★★★2021年5月15日第223回「今月の言葉」「ウィーケスト・リンクとは何か?㉔(「池江璃花子さん」「習近平国家主席③-③」)」(weakest link)

(1)人間の「運・不運」は、本当に不思議です。「白血病」を患い、10カ月も辛い入院を経験したが、退院後、わずか7ヶ月で、奇跡の復活。

 東京オリンピックには完全に間に合わなかった、にもかかわらず、オリンピックが1年延期になったお陰で、今年のオリンピックに間に合うという奇跡の選手になりました。

 その池江璃香子選手に、今度は、SNSを通じて、代表の辞退や五輪への反対を求めるメッセージが寄せられているとは、驚き以外に言葉がありません。

 

 「五輪中止、代表辞退要求の冷酷ツイート」(夕刊フジ、5月9日)

 <池江「選手個人に当てるのはとても苦しいです」>

 白血病による長期療養を経て東京五輪代表入りを決めた競泳女子の池江璃香子選手(20)が7日、会員交流サイト(SNS)を通じて、代表の辞退や五輪への反対を求めるメッセージが寄せられていることをツイッターで明かした。まったくの筋違いであり、五輪中止論者による卑劣・冷酷な要求というしかない。

 「この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持ってます。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです」

 池江選手はこう心境をつづっていた。

 新型コロナウィルス禍で大会中止を求める声が多いことには、池江選手は「仕方なく、当然の事」としたうえで、「持病を持ってる私も、開催され無くても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活も送っています。私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません」と指摘した。

 五輪については、「私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています」と記した。

(2)池江璃香子選手には、この過酷な状況を乗り越えて、活躍されることを祈るばかりです。

 その新聞記事の中で驚いたのは、≪≪持病を持ってる私も、開催され無くても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活も送っています。私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません」と指摘した。≫≫

 「白血病」は、完治したのではなかったのですね。無事に選手生活を送れることを、心よりお祈り申し上げたいと思っています。

 さて、習近平国家主席ですが、無理に無理を重ねて、種々様々なほころびが、少しずつ、現われてきているように思うのですが、皆様はどのように思われますか。

 そんな私・藤森なりに気になることを取り上げてみました。「蟻の穴から堤も崩れる」と言います。次の諸点をどのようにご覧になりますか?私は「蟻の一穴」のように思えてなりません。

(3)「歳川隆雄の永田町・霞が関  インサイド」(夕刊フジ、2020年11月3日)

 <垂秀夫駐中国大使の最新情勢分析>

 <略>

 <揺るぎない「習1強」独裁>

 さて、肝心の垂(たるみ)氏の最新情勢分析である。

 習近平国家主席(共産党総書記)の権力基盤は脆弱であるとの見方が支配的だが、垂氏は自民党政権に例えて、次のように指摘した。

 習氏はいわば、党総裁(President)兼幹事長(Secretary-General)兼総務会長( Chairperson)であり、江沢民、故・胡錦濤時代と比べて、その支配力は揺るぎないものになった・・というのだ。

 一例を挙げる。

 最高意思決定機関である共産党政治局の7人の常務委員は党規約上、総書記を含めて同格であった。89年6月の天安門事件後、最高指導者・鄧小平氏が築いた集団指導体制である。

 ところが、習氏は17年10月の第19回共産党大会で党規約を改正して自分以外6人の常務委員に対し、業務報告を提出することを義務付けた。つまり、李克強首相含め6人の常務委員は習氏の「部下」になったのだ。

 江沢民時代の朱鎔基首相も、胡錦濤時代の温家宝首相も部下ではなかった。だが、今や習氏は自らの名前を党規約に刻み、「習1強」の独裁者となった。

 では、強いリーダー像を示し、強盛国家を標榜する習氏の今後に問題はないのか。

 実は、約370人の党中央委員と中央候補委員の共産党エリートの中には、習氏の権力集中アプローチに強い不満を抱いている者が多いという。次期党大会までの2年間の中国経済次第で何かが起こる可能性がある。(ジャーナリスト)

(4)「“日本”の解き方 高橋洋一」(夕刊フジ、2021年1月29日)

 中国の2020年の経済成長率が2・3%となり、20カ国・地域(G20)で唯一プラス成長だったという。こうした状況は今後も続くと考えられるのか。

 <中国経済「独り勝ち」続くのか><国有企業改革や自由化は困難><長期的には「中所得国の罠」に>

 開発経済学では「中所得国の罠」というのがしばしば話題になる。一種の経験則であるが、発展途上国が一定の中所得までは経済発展するが、その後は成長が鈍化し、なかなか高所得国になれないことをいう。中所得国とは、1人当たり国内総生産(GDP)が3000~1万ドル程度の国を指すことが多い。

 これをG20諸国で見てみよう。1980年以降、1人当たりGDPがほぼ1万ドルを超えているのは、G7(日本、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、イタリア、)とオーストラリアだけだ。

