の交通機関の中や学校の教室、オフィスの中、映画館、レストラン、ホテル、駅、観劇場、その他いろいろな集会等、多くの人が集まる場所で急速に感染が拡大しました。日本国内では政府が適切な指導や対策を取ることができなかったため、厚生労働省によると当時の日本の総人口5500万人の半分近くである2300万人が感染し、約38万人の死者を出したとされています。 |
○(15)<人から人への感染のカウントダウンが始まった>
新型インフルエンザの脅威が刻一刻と近づいています。H5N1型インフルエンザウイルスは、新型インフルエンザに変異する危険性がもっとも高いとされるウイルスのひとつで、ウイルスが「新型」に変異すると世界的な大流行が懸念されています。 <藤森注・・・・・平成20年5月30日、読売新聞、「論陣・論客“新型インフルエンザのワクチン接種”」で、国立病院機構三重病院院長は次のように発言しています。「・・・しかし、歴史上、新型インフルエンザは、アヒルと豚、人が一緒に住んでいるところで発生したとされる。この条件を満たす東南アジアで、H5N1が流行し、多くの人が感染している現実を直視すると、新型に変異する可能性は高い。H5N1に備えるのは社会防衛上、必要不可欠だ」> 詳しくは後述しますが、新型インフルエンザの流行レベル(フェーズ)には6段階あります。人から人への新型インフルエンザ感染が確認されているが、感染集団は小さく限られているレベルがフェーズ4、人から人への新型インフルエンザ感染が確認され、パンデミック発生のリスクが大きな、より大きな集団発生がみられるレベルがフェーズ5です。そして、パンデミックが発生し、一般社会で急速に感染が拡大しているレベルがフェーズ6と分類されています。先のインドネシアのケースはフェーズ3で、フェーズ4に進むのをなんとかくい止めている状況だといいます。 では、H5N1型インフルエンザウイルスが人から人に感染するウイルスに変異し、最初に大流行する地域・国はどこでしょうか。新型インフルエンザの事情に詳しい国際感染症医療要員養成センター会長・牧野長生氏によると、患者の発生数、人口の多さ、衛生観念、国家の対応能力など様々な観点から考えて、インドネシアもしくは中国で起きる可能性が高いといいます。 |
○(16)<中国ではすでに人から人への感染が発生していた!?>
2007年12月、中国政府のある発表に関係者は一時騒然となりました。江蘇省南京市で人から人への感染事例が初めて確認されたことが報告されたのです。南京市に住む息子(24歳)と父親(54歳)が相次いでH5N1型インフルエンザウイルスに感染し、息子が死亡した事例について、「家庭での密接な接触によって感染した」と明かしたのです。 中国は、今回感染事例について、「ウイルスの遺伝子の変異なはい」と発表しています。しかし、感染した息子の感染源は明らかにされないままです。中国政府によれば2003年からこれまで30例の鳥インフルエンザ感染が確認され、うち20人が死亡していますが、人から人への感染は初めてとされています。 <二次感染の恐れは本当にないのか?> 一体、どのような経緯があったのでしょうか。このニュースについて、先述の牧野氏が詳細を話してくれました。 省衛生庁は報告を受けた当日、二度にわたり専門家を派遣し、現地の医療スタッフと共に全力で治療に当たらせたようです。しかし、病状は重く治療の甲斐なく24日に9時25分に亡くなりました。わずか8日間でウイルスが体中に広がって亡くなったのです。 |
○(17)<SARS騒動の教訓>
中国はSARS流行の際に、北京市内での発生患者数を減らして報告したという大きな過ちを犯しました。SARSはSARSコロナウイルスを病原体とする新しい感染症です。このSARSは2002年11月中国広東省仏山市で第1号の患者が確認されたのを皮切りに、終息宣言される2003年7月まで29の国と地域で猛威をふるい、その合計死亡例は775例にのぼっています。 被害が最も深刻だったのは、広東省と北京市です。北京市における感染拡大は、天災というよりもむしろ人災であったといってよいでしょう。北京市政府による初めての発表は2003年3月末に行なわれ、その内容は「感染者8人、死亡者3人、拡散していない」というものでした。しかし3月1日、後に院内感染から北京中にSARSを蔓延させる原因となった重症患者が山西省から北京市内の病院に移送されています。おそらく、市政府の発表があった時点で実際は院内感染により被害が拡大し、発表した内容よりも深刻な事態に陥っていたのではないかと推測されます。 