2020年5月15日第211回「今月の言葉」「ウィーケスト・リンクとは何か?⑫(日本の朱子学について⑩ー①)」(weakest link)

(1)10回位に亘って、私(藤森)流・日本式の「朱子学」が、日本の「ウイーケスト・リンク」になっていることを紹介していきたいと思います。

 朱子学は、朱熹(しゅき、1130~1200)が孔子の儒教から発展させて「新儒教=朱子学」を創始しました。

 その「朱子学」は日本に伝わってかなり変形しましたが、やがて日本からは消えたと言われています。しかし、私の理解は、日本人の深層心理に変形されて猛烈な勢いで棲みついていて、ある部分、日本人を牛耳っていると理解しています。

 日本人や日本文化のある重要な面では、(変形された朱子学である)「日本的朱子学」が深く強く根を張っているために、日本的朱子学をしっかり理解していないと、それらが適切に理解できないものになっているハズです。

 私は、この点で大活躍をされていらっしゃる作家・井沢元彦氏の作品にとても強く影響を受けています。井沢氏の特に朱子学に関する作品は、私の深層心理の研究にとても合致していて、その素晴らしさに、私は心より深く、尊敬しています。

 ですから、日本人の人間性や政治を始めとする、特にエリート層の理解には、朱熹の始めた朱子学の変形である「日本的朱子学」を理解すると、まるで舞台裏を見るかのごとくによく分かります。

 私は専門家ではないので、なかなか、適切に説明できないもどかしさがありますが、実例を10回位に亘って沢山紹介しながら、「日本的なおかしさ=日本的な朱子学」をご理解いただければ幸いです。

 適切に説明できない部分は、皆さまの理解力で補っていただけば幸いです。

 

(2)北海道・鈴木は「竹下型」」「大阪・吉村は「純一郎型」ポスト安倍に影響する人気2知事の真贋は?【後藤謙次氏が分析】「文春オンライン」特集班20/05/13

 新型コロナウイルスをめぐる対応で知事たちの活躍が続いている。なかでも注目されているのが、北海道の鈴木直道知事(39)と大阪の吉村洋文知事(44)だ。2人は政治家として本物なのか?

 日本政治を長年取材し続けてきたジャーナリストの後藤謙次氏(共同通信社客員論説委員、白鷗大学名誉教授)に聞いた。

<「顔が映るだけで視聴率が上がる」>
 いま政治の世界は、中央政府ではなく全国の知事が権限を持って活躍する「知事主導型」になっています。思い起こすのは150年前の明治維新です。あのときも「中央政治が官僚化」し、「司令塔不在」のところに、若きリーダーたちが地方から登場しました。スケールは違っても、あのときと状況は似ています。その中でも、北海道の鈴木知事と大阪の吉村知事は「東西の出世頭」というべき存在です。

 2人は政府の先を行くことで、国を動かしました。公立小中学校の一斉休校も、緊急事態宣言も、2月末の時点で鈴木知事が北海道ではじめて打ち出し、安倍政権が追随する形になった。吉村知事は、5月5日に自粛要請解除の基準として「大阪モデル」を打ち出し、安倍首相が翌日夜、緊急事態宣言解除の判断基準を作成すると明言せざるを得なくなりました。

 そんな2人は地元からの支持も絶大です。北海道新聞が行った4月の世論調査では、鈴木知事の支持率はなんと88%。吉村知事も20代後半~30代の女性の圧倒的な支持がある。在阪のメディア関係者に言わせると、毎日のように彼をニュース番組に出演させるのは、彼の顔が映るだけで視聴率が必ず上がるからだそうです。

 しかも、その支持は全国に広がっています。プロンプターで原稿を読み上げるだけの首相会見に失望した国民が、自分の言葉で話し、自分の責任を明確にして行動にうつす2人に期待を寄せているのです。

<<<2人の若い知事は「朱子学」の影響を受けていない(少ない)ことが理解できます。そして、その反対に中央政府のエリートの対策が「日本式朱子学」に強く影響を受けている「無意識の朱子学徒的」であることが明確です。

 『思い起こすのは150年前の明治維新です。あのときも「中央政治が官僚化」し、「司令塔不在」のところに、若きリーダーたちが地方から登場しました。

 これは徳川家康が導入した「朱子学」にドップリ浸かった「中央政府」の組織が疲労困憊した状態だったことがよく分かります>>>

(3)「日本の元気」(山根一眞氏、夕刊フジ、2020年5月10日)

