2018年9月15日第191回「今月の言葉」「得失一如とは何か?(補足④)」(大谷翔平投手③)
大谷翔平選手は本当に素晴らしい選手であり、日々の活躍を追ってみると興味が津々です。
才能・素質は、ほとんど全てが抜群に素晴らしいのには驚きます。ハートフルな人間性、練習や試合に臨む手抜きをしない前向きな姿勢、バッティング能力、ピッチング能力・・・これほど色々な面で優れている選手、というよりも一個の人間性を私(藤森)は見たことがありません。 それだけに是非、成功して欲しい選手ですが、全てがあまりにも素晴らしすぎて、故障などのハードルが待ち受けているように思えてなりません。老人の「杞憂」であって欲しいのですが、これだけ才能が抜群ですと、どこかで手抜きがうまいとか、いい加減さがあれば・・・と思うのですが、何もかもが本当に素晴らしい、素晴らし過ぎます。 老人の杞憂として、少し、彼の活躍を細かく追ってみたいと思います。 |
「サクラと星条旗」(ロバート・ホワイトティング、夕刊フジ、8月22日)
<大谷エリートか平凡か、未来を左右する究極の選択> 私が米カリフォルニア州に戻って1ヵ月以上が過ぎたが、誰も大谷翔平について質問をしてこなくなった。 しかも、米国では大谷に関するスポーツ記事も激減した。わずかに本塁打を放ったり、近くブルペンで投げるという情報があったときくらいだ。大谷に関しては、すべてのことが書き尽くされた感じだ。 開幕前、米メディアは「大谷は過大評価されている」と書いた。次いで、開幕直後の大活躍で「ワンダーボーイ」「将来は殿堂入り」と騒いだが、6月に右肘を痛めて故障者リスト入り、3週間後にDHだけで復帰すると、困惑とともに、ややかすんだ扱いとなった。 しかし、8月中旬までに打者としては十分試合をこなしており、彼に対する暫定的な判断を下すことは可能になった。 19日現在、220打数59安打、打率・268、13本塁打、38打点。出塁率は・348で、おおむねトラウト、シモンズに次ぐチーム3位で推移している。 8月3日は自身ベストの試合となった。クリーブランドでのインディアンス戦で5打数4安打、2本塁打。敵地での本塁打は自身初だった。 大谷が打者だけで1年間フルにシーズンを過ごしたと仮定すると、36本塁打、96打点になると予測できる。これはエリート打者に近い数字だ。 仮に大谷がシーズンを打者1本で行けば、二刀流よりいい結果が出るのではないか。さらにいえば、DHでなく野手として守備について試合をこなせば、さらにいい結果が出せるのではないかと思われる。 唯一、打者として「暗」の部分は、左投手を打てないことだ。対右投手は打率・304、左は・169。メジャーの左腕は全体の約3分の1だから、これを計算に入れると、年間の打率は・270。左投手からの本塁打はゼロとなる。 そうなると大谷が打者1本で行った場合でも、本塁打は36本ではなく24本前後で落ち着くという計算も成り立つ。セイバーメトリクスのどういう方式を大谷に当てはめるかで数字も変わってくるが、24本で終わるなら、大谷はメジャーの「エリート打者」というカテゴリーからは外れる。このところ誰も私に大谷の話を聞きにこないのは、このせいかもしれない。 4月にエンゼルスが今季ア・リーグ西地区の優勝候補に挙げられたことを覚えておいでだろうか。大谷は4勝1敗、6本塁打でセンセーションを巻き起こしていた。このとき、大谷は「メジャーで最も興味深い選手」とされた(藤森注・大谷選手は日本時間の9月16日、20本!!!目の本塁打)。 <略> |
もっとも、大谷が受けたのは保存療法に過ぎず、患部が完治したわけではない。万全な状態に比べて患部は弱くなっているだけに、故障が再発する可能性は否定できない。ならば、なぜこの時期にリスクを承知で大谷を復帰させたのか。ア・リーグのあるスカウトはこうみている。
