2007年3月15日第56回「今月の言葉」「認知の歪み③」
投稿日 : 2018年3月7日
最終更新日時 : 2018年3月7日
投稿者 : k.fujimori
2007年3月15日 第56回「今月の言葉」
認知の歪み③
●(1)前回掲載したものの中から、一部を再録します。
結局、世の中、「認知の歪み」に限らず、学問とか理屈だけを学んで、学んだことを「実践」しない人がほとんどです。もったいないし残念なことですね。
そういうわけで、この「認知の歪み」の実例をシリーズでお届けしてから、心理学でいう「認知の歪み」を解説したいと思っています。
何故、シリーズで実例を紹介するのかといいますと、心理学の「認知の歪み」を、これこれこうですよと紹介し、解説をしても、ただそれを理屈で「ああそうか」と理解して、その後は、「認知の歪み」は詳しく知っているが、「認知の歪み」を相変わらず続けているという人間になって欲しくないという強い願いがあるからです。 |
●(2)さて今回は、私の尊敬する牧野恭仁雄先生(日本で唯一の命名の専門家・巻末に詳しくご紹介)の、驚異的・革命的な学説をご紹介します。
最近、牧野先生よりお聞きしたものですが、私の専門分野ではありませんので、うまく説明できるか自信がありませんが、挑戦してみます。
なお、下記の資料は、牧野先生が作成したものですが、手書きのメモは、私(藤森)が先生の説明を伺いながら記入したものです。
●(3)漢字には「六書の分類」というのがあります(漢和辞典の最後に書かれているもので、伝統的な分類だが合理性がない)。
①象形文字 |
絵 |
鳥・羊・川・水・山・木・日・月・魚・馬 |
②指事文字 |
記号 |
一・二・三・四・八・上・下・小・末・朱・本 |
③会意文字 |
意味と意味の組み合わせ |
林・森・鳴 |
④形声文字 |
意味と音の組み合わせ |
洋・池・江・河・汗・珠・悲・鈴 |
⑤転注文字 |
意味が変化した字 |
楽・長 |
⑥仮借文字 |
あて字 |
来・豆 |
●(4)上記の中の、④の「形声文字」は全体の80%を占めると学者は言っているそうです。そして「会意文字」の中の「解読」できない全ての文字を「形声文字」と言っているようです。この形声文字は「意味と音の組み合わせ」とあります。
さて、これからが面白いのです。牧野先生が作成された下記の一覧表をご覧ください。例えば、最初の象形文字は「羊」を表わすそうです。そして、「羊」を使った文字が、右端の欄に並んでいます(「養・祥」「洋・群・鮮・達・美・翔・詳」)。
今まで、私たちは、「偏」は意味を表わし、「旁(つくり)」は音を表わすと学んできました。例えば、下記の「洋」ですと、偏のサンズイが「水」を意味し、旁の「羊」が発音の「よう」を表わすと学んできました。
●(5)「形声文字(意味と音の組み合わせ)」であると教えられた私たちにとっては、「養・祥・洋・群・鮮・達・美・翔・詳」などは、意味が全く違う漢字として認識しています。
しかし、ここで疑問が湧きます。「旁(つくり)」は、発音のためだとはいえ、共通の「羊」が、ただ単に発音だけのために利用されたのだろうか?昨今のコンピューターのようなものならば、そのような単純な利用の仕方(記号として)があるかもしれませんが、絵である象形文字が、そんな利用の仕方をするだろうか?しかも、昔は、統計とかデータとかの概念がなかったであろうと推測されます。そういう中で、発音だけを考えて「羊」を使うというのは、やはり、何か割り切れないものを感じます。
同様に、「白」が、「拍・珀・舶・伯・泊・狛・迫」など、私たちが理解している意味で考えるならば、全く違う漢字の中に、何故、含まれるのか?確かに、古今の学者が説明するように、「偏」が意味を表わし、「旁(つくり)」が音を表わすという説明は、一応は、理屈がつきます。
しかし、ここでよく考えてみれば、「羊」を使うのならば、羊を連想するもの、「白」を使うのならば、白を連想するような、何か共通するものに使ってほしいものだと思います。その典型的な例が、寿司屋の湯呑み茶碗です。そこに書かれているものには、「魚偏」を使った魚の名前がずらっと並んでいます。
