2023年10月15日第252回「今月の言葉」「『般若心経』の神髄『無』『空』とは何か?⑥」

(1)私(藤森)が信頼しているジャーナリストの長谷川幸洋氏が、夕刊フジ「ニュースの核心」(2023年10月13日)で、次のように述べていらっしゃいます≪下記の情報と、最後の「4」<<「無」や「空」の反対>>をご参照下さい。≫。

 「ウクライナと台湾に逆風」

 <略>

 台湾も厳しい立場だ。イスラエルに比べれば、米国にとって、台湾の優先順位は低い。それだけ、日本に対する期待は相対的に強くなる。

 中国とロシアは、ほくそ笑んでいるに違いない。米国の関心と資源がイスラエルに集中する分、ウクライナと台湾からそれていくからだ。

 日本の岸田政権は残念ながら、ボケまくりだ。

 首相官邸に情報連絡室を設置したのは、攻撃から4日もたった10月10日だった。岸田首相は「すべての当事者に自制を求める」などと言っている。ハマスによる「凶悪なテロ」という認識がない証拠だ。米欧5カ国の共同声明は、明確に「テロ行為」と非難した。 

 最初から、この調子では、先が思いやられる

<はせがわ・ゆきひろ氏・・・ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書に『日本国の正体 政治家・官僚・メディアー本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

(2)「田中角栄国難脱出大構想あらば・・・(3)」(小林吉弥氏、夕刊フジ、2022年5月19日

 <経済成長には東京一極政治の排除>

 この国の現在の最大の「国難」は、破綻状態にあると言ってもいい財政である。2021年度末時点での「国の借金」(長期債務)は、実に1000兆円を超えた。国民一人あたり1000万円近い借金を抱えている勘定になる。

 対コロナ対策への巨額支出のほか、少子高齢化が拍車をかける中での、医療、介護などの社会保障費の増加で国債発行額が増え、全体を押し上げたことに他ならない。

 こうしたことに加え、今後、ロシアによるウクライナ侵攻が終結を向かえた場合、わが国は米国、NATO(北大西洋条約機構)諸国などとともに、戦後のウクライナの復旧、復興へ向けての応分の資金拠出を覚悟しなければならなくなる。

 過般の世界銀行の会議では、ウクライナの建物やインフラの直接的被害額に、輸入軽減などの間接的影響を加味しての被害額は、同国のGDP(国内総生産)の3倍に相当し、実に5600億ドルを超えるとの見方が出た。この戦争が長期にわたった場合は、わが国の応分の負担はさらに過重なものになることは言うまでもない。財政はいよいよ土俵際だということである。

 政府は2025年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させる財政健全化目標を掲げているが、財務省内から「とてもムリ」という声が聞こえてくる。

 こうした喫緊の課題を、経済・財政運営に自信を持っていた角栄なら、果たしてどう乗り越えようとしただろうか。

 田中は元々、ケインズ経済学を信奉した積極財政論者である。近年の数代のトップリーダーは、口をそろえて経済をまず成長軌道に乗せるべきだと唱えるが、この部分では田中は同様である。

 ただし、田中が一味違うのは、東京一極集中のみの中央集権政治を排除、真の地方自治の確立の中で、地方経済の成長底上げに、全精力をかけてチャレンジしただろうという点である。

 かつて田中が首相の座を失脚して間もなく、秘書だった早坂茂三は筆者にこう言ったことがあった。

 「オヤジ(田中)さんは、日本列島改造論の一方で、やがては47都道府県の改組、これを8地方ほどに統合しての『道州制』も視野に入れていた」

 田中が胸に秘めたとされる、新しい国づくりの「道州制」とは何か。そのメリットは。以下、次回で。(敬称略)

(3)「田中角栄国難脱出大構想あらば・・・(4)」(小林吉弥氏、夕刊フジ、2022年5月21日)

 <真の地方自治へ、国土の平準化>

 経済成長を軌道に乗せるには、地方経済の底上げが不可欠というのが、積極的財政派・田中角栄の一貫した姿勢であった。

 一方で、ここ数代のトップリーダーの経済を含めた地方活性化策は、何ら成功を見せていない。あえて地方創生担当相なるポストまで新設したのに、結局は長年続けてきた都道府県へのチマチマとした旧態依然の交付金、補助金というバラマキ政策でやり過ごしてきた。知恵がなく、税金の無駄遣いという“硬直性”は恐るべきものである。

