2022年9月15日第239回「今月の言葉」「≪≪補足≫≫【脚本分析】と【投影】について②(プーチン大統領)」
(1)プーチン大統領のウクライナ侵攻は絶対に許されないことです。
しかし、その上で、アメリカやバイデン大統領、さらにはナンバー3のペロシ下院議長の酷さは、気の小さい私・藤森の想像を絶する恐るべきものです。次の(2)は、前回の8月、第238回で紹介したもののコピーです。 その次の(3)は、≪≪中国軍は4日から、ナンシー・ペロシ下院議長の訪台に反発して、台湾周辺で大規模軍事演習を実施し、日本の排他的経済水域(EEZ)にも弾道ミサイル5発を撃ち込んできた。≫≫ (4)は、≪≪「習氏がここまで言い、それでもペロシ氏は台湾に入った。はっきり言って『習近平の負け』であり、『習近平のメンツは丸つぶれ』」≫≫ (5)で、≪≪ペロシ氏の驚くべき、そして悪質な人間性≫≫を紹介します。最後に、≪≪本当にホッとする情報をお伝えします。「時代を読む」<法政大学名誉教授・前総長、田中優子先生>の<直線の国境>≫≫ |
(2)*「鈴木棟一の風雲永田町『悲惨な戦争責任は米国にも』」(夕刊フジ、2022年4月12日)
ロシアが侵攻したウクライナの惨状を招いた責任は、誰にあるのか。たしかに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「戦争犯罪」的な暴挙は否定できないが、ここにきて、ジョー・バイデン米大統領の責任を問う声も出ている。 シカゴ大学の国際政治学者、ジョン・ミアシャイマー教授が問題提起した。 「米国とNATO(北大西洋条約機構)に責任がある。ロシアは『ウクライナのNATO入りは絶対に許さない』と明確に警告を発してきたにも関わらず、西側諸国がこれを無視したことが、今回の戦争の要因になったのではないか」 これを月刊誌「文芸春秋」5月号で紹介したフランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は、こうも書いている。 「私も彼と同じ考えで、欧州を“戦場”にした米国に怒りを覚えている」 こうした見方を、日本国内で主張してきたのが中国分析の第一人者、遠道誉女史だ。 「ウクライナはバイデン米大統領に利用され、捨てられたのだ」 その説明を聞こう。 <遠藤誉氏「NATO入りを強く推進」> 「もともとウクライナは『中立』志向だった。2008年ごろのある調査では、50%のウクライナ国民がNATO加盟には反対だった。09年にバイデン副大統領(当時)がウクライナで演説し、『NATOに加盟するなら、米国は強く支持する』と語った。これにロシアのプーチン氏が強く反発した。東欧のポーランドや、バルト3国などが雪崩を打つようにNATOに加盟していた。ロシアにとり、ウクライナは『最後の緩衝地帯』だった」 19年、バイデン氏はウクライナの憲法に「NATO加盟を努力義務とする」といった条項を盛り込ませた。 極めつけは、昨年12月、バイデン氏がプーチン氏との電話会談で「ウクライナが戦場になっても米国は介入しない」と表明したことだった。 これが今回のロシア軍の侵攻の引き金になったというのが、大方の見方のようである。遠藤氏は、こう言った。 「この戦争はバイデン氏には都合がいい。アフガン撤退でNATOから失った信用を、回復できる。それに、米国産の液化天然ガス(LNG)に兵器などを大量に売りさばくこともできるためだ。米国の軍人には死傷者が出ず、まさに『高みの見物』といったところではないだろうか」 前出のトッド氏も書いている。 「ウクライナ人は『米国や英国が自分たちを守ってくれる』と思っていたのに、そこまでではなかったことに驚いているはずだ。米国はウクライナ人を“人間の盾”にしてロシアと戦っている」(鈴木棟一氏・政治評論家)
*「イラク戦争の暴走と酷似する歴史の皮肉」(日刊ゲンダイ、3月14日) <略>今回の戦争は冷戦終結から30年、一貫して米国が主導し、米国の世界戦略に基づいてきた「国際秩序」に対するプーチンの挑戦だ。ウクライナ市民の惨状は、プーチンの歴史観では当然の帰結という認識なのだろう。 軍事同盟の視点で欧州を見渡せば、旧ソ連側のワルシャワ条約機構は1991年に解体したが、欧米側のNATOは残ったまま。ベルリンの壁が崩壊し、90年に当時のベーカー米国務長官は「NATOの東方拡大はしない」と旧ソ連に明確な保証を与えたが、約束は反故。ポーランドやハンガリーなどが次々にNATOに加盟した。 以降も米国主導で旧ソ連を構成したバルト3国さえ引き入れ、NATOは東方拡大。その上、隣国のウクライナまでNATOに加われば、プーチンにとっては喉元に匕首(あいくち)を突きつけられたようなものだ。 「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的惨事」と訴え、旧ソ連の影響圏を復活させる野望を抱くプーチンにすれば、これ以上の欧米側の裏切り行為は許せなかったはずだ。<後略>