「本人の希望である二刀流を認めて、大きな話題となったが、右肘は早々と悲鳴を上げた。6年の長期契約の大谷には『打者に専念させたい』というのが球団幹部の本音ではないか。中6日で、1週間に一度しか投げない先発投手よりも、常時出場可能な打者のほうが戦力的にプラスになる。仮に右肘に2度目の違和感を訴えれば、球団は投手を断念させるのではないか」(日刊ゲンダイ、9月4日)。 今季中に大谷を投げさせることには「百害あって一利なし」と反対する声も後を絶たず、物議を醸している。「無理をしない方がいい。ゆっくり休んで来年復帰するべきだ」との論調も強い。 エプラーGMはこれについても「今季登板して、仮にこれ以上投げられないと分かったら、すぐにトミー・ジョン手術を行い、1年後の回復を待つことになる。」 <略> しかし、大谷の希望はあくまで投打の二刀流の継続だ。エプラーGMも「二刀流こそが彼が人生で目指してきたこと。それ以外の野球人生を彼は考えていない」と断言。 大谷は打者としては今季、打率・276、15本塁打、43打点をマーク。投手としても、離脱するまで9試合に先発し4勝1敗、防御率3・10の好成績を残した。・・・球団としても現時点で、二刀流を諦めさせるシナリオは描いていない。(夕刊フジ、9月4日) エンゼルスの大谷が右肘靭帯に新たな損傷が判明した直後のアーリントンでのレンジャーズ戦に「3番・指名打者」でフル出場し、17、18号を放って4打数4安打3打点、4得点1四球と活躍した。メジャー1年目の日本勢の本塁打数で2位の松井秀喜を抜き、1位の城島健司に並んだ。本塁打は2試合連続で、1試合2本は今季2度目。 投打の「二刀流」に挑む大谷翔平が5日にレンジャーズ戦で遠征していたアーリントンで磁気共鳴画像装置(MRI)検査を受けた結果、右肘靭帯に新たな損傷が判明し、投手復帰まで1年以上かかるとされる肘の靭帯再建手術を医師に勧められていると発表した。 9日に先発登板が見込まれていたが、マイク・ソーシア監督は「医師がオーケーを出さない限り、今年投げさせることはない」と明言した。(東京新聞、9月7日) 私(藤森)は、大谷翔平選手の投打にわたる才能・素質が「超」の字がつくほど抜群であることを認識しています。 しかし、それでも大谷翔平選手を「得失一如」の面から論じたくなる大きな理由の一つが「故障」です。彼が優れているだけに、一つ一つのプレーに不安があります。その一つが<<右肘靭帯に新たな損傷が判明>>です。 9月4日(現地の4日前後)の先発で、闘志満々の彼は、ピッチャー横に飛んできた打球を無意識に出した素手の右手に当ててしまいました。メディアではこの打球がダメージを与えたとは報道していませんが、この状況をテレビで見た私は、かなり右肘靭帯に悪影響を与えたはずだと思いました。 打球を当てた瞬間、監督がベンチを出ようとしましたが、大谷は大丈夫だと手を振って止めました。が、私は大谷のこのファイトがケガを誘発するように思えてなりません。大谷は盗塁もします。打撃の素質も、ピッチャーとして160キロを超える能力など、全ての素質が抜群であり、その上、ファイト溢れるプレーや、明るくハートフルな人間性は素晴らしいという以外に表現がありません。 全てが抜群に素晴らし過ぎて・・・・・少し図々しさがあれば、素人の私は少し安心できるのですが、どこかに無理が出ざるを得ないように杞憂しています。 私のこの「素人の杞憂」を裏付ける資料がやっと見つかりました。 |
「奔放主義」(権藤博、日刊ゲンダイ、9月8日)