2003年4月20日、これまでの過少申告を大幅に修正する記者会見が行なわれ、それと同時に衛生部長(日本で言えば厚労大臣に相当)と北京市長が更迭され、代わって副首相が直接指揮を執り、SARS封じ込め作戦が展開されます。 この中国発のSARS騒動は、香港経由で全世界に広がりました。WHOによれば、中国や香港の他、カナダ、台湾、シンガポールなどで、SARSの感染者が多数発生したと報告されています。SARSウイルスは幸いにも感染力が弱かったために、パンデミックには至らずにすみました。感染者数は全世界で約8069人、775人の死者を出しましたが、予想される新型インフルエンザに比べれば、被害はずっと小さかったといえるでしょう。 前出の牧野氏(国際感染症医療要員養成センター会長・牧野長生氏)によると、中国政府は公にしていませんが、パンデミックの発生に備え、「国家一級備戦備蓄管理体制」を敷いているという情報があります。これはどういうことかというと、アメリカやロシアといった超大国との戦争に備え兵力を増強し、食糧備蓄を強化するなどして備える体制を敷くことです。3年分の食糧の備蓄に加え、2~3億枚という膨大な量のマスクを備蓄しているといいます。 |
○(18)<医療も年金もない農民たち>
それでは、中国発パンデミックは起きないのでしょうか。残念ながら、国家レベルで新型インフルエンザの封じ込めに取り組んだとしても、中国にはパンデミックが起きる可能性のある、いくつかの構造的な要因があると牧野氏は指摘します。 中国における地方の農民の置かれている状態は深刻です。都市部に住む人たちの中には年収数億円といった富裕層がいる一方、地方の農民の中には年収数千円で食べていくのがやっとといった人たちがいます。最近は開発ブームにより、生活の糧である農地まで奪われてしまった農民が多く発生しています。しかも、農村には医療や年金といった社会保障制度はほとんどありません。いま、農村では病気になってもお金がないため、医者に診てもらえないという深刻な問題が表面化しています。 なぜこんなことになってしまったのでしょうか。かつて、計画経済下の農村には「合作医療」と呼ばれる互助制度がありました。村人たちが毎年一定額を出し合って、病気になった時に治療費を賄うというものです。簡単な治療は「裸足の医者」と呼ばれる、短期の研修を受けた農民が担っていました。しかし、1980年代に農村で人民公社が解体されると合作医療も崩壊し、医療費は全額自己負担という過酷な時代に突入したのです。 近年、経済発展に伴って医療費は高騰し続けているのにも関わらず、農民の所得の増加率は低いため、ますます満足な治療が受けられないという状況になってきています。家族の中に一人病人が出れば、一家全体が借金を抱え、その返済にあえぐことは農村では日常茶飯事なのです。 さらに、水質汚染も深刻です。特に、中国中部を東西に流れる「淮河(わいが)」は惨憺たる状況になっています。地元の漁民でさえ、「淮河で捕った魚を食べる勇気はない」と敬遠するほど汚染されているといいます。 このように、公害や環境に対する中国政府の取り組みは依然として進まず、地方の農民たちは取り残されています。悲惨な状況から何とか抜け出したいという農民たちが毎年1000万人単位で農村から都市へ流入しているのです。 |
○(19)<恐るべき感染スピード>
また、別の要因として新型インフルエンザの感染スピードが今までの感染症に比べて比較にならないくらい速いため、患者が発生後に感染拡大を防ぐのが極めて難しいということもあげられます。SARSは「飛まつ感染」がメインでした。飛まつ感染とは感染者の咳やくしゃみで排出された唾液などの飛まつを吸い込むことで起きる感染のことです。 アジアかぜ(1957年)や香港かぜ(68年)など、過去の新型インフルエンザの潜伏期間は1~3日。そこで、東京・八王子市の会社員が新型インフルエンザが流行している海外で感染し、その潜伏期間中の3日目に帰国したと想定。翌日の4日目には発熱症状が出始めたが、東京駅周辺の会社に通勤し、5日目に会社で倒れるまで2日間、電車や会社、家庭などで感染を広げる最悪のケースを考えた。 厚生労働大臣が先月示した新型インフルエンザ対策指針案では、発生初期は限定的に指定した医療機関に可能な限り患者を収容して、感染拡大を抑え込む方針だが、今回のケースでは、それだけではとても間に合いそうもない。 今回の試算は考えられる最悪のシナリオを想定したが、大日主任研究官は「もし大都市圏で患者が発生したら、早期に大流行に対応する体制をとり、広範囲に自宅待機や休校などの対策を実施するべきだ」と指摘する。 この記事によれば、1人の新型インフルエンザ患者が発生した場合、わずか1週間で3000人もの潜伏感染者が発生するというのです。電車、バス、飛行機、映画館、デパート、病院など人が集まっているところではどこでも同じことが起きる可能性があります。 <藤森注・・・・・2008年11月21日、NHK首都圏ネットワークで、東京都の「新型インフルエンザ対策」を放映しましたが、その放送の中で、アメリカのフィラデルフィアは、最初の死亡者から2週間後に措置をとったために、短期間に死者が急増し、10万人あたりの死亡者は約1万4千人。 |
