2021年3月15日第221回「今月の言葉」「ウィーケスト・リンクとは何か?㉒(習近平国家主席③-①)」(weakest link)
(1)人間は本当に不思議な存在であり、ある意味、当たり前の事ではありますが、表に現われている物事は、必ず、その人の「深層心理」にあるものを意味しています(因果=原因→結果、結果←原因)。
「深層心理」の研究を長年続けていますと、世の中の色々な出来事の多くは、その人の「深層心理」にどのような物事があるかを、大雑把ではありますが、ほぼ、推測できます。 最近、メディアで騒がれている卓球の名人だった「福原愛」さんの問題も、彼女の小さい頃の出来事(お母さんに、徹底的にしごかれた卓球の練習)を思い浮かべると、いつか、こういう種類の何かが起こるであろうことを、私は以前から推測していました。 さて、独裁者という人間には、必ず、共通項があります。以下をご覧ください。 ≪≪「スターリンによる大粛正」 (前略)ソ連は、独裁者となったスターリンによる「大粛正」を1930年代に経験します。対象となったのは、「資本主義」であるとみなされた人や、革命前の支配階級に属していた人、そしてスターリンが疑いをかけた人々などで、ほとんどが無実の罪で監獄やシベリアの収容所に送られました。逮捕者数百万人、銃殺者十数万人から百万人にも上るといわれ、全体像はいまだ不明です。 そして、軍事関係者も1937年から38年にかけて、3万4301人の将校が逮捕されたりシベリアへと送られました。「独ソ戦」(岩波新書)の著者で現代史家の大木毅氏によれば、軍の最高幹部101人中91人が逮捕され、その中の80人が銃殺されたといいます。 他者を信じず、猜疑心とコンプレックスの塊のような性格であったスターリンは、権力維持のためにソ連社会の中核を自ら破壊してしまったのです。(後略)≫≫(日刊ゲンダイ、3年3月10日、「大人の基礎ノート・5分で分かる世界史編」「ずさんな作戦で泥沼化した独ソ戦」、津野田興一先生・都立日比谷高校)
2019年7月15日、「今月の言葉」第201回の「カルロス・ゴーン氏」をご覧ください<拙著「交流分析」の「人生脚本」と「照見五蘊皆空」のp185~186>。 「今月の言葉」第201回の一部を、下記に再録します。 |
(2)カルロス・ゴーン氏(2019年7月15日第201回「今月の言葉」)
<<<約15年前に取締役会で、すでに報酬額への強いこだわりを見せていた。報酬の3割増額を提案したゴーンに対し、出席者から「お手盛りが過ぎる」と異議が出た。ゴーンの顔がみるみるうちに赤くなった。 「業績で貢献したんだから、これくらい当たり前だろ!」 早口の英語でまくし立てるゴーンに圧倒され、場は静まり返った。ある幹部は「並みの怒り方ではない。獣のような顔で怒鳴り立てていた」と振り返る。 幹部がその剣幕を目撃したのは1度ではない。2度目は出自について、言及された時だったという。 祖父はレバノンからの移民だったというゴーンはブラジルのアマゾン川流域の田舎町で生まれた。自著によると、高温多湿で蚊に悩まされる厳しい環境で育ち、2歳の時には井戸水を飲んで生死をさまよった。>>> ここにゴーン氏の根本があるように思われます。私・藤森が課題にするもの、つまり<(weakest link)>です。 この(weakest link)のお陰で大出世するエネルギーになっていますが、しかし、この(weakest link)によって身を亡ぼしそうなものになっています(有罪になるか、無罪になるか、今のところ未定ですが)。
さて、習近平国家主席はどうなるのでしょうか。私・藤森は、かなり危険な道・無理な道を、必死で駆け上がろうとしているように思えてなりません。その「必死」になる「深層心理」は次回に紹介しますが、私が睨んでいた通り、習近平国家主席にも、やはり、スターリンのようなものがあるのです!! もう少し、穏やかに、危険な道を歩むことができないものかと思えてなりません。そういう危険な道を乱暴に駆け上がろうとしている一つの側面をご覧下さい。 |
(3)<<米国がコロナで動けぬうちに。中国が一線を越え台湾を奪いに来る日>>(国際2021.02.15by 最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』)