(略) つまり、故障は投球フォームと関係ない。日本とは違うボールやマウンドの問題はあるだろう。が、一番はやはり、スプリットの多投だと思う。ヤンキースの田中将大、カブスのダルビッシュも同じ。彼らは海を渡ってから、日本時代に武器にしていたスライダーの割合を減らし、縦に落ちるスプリットを決め球に用いるようになった。手が長くパワーのあるメジャーの打者には、横の変化であるスライダーが危ないボールになった。右打者の外角に決まっても、バットが届き、パワーで逆方向のスタンドにまで運ばれるからだ。 その点、スプリットは空振りを取れる確率が高い。バットに当たらなければ、長打を浴びる心配がない。そこで、肩や肘に負担のかかるスプリットに頼ってしまう。 メジャーという1つ上のレベルに身を置く彼らは、マウンドでは日本以上にアドレナリンが出ているはず。火事場のバカ力というやつで、並みの投手では出そうと思っても出ない力だ。一流投手ほど、バカ力が発揮できる。これも当然、肩肘に負担がかかる。大谷だけでなく、田中もダルビッシュも肘を痛めた。メジャーで投げる日本人投手の宿命かもしれない。 |
「大谷翔平、ア・リーグ週間MVPを受賞 シーズン2度は日本人では野茂以来2人目」(スポーツ報知/報知新聞社2018/09/11 07:02)
エンゼルスの大谷翔平投手(24)は10日(日本時間11日)、9月3日から9日までのア・リーグの週間MVPに選ばれた。同賞の受賞は4月2日から同8日までに続き2度目。シーズン2度目は96年の野茂英雄(ドジャース)以来2人目となる。 大谷は4日の敵地・レンジャーズ戦からの3試合で4本塁打。日本人1年目では最多のシーズン19本塁打をマークした。5試合出場し、打率4割7分4厘、4本塁打、10打点の活躍だった。 投手では4日に右肘内側側副靱帯(じんたい)を損傷していることが判明。靱帯再建術を受ける可能性が出てくる中、バットで衝撃的なニュースを振り払った。この日、本拠地でエプラーGMらと話し合い、右肘手術を受けるかを決める予定だ。 ナ・リーグの週間MVPはナショナルズのブライス・ハーパー外野手(25)が選出された。6試合出場し、打率4割3分8厘、2本塁打、7打点の活躍だった(藤森注:ナ・リーグのMVP選手よりも優れた成績!!!)。 |
チームメイトのトラウトは大谷について、「ひとつのこと(投手)ができなくなった選手が別のこと(打者)で活躍するのはとてもクールだ。彼は右肘に新たな損傷が見つかった段階で今季を終えることもできた。それなのに球場にやってきてバッティングケージで必死に練習している。一切手を抜かない。そんな彼を見ているのはとても楽しい。今、彼がなしとげていることは信じられないほどすごい」と絶賛した。 <略>
8月から9月にかけての活躍で「ルーキー・オブ・ザ・イヤーには大谷がふさわしい」との論調も目立つようになってきた。 「メジャーで仕事の細分化が進む中、投手と打者の両方をやろうとするのは並大抵のことではない。しかも大谷はその両方で優れている。エースでスラッガー。ベーブ・ルース以来の挑戦をもっと評価すべきだ」 ここまで投手としては4勝2敗で防御率3・31、打者としては打率・291、19本塁打、53打点。MLB公式サイトは8月14日時点で、ア・リーグのルーキー・オブ・ザ・イヤー争いは、ヤンキースのグレイバー・トーレス二塁手(21)が1位、ミゲル・アンドゥーハ三塁手(21)が2位で、大谷は3位との評価だった。(夕刊フジ、9月12日)こ 私(藤森)は、8月14日以降の活躍でルーキー・オブ・ザ・イヤーはかなり有力だと思っています。問題は、来季以降のピッチング、右肘靭帯の悪影響が全体にどのように影響するか、極めて慎重に見ています。 しかし、その上で、活躍することを心より祈っています。 |
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