○(20)<国家プロジェクトとして取り組む必要性>
<いつ起きてもおかしくない新型インフルエンザの爆発的感染> 1997年に香港で最初の人への感染が確認されて以来、H5N1型鳥インフルエンザは東南アジアを中心に世界中に広まっています。WHO(世界保健機関)によると、2008年5月28日までに世界中で累計383人が感染し、うち241人が死亡したといいます。致死率は63%にものぼります。H5N1型ウイルスの人間への感染力はいまのところ弱いわけですが、毒性が非常に強いため感染後の死亡率は高くなるのです。また、発展途上国などでの感染者は把握されていない例も多く、実際の数はこの統計をはるかに上回るのは間違いないと考えられます。 時間的余裕もありません。現在の鳥インフルエンザウイルスが変異して、人から人へと感染する特性を獲得すれば、パンデミックは確実に起きます。第一次世界大戦中に流行したスペイン風邪の場合、世界中に感染が拡大するまで7~11ヶ月かかりましたが、現在は当時よりもはるかに交通網が発達し、世界人口が増えた上に人口密集地も拡大しています。そのため、発生からわずか1週間ほどで世界中に感染が広がる可能性が指摘されています。新型ウイルスの出現、そしてパンデミックは「本当に発生するか」ではなく、「いつ起きるか」という問題なのです。 <藤森注・・・・・1918年の「スペイン風邪」の時と、今回の「新型インフルエンザ」とを簡単に比較してみます。「スペイン風邪」のときは、公称4000万人が死亡となっていますが、①中国やヨーロッパ戦線での死亡者が正確にわかっていない分を加味すると、一説には8000万人、或いは最大1億人とも言われています。 WHOは新型インフルエンザの発生により起きる世界的規模の健康被害、社会的被害を最小限にするために、2005年に「世界インフルエンザ事前対策計画」を公表しました。この計画において、WHOは新型インフルエンザ発生前からパンデミックがピークを迎えるまでを「フェーズ1」から「フェーズ6」までの6段階に分類し、それぞれのフェーズでの対策計画を打ち出しています。そして、これをもとに各国に対策計画の策定を求めています。 現在は「フェーズ3」。感染した鳥に直接接触した場合に感染するおそれがあります。基本的に人から人への感染はありませんが、限定的ながら感染者を看病した家族など密接な接触者への感染が見られるという状況です。ただし、現在はフェーズ3とはいっても、フェーズ4に極めて近い段階にあるという指摘もあります。簡単に言えば、フェーズ3では鳥から人にまれに感染する段階ですが、フェーズ4になるとウイルスが変異し、人から人へと感染しやすくなります。つまり、「新型インフルエンザ」の発生です。 欧米の主要国を中心に各国では、感染、発症の情報を収集、分析し、緊急時の対策を練っています。国家レベルのパンデミック対策としてまず考えられるのが、封じ込めによって新型ウイルスの侵入そのもを阻止することです。封じ込めができればそれが理想ですし、重要な対策であることは間違いありませんが、世界各国で鳥がインフルエンザウイルスにより大量死していることからもわかるように、鳥の間ではすでに感染が広がっています。人から人へと感染するウイルスが本格的に出現した場合、交通網が発達し人の移動が活発な現代では封じ込めは容易なことではありません。 <藤森注・・・・・封じ込めは不可能であるという専門家もいます。おそらく、これが事実であろうと思われます。何故ならば、交通網が発達していることなどを総合的に考えるならば、防ぎようがないのが現実であろうと思われます。封じ込めは不可能でも、少しでも感染の広がりを遅らせることで、対策をより効果的にすることだと思います。これを念頭に自衛することではないでしょうか!!(19)<恐るべき感染スピード>をご参照ください> そこで封じ込めに失敗した場合、被害を最小限に抑える努力が重要になってきます。具体的には、ワクチンや抗インフルエンザ薬などの使用、外出や行動の制限などが考えられます。 1つは・・・・・H5N1型ウイルスから作った「プレパンデミック・ワクチン」の作製です。