 <破り捨てたくなる役人文書><藤森注:朱子学的>

 政府が今月末まで緊急事態宣言を延長すると発表し、やがて1週間。宣言の延長にあたって、感染予防のために「新しい生活様式」をとるようにとの発表もあった。

 「2メートル離れろ、マスクや手洗いを忘れるな、とか、国民は全部必死にやってきたじゃないか」

 「新しさを出すため言葉を変えたんでしょ」

 家内とそんな会話を交わしながら、その日、「基本的対処方針」のオリジナル文書を探したが、内閣府、首相官邸、厚生労働省のウェブのどこにも見つからなかった。そもそも政府のコロナ関連情報発信の中心がどこにあるのかすら定まっていないままだ。

 「特定警戒都道府県」がどこなのかもわからなかったが、茨城県、石川県、岐阜県が含まれていることは報道でやっと知った。これらの政府ウェブに公開されている膨大な(しかも過去の)コロナ関連書類を私はできるかぎり保存しているが、どの文書も改行や行間スペース、小見出しが乏しく、文字がびっしり。霞が関には、圧倒的な数のスマホ閲覧者への気遣いが欠落している。霞が関の役人文書は、中学の国語の試験でも点数がとれないぞと言いたくなる文章力で、破り捨てたくなる。

 やっと見つけた「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の変更について」(令和2年4月20日閣議決定)という文書には「情報発信の充実(略)も進めることで、感染拡大のリスクの最大限の低減を図る」との決意が記してあったが、その決意は履行されていない。これは、感染拡大を無視しているパチンコ店と同じじゃないか。

 そもそもコロナ禍は世界規模の災害なのだから文書には世界標準の西暦を使え!つまり、ネット時代にふさわしいセンスが霞が関にはない。ただ、省庁スタッフはコロナ対策で超過密仕事をこなしているのだから、「できない」のは当然。それは十分理解できる。ならば、外部の力を借りればいい。マスク100万枚を寄付すると言い出したソフトバンクの孫正義氏、PCRキットの販売開始を発表しながら専門家から袋だたきにあって10日で取り下げた楽天の三木谷浩史氏。いずれも日本の情報ビジネスの雄なのに血迷っている。

 両グループには若い有能なネットコミュニケーションのスペシャリストがいるではないか。非常事態なのだから、それぞれが有能なリーダーとともに200人の精鋭を関連省庁や地方自治体に協力派遣<藤森注:朱子学溢れる省庁が許さないのでは?>すれば、彼らは国民に向けての望ましい、アイデアに満ちた情報発信を支援してくれることは間違いない。

 ネットワーク力を持つ彼らは、必ずや霞が関と47都道府県を結ぶ円滑で柔軟な情報網を構築し、経営困窮の中小企業をネット力で支える斬新な知恵やシステムも展開してくれるだろう。その実践的な活動経験を通じて、日本は先進国ではもっとも遅れている情報通信力の充実がはかれる<藤森注:充実が図れないのは省庁に朱子学徒(的)が溢れている証拠>。それをもとに今後、遠隔学習が必須インフラとなる文部科学省の一部機能も含めた「情報産業省」の創立へとつなげるのだ。

 思い切った決断は、こういう時にしかできない。ポストコロナの日本の元気を創出する好機を見逃してはいけない。だが、霞が関の役人から何度も聞かされてきた言葉がまた聞こえてきそうだ。「前例のないことはできない」<藤森注:山根一眞氏は朱子学徒的ではない証拠で、「前例のないこと」は、朱子学徒溢れる省庁にとっては困難を極めることです。>

 コロナ禍は「前例のないこと」なんです。

<やまね・かずま氏・・・ノンフィクション作家、福井県年縞博物館特別館長。愛地球博愛知県総合プロデューサーなど多くの博覧祭も手がけてきた。近刊は『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』。「山根一眞の科学者を訪ねて三千里」(講談社)を連載中。理化学研究所名誉相談役、JAXA客員、福井県交流文化顧問、獨協大学非常勤講師、日本文藝家協会会員。>

(4)「解剖 政界キーマン」(鈴木哲夫氏、夕刊フジ、令和2年5月1日)

 <岸田文雄 自民党政調会長>

 「新型コロナウイルスに伴う緊急経済対策は、リーダーシップを発揮する絶好の機会だったのに・・・」<藤森注:朱子学徒(的)には無理なことです。>

 自民党の岸田文雄政調会長が率いる宏池会(岸田派)の若手議員からでさえ、そんな声が聞かれた。

 <略>

 <存在感をさらに薄めた「30万円給付」>

 会談から出てきて岸田氏は「1世帯30万円と申し上げた。了解をもらった」と胸を張ったが、一律ではなく住民税非課税世帯など複雑な条件付きで世論の猛反発を招く結果に・・・。