<習近平氏の夢へのLast Missing Piece―台湾を巡る国際情勢> 世界の目が、いまだ猛威を振るう新型コロナウイルスとの戦いと、ミャンマーで起きたクーデターに向く中、台湾を巡る米中間の綱引きは日に日に熱気を帯びてきています。 習近平国家主席は、就任来、「大中華帝国の大復興」を掲げてきました。経済力は、習近平体制下で、アメリカと肩を並べるレベルにまで達し、軍事力でも、すでに海軍力ではアメリカに匹敵するか凌駕していると、アメリカ海軍が認めるほど、実力を蓄えてきました。 強力な経済力に支えられる一帯一路政策の下、中国の影響力は東南アジア諸国、中東諸国、そしてアフリカ諸国にまで広がりました。 また、別ルートを通って、現代のシルクロードは、中東欧諸国、そしてイタリアやギリシャをはじめとする南欧諸国に伸びています。 まさに中国“帝国”の西進です。 そして、2020年、世界を襲った新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、皮肉な話ですが、中国の躍進を後押しする効果を見せました。 いち早く“コロナを克服”した中国は、ここぞとばかりに、影響力拡大に動きます。 その一つは、マスク外交・医療戦略物資外交、そして今は、中国製のコロナワクチンを用いたワクチン外交です。 マスクや医療物資は、質が悪いと揶揄されましたが、それでもいち早く物資が届けられる様は、多くの途上国、そして中東欧諸国のハートを掴みました。そして今、ワクチンが同じ役割を果たしています。 東南アジア諸国、中東諸国、アフリカ諸国、そしてラテンアメリカ諸国の多くに中国製ワクチンは届けられ、「途上国にワクチンが普及するのは2023年」、「欧米製のワクチンのほとんどは富める国の富める層に独占される」といったジレンマを逆手に取った姿勢は、各国での中国脅威論を少し中和する役割も担っているようです。 その中国脅威論は、主に一帯一路政策の下、各国に高利で貸し付けられ、借金漬けにする姿勢と、南シナ海、そして東シナ海で展開される、強大な軍事力を背景にした領有権問題に起因します。 脅威は衰退しないものの、困ったときに迅速に手を差し伸べる姿は、被支援国、特に東南アジア諸国の対応と心境を複雑なものにしているようです。 <怖いが“隣国”として手を差し伸べてくれる中国> ASEANで対中非難が出そうになると、カンボジア、ラオス、そしてミャンマーが必ずブロックし、表現が削除されるか骨抜きにされるというのは典型的な効果ですが、コロナ下で、南シナ海問題で中国と対峙する国々も態度を軟化させているのが見えます。 これは、一概には言えませんが、口ばかりで何もしてこなかった米欧への当てつけと失望を表していると思われます。 アメリカ政府については、トランプ前政権下で“アジアシフト”が謳われましたが、実際には北東アジア向けであり、ASEAN/APECは、度重なるトランプ大統領の不在・欠席に現れるように、軽視されていたと言わざるを得ません。 バイデン政権は、アジアシフトでも“同盟国との連携”を通じて中国の脅威に対抗するとしていますが、東南アジア諸国側からはアメリカは信頼できるパートナーと映っているかは不明です。 欧州については、昨年来、中国への過度の依存を改め、インド太平洋戦略を打ち出してきていますが、やはりこちらも、東南アジア諸国政府曰く、「いつまでも植民地政策のマインドが抜けない上から目線の対応であり、アジアのためと謳いつつ、結局は自らの海外での権益を守りたい・拡大したいだけのパフォーマンス」との見方が強いそうです。 【中国は怖い。しかし、“隣国”として手を差し伸べてくれる】というのが、程度の強弱はあるものの、アジア諸国の本音のようです。 だからとは言えませんが、比較的に東南アジア諸国は、ASEANでの内政不干渉の原則も手伝って、中国の強硬策や“蛮行”に寛容に思われます。 その典型例が、【新疆ウイグル地区での人権問題への懸念】と【香港を巡る姿勢】です。 前者については、カンボジアもミャンマーも、他の国々も、欧米スタンダードで見た“人権擁護”の視点からすると、人権尊重のマインドが低いと言われることから、どこか中国の行いに目をつぶっているように見えます。 