ところが、下記の一覧表には、(「形声文字」だとするならば)そのような統一性・共通性が全くありません。
●(6)そこで、牧野先生は研究に研究を重ね、検討に検討を重ねた結果、<古代中国人が派生的な意味を使って組み合わせながら漢字を作っていったことを発見しました>。
それが下記の欄の三番目にある「派生義」です。古今の大学者が全く想像もしなかった「世紀の大発見」です。それは、象形文字が表わすところの、例えば「羊」や「白」の持つ「派生義」、つまり、派生的な意味を発見しました。<表の下に続く>
●(7)上記の表の最初の文字、「羊」を取り上げてみます。
中国の平原を考えてみましょう。広いところで、真白い「羊」はとても目立ちます。そこで「見えやすい」という「派生義」を考え出せば、「洋・群・鮮・達・美・翔・詳」は、「見えやすい」という共通の意味で成り立っていることがわかります。
同様に、「食品・食肉」としての「羊」を考えれば、「養・祥」が共通の意味で成り立っていることがわかります。
漢字は言葉で説明するより、単純に分解してしまったほうがよくわかります。つまり言葉で考えず、イメージで組み合わせればいいのです。
<食品・食肉>
養=羊+食=羊の肉を食べさせる
祥=示(祭壇)+羊=神様に肉をそなえる=良いことがある
<見えやすい>
洋=水+羊=遠くまで見える水面
群=君(まとまる)+羊=たくさんいる状態
鮮=魚+羊=あざやかな色の魚
達=大+羊+シンニュウ(行く)=大きな目標に向かう
美=羊+大=大きく、目立つ
翔=羊+羽=派手に飛び回る
詳=言+羊=細かいことまではっきり説明する
●(8)二番目の「白」を取り上げてみます。
これは牧野先生の考えでは、鍾乳洞の中で、ポタポタと落ちた「石灰の塊り」だそうです。そこから、一定間隔で音を出すから、拍子の「拍」。王(宝石)と白(たくわえる)で、地中の化石である琥珀の「珀」、舟と白で、たくさん積める大きな船の「舶」、人と白で、年令や経験を重ねた長老の「伯」。
石灰が下に溜まることから、とどまる・動かない意味の「泊」「狛(狛犬・・・神社の社頭に置かれる像)」、上のツララが伸び、下に石灰が溜まり、だんだんと近づくことから「迫」の字が作られました。
上表最後の「月」は、一般に「つき偏」と「にくづき偏」がありますが、この表を見ると、その意味がわかります。つまり、「月」と「肉」の象形文字が共に、「月」になった事から来ます。
<以上の資料や情報は、全て、牧野先生によりますが、作成した文章の責任は、全て、私(藤森)にあります>
<なお、牧野先生は「モノ+突き出す→可、鍾乳洞の石灰→白、開いた貝→中空、離れる→追、師、官(常時開放された建物)、管、用、辰などの象形文字を、世界中で牧野先生だけが最初の絵を割り出しています。一つの絵がわかると、何十もの漢字が同時に解けてくるそうです」>
<資料の中の、羊、牛、虫、口、也、由、月、韋などは、はじめの絵は解かれていますが、学者さんは「派生義」という発想がないため、これらを含んだほかの漢字の説明ができないまま。「派生義」さえわかれば、何倍もの数の漢字が解読でき、形声文字だと言ってきたもののほとんどが会意文字(意味と意味の組み合わせ)であることがわかるとのことです> |
●(9)さて、ここで、先ほど(5)で述べたことについて、もう少し詳しく述べます。
再録すると<同様に、「白」が、「拍・珀・舶・伯・泊・狛・迫」など、私たちが理解している意味で考えるならば、全く違う漢字の中に、何故、含まれるのか?確かに、古今の学者が説明するように、「偏」が意味を表わし、「旁(つくり)」が音を表わすという説明は、一応は、理屈がつきます。>
ここで、私(藤森)は<一応は、理屈がつきます>と言いましたが、実は、学者の世界には、こういうおかしなことがたくさんあります。
恐らく、学者の世界は、今までの「学説」を踏襲しながら、ふくらませていくというやり方しかできない、あるいはできにくい世界なのではないでしょうか?