プレパンデミック・ワクチンは、パンデミック(感染大爆発)が起きる前に鳥から人に感染した患者、または鳥から分離されたウイルス、つまりH5N1型ウイルスをもとに製造されるワクチンです。新型ウイルスワクチンではありませんが、同じH5N1型であれば基礎免疫をつけることができるので、ある程度の予防効果が期待できます。 2つは・・・・・実際に感染してしまった場合に使う抗インフルエンザ薬の備蓄です。代表的なものに「タミフル」という経口剤と「リレンザ」という吸入剤があります。これらの抗インフルエンザ薬は決して特効薬ではありません。新型インフルエンザにどの程度の効果があるかどうかも未知数ですが、体内におけるウイルス増殖量を減らし感染拡大を抑制する一定の効果が期待されています。 3つは・・・・・「パンデミック・ワクチン」の作製です。これは新型インフルエンザウイルスをもとに作る新たなワクチンです。それだけに高い効果が期待されますが、最大の欠点は新型インフルエンザが発生してからでなければ作れないことです。つまり、事前に備蓄しておくことができないのです。新型ワクチンの作製には発生から少なくとも半年かかるといわれます。 <藤森注・・・・・新たに作るワクチンは、5か月を要するようです。そして、我々が利用できるまでに、もう1ヶ月、そしてワクチンの効果が発揮するまでにもう1ヶ月、最短で合計7ヶ月です。また、ライフラインですが、私のところは「都市ガス」ではないので、会社に問い合わせたところ、私の持っている情報よりはるかに少なかったので、私が持っている全資料を営業所長経由で社長に届けてもらいました。ライフラインがオーケーか否かは、備蓄に大きな違いがあります> |
○(21)<各国の被害想定内容とその対策>
<日本・・・ワクチンの絶対的不足と危機管理体制の欠如> 日本では2005年に厚生労働省が「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定し、対策に乗り出しました。厚生労働省は、全人口の25%に相当する3200万人が感染し、そのうち最大で2500万人が医療機関を受診し、53万人から200万人が入院、17万人から最大で64万人が死亡すると想定しています。 <藤森注・・・・・単純計算してみても、人口は約3倍、交通網は発達し、弱毒性から強毒性です。単純に人口が3倍増えていることを考えてみても、スペイン風邪の犠牲者38万人の3倍とすれば、114万人になります。オーストラリアのシンクタンクの210万人が多すぎるというほどではないように思えます。一説によりますと、政府が発表している関東大震災の被害状況も、現実にかなり低く見積もられているといわれています。「新型インフルエンザ」についても同様のことが言えるのではないでしょうか?大本営発表でしょう?恐怖心をあおるのではなく、事実を正しく把握しておくことが大事です。大震災の場合も同様です。できることから自衛すべきでしょう!> 日本の具体的な対策は、プレパンデミック・ワクチンについては2000万人分を備蓄。中国、ベトナム、インドネシアで採取された3つのタイプのウイルスをもとに製造しているといいます。そのため、これらのタイプ以外から新型インフルエンザが発生した場合には、効果はあまり期待できません。 <藤森注・・・・・タミフルやリレンザの備蓄はかなり不足していますが、福田前総理大臣のときに、全国民の半数を備蓄することを了承したという話も聞いていますので、このあたりはかなり流動的ではないかと思われます> 2008年4月には、「新型インフルエンザ対策法」が成立しました。この法律を根拠に、海外からのウイルス流入を防ぐ水際対策案が立てられました。 ・・・・・SARSの場合は、高熱などが出て発症してから、対外にウイルスを排出して、他者への感染源となります。ですから空港などの検疫で、まず熱のある人をスクリーニングすることで、感染した人、病気の人を国外に出さない、入国してもそこで隔離し、ウイルス感染の拡大を阻止することが可能でした。けれども新型インフルエンザでは、感染し発病するまでの潜伏期間である発病1日前からウイルスを体外に出すのです。 パンデミック発生時の医療体制もまったく不十分です。<略> 医療体制以外にも、電気、ガス、水道などのライフラインや物流をどう確保していくかという問題もあります。さらには治安の維持、遺体の処理からゴミの収集にいたるまで事前にしておくべき課題は山積しています。 |
○(22)<アメリカ、パンデミック・ワクチンの早急な製造と対策>