 この国の政治家は、総じて税金が国民の「血税」であるとの認識が低い。公金に対する不祥事は問題外だが、新型コロナでにっちもさっちもいかなくなった生活困窮者が巷にあふれていても、国会議員は「歳費2割返納」でお茶を濁しているのが好例だ。“高給取り”の議員にとって、歳費の2割削減などは痛くもかゆくもないのである。

 そのうえで、この値上げラッシュで庶民が値を上げているのに、なお歳費を「月額100万円しかない」と発言する衆院議長がいるのだから、口が塞がらない。夏の参院選が終われば、向こう3年間は通常の国政選挙の可能性は薄いのだから、このコロナ禍下、「年間300百億円超の政党助成金は一時ストップ」が筋だろう。田中なら、そのくらいの決断があったのではと思っている。

 さて、前回触れた田中が視野に入れていたとされる「道州制」の設置である。現在の都道府県単位という小さな経済規模では、地方経済の活性化には限界がある。地域を広域化すれば、当然、交付金、補助金の類いは増える。その地域の自治権もおのずと、これまでとは比較にならぬ強さとなる。地域特有の経済発展も可能ということである。

 まさに、中央集権から真の地方自治へということでもある。

 地域発展の可能性を見れば、若者を中心に東京からのUターン現象が起こり、経済格差是正という国土の平準化が期待できる。だが、そうした国民目線を失った多くの国会議員は、あらゆる目配りから「道州設置法」には目をそむけているのが現実だ。田中が決断すれば、その政治的腕力により、与野党ひっくるめて法案を成立させることができたであろう。

 いま、少子高齢化が経済の衰退を呼び、今世紀中に「日本はなくなる」との衝撃的な見方さえ出始めている。田中は常々、こう言っていた。

 「火事になってから保険をかけてどうするというのだ」(敬称略) 

≪≪こばやし・きちや氏・・・1941年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。永田町取材50年以上のベテラン政治評論家。的確な政局分析、独自の指導者論・組織論に定評がある。著書に『田中角栄名言集 仕事と人生の極意』(幻冬舎新書)、『高度経済成長に挑んだ男たち』(ビジネス社)、『宰相と快妻・猛妻・女傑の戦後史 政治の裏に女の力あり』(大和書房)など多数≫≫

 

(4<<「無」や「空」の反対>>

 「怪しいポンコツ・トマホーク前倒し購入」(日刊ゲンダイ、2023年10月9日)

 <略>

 防衛ジャーナリストの半田滋氏がこう言う。「<略>そもそもトマホークの購入自体が、急に話が出てきて、1ヶ月程度で決定していることがおかしい。必要性についてきっちり詰めていない。政治家の勇み足で、防衛費が43兆円もあるのだから、国産ミサイルの開発を進めながら、あれもこれも買え、となってしまっている。超タカ派の木原防衛相が『台湾有事が早まる』と前のめりで、防衛省の現場はびっくりしているんじゃないか」

 <略>

 半田滋氏が言うように、トマホークの導入をいくら急いでも、自衛隊はすぐには使いこなせないのだ。25年度の配備まであと2年しかないに、イージス艦8隻すべてを改修できるのか。そもそも、自衛隊は飛来してくるミサイルを撃ち落とすことはできても、敵基地攻撃などやったことがない。運用体制を2年でつくれるのかどうか。

 <国会軽視で既成事実を積み上げ>

 <略>昨年11月末の国会会期末ギリギリに与党で敵基地攻撃能力の保有の協議が始まり、岸田が突然、「5年後の27年度に防衛費をGDP比2%にする」とブチ上げた。43兆円はドンブリ勘定で、何にどう使うのかの説明も議論もない。それどころか、不足する予算は増税で賄うと決めた。

 今回のトマホーク調達の前倒しについても、臨時国会が召集される前にサッサとやってしまった。またしても一切の説明ナシだ。

 ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。

 「防衛費の増額は、まず金額ありきで決まった。中身の説明はなく、財源もこれから。岸田政権ではこういう話ばかりです。安倍元首相の国葬も国会での議論なく決めて、検証も形だけ。『異次元の少子化対策』を言い出したのも年頭会見でした。国会閉会中に与党内で既成事実を積み上げて、国会を開いた時には『もう決まったこと』と議論しない。こんな国会軽視はありません。安倍政権時代からそうでしたが、岸田首相は国民の声を聞くと言っているだけに、なお罪深い」

 岸田は自分に都合のいいことだけアピールするモニターを使った説明ではなく、記者会見を開いて兵器爆買いについて説明したらどうか。もちろん、ジャニーズ事務所がマネした「1社1問」「NG記者はあてない」というデタラメ会見ではなく、まっとうな記者会見をすべきなのは言うまでもない。