2021年1月15日第219回「今月の言葉」「ウィーケスト・リンクとは何か?⑳(日本的朱子学⑤-②)」(weakest link)

(1)「日本的な朱子学」は驚くほど、日本の深層心理に溶け込んでいると、私・藤森は考えています。それを証明するいろいろな出来事を連載で紹介したいと考えています。

 前回の「日本的朱子学⑤ー①」もそうですが、今回も同様の「日本的な朱子学」のおかしな出来事・・・本当に勿体ない出来事を、次の(2)で紹介します。

 

(2)「国家の流儀」(江崎道朗氏、夕刊フジ、2020年11月21日

 <生産拠点を移す企業に補助金や減税>

 <題して「GoTo国内回帰」>

 新型コロナウィルスの感染拡大と経済をいかに両立させていくのか、世界各国は模索を続けている。

 しかも、第2,第3の新型コロナが感染拡大をする恐れもあり、世界各国は、ワクチンなどの開発に全力を傾けるだけでなく、マスクをはじめとする医療材料などの供給をある程度、自国で賄える態勢を構築しようとしている。

 日本政府も4月7日に閣議決定をした「緊急経済対策」において、医療関係などの生産拠点の国内回帰を後押しすべく2200億円の予算が計上された。その決定を受けて5月22日、経済産業省は「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の公募を開始した。

 その目的は、<<新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、我が国のサプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから、生産拠点の集中度が高い製品・部素材、又は国民が健康な生活を営む上で重要な製品・部素材に関し、国内の生産拠点等の整備を進めることにより、製品・部素材の円滑な供給を確保するなど、サプライチェーンの強靱化を図ること>>だ。

 具体的には、中国など外国から生産拠点を国内に移すに際して「工場」または「物流施設」を新設する場合、1件につき150億円を上限に、事業期間は原則3年以内で、大企業なら半額、中小企業なら3分の2以下まで補助するというものだ。

 この公募に対して意外なことに、申請が殺到した。7月22日までのわずか3ヶ月の間に1670件、金額にして8倍近い約1兆7640億円の申請があったのだ。

 政府の支援があるならば、国内の生産拠点を移したいと考える企業がこれほど多かったことに、政府側も驚きを隠せなかった。よって、10月16日の閣議において予備費による860億円の追加措置が決定され、国内投資促進事業費補助金は合計3060億円となった。

 だが、これでも申請額の6分の1に過ぎず、残りの1兆4580億円の申請は却下されてしまう。その機会損失は膨大だ。これだけの金額が国内の生産拠点の新設に投じられれば、国内の雇用拡大にも大きく貢献しよう。しかも生産拠点の拡大は物流の増加にもつながり、公共交通機関の売り上げ減少対策にもなる。

 実は企業支援は、補助金だけではない。減税というやり方もある。

 例えば、中国などから生産拠点を国内に移す企業に対しては工場や物流施設の新設費用の半分まで、法人税などを向こう3年間、「減税」するという措置はとれないものか。題して「GoTo国内回帰」だ。

 補助金が足りないなら、投資「減税」で、残りの1兆4580億円の申請をなんとか活用したいものである。

<えざき・みちお氏・・・評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、19年はフジサンケイグループの正論新風賞を受賞した。著書・共著に『危うい国・日本』(ワック)、『インテリジェンスと保守自由主義ー新型コロナに見る日本の動向』(青林堂)など多数>

 

 <<藤森注・・・今、日本のコロナ対策関係の出費や予備費を考えれば1兆4580億円は、それほど大きな金額ではないと、私は考えます。そのわずかな金額で、日本経済に与えるプラスの影響はとても大きいと、素人ながら、江崎氏のおっしゃることが私には十分に理解できます。

 これを絶好の機会と考えて、予算上の工夫をして実行しようとする「天下国家論」ができないのが、驚くべきことですが、私が考える「日本的な朱子学徒」の情けなさ、チンケさです。

 それを12月22日に出版された私・藤森弘司・人生初の著書、
<『交流分析』の『人生脚本』と『照見五蘊皆空』>(「文芸社」800円)
<照見(しょうけん)五蘊(ごうん)皆空(かいくう)>

