2018年8月15日第190回「今月の言葉」「得失一如とは何か?(補足③)」(大谷翔平投手②)
6月15日に大谷翔平投手について掲載しました<第188回「得失一如とは何か?(補足①)」>。
この時点は、大谷選手の成果が最も上がっている頃でした。少々勇気が必要でしたが、その後を見ると、勇気を出して良かったと思っています。天才選手ですので、この困難な状況を乗り越えて、さらに飛躍して欲しいと思っていますが、現時点ではかなり「得失一如」の言葉が相応しい状況になっています。 天才バッターだった評論家の張本勲氏は、日曜日、朝8時からの「サンデーモーニング」で、大谷投手の二刀流をかなり批判していました。 私(藤森)は素人で僭越ながら、テレビを見ていつも張本氏の考え方と同じだったために、「そうだ!そうだ!」と声援を送っていました。ところが、張本氏は、大谷選手の成績がどんどん上がってきたために、途中から脱帽してしまいました。それ以後私は、我が家で孤軍奮闘していましたが、だんだん、私の主張のような流れになってきています。 大谷選手は「超」の字がつくほどの天才であることは私も認めていますが、環境・・・大谷選手の才能を最大限に発揮できるような環境が整っていないように思えてなりません。 しかも、その環境を整えることは極めて難しいように思えます。もちろん、理論的には簡単なことですが、現実的には難しいように思えます。そして、現時点では、私が考える「よろしくない環境」がどんどん現実になっているように思えます。 大谷選手の飛び抜けた才能と人柄の素晴らしさは天文学的です。それでもその才能を最大限に発揮することはかなり困難なように思えてなりません。 それらをこれから詳細にチェックしてみたいと思います。 |
「大谷翔平の二刀流がソーシア監督に壊される!」(週刊ポスト、6月1日)
<略> 「今後、連戦が続いて日程がキツくなり、優勝争いが過熱してくれば当然、大谷頼みの考えが監督の頭に浮かんでくるでしょうし、実際にそういう時期が間違いなく来る」 と語るのはMLB研究家の福島良一氏だ。 「ソーシア監督が10年契約の10年目で“勝負の年”を迎えているというのも気になります。エンゼルスは3年連続でポストシーズンに進出していないだけに、今年は背水の陣。何としても結果が欲しいところでしょうからね」(福島氏) <マー君の二の舞?> 今のところ投手・大谷は中6日で毎週日曜日に先発登板するローテーションとなっている。 登板前後日は調整と休養に当て、火曜日から金曜日までの4日間はDHとして打者・大谷がベンチに入る。ブルペンでの投げ込みは、この4日間の中で調整することになる。 これが中5日となると、すべてのスケジュールがずれ込んでくる。 ブルペンでの調整は頻繁になり、打者としての出場にも影響が出る。DHでの出場は週に3日のみとなる可能性もあるうえ、打撃練習の回数も必然的に減ってしまう。練習不足と試合から遠ざかることによって、打棒が湿ってしまう可能性は否定できない。 さらに心配なのは、肩・肘への影響だ。 大谷はエンゼルス移籍時に、右肘の内側側副靭帯の損傷があったことが報じられた。症状は軽度で、組織の修復・再生を図る「PRP注射」による治療で済んだとされているものの、登板過多は深刻な影響をもたらしかねない。 「大谷の決め球であるスプリットは、肘への負担が大きい。ヤンキースの田中将大(29)が渡米1年目に肘を故障して戦線を離脱したのもスプリットが原因です。大谷はスプリットの投球を減らすなどケガを防ぐための配給を工夫しているが、シーズン途中でプレー環境が一変してしまうと状態が一気に悪化するかもしれない」(現地記者) 大谷は日本ハム時代、走塁中に痛めた右足の爆弾も抱えており、昨オフは手術も行っている。ケガはすぐそこにあるリスクだ。 <「ベーブの壁」を超えるか> ツインズ戦登板から2日後の5月15日、大谷は対アストロズ戦において今季初めてとなる「2番・DH」で出場。本来は2番のトラウトを1番に回した。リーグMVP2度のトラウトの“代役”を任せるのだから、ソーシア監督が打者・大谷に寄せる信頼は高い。 「とはいえ、ソーシア監督としては、打者・大谷をカバーできる選手はいるが、投手・大谷の代わりはいないと考えている。本音では、大谷には投手に軸足を置いてやってもらいたいはずです。