「会意文字」の中の「解読」できない全ての文字を「形声文字」にしているそうですが、「形声文字」が80%を占めるということは、80%もの「漢字」が解読されていないということになります。解読できないために、何か「屁理屈」をつけたのが「形声文字」ですが、それが漢字全体の80%もあるのでは、これはもうメチャクチャな話です。
●(10)そこに疑問を持ち、「派生義」という考え方を考案された牧野先生の独創性は驚異的です。牧野先生は、独自に考えたことではなく、<古代中国人が派生的な意味を使って組み合わせながら漢字を作っていったことを発見>したのだとおっしゃいます。
恐らく、事実はそうなのかもしれません。しかし、現在、何も無いところから、そのように「派生義」を挿入することで、多くの漢字が串刺しのように、統一的な「意味のある塊」にできるという「革命的な発見」をしたことは、学者の世界では不可能に近いことです。こういう発想の飛躍性は、在野の天才的な専門家だからこその業績で、文字通り「世紀の大発見」です。
こういう発見がどれほど凄いことか、浅利篤先生の言葉を紹介しましょう。
故・浅利篤先生は、1912年生。千葉商大卒。独立美術展第一回展入選。美術文化展及び新制美術展創立会員。美術の科学的理解を目的とし、作品の心理生理的意味を発見し、心理診断法を考案した。1973年小岩井小学校長退職。日本児童画研究会長、色盲矯正教育会会長。色彩に関する本を多数著しています。その浅利先生が、「児童画の秘密」(黎明書房)の中で、次のようにおっしゃっています。
<【発見というものは世界中で、ホンの数人の人しか判らないものだよ】>
●(11)歴史にしても、心理学にしてもそうですが、以上の説明を聞いて、従来からの「説」と、牧野先生の「新説」のどちらのほうが無理が無いか、合理的か、受け入れやすいか、より納得できるかという当たり前の感性(学者的な感性ではありません!)、自然な感性があれば判断できることです。
日本という社会は、「誰」が言っているか、「肩書き」はどうか、「権威」はどうかなどが中心になっていて、説明している「内容」がどうであるかということは、多くの場合、二の次、三の次になる傾向が非常に強いです。
私(藤森)のように、権威が全く無く、後ろ盾も全く無く、頼るべき組織も無い一匹狼が存在していくには、シッカリと物事を見極める眼力や、より正しい方向感覚が求められます。私は、誰が言っていることであろうが、権威があろうが無かろうが、いいものはいいという確固たる判断基準(これを禅では「是々非々」といいます)、謙虚に聞き分ける姿勢を大事にしています。
日本ではほとんどの場合、ノーベル賞受賞者の言う事は、彼の専門分野であろうがなかろうが、どうってこともないようなことを言っていても、ありがたがる強い傾向があります。ノーベル賞を受賞すると、ほとんど「神格化」され、「全知全能者」のような扱いになってしまって、何を発言しても、内容をまともに吟味することなく、ありがたがる傾向がありますが、これは凄い「認知の歪み」です。
心理の世界にも、恐ろしいほどの「認知の歪み」がありますが、これはまた、機会を見て、その都度、お知らせすることにします。 |
●(12)牧野恭仁雄(くにお)先生をご紹介します。
牧野先生・・・日本で唯一の命名の専門家。象形文字にまで遡って漢字の深い意味を解読できる日本の第一人者。「姓名判断」とは全く違い、漢字の深い意味や心理学的裏づけを伴った独自の分野を開拓。
漢字の研究をライフ・ワークとし、現在、命名に関する執筆を行なっている。たずさわった命名相談は8万人以上になる。3万以上の名前、千種以上のリストを所有し、TVや雑誌などで名づけの解説もしている。命名に関する著書は、この分野でのロング・ベストセラー。
<名前に対する考え方>世の中には「どういう名前か」にこだわる人が多いが、名前そのものが子に影響することはほとんどない。名前と同時に送られる親の「心」が子に影響するものである。
<先生の著書>
☆幸せ名前大事典(主婦の友社) ☆はじめての名づけ百科(主婦の友社)
☆心と名前の不思議なつながり・名前学(全日出版)
☆新感覚 赤ちゃんの名前(主婦の友社)
☆別冊歴史読本・日本の「名前」ベストランキング(新人物往来社) 他 |