*「バイデン政権を支えているのは軍需産業」(日刊ゲンダイ、3月5日) <略>第2次大戦以降、ベトナムやアフガン、イラクなど世界各地で紛争の「火種」をつくっては軍事介入してきた米国。振り返れば、今回、ロシアが軍事侵攻する「火種」といわれる「ウクライナのNATO加盟議論」だって、きっかけをつくったのは米国だ。 2008年のNATO首脳会議で、ブッシュ大統領(当時)はウクライナとジョージアのNATO加盟を促進する具体策を提案。 この時はドイツ、フランスが「ロシアを無意味に刺激するな」として強く反対したため実現しなかったが、ロシアを刺激したのは間違いないだろう。<略>
*「鈴木棟一の風雲永田町<遠藤誉氏新著『中国の対ロシア戦略』>」(夕刊フジ、4月21日) <狂気のプーチン、笑う習近平> <略>ジョー・バイデン米大統領の「悪賢さ」についても言及した。 「ウクライナは『中立志向』だった。それを崩したのが、副大統領時代のバイデン氏だった。09年ごろからウクライナに入り浸るようになった。『NATOに加盟すれば、米国は強く支持する』と甘いわなを仕掛けた。そしてついに、暴君のプーチン氏がウクライナに軍事攻撃する方向に踏み切らせることに、“成功”した」 そして、次のような怒りの言葉。 「昨年12月にバイデン氏はプーチン氏側に電話会談を持ち掛け、『ウクライナで戦争が起きても、米国が参戦するつもりはない』とのシグナルを送った。いざ、『計算通り』に軍事侵攻が始まると、『ウクライナはNATOの一員ではないので、米国に防衛義務はない』『ロシアは核を持っている。米国が参戦すれば、第3次世界大戦が起きる危険性がある』などと詭弁を弄し、ウクライナ国民を塗炭の苦しみの中に追いやった」 さらに、こう鋭く指摘する。 「バイデン氏は外交経験で鍛えた『舌先三寸』で欧州を混乱させ、米国の国民が一滴の血も流さず、『利益』だけをいただくことに成功したのである」 巨視的な観点から、こうも語る。 「第2次大戦後、米国は絶え間なく米本土以外の地で戦争を起こし、金もうけをしてきた。その間に失われた人の命などを、将棋の駒のようにしか思っていない。まさに、ビジネスで戦争をしているのだ」 著者の遠藤女史が19日、語った。 「中国はウクライナでの戦争を『自国をより強大化することに役立つ』とみている。中国はロシアやインド、中東諸国を含めた『アジア・ユーラシア経済圏』を作り、経済面で各国を絡めとろうとしている」(鈴木棟一氏・政治評論家) |
(3)「中国戦闘機10機が中間線超え 10日連続」(夕刊フジ、8月14日)
<常態化狙い> 習近平国家主席率いる中国が、台湾への軍事的恫喝(どうかつ)を継続している。中国軍の戦闘機10機が12日、10日連続で中間線を越えたのだ。蔡英文総統の台湾は警戒態勢を崩していない。米国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調査官は「過剰反応だ」などと中国を批判した。 台湾の国防部(国防省に相当)は、12日午後5時(日本時間同6時)までに、中国軍の艦船述べ6隻と航空機述べ24機が台湾海峡で活動を行ったと発表した。うち戦闘機10機が中間線を越えたという。 中国軍は4日から、ナンシー・ペロシ下院議長の訪台に反発して、台湾周辺で大規模軍事演習を実施し、日本の排他的経済水域(EEZ)にも弾道ミサイル5発を撃ち込んできた。 日本と台湾、米国は厳しく批判・抗議した。 中国は10日に演習終了を発表したが、台湾海峡での軍事活動を継続しており、軍事圧力を常態化させる狙いとみられる。 蔡氏は11日、空軍作戦指揮部を訪れ、断固として国家の主権と民主主義、自由を守ると国軍を激励した。 米国は、台湾と引き続き関係強化を進める姿勢を明確にした。<後略> |
(4)「鈴木棟一の風雲永田町 メンツつぶされた習近平主席」(夕刊フジ、8月6日)
<報復は「台湾包囲作戦」> ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に、中国は事前に激しく抗議し、脅迫めいた言辞で阻止しようとした。 この訪台を最初に報じたのは7月18日の英フィナンシャル・タイムズだった。翌19日、中国外交部の報道官は直ちに反応した。 「断固として反対する。強行すれば、可能な限りの無慈悲な懲罰を受けると思え」 激しい言葉遣いであった。中国国防部の報道官までが「レッドラインを越えるな」との勢いで宣告した。 「もしペロシが訪台すれば、中国の軍隊は絶対に座視しないと思え」 ペロシ氏は8月2日の午後10時43分に、米軍用機でマレーシア・クアラルンプールから台北の松山空港に着いた。しかし、中国国防部の“警告”もあり、南シナ海の中国の主張する海域上空を迂回しての飛行だったという。 7月28日夜、ジョー・バイデン米大統領と、中国の習近平国家主席による電話首脳会議があった。習氏はここでも強く抗議した。 「台湾問題に関する中国政府と中国人民の立場は一貫しており、中国の主権と領土の一体性を断固として守ることは14億人以上の中国人の確固たる意志である」 こう言って習氏は決めゼリフを言った。 