シーズンが終盤に近づくにつれ、今後はますますその流れは強まるでしょう」(福島良一氏) もし、なし崩し的に「投手中心の二刀流」にスライドしてしまえば、大谷がエンゼルスを選択した意味はなくなってしまう。そのうえ、現状のような「100球制限」によって、不安定な中継ぎに勝ち星を潰されてしまっては、達成確実と思われていたベーブ・ルース以来100年ぶりの「10勝・10本」も、危うくなってしまうかもしれない。 前出・現地記者がいう。 「エンゼルスの慢性的な投手不足は、大谷をフル回転させて解消できるようなものではない。一刻も早いタイミングで大物クローザー獲得に乗り出さないといけないでしょう。今年は幸い、負けが込んで早くも優勝戦線を離脱したチームが少なくない。大谷の二刀流の成功は、エンゼルスのフロントの補強の行方にかかっています」 チーム事情によって、大谷の二刀流に傷がつく・・・そんな事態だけは避けてほしいものだ。(週刊ポスト、6月1日) |
「大谷右肘負傷、前半絶望」(東京新聞、6月9日)
<故障リスト入り 球宴も微妙> 米大リーグ1年目から投打の「二刀流」で活躍するエンゼルスの大谷翔平(23)が8日、右肘の内側側副靭帯の損傷で自身初となる10日間の故障者リスト(DL)に入った。7日にはロサンゼルスで、右肘に自身から採取した血小板を使って組織の修復や再生を図る「PRP注射」と呼ばれる治療を受けた。 ・・・ヤンキースの田中将大が2014年にPRP注射による治療から投球練習再開まで1ヵ月以上要しており、大谷は前半戦の投手復帰が絶望的で、指名打者としてファン投票に候補入りしているオールスター戦(7月17日・ワシントン)への出場も微妙になった。 先発登板した6日のロイヤルズ戦は右手中指のまめが悪化し、4回1失点で降板していた。エンゼルスのエプラー・ゼネラルマネージャー(GM)は「降板し、アドレナリンが収まったら肘が張ってきたと大谷が言ってきた」と経緯を説明。同GMは復帰に1年以上かかるとされる靭帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の可能性を否定せず「避けられたらいい。このままの治療で回復できれば」と希望を語った。 伝説の名選手ベーブ・ルース以来百年ぶりの同一シーズンでの「2桁勝利、2桁本塁打」の快挙達成に暗雲が垂れ込めた。 今季の成績は投手で9試合に先発し4勝1敗、防御率3・10、打者では34試合で打率2割8分9厘、6本塁打、20打点。
「大谷 右肘負傷DL入り」(東京新聞、6月9日) <慣れぬ環境 負担蓄積か 細心の注意でも防げず> ・・・プロ野球日本ハム時代は足首のけがや太もも裏の肉離れに苦しむことはあっても、肘の故障で離脱したことはなかった。 大谷選手は滑りやすいとされるメジャー公式球や硬いマウンド、長い移動距離など慣れない環境で投打にフル回転してきたことで、知らず知らずのうちに右肘への負担が蓄積されていた可能性がある。 エンゼルスはキャンプ前の1月にエプラー・ゼネラルマネージャー(GM)らが来日し、日本ハムから大谷選手の育成に関するマニュアルを譲り受けた。本場でもほとんど前例がない二刀流の起用法に万全を期し、開幕から投手では中六日以上の間隔を空け、当番日前後は打者出場を控えるなど日本時代を踏襲したものの、細心の注意を払っていたはずの故障を防げなかった。 ベーブ・ルースに続く快記録に向けて順調に数字を伸ばし、注目度は高まる一方だった。今後は最低でも3週間はノースローとなる。現時点では打席に立つだけの起用もない見込み。歩みが一度止まってしまうからには再び、投打で軌道に乗せることは容易ではない。 |
「“偏食”大谷 左腕嫌い、内弁慶、本塁打は中堅偏重」(夕刊フジ、7月26日)
(略)大谷は右投手を打率・324、8本塁打、21打点と打ち込んだいるのに対し、左投手には・167、本塁打ゼロ、2打点と散々(試合前時点)。 大谷の“偏食”ぶりはそれだけではない。8本塁打はすべて本拠地。エンゼルスの新人でメジャー1号から8号を全て本拠地で放ったのは球団史上初で、「雰囲気だったり、そういうものかなと」と首をかしげる。ホームでは打率・290、ビジターでは・264とやや“内弁慶”の傾向が出ている。 さらにいえば8本塁打中、4月27日のヤンキース戦で放った右越え4号以外の7本が中堅方向。エンゼル・スタジアムの中堅方向が「エリア17」と呼ばれる日も近いか。