 この本の最後の章(p247)で書いた
<『朱子学』『過干渉日本』と『五蘊皆空』>に、「日本的な朱子学」のおかしなところを詳しく書かせていただきました。>>

(3)「日本と世界の最新潮流を読み解く『ビジネス新大陸』の歩き方」(大前研一先生、週刊ポスト、2021年1月15日~22日)

 <「K字型」経済で生き残る企業のキーワードは「テキパキ」と「きめ細かく」>

 <略>

 これらの好調企業に共通するのは、世の中の変化に合わせて「テキパキ」動くとともに、顧客ニーズに「きめ細かく」対応していることである。逆に言うと、それができていない企業は業績が悪化しているのだ。

 <大塚家具、三菱重工の教訓>

 一例は大塚家具だ。同じ業界で絶好調のニトリやIKEYAとは対照的に赤字決算が続き、居座ってきた大塚久美子社長がついに辞任した。しかし、もっと早く金融資産が残っている段階で整理・解体していたら、社員にそれなりの退職金を配れたはずである。

 あるいは、三菱重工業。累計約1兆円の開発費(国費も約500億円)注ぎ込んだ三菱航空機の小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」は設計ミスなどで、ついに事業そのものが事実上凍結されることになった。しかし、同社は過去にビジネスジェット旅客機「ダイヤモンド(MU-300)」も型式証明の取得が大幅に遅れたことがあり、その教訓に学んでいないと言わざるを得ない。

 さらに三菱重工業は、かつて世界一のシェアを誇った造船部門も凋落の一途をたどり、大型客船事業も撤退。このまま行くと同社は100年前の轍を踏んで軍需(防衛)産業に傾斜するのではないかと私は危惧している。旅客機は戦闘機に、客船は軍艦に、ブルドーザーは戦車に化けるからだ。

 実際、すでに同社は航空自衛隊「F2」戦闘機の後継機として政府が日本主導で量産を目指す次期戦闘機の開発主体となっており、アメリカのロッキード・マーチンが技術支援し、エンジンはIHI、機体はスバルが担当するという。まさに「産軍連携」であり、この状況を座視していたら「いつか来た道」に向かいかねないと思う。

 いま業績が低迷している企業は「K字型」の上向きに行っている3分の1の企業のやり方を徹底的に研究し、世の中の変化に合わせて「テキパキ」と動き、顧客ニーズに「きめ細かく」対応すべきである。そうすれば、どんな業界でも新型コロナ禍を克服して生き残る道筋が見えてくるはずだ。

 この「テキパキ」と「きめ細かく」は、企業だけでなく個人にも言えることだろう。そして、その兆候はすでに見えている。たとえば、テレワークの長期化とともに地方移住が活発になり、軽井沢や熱海では中古の別荘・マンションが飛ぶように売れている。

 どこに住み、どんな働き方をして、どう稼ぐか・・・新型コロナ禍を機に、新たな動きが広がっているのだ。政治・経済に対する感度を磨き、世界の動きを読みながら、自分なりの判断基準を持って行動するべきである。

<大前研一先生・・・1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、94年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長などを務める。最新刊は『日本の論点2021~22』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『新・仕事力』など著書多数。HPはhttp://www.kohmae.com.>

 

<<藤森注・・・(2)の<生産拠点を移す企業に補助金や減税><題して「GoTo国内回帰」>と(3)の<「K字型」経済で生き残る企業のキーワードは「テキパキ」と「きめ細かく」>の問題点は、「日本的な朱子学徒」の問題点だと、私は考えています。

 「日本的な朱子学徒」には、<自分なりの判断基準>を持って行動することができない上に、「テキパキ」と動くことが苦手です。

 何故ならば、「日本的な朱子学」というシバリがあるからです。ウンザリするほどの手続き(テキパキの反対)を経ながら、完璧を目指します。それが昨年のコロナ禍における諸手続の問題です。

 アマゾンで<藤森弘司の本>と入力して下されば、表紙が出ます。表紙だけで結構ですので、ご覧下さい。>>