アメリカは2005年には、新型インフルエンザ危機を「バイオテロや核の脅威よりも上位」とみて、その準備対応策を国家戦略の「重要政策」と位置づけました。つまり、アメリカはパンデミックを安全保障の課題と認識しているのです。<略> では、アメリカの具体的な対策を見ていきましょう。 <藤森注・・・・・上記の「65歳以上の病気の高齢者を優先する案」は、政府の心理的な対応で、一般国民の意識の高まりを予測した高度な対応だと推測します> |
○(23)<スイス、プレパンデミック・ワクチンによる予防>
スイスは世界的にも早い段階から新型インフルエンザ対策を実施している代表的な国で、一つのモデル国といえます。 |
○(24)<危機意識の乏しい日本>
アメリカとスイスのワクチンに対する考え方はある意味で対照的といえます。アメリカはパンデミック・ワクチンを重視し、スイスではプレパンデミック・ワクチンを重視しているのがわかります。各国の対策についても、アメリカ式の対策を採る国とスイス式の対策を採る国とに分かれます。 翻って日本はどうでしょう。確かに対策の指針や計画といった面ではそれなりに進められてはいますが、内容的に具体性を欠きます。欧米など海外の国々が「国家の安全保障」として取り組んでいるのに比べ、日本の取り組みには切迫感が感じられないのです。 アメリカには“ファースト・アライバルの法則”というものがあります。非常時には、最初に現場に到着した人が責任者になる。ヒラであっても、最初の権限を握って式をとるのです。その後、エラい人が来れば、次々と権限を委譲していきます。 |
○(25)<新型インフルエンザの基礎知識>
<正しい知識こそ最大の防御策> 繰り返しになりますが、新型インフルエンザは、いつ発生してもおかしくない段階に入ったと言われています。特に現在流行しているH5N1型鳥インフルエンザは、「高病原性鳥インフルエンザ」の一種で、このウイルスが変異して人間への感染能力を獲得した場合、相当な社会的混乱が予想されます。 そうした状況の中、行政や自治体に任せきり、頼りきりで、私たちは生きていけるのでしょうか?新型インフルエンザ対策は、私たち一人ひとりの命に関わる問題です。ワクチン製造や検疫体制の整備なども大切ですが、個人でもできる限り新型インフルエンザの発生に備えなくてはならないのです。 新型インフルエンザについては、最近注目度が高まっており、様々なメディアで報道もされています。しかし断片的な情報ばかりを集めても、全体像はなかなかつかめません。基本的な知識を身につけてこそ、情報の本当の価値が見えてくるものです。 |
○(26)<新型インフルエンザはどこから来るのか>
ニュースなどで、大量のニワトリを処分する場面を見かけたことはないでしょうか。私がテレビで目にしたのは、マスク、ゴーグル、防護服に身を包んだ物々しい姿で、何万羽ものニワトリを大きな穴に埋めていました。「なにもあそこまでしなくても」「ニワトリがかわいそう」「もったいない」などという声も聞こえてきそうです。 「すべてのインフルエンザはもともと、鳥インフルエンザだった」と聞いて、驚かれる方が多いかもしれません。実は新型インフルエンザだけでなく、毎年冬になると流行する普通のインフルエンザも、すべてもともとは鳥インフルエンザウイルスが進化して、人類に広がったものだということが、研究によって明らかになっています。 インフルエンザウイルスの本来の宿主であるカモは感染しても発症しませんが、ニワトリなど他の動物はウイルスが伝染すると発症します。カモは渡り鳥ですから、一度感染すると世界中を飛び回ってウイルスを撒き散らしてしまうことになります。すべての渡り鳥の飛来を止めることなどできませんから、インフルエンザウイルスの伝播を防ぐのも極めて難しいのです。 このインフルエンザウイルスとは、一体どういうものなのでしょうか。その特徴について、もう少し詳しく見てみましょう。まず、細菌とウイルスの違いについて、『ウイルスの時代がやってくる』(菅原明子著、第二海援隊)を教科書代わりにして解説します。 一方で、ウイルスというのは、遺伝子があり、それを頑丈なタンパク質の殻が包み込んでいるだけ生命体です。生物かどうかもはっきりしておらず、生物と化学物資の中間のような存在なのです。その大きさも、細菌の十数分の一から数十分の一で、ナノメートル(100万分の1)の単位になります。また細菌と違って、ウイルスは生命維持機能をまったく持っていません。そのため子孫を増やすために、他の細胞の生命活動そのものを乗っ取って、自分の遺伝子を再生産するのです。 もう一つ、ウイルスには大きな特徴があります。それは「突然変異しやすい」性質を持つことです。中でも特にインフルエンザウイルス遺伝子は、突然変異を起こしやすいのです。インフルエンザウイルスの遺伝子は、DNA(デオキシリボ核酸)ではなく、RNA(リボ核酸)です。