 アルゼンチンとブラジルは、1万ドルがなかなか破れない。2010年代の初めに突破したかに見えたが、最近まで1万ドルに届いていない。インドは3000ドルにも達していないし、インドネシアは最近5000ドルまで上がってきたが、まだ1万ドルは見えない。韓国は、2000年代から1万ドル以上を維持しており、今は高所得国入りしているといってもいいだろう。

 メキシコは10年頃までは順調に上昇してきたが、1万ドルの壁に苦悩し、1万ドル程度で低迷している。ロシアは、10年ごろに1万ドルを突破したかにみえたが、その後低迷し、今は1万ドル程度となっている。

 サウジアラビアは、豊富な石油収入で順調に上昇し、00年代中頃から1万ドル以上を維持して、今は高所得国入りだ。

 南アフリカは、順調に上昇してきたが、10年あたりから8000ドル程度に壁があるようで、それを超えられないでいる。トルコも10年ごろに1万ドルを一時突破したようにみえたが、その後1万ドルの壁で低迷している。

 そして中国は、これまで順調に伸びてきたが、現在が1万ドル程度だ。

 以上のG20の状況をまとめると、高所得国はもともとG7諸国とオーストラリア、1万ドルの壁を破った韓国とサウジ。残りは中所得国で、1万ドルの壁にはね返されたのアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの6カ国。まだそれに至らないインドとインドネシア。そして1万ドルになったと思われる中国ということになる。

 中所得国の罠をクリアするためには、各種の経済構造の転換が必要だといわれる。その一例として、国有企業改革や対外取引自由化などが必要だが、本コラムで再三強調してきたとおり、一党独裁の共産主義国である中国にはそれができない。共産主義国家では、資本主義国家とは異なり、生産手段の国有が国家運営の大原則であるからだ。アリババグループに対する中国政府の統制をみると、やはりと思わされる。

 と考えると、中国が中所得国を脱却し、これから経済発展する可能性は少ないと筆者は見ている。一時的に1万ドルを突破してもはね返され、長期的に1万ドル以上にならないのではないか。ここ10年くらいで中国は中所得国の罠に陥るだろう。(内閣官房参与・嘉悦大学教授)

 

 「中国、少子高齢化進む」(東京新聞、2021年5月12日)

 中国国家統計局は11日、2020年に実施した国勢調査で、総人口(香港とマカオ、台湾除く)が14億1178万人だったと発表した。国家統計局の寧吉哲(ねいきつてつ)局長は記者会見で出生数は前年から2割近い減少となる約1200万人だったと明らかにした。

 一人の女性が生涯に産む子どもの推定人数である合計特殊出生率は1・3で、日本の1・36(19年)と並ぶ水準となった。総人口に占める60歳以上の割合は2割近くに迫り、中国で少子高齢化が急激に進んでいることが鮮明になった。

 新型コロナウィルスが流行した20年は将来への先行き不安などから、日本や米国でも出生数が減少した。しかし中国の落ち込みは激しく、国内総生産(GDP)での米国超えを視野に入れる習近平政権の戦略にも影響は必至だ。

 <略>中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英字版)は4月下旬、専門家の話として「22年に減少に転じる」と報じた。

 

<略>中国の将来像をどうみるか。中国事情に詳しい評論家の石平氏は「人権問題や東アジアで暴挙を続ける中国は“人類の敵”であり、習近平体制対自由主義陣営の構図はすでに出来上がっている。現在の中国による強硬姿勢を見ていると、習氏には世界情勢に関する正しい情報すら入っていないように思える」と指摘する。

 中国のやりたい放題を各国が黙認していた最大の理由が巨大な市場を背景にした経済力だ。しかし、環球時報は、中国の人口が22年にもピークに達し、減少に転じるとの見通しを伝えた。鄧小平体制で行われた「改革開放」以降、急成長してきた中国経済の転機を象徴する事態だといえる。

 石平氏は「中国自体が高齢化社会で自慢の労働力も低下する一方であるため、世界のリーダーはおろか、求心力が低下していくだろう。習体制の崩壊に向かうだけで、その崩壊は中途半端に終わらないだろう」と推察した。(夕刊フジ、2021年5月9日)

(5)「対立拍車 中豪」(東京新聞、2021年5月5日)

 <農産物などの禁輸緩めず><「一帯一路」の州協定破棄>

 【北京=中沢穣】中国とオーストラリアが、関係悪化から一年が過ぎても互いに強硬姿勢を崩していない。豪州産の石炭や農産物などの輸入を制限する事実上の制裁を続ける中国に対し、豪政府は地方政府などが中国側と独自に結んだ協定や契約の破棄などを進めている。中国は報復を示唆しており、対立に拍車がかかりそうだ。