「エンゼルス大谷またショック」(夕刊フジ、8月2日) <チームもポストシーズン進出あきらめた> トレード期限(日本時間8月1日)を前に、エンゼルスは30日、イアン・キンズラー内野手(36)をレッドソックスへトレードした。これでエンゼルスは今季のポストシーズン進出を完全に諦めた形となった。 キンズラーは、大谷翔平投手(24)にとって面倒見のいい的兄貴な存在だった。4月3日のインディアンス戦でメジャー初本塁打を放った大谷がベンチで「サイレント・トリートメント」(新入り選手を無視するいたずら)を受けたとき、「一緒に祝って」と最初に抱きついたのがキンズラーだった。<略> エンゼルスは同26日にも大谷の相棒、正捕手のマーティン・マルドナドをアストロズへトレードしたばかり。大谷が信頼するチームの要の2人が放出された。寂しい残りシーズンだが、チーム事情に左右されることなく打席に入り、投手としての復活にも集中できる環境になったともいえる。 <藤森注・捕手のマーティン・マルドナドは、「昨季のゴールドグラブ捕手で、大谷とはキャンプからバッテリーを組んだ相棒。ワンバウンドのスプリットも後ろにそらさない守備で信頼関係を築いていた」(夕刊フジ) 私がいつだったかテレビで見ましたが、捕手に相応しい暖かくて、面倒見の良い素晴らしい捕手だなと直感していました。確か、今春、日本に来て、大谷の情報を集めていたように記憶しています。このトレードがどのように影響するか、しないのか、注目しています>
「日本時間30日現在、打率・260、9本塁打、25打点。7月以降は打率・207、直近1週間は・130と精彩を欠いている。 DHの使えない敵地の交流戦に加えて、最近は相手先発が左腕だとスタメンを外れるようになった。打つだけの選手にしては物足りないと首脳陣が判断するのも無理はない」(日刊ゲンダイ、8月1日) 「本人に自覚はなくても7月31日現在、対右腕が打率・298なのに、対左腕は・163。右肘を痛めて打つだけのDH専任のいま、相手先発は左腕だとスタメンを外れるケースが多い。 そんな大谷のさらなる弱点が、図らずも浮き彫りになったのが31日のレイズ戦だ。 この日は5打数1安打。8回に左腕アルバラードの155キロの速球を痛烈なライナーで中前に運んだものの、2番手左腕のヤーブローの変化球攻めには全く対応できず、2つの空振り三振を含む3タコ。計11球のうち実に10球が120キロ前後のカーブで、2つ目の空振り三振は外角の完全なボール球に手を出してのものだった。 『カーブ系のボールがくる可能性が高いと分かっていると、余計に追い掛けたくなるというのがある』とは試合後の本人。 外角に逃げていくカーブを、強引にとらえようとしては打ち取られるという悪循環にはまっているようなのだ」(日刊ゲンダイ、8月3日)
「元大リーグのピッチャー、小宮山悟氏は、7月29日のサンデーモーニングで、『ピッチャーは、試合中、内野手と細かいコミュニケーションが必要だから、英語がうまくないと大変だろう』と発言していました」 |
「大谷連発 10、11号」(夕刊フジ、8月5日)
3日(日本時間4日)、クリーブランドでのインディアンス戦にメジャー初となる3番でDHとして出場。1回の第1打席に左越え2点本塁打を放った。節目となる10号本塁打は初めて本拠地以外の球場で放った一発だった。 さらに1点をリードされた3回の2打席目には、右中間に豪快に11号同点ソロを打ち込んだ。1試合複数本塁打は初めて。 ・・・・・・左翼フェンスも6メートルと高く、左打者が左越えに本塁打を打つのは難しいが、圧倒的な飛距離を見せつけた。 2本目は・・・・・・スタンド上段に飛び込む完璧な当たり。飛距離は135メートル。 メジャーの新人の年に10本塁打以上した日本人メジャーリーガーとして7人目となった。 新庄剛志10本(メッツ)、松井秀喜16本(ヤンキース)、井口資仁15本(ホワイトソックス)、城島健司18本(マリナーズ)、福留孝介10本(カブス)、青木宣親10本(ブルワーズ)。(夕刊フジ、8月5日)