タイもマレーシアもタイ深南部のモスリム集団であるポンデゥックの扱いに困っており、よく人権侵害を指摘されていますから、その非難のベクトルが自分たちに向いてこないように、中国“国内”での人権侵害の疑いには距離を置く傾向が見られます。 後者については、内政不干渉の原則を盾に、日本や欧米諸国での批判的な論調からは信じられないほど、全くの無関心を装っているように思われます。 中国を余計に刺激するよりは、適切な距離を保つことで経済的な利益の恩恵にあずかろうというのが基本姿勢です。 <習近平の「大中華帝国の大復興」に欠かせぬ台湾> 前置きが長くなりましたが、今、習近平体制下で宿願に位置づけられ、繰り返し発言に登場する【大中華帝国の大復興】のLast Missing Pieceと言われる台湾を巡る問題でも、東南アジア諸国はあえてタッチしてきません。 言い換えると【積極的に支持もしないが、批判もしない】という姿勢です。 ちなみに香港国家安全維持法の制定と施行に際しては、欧米諸国からこれでもか!というほどの批判が中国に向けられ、対決姿勢と緊張が高まっていますが、アジア諸国の政府内の友人たちと話すと、【まあ、なんだかんだ言っても、2047年になれば自動的に中国に100%なるわけだし、そもそも英国が勝手にやってきて取ったところだからね。一国二制度も、勝手に押し付けたわけだから、中国がそれを護る義務もなければ、いわれもない】という声をよく聞きます。 香港の場合と違い、台湾と中国(北京)に関しては、「XX年には完全に返還されるという約束」はどこにもありませんが、東南アジア諸国にとっても、直接的な繋がりはないアフリカや中東諸国にとっても、【あくまでも中国“国内”の話】というのが、偽らざる見解のようです。 それを実際には感じているからというのもあるかと思いますが、中国の習近平国家主席は、One Chinaの宿願を叶えるために、このところ、台湾に対する攻勢を顕在化させているように思われます。 台湾への肩入れを強めるアメリカ政府に対して、【ここは中国の勢力圏だから、余計なことをするな】と言わんばかりに、台湾海峡や台湾の制空識別圏に戦闘機を送り込み、全面的な対決姿勢を明確にし始めました。 アメリカ政府はといえば、トランプ前政権の最後に台湾への肩入れを明確にし、それがバイデン政権ではより強化されるように見せることで、【自由主義陣営の防衛】を大義名分にして、習近平氏の野望に正面から対峙しようとしています。 衰退したとはいえ、まだ世界最強の国アメリカの面子をかけ、アジア太平洋地域での覇権を護ろうとしています。 バイデン政権で国務長官を務めるブリンケン氏や、ホワイトハウスでアジア担当の調整官を務めるカート・キャンベル氏曰く、【中国、国家資本主義体制の圧力からアジア太平洋地域を護るために、自由主義を掲げて中国に立ち向かう台湾を防衛することは、アメリカの国家安全保障の目的に合致する】のだそうです。 しかし、仮に中国が台湾を軍事力でねじ伏せ、One Chinaを達成しようと目論んだ際、アメリカは軍事力で本当に中国に対抗するのでしょうか? トランプ氏がもし第2期目の任期を今、務めているとしたら、もしかしたら、台湾を舞台に米中の武力衝突は起き得たかもしれませんが、“同盟国と共に中国の脅威に立ち向かう”と言いつつも、バランスを重んじてしまうバイデン政権に、アメリカの軍事力をフルに用いた対中戦争は考えづらいと思うのは私だけでしょうか? <台湾を併合したOne Chinaの実現という習近平の悲願> 台湾の姿勢も非常に興味深い動きをしているように見えます。 中国からの軍事的な(安全保障上の)脅威が強まっている中、それに対峙しようといってくる米国に傾倒しているように思いますが、“台湾は独立国”と叫びながら、水面下で台湾の持つ世界レベルの技術力(特に半導体)を盾に、中国本土との経済的な結びつきを通じた“融和”の可能性も探っています。 中台間には多くの合弁会社もありますし、政治的に対立していても、経済はすでに不可分の関係になっています。思惑や意味するところは異なりますが、すでに経済的にはOne China化しているといえるでしょう。 北京も台北も、それはよく知っています。 台湾政治には国民党(中国寄りと言われる)と民進党(独立派)が存在しますが、どちらが政権の座にあっても、よく言われているほど、対中政策には違いが見えませんし、即座に統合や独立という方向にも振れません。 