「中国の民意に逆らって火遊びすれば、大やけどを負うことになる」 中国分析の遠藤誉女史が言った。 「習氏がここまで言い、それでもペロシ氏は台湾に入った。はっきり言って『習近平の負け』であり、『習近平のメンツは丸つぶれ』である」 そして、指摘した。 「これほどメンツをつぶされて抗議声明だけなら権威が失墜する。必ず報復する。その最たるものが『台湾包囲作戦』だ」 中国人民解放軍は8月4日正午から7日の正午まで、台湾を囲む6カ所の海域と空域で実弾軍事訓練を実施する。 「この間、すべての船舶、航空機がこの領域に侵入することを禁止する」 という。遠藤氏が言った。 「台湾と中国の中間線を越えて、台湾を囲む6海域。すべての流通を遮断するので、この報復が最も重い。台湾の軍隊が人民解放軍に一発でも報復狙撃をすれば『戦争開始』になるから台湾は撃てない。中国は台湾の長期包囲網の予行演習をしているようだ」 台湾海峡の波、いよいよ高し、である。<政治評論家> |
(5)次に紹介するのは、トランプ氏の発言に、私が信頼している中国分析の第一人者、遠藤誉女史が言った言葉、「トランプ氏はよくぞ言った」その驚くべき、殺人的な内容・・・アメリカは恐ろしい国・・・をジックリとご覧ください。
*「鈴木棟一の風雲永田町 トランプ氏、ペロシ氏訪台を酷評」(夕刊フジ、8月4日) <事態を悪化させるだけ> ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問が大きな議論を呼んだが、ドナルド・トランプ前大統領が酷評して注目された。ペロシ氏の訪台については「夫のポール・ペロシ氏がインサイダー取引で捜査を受けており、事件への関心をそらすため」との見方がある。米メディアによると、トランプ氏もここを突いた。 「なぜ、ペロシ氏はインサイダー取引の夫のために、さらに面倒を起こしながら、わざわざ中国や台湾に介入しなければならないのか。ペロシ氏と接触すれば、必ず混乱と破壊につながる。彼女が最も手出しすべきでないのは中国の問題だ」 中国分析の第一人者、遠藤誉女史が言った。 「トランプ氏はよくぞ言った。ペロシ氏の台湾行きは、実はジョー・バイデン大統領も反対だ。『軍部が反対している』とも言っている。いま米国内でバイデン氏の支持率が急落している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の侵略を止められなかった。国民はインフレで苦しんでいる。米国はウクライナで手いっぱいで、これ以上、台湾問題で波風を起こしてほしくない」 同じ民主党なのに、バイデン氏はペロシ氏訪台を止められなかったのか。 「そこが米国の三権分立の面白いところで、大統領には議員の行動を制限する権限はない。そこで、先日の米中電話首脳会談で、バイデン氏はことさら『一つの中国』支持を言って、習近平国家主席にサービスしたのだ」 トランプ氏とペロシ氏は因縁の関係である。トランプ氏の議会における弾劾裁判を主導したのはペロシ氏だった。2020年のトランプ氏の一般教書演説で、終了後にトランプ氏から渡された原稿をペロシ氏は即座に破り捨てた。 ペロシ氏の訪台は、1997年に共和党のニュート・ギングリッチ下院議長が訪台して以来、25年ぶりである。遠藤氏が言った。 「ギングリッチ氏の場合と違う。まず、北京を訪問して江沢民主席、李鵬首相と会い、翌日に東京に向かい、その後、台湾に行って李登輝総統と会っている。かなり状況が違う。」 ペロシ氏のアジア歴訪について、共和党のマイケル・マッコール議員と、民主党のアンナ・エス議員がペロシ氏から誘われたが、「参加できない」と述べた、という。 「断固として反対する」と強い抗議の中国がどう出るか。<政治評論家>
*最後に、本当にホッとする情報をお伝えします。 「時代を読む」<法政大学名誉教授・前総長、田中優子先生>(東京新聞、 2022年3月6日) <直線の国境> アフリカの地図を見た時、国境が至る所で直線になっていることに心を痛める人は多いだろう。理由がわかっているからだ。 2月21日の国連安全保障理事会におけるケニアのキマニ国連大使のスピーチが話題になっている。アフリカは植民地化され、民族や言語に関係なく勝手に国境を引かれてきた。「いまでも、アフリカのすべての国の国境の向こうに、歴史的、文化的、言語的に深く結ばれている同胞が暮らしている」と、キマニ氏語った。 しかし「民族や人種、宗教の同質性による国家を追求していれば、何十年も戦争を続けることになっていただろう」と。アフリカ人が国連のルールに従うことを選択したのは、もちろん、国境に満足しているからではなかった。「より偉大な何か」つまり平和を希求していたからだ。キマニ氏は最後に、同胞と一緒になりたいと思わない人はいないが、「そうした願望を力によって追い求めることを、ケニアは拒否する」と毅然として述べたという。人はこうありたい。人間としての格と、先進国か途上国かは関係がない。 <後略> |
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