●(13)話はガラッと変わって、前回(2月15日、第55回「今月の言葉」)、下記の「米、朝が急接近したナゾ」「偽ドル紙幣」のことをご紹介しました。どうやらこれは本当のことらしくなってきました。それをご紹介する前に、前号のものを再録します。
*日刊ゲンダイ(平成19年2月10日)「米、朝が急接近したナゾ」より
「本当か?偽ドル作りは米国の自作自演」
「6カ国協議」がきのう(8日)から始まった。米、朝がドイツで事前交渉したこともあって、一気に「合意」する可能性も囁かれている。
これも、すべて米国が北朝鮮に譲歩したためだ。米国の譲歩をめぐって、仰天情報が流れている。米国は北朝鮮の偽ドル作りを批判してきたが、なんと偽ドルは米国自身が作っていた疑いがあるというのだ。
発端は、ドイツの新聞「フランクフルター・アルゲマイネ」が1月8日に報じた記事。偽造紙幣問題に詳しいクラウス・W・ベンダー記者が「偽造ドル紙幣の秘密」と題して報じた。フランクフルター・アルゲマイネ紙は、中道右派の権威ある新聞だ。
ベンダー記者は、「スーパーノート」と呼ばれる偽ドルがいかに精巧か、米国以外が作ることが困難かを詳細に説き、
「北朝鮮は偽ドルを作製する技術がない」
「偽ドルは東アジアではなく、中東、東アフリカ、ロシアから流入している」と指摘。
「偽造紙幣捜査官たちは、CIAが秘密印刷所で何をしているのか問い続けてきた」
「ワシントン北部に位置する有名な都市の施設には『スーパーノート』の印刷に必要な機械がある」
「CIAは秘密工作のための財源を偽ドルでまかなってきた可能性がある」
「偽ドル作りを北朝鮮になすりつけることもできる」と記している。
CIAが中東などの親米組織を支援するために偽ドルを与え、その親米組織が北朝鮮から武器を購入する時に偽ドルを使った可能性があるというわけだ。仮に、この事実を北朝鮮が掴み、米国に問いただしたとしたら、米国が突然、北朝鮮に譲歩したこともつじつまが合う。世界情勢に詳しい元外交官の原田武夫氏が言う。
「そもそも、極貧の北朝鮮に米国が驚愕するような偽札を作る能力はないでしょう。そんな技術があれば麻薬を輸出する必要がない。世界中の紙幣はドイツ製の印刷機で印刷されているだけに、ドイツは偽ドルに通じている。ベンダー記者は著書でも偽ドルについて詳しく書いています」
偽ドルはCIAが発行した「軍票」だったという説もある。もし、米国が偽ドルを作っていたとしたら、安倍政権はどう対応するのか。
●(14)日刊ゲンダイ(平成19年3月15日)「米国が北朝鮮と蜜月になった理由」より
「キーワードは『偽ドル紙幣』」
木で鼻をくくったような北朝鮮の対応だったハノイの「日朝国交正常化に関する作業部会」に比べて、極めて友好的だった米朝の作業部会。食事をしながらの和やかな会合をマスコミは「北朝鮮による日米分断作戦」と解説しているが、実は米国がベタ降りする理由があった。北朝鮮が「偽ドル紙幣は実は米国CIAが造ったものだ」と突きつけたからだというのだ。
偽ドル紙幣については1月にドイツの有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ」がこう報じていた。<北朝鮮が偽造したとされる100ドル札はドイツ製の高級印刷機とスイス製の特殊インクによるもので、北朝鮮はこの機械とインクを手にいれていない><これはCIAが撹乱工作のために製造したものだ><偽ドル造りを北朝鮮になすりつけることもできる>
これはほぼ事実で、1月中旬にベルリンで行なわれた米朝直接協議の席で北朝鮮がこれを持ち出したという。
「金桂冠外務次官は、自国が入手した偽ドルの紙幣ナンバーから、米国が裏で支援するインドシナ半島やアフリカの反政府ゲリラに渡されたものであることを具体的に示したといわれる。米国代表のヒル国務次官補はビックリして、協議を中断し本国に問い合わせたそうです。これを機に米国の北朝鮮への対応がガラリと変わったのです」(国際ジャーナリストの歳川隆雄氏)
米国は、偽ドルが自国製なんてことは認めっこない。「北朝鮮はテロ支援国家」という規定を外すことになったのもこれが根拠らしい。安倍が「拉致問題の解決」だけを言っている裏で、米国は北朝鮮容認に大きく舵を切った。 |
<文責:藤森弘司>
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