2008年7月15日 第72回「今月の言葉」
認知療法の「認知の歪みー(7)」

●(1)「認知療法」における私たちの心の動きを表したのが、下記の図です。(a)(b)(c)(d)それぞれの解説は、<第66回>及び<第65回>をご参照ください。

               <認知の歪みのプロセス>


               *受けとめ方
               *思い込み
               *解釈(推測)
               *情報収集

●(2)さて、今回は・・・・・

<「べき」思考(思考的マスターベーション)>

 □~するべき
 □~するべきでない
 □~しなくてはいけない
 □~しなくてはダメ
 □~してはダメ

●(3)自分(藤森)で書きながら、これを読むと、私はゾッとします。若い頃の私は、これの連続でした。「認知の歪み」は、私(藤森)自身のためにあるような心理学ですが、その中でも、「べき思考」が一番強くあったように思います。

 「人間として、当然だろう!」「努力すべきだ!」「人生は、このように生きるべきだ!」「こういう場合は、このようにすべきだ!」「(相手を批判する場合は)そのようなことをやるべきではない!」「頑張らなくてはいけない!」「根性がない奴はダメだ!」「男は男らしくすべきだ!」

 べきべきべきのオンパレードでした。
 多分、話の多くは、<「べき」思考>で終わっていたように思います。思い込み、決めつけの連続だったように思います。随分、固い生き方、融通のきかない生き方をしていたものです。
これでは人生が破綻するのは当然です。ガチガチに固定された人生、余裕がまったくなく、価値観が固定された人生を生きていました。今思うと、本当に不思議な人生を生きていたものです。

●(4)さて、これを全部、引っくり返すことができます。

□~するべき・・・・・・・・・・・・・・・・・⇒~しても良い
□~するべきでない・・・・・・・・・・・・・・⇒~しなくても良い
□~しなくてはいけない・・・・・・・・・・・・⇒~   〃
□~しなくてはダメ・・・・・・・・・・・・・・⇒~   〃
□~してはダメ・・・・・・・・・・・・・・・・⇒~しても良いし、したくなかったらしなくても良い。したくなくてもしても良いし、したいがしない自由もある。

 お陰様で、生きるのがとても楽になりました。
 つまり、この「べき思考」は、立派な事を言っているようですが、実は、自分自身の人生を生きていません。誰が決めたことかはわかりませんが、誰かが決めた路線の通りに生きろという「指令」で生きていることになります。自分の選択の余地がありません(交流分析的には「脚本」)。

 それに比べて、「⇒」の方は、その選択権を自分が有していることになります。そうであるならば、その時々の都合や気分で、好きなほうを選択できるのですから、楽に生きられるようになります(脚本の書き換え=リプログラミング=解脱=無や空)。
 一度、こちらの側にくると、もう二度と「べき思考」の世界に戻りたくないですね。もし皆さんにこういう思考があるようでしたら、一度、こちらの側に来てみませんか?生きるのが楽になりますよ、ご招待申し上げます!

<文責:藤森弘司>

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