RNAはDNAよりも、コピーエラーを起こしたり、遺伝子組み換えが起きやすい特徴があります。 このように次々と進化するインフルエンザウイルスは、いくつもの型に分類されています。やや専門的になりますが、『新型インフルエンザ』には以下のように記されています。 ・・・・・インフルエンザウイルスには、内部蛋白の違いによりA型、B型、C型の三種類のウイルスが存在する。この違いをタイプ(型)という。感染した後の症状の重篤性で見てみると、C型は軽い風邪症状を、B型は季節性のインフルエンザを起こす。季節性の流行も起こすが、周期的に世界的大流行も起こすという意味で問題となるのはA型インフルエンザウイルスである。(中略) ちなみに、インフルエンザウイルスはRNAと呼ばれる核酸を8本、遺伝子として持っているRNAウイルスである。RNAを遺伝子として持つウイルス(RNAウイルス)はDNAを遺伝子として持つウイルス(DNAウイルス)に比較して、複製の際に遺伝子の読み間違いが起こりやすい。その結果、頻繁に突然変異が起こることになる。 A型ウイルスにはHA型16種類、NA型9種類の組み合わせすべてが見つかっており、合計16X9=144の亜型ウイルスがあることになります。ちなみに毎年流行を繰り返すA香港型インフルエンザはH3N2型、現在世界中で流行している高病原性鳥インフルエンザはH5N1型になります。 不思議なことに新型インフルエンザは、10~数十年周期で出現しているようなのです。同書によると、記録がはっきりする18世紀以降から現在まで、インフルエンザは7回の世界的流行を引き起こしています。これはおよそ40~50年周期で、その当時にとっての「新型インフルエンザ」が出現していることを示しているのです。つまりスペイン風邪も、当時の人にとって「新型インフルエンザ」だったために、あれほどの被害をもたらしたのです。 その根拠の一つが、世界中で大流行しているH5N1型鳥インフルエンザです。鳥の間ではすでに、パンデミックが始まっているのです。新型インフルエンザ発生の前には、まず鳥類の間でパンデミックが起きると見られています。鳥の間で流行が広がるほど、人間が病気の鳥と接触する機会が増えます。そして、感染した鳥と接触する機会が増えるほど、人間の体内にウイルスが侵入する確率が高まるからです。 まず、鳥インフルエンザウイルスが突然変異して、直接人間に感染するウイルスに変異する場合です。もともとインフルエンザウイルスは、亜型によって感染しやすい動物が分かれています。H5N1型ウイルスも本来は、ニワトリなどには感染しやすいのですが、人間の細胞には感染しにくいのです。そのため、これまでの感染者はH5N1型ウイルスとよほど密接に接触した場合、偶発感染したというケースがほとんどのようです。 次に、現在すでに人間への感染能力を持っているインフルエンザウイルスと、現在の鳥インフルエンザウイルスが遺伝子交換によって「ハイブリッドウイルス」となる場合です。たとえば、養鶏場で働いている人が普通のインフルエンザにかかり、養鶏場のニワトリが鳥インフルエンザにかかっていたとします。このひとがニワトリの世話をしているときに、たまたま鳥ウイルスが体内に侵入したとしましょう。つまり、人ウイルスと鳥ウイルスの同時感染です。すると、人ウイルスと鳥ウイルスは細胞内で遺伝子を交換し合い、両方の遺伝子が交じり合った結果、新しいウイルスができてしまうのです。 つまり、人のインフルエンザに感染した豚が、鳥インフルエンザに感染してしまうと、豚の細胞内で両方のウイルスが遺伝子交換して、両者の特徴を持ったハイブリッドウイルスが出現する可能性が高いのです。 すでに中国やインドネシアなどで、人から人へ感染した事例がWHOに報告されています。このウイルスの感染能力は限定的で、長時間近くにいて看護するなど、密接な接触でしか人から人へは伝染しないとみられています。しかし、高病原性鳥インフルエンザウイルスが、人間への感染拡大に向かって進化を続けているのは確実なのです。 |
○(27)<高病原性ウイルスの恐ろしさ>