台湾にいる友人たちによると、「選挙によって与党が入れ替わっても、台湾は台湾のまま居続ける」のだそうです。 言い換えると、現状に対して、台湾の側から特段、急激な変化を起こすことはしないということでしょう。 しかし、同じ心持を北京政府、特に習近平国家主席が持っているかといえば、そうは思いません。 2013年3月に国家主席に就任以来、掲げている【大中華帝国の大復興】の行き着く先には、台湾を併合した中華帝国がイメージされています。 また、ここ2年か3年前から発言にでてくるOne China/One Asia構想の基盤となるのも、台湾を含めたOne Chinaという考え方です。 後任候補を次々と落とし、権力を掌握して、「生涯国家主席・総書記」という方向へ進もうとしている習近平国家主席ですが、そのためには、建国以来の懸念事項であり、last one missing pieceである台湾を手に入れる必要があると考えているようです。 米中対立の真ん中に置かれてしまった台湾ですが、これまでは、対立が深まっていても、アメリカは「中国が台湾を攻撃することはない」と見ていて、同時に北京は「仮に台湾への攻勢を深めても、本当にアメリカが攻撃してくることはない」と踏んでいるが故に、一種の抑止が働いていたように思えます。 自らの構想の完成を目指し、今、あえて対立構造を作り出した習近平国家主席の中国。 一帯一路政策の下、他の大陸や地域にまで及ぶ影響力を築き、一種の中華帝国を作り上げたといえる中国。 すでに米軍の軍事力をも凌ぐのではないかと、そのアメリカに言わせた中国。 第2次世界大戦で荒れに荒れた中国は、見事なまでに復興したといえるかもしれません。 大復興はすでに成し得たと言えるような気がしますが、中国を再度“建国”し、大きな発展を名実ともにアピールし、尊敬する毛沢東氏の偉業に並び、追い抜き、偉大なリーダーとしてその名を歴史に刻むために、習近平氏に足りないのは、まさに台湾ではないかと思われます。 台湾は、物理的なサイズは小さいですが、習近平氏にとっては、とてつもなく大きなmissing pieceであると言えるでしょう。 2023年3月には2期目も終わりを迎えますが、すでに国内におけるすべての役職で序列第1位になっている存在であり、その後も国家主席の地位に留まり続けるためには、現在の中国共産党支配の下での中国のリーダーが誰も成し得なかった、台湾を併合したOne Chinaを実現することが必要だと考えているようです。 <そう遠い未来ではない、習近平が一線を越える日> そのような動きを察知して、バイデン政権も米軍の艦隊を台湾海峡周辺に向け、最近は空母群に海峡の通過をさせ(台湾政府は、通常の通過と発表)、“台湾有事の際には、アメリカは対抗する”との姿勢を示したようですが、どこまで本気で台湾に付き合う気があるでしょうか。 話はそれますが、日米安保条約の第5条のような規定は、台湾との間には存在せず、時のアメリカ政権の対中方針によって、台湾へのコミットメントの強さは変化します。 「中国に対して弱腰ではないか」との批判を最も恐れ嫌うバイデン政権ゆえに、今、その反動で台湾への肩入れが顕在化しているだけに思えますが、それを習近平国家主席はどう見ているのでしょうか。 2月11日、初めての米中首脳電話会談が開かれたようです。詳細については分からないこともありますが、米中双方の話によると、台湾を巡る意見交換が行われたと聞きます。 「攻めるぞ」とは言わなかったと思いますが、「台湾を巡る内容は、あくまでも中国の内政事項であり、アメリカから干渉される覚えはない」といった発言が、習近平氏から今回もなされたのだとしたら…。 バイデン政権が国内のコロナ対策に手間取っている間に、もしかしたら、習近平国家主席の中国は一線を越えて、大復興という壮大なパズルのlast one pieceを埋めに行くかもしれません。 その時が、そう遠い未来ではないような気が、私にはしてなりません。 皆さんはどうお考えになるでしょうか?またご意見、ぜひお聞かせください。 <<島田久仁彦(国際交渉人)・・・世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。>> |
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