 豪政府は四月下旬、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関して南東部ビクトリア州政府が結んだ協定二件を破棄。ペイン外相は「豪州の外交政策とそぐわない」と破棄の理由を説明していた。一帯一路と距離をおく豪政府は昨年末、大学や地方政府が外国と結んだ協定を破棄できる法律を制定していた。豪政府は実際に協定破棄に踏み切り、対中強硬姿勢を緩めない考えを示した形だ。<略>

 

「スクープ最前線 加賀孝英」(夕刊フジ、2021年5月11日)

 <日米英蘭で連合艦隊 インドや豪州参加へ>

 日本政府は6月に英コーンウォールで開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせて、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国による戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」首脳会談の開催を検討している。先週のG7外相会合では、軍事的覇権拡大を進める中国に対峙する姿勢が示されたが、これを拡大・強化する構えだ。こうしたなか、中国共産党政権を率いる習近平国家主席に異変が見られる一方、ジョー・バイデン米政権にも不安が残る。「民主主義と専制主義の戦い」はどうなるのか。ジャーナリスト、加賀孝英氏の最新リポート。

 「習主席が、周囲に弱音を吐き始めた。中国の野望を木っ端みじんにする『対中包囲網』ができたからだ。習氏は恐怖で眠れないようだ」

 外事警察幹部は語った。<略>世界の主要メディアは、「対中強硬姿勢の足並みがそろった」と絶賛した。

 事実、日米同盟や友好国の動きがすごい。以下、簡単にまとめる。

5月4日、海上自衛隊補給艦「ましゅう」とフランス海軍フリゲート艦「シュルクーフ」と、沖縄周辺海域で共同訓練を実施した。

11~17日、陸上自衛隊は、米海兵隊フランス陸軍と九州で、離島防衛作戦を想定した共同訓練を予定。沖縄県・尖閣諸島防衛を想定したもので、海自とフランス海軍も海上訓練を実施する。

欧州最強の英海軍最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃軍が日本に寄港する。海自と日本海や沖縄周辺海域で共同訓練を実施する。これにオランダ海軍のフリゲート艦も参加。日米英蘭の連合艦隊が完成する。インド、ベルギー、オーストラリア、カナダも加わる。

 ベン・ウォレス英国防相は4月26日、「(空母打撃軍の派遣は)日本、インド太平洋地域、国際秩序への脅威に立ち向かう、英国の決意を示すものだ」という敢然たる声明を発表した。

 これは、「台湾有事」「尖閣有事」の際、「英国は中国と戦う」と宣言したに等しい。

 さらに、米ハワイ州真珠湾で同月30日、在日米軍を傘下に置く米インド太平洋軍の司令官交代式が行われた。就任したジョン・アキリーノ海軍大将は、中国を念頭に「国際秩序は挑戦を受けている」「(インド太平洋軍は)有事の際は即応して勝利する」と断言した。

 中国は終わりだ。完全に包囲された。

 しかし、私(加賀)は正直、バイデン氏の対中強硬政策が本物かどうか、懸念している。

 バイデン氏は3月25日の記者会見や、4月28日の施政方針演説で、中国について、「最大の競争相手」「専制主義が未来を勝ち取ることはない」「21世紀を勝ち抜くための競争をしている」と語った。ただ、中国と協力する可能性にも言及しており、対中融和策をとったオバマ政権の残滓(ざんし)が感じられる。

 

 「鈴木棟一の風雲永田町」(夕刊フジ、2021年4月20日)

 <ウイグル弾圧の張本人>

 中国の新疆ウイグル自治区での人権弾圧を進めているのは、同自治区の書記である陳全国氏だといわれている。

 1955年11月生まれというから、65歳。李克強首相の直属の部下として昇進し、2009年に河北省の副書記となり、11年、胡錦濤政権下でチベット自治区の書記になった。中国分析の第一人者、遠藤誉女史が解説した。

 「陳氏は『少数民族弾圧者』として知られる。11年ごろは、チベットでも人権弾圧への抗議運動が盛んで、多くのチベット人が天安門広場で焼身自殺するなどしていた。しかし、陳氏はチベット民族を徹底的に弾圧し、いまでは抵抗する動きは見られなくなったといえる」

 この陳氏を、習近平国家主席が登用した。

 「習主席は16年に陳氏を新疆ウイグル自治区の書記に就任させた。さらに、17年の党大会で、中国共産党中央政治局委員に起用した」

 同委員は25人いる。中国を動かす「党幹部」である。

 習主席や李首相ら7人の党中央政治局常務委員が文字通りのトップで、「チャイナ・セブン」でと呼ばれる。遠藤氏が続けた。

 「陳氏は22年の党大会で、『チャイナ・セブン』に昇格する可能性が高い。チベットウイグルという、中国共産党による統治において、最も手腕が試される両自治区で、書記としての“功績”を上げたからだ」<後略>