鳥インフルエンザのニュースは連日のように報道されていますが、大半の人は「遠い世界の出来事」という程度の受けとめ方で、あまり危機感を持っていないのではないでしょうか。それはインフルエンザという病気があまりに一般的なため、「新型」と付いてもせいぜい「風邪と同じような症状」と思い込んでいるからです。 さらに、生体防御反応が過剰反応を起こす「サイトカイン・ストーム」という一種のアレルギー反応のような病態に陥ることで、全身の臓器がダメージを受けてしまい、致死率が高くなるというのです。実際にH5N1型鳥インフルエンザに感染した人には次のような症状が出ているようです。 ・・・・・全身症状としては、セ氏38度以上の発熱、出血傾向や、サイトカイン・ストームによる多臓器不全などが報告されている。咳、血痰、呼吸困難、さらに肺炎が急速に進む急性呼吸器促迫症候群に移行する場合もある。(中略)ベトナムの小児患者では、脳炎での死亡例もある。(中略)さらに心筋炎や、妊婦では胎盤・胎児感染をおこしている。 スペイン風邪では、通常は体力や免疫力のある20代~30代の青年の方が、幼年層や高齢層よりも死亡率が高くなりました。これはサイトカイン・ストームが原因だといわれています。 |
○(28)<ワクチンと薬の効果は>
これほど恐ろしいウイルスに対して、人類はどのように対抗したらよいのでしょうか?新型インフルエンザに最も有効なのは、ワクチンだと言われています。人間の体には免疫という機能があります。これは体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を発見し、排除する機能です。細菌やウイルスなどの病原体を犯人とすれば、免疫は体内を守る警察官の役割を果たします。 この免疫の仕組みを利用したものが「ワクチン」です。毒性や感染力を弱めたウイルスをわざと感染させて、免疫にそのウイルスを記憶させるのです。いわば指名手配犯の顔写真を事前に配っておくようなものです。つまり、ワクチンは人間の生体防御反応を応用したものです。ワクチンはウイルスに対抗する強力な武器ですが、決定的な弱点があります。それは、ワクチンの原料はウイルスそのものなので、新型インフルエンザが発生してからでなければ、ワクチンを作ることができないということです。 |
○(29)<プレパンデミック・ワクチンとは何か>
ワクチンは新型ウイルス発生後でなければ作製できません。そのため、新型ウイルス用ワクチンそのものでないにしても、似たようなウイルスを使ってワクチンを作れば、ある程度は効果が得られるのではないかという考えで備蓄が進められているのが「プレパンデミック・ワクチン」です。プレというのは「前の」という意味ですから、パンデミック前のワクチンということになります。 新型インフルエンザ感染を完全に防ぐことはできませんが、感染しても症状を軽減する効果は期待できるです。そのため、プレパンデミック・ワクチンの製造、備蓄は世界各国で進められています。日本でもプレパンデミック・ワクチンの備蓄と事前接種計画が進んでいます。 プレパンデミック・ワクチンの効果は未知数ですが、一方で、プレパンデミック・ワクチンを国民の60~70%に接種しておけば、いざ新型インフルエンザが発生してもパンデミックに至らないとする発表もされているそうです。 しかし、危機管理の要点は、最悪の事態に備えて最大限の手を打っておくことです。パンデミックは、国民の命が関わっているのはもちろん、社会機能全体が揺らいでしまうほどの脅威なのです。本当の危機的状況では、お互いに責任を回避するための調整能力よりも、すべての責任を負って独断するくらいの強いリーダーシップが必要不可欠になります。それが国家の危機管理能力を左右するのです。 |
○(30)<抗インフルエンザ薬とは>
ワクチンと並び、新型インフルエンザに有効とされているのがタミフルに代表される「抗インフルエンザ薬」です。ただこの薬も、ワクチンを死滅させる特効薬というわけではないようです。 ・・・・・ノイラミニダーゼ阻害薬は、インフルエンザ・ウイルスの表面にあるノイラミニダーゼ(NA)という酵素の作用を抑えることによって、ウイルスに感染した細胞でつくられる子ウイルスがそこから出てくるのを抑え、ウイルス感染の拡がりを阻止するようにはたらく。 すでに体内でインフルエンザウイルスが増殖し、身体のあちこちに感染を拡大している状態では、効果があまりありません。そのため、タミフルが有効なのは、発症後48時間以内とされているのです。このタミフルは、新型インフルエンザにもある程度有効と見られており、日本でも備蓄が進んでいます。 さらに問題なのは、タミフル耐性ウイルスの登場です。タミフルが効かないように進化したインフルエンザウイルスが見つかっているのです。『ダイヤモンド・オンライン』の記事によると、ヨーロッパでは2007年~2008年のシーズンで、タミフル耐性のインフルエンザウイルスが14%も見つかったと書かれています。 さかのぼって2005年、ベトナムの鳥インフルエンザ感染者からH5N1型ウイルスでもタミフルに対する耐性が見つかったケースを報道していました。 ・・・・・日本など各国が新型インフルエンザに備えて備蓄中の抗ウイルス薬「オセルタミビル」(商品名タミフル)が効かない耐性ウイルスが、鳥インフルエンザに感染したベトナムの患者から見つかった。ウイルスの存在を確認した東大医科学研究所の河岡義裕教授らは、「新型インフルエンザの流行に備えるには、タミフルだけでなく、別の抗ウイルス薬ザナミビル(商品名リレンザ)も備蓄した方がよい」と提言している。20日付の英化学誌「ネイチャー」に発表した。 ウイルスは猛烈な勢いで進化します。薬が使用されればされるほど、耐性を持ったウイルスが出現しやすくなります。タミフルは非常に高価な薬のため、日本や欧米諸国など先進諸国の需要がほとんどです。特に日本では、軽度のインフルエンザでもタミフルを処方していたため、耐性が出現しやすい環境が整っています。 |
○(31)<パンデミックになった時、どのようなことが起きるのか>
スペイン風邪では、一度目の世界的大流行(大一波)後、数ヶ月間の小康状態が続き、その後二度目の大流行(第二波)、再び小康状態を経て三度目の大流行(第三波)と数度にわたりパンデミックが襲いました。インフルエンザというと冬に流行するイメージがありますが、実際には、大流行には季節を問わないとみられています。新型インフルエンザも同様に、数度にわたる大流行の波が襲うと予測されています。 <藤森注・・・・・平成20年12月9日、「学べるニュースショー」~新型インフルエンザが発生したことを想定したドラマ・57分~タレントの野々村マコト氏一家が主人公になり、リアリティー溢れるドラマとして、テレビで放映されました。この監修者が上記の国立感染症研究所の岡田晴恵先生です。もしかしたら、上記の本を参考にしているのかもしれません?> 同書によると国外で新型インフルエンザ発生が確認されてから1ヶ月足らずで日本にも感染者が出現し、2週間ほどで全国に拡大します。そして、発生からわずか2ヶ月ほどで感染が爆発的に広がります。医療従事者の過労死や医療物資不足などによる医療崩壊や、外出する人が消えてゴーストタウンのようになった街、そして犠牲者の火葬が追いつかず、巨大な穴の中に遺体を埋める集団埋葬の場面などが描かれています。ガソリンや生活必需品などの物資不足で窃盗事件が多発しても、取り締まる警察官もいないため、街の機能が崩壊していくのです。 大地震が起きた後の災害復興と同じで、パンデミックによる直接の被害はもちろん、その傷跡から回復するためには長い年月が必要になります。しかもその被害は大地震の比ではありません。見通しが甘いと指摘されている厚生労働省の予測でさえ、死者64万人。これは阪神・淡路大地震の犠牲者の百倍に匹敵するのです。しかも震災のように、ある地域だけで起きるのではありません。日本全国あらゆるところで、これほどの大災害が起きる可能性があるのです。 |
●(32)2008年11月21日、NHK首都圏ネットワークで、東京都の「新型インフルエンザ対策」を放映。要点は下記の通りです。
☆人類にとって大災害ととらえるべき ☆大震災と並ぶ脅威と位置づけ ☆11月20日、初めて「新型インフルエンザ対策」の本格的訓練を実施 ☆感染拡大を封じ込めるのは簡単ではない・・・・・東京都では、少しでも時間を稼ぐことで、感染者の数を減らす。期間を遅らせることで、いろいろな対策がとれる。 ☆1918年。鳥インフルエンザが変異した新型のインフルエンザであるスペイン風邪は、世界で4千万人の犠牲者 ☆アメリカのセントルイス・・・・・最初の死者が出た直後から、多くの人が集まる学校や映画館などを閉鎖し、集会も禁止した。その結果、全米の大都市でもっとも低い死亡率で、10万人あたりの死亡者は約3千人に対して、フィラデルフィアは最初の死亡者から2週間後に措置をとったために、短期間に死者が急増し、10万人あたりの死亡者は約1万4千人。両者の開きは、約5倍。 ☆早い段階で、人から人に感染するのをどれだけ封じられるか・・・・・行政の判断が極めて重要。それともう一つ大事なことは、一般市民の理解。一人一人が自分の命と健康を守る、そういう意味での「自助」が大事である。・・・・・事前の予防策を徹底して、正しい知識を持ち、各個人が正しく感染予防する。自分が感染したら、人にうつさない。そのために外出を自粛し、マスクをする。 ☆協力病院に防護服(軍隊で使うような服)やタミフルやリレンザを配布。しかし、万全ではない。医師や施設も不足している上に、医師や看護士なども患者の側になる。 ☆特効薬のワクチンができるまでに6ヶ月が必要。その間、個人が予防することが肝心である。 |
<文責:藤森弘司>
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