「ソーシア監督 今季限り 大谷二刀流消滅危機」(日刊ゲンダイ、8月7日) そもそもエンゼルスを選んだ最大の理由であり、後ろ盾でもあった指揮官だけに。 大谷翔平が受けるであろうショックの大きさは計り知れない。 ソーシア監督はエンゼルスを率いて今年で19年目。2002年のワールドシリーズを制するなどア・リーグの最優秀監督賞を2度受賞。 09年からの10年契約が今年いっぱいで切れるため、その去就が注目されていた。・・・・・・「モレノ・オーナーの決断ですよ。少なくとも今年の春先の時点で、ソーシア監督は来期以降も指揮を執るつもりでしたから」(日刊ゲンダイ、8月7日) |
「大谷 対戦の多い同地区でからっきしの謎解き」(日刊ゲンダイ、8月9日)
8月に入って早くも3本塁打と調子は上向きとはいえ、気になるデータがある。 ここまでの12本塁打のうち、11本はエンゼルスが所属するア・リーグ西地区以外の球団から打ったもの。同地区4球団との対戦に限れば70打数16安打の打率・229、1本塁打、5打点とからっきしなのだ。 スポーツライターの友成那智氏がこう言った。 「大谷は対戦が少なかったり、初めて当たる相手に強いことからも、研究されていないチームからは結果を残せるということでしょう。全米の注目を集めて入団しただけに、同地区のライバルは徹底的に大谷を研究、分析したことは想像に難くありません。各球団とも、大谷が苦手とするインハイの直球とアウトローのチェンジアップを徹底しています。」(日刊ゲンダイ、8月9日)
「2点タイムリー 3試合連続安打大谷」(夕刊フジ、8月14日) 本拠地でのアスレチックス戦に「3番・DH」で2戦連続で先発出場し、8回の第5打席に左前へ2点適時打を放った。3試合連続安打となった。 この日は相手先発右腕ケーヒルのチェンジアップにタイミングが合わずに苦戦。4打席目まで三振、遊ゴロ、三振、三振といいところがなかっただけに、結果を出したい打席だった。 大谷の投手としての復帰日程も徐々に進められている。11日に、右肘のけがの後、初めてブルペンに入り、カーブとスライダーを交えて23球を投げた。特に問題はなく、一夜明けのこの日も試合前にキャッチボールで88球を投げて調整した。(夕刊フジ、8月14日) |
<私(藤森)の感想>
(1)「ソーシア監督 今季限り 大谷二刀流消滅危機」 (2)イアン・キンズラー内野手(36)をレッドソックスへトレードした。キンズラーは、大谷翔平投手(24)にとって面倒見のいい的兄貴な存在だった。4月3日のインディアンス戦でメジャー初本塁打を放った大谷がベンチで「サイレント・トリートメント」(新入り選手を無視するいたずら)を受けたとき、「一緒に祝って」と最初に抱きついたのがキンズラーだった。<略> (3)大谷の相棒、正捕手のマーティン・マルドナドをアストロズへトレード。大谷が信頼するチームの要の2人が放出された。 (4)「大谷は対戦が少なかったり、初めて当たる相手に強いことからも、研究されていないチームからは結果を残せるということでしょう。全米の注目を集めて入団しただけに、同地区のライバルは徹底的に大谷を研究、分析したことは想像に難くありません。各球団とも、大谷が苦手とするインハイの直球とアウトローのチェンジアップを徹底しています。」 (5)ここまでの12本塁打のうち、11本はエンゼルスが所属するア・リーグ西地区以外の球団から打ったもの。同地区4球団との対戦に限れば70打数16安打の打率・229、1本塁打、5打点とからっきしなのだ。 (6)大谷選手は滑りやすいとされるメジャー公式球や硬いマウンド、長い移動距離など慣れない環境で投打にフル回転・・・・・・移動距離は、日本では想像もできません。広さだけでなく、寒暖の差もとても大きく、寒さに震える画面を見たこともあります。 (7)「元大リーグのピッチャー、小宮山悟氏は、『ピッチャーは、試合中、内野手と細かいコミュニケーションが必要だから、英語がうまくないと大変だろう』と発言していました」 これら数々のハンディを乗り越えて、是非、成功して欲しいものですが、何もかもが成功するということがあるのだろうかと、私は、残念ながら、疑問を持たざるを得ません。 しかし、これらの悪条件を乗り越えて成功するだけの「半端ない素質」があることを、私(藤森)は信じています。
<<「得失一如」については、第167回「得失一如とは何か?③ー①」をご参照ください>> |
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