 「この案は予算を出し渋る財務省の案だった。岸田氏は結局、安倍首相だけでなく財務省にもイエスマンだったということを永田町内外に知らしめた<藤森注:日本的朱子学徒的>(竹下派ベテラン)

 こうした世論に対して、二階俊博幹事長が10日後に会見して「『(国民1人当たり)一律10万円』の給付を政府に申し入れる」と発表した。背景には、公明党との密な連携もあり、岸田氏にはできない芸当だ。冒頭の側近議員は「党の政策責任者の岸田氏を通り越して、二階氏が『30万円給付じゃダメだ<藤森注:二階氏は日本的朱子学徒的でない証拠>』と。あれで岸田氏の存在感を薄めてしまった」と話す。(ジャーナリスト)

 

 

(5)「鈴木棟一の風雲永田町」(政治評論家、夕刊フジ、5月12日)

<「少ない」「遅い」「分かりにくい」><藤森注:日本的朱子学>
<自民党内から政府対応に反発>

 <略>

 (7日に自民党の新型コロナウイルス対策本部などの合同会議が衆院第1議員会館で開かれた。議員たちが殺到、300人が集まり、発言者だけでも100人を超え、4時間以上もかかった。)議員たちから、次のような意見が出た。

 「補償の金額が少ない。それに、遅い。一律10万円も、いつ届くのかが分からない。布マスクも届いていないのだから、下手をすると、半年はかかるのではないか」<藤森注:日本的朱子学徒(的)の得意技>

 さらに、次の指摘も。
「新型コロナ支援策のメニューが多すぎて、どれに申し込めばよいかが分かりにくい。しかも、役所に行っても長時間、手続きで待たされる」<藤森注:日本的朱子学徒(的)の得意技>

 ほとんどの議員が、主張した。
「2020年度の第2次補正予算編成を100兆円規模で早く、やってほしい。建設業や飲食店に観光業など、皆、困っている。しっかり、手当てをすべきだ」

 この会議で、岸田文雄政調会長が政府に向けた5項目の「緊急要望」を用<藤森注:日本的朱子学徒(的)が用意した「緊急要望!!!」>していた。合同会議の終わり近くに、古屋圭司元選対委員長が発言した。

 「私の前に発言した人が94人いますが、この要望書では、国民は納得しない。政調会長を傷つけることになる。あなたのためにも、これは撤回すべきだ」<藤森注:古屋氏は日本的朱子学徒(的)ではない証拠>

 この5項目の要望は撤回された。リーダーシップが不足気味の岸田氏が言った。

 「2次補正をしっかりとやりたい。来週早々、中身を詰める<藤森注:日本的朱子学徒(的)の反省したつもり>

 

(6)「解剖 政界キーマン」(ジャーナリスト・鈴木哲夫氏、夕刊フジ、5月2日)

 <加藤勝信厚労相>

 「有事に対して問われるのは政治的判断であり、官僚的な治め方<藤森注・朱子学的>ではない」(自民党閣僚経験のベテラン)

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になり始めた2月から3月にかけて、加藤勝信厚労相は政府の対応などで常に前面に出ていた。旧大蔵官僚で、第二次安倍晋三内閣では官房副長官や1億総活躍担当相、二度の厚労相など重要閣僚を、さらに党総務会長も歴任している。とにかく安倍首相の信頼は厚い。

 「彼は優秀な官僚出身<藤森注:日本的朱子学徒的>らしく仕事を黙々とまとめる。法律や前例などを組み合わせ、霞が関の各省庁のも知っている。答弁も如才ない。安倍首相が安心していられる。菅義偉官房長官もそうした部分<藤森注:日本的朱子学的>を評価し、鹿児島県馬毛島への米軍基地移転計画など極秘重要案件を任せていたほどだ」(首相出身派閥、清和会幹部)

 ところが、今回はそのスタイル<藤森注:日本的朱子学的>は通用しなかった。

 新型コロナウイルスの初期対応では、厚労省主導の徹底した水際対策や検査ができているのかが問われた。例えば、2月末にチャーター機で中国から帰国した日本人には、潜伏期間の2週間の隔離が必要だった。だが、検疫法などの縛りで、要請止まり<藤森注:朱子学的>にしてしまった。横浜港に接岸した英国船籍のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対応も遅くチグハグ。世界から批判が集中した。

 「官僚は法律や平等を侵してやれないし、むしろ、その制約の中で工夫することが優秀かどうかの判断だ。だが、有事の際は政治任用された大臣が、『法律や平等を無視してでも、今やるべきことをやる。責任も取る』という政治的な動きが求められる。官僚的発想での対応<藤森注:日本的朱子学的>は、有事にはまったく当てはまらない」(冒頭のベテラン)

 加藤氏は、厚労省内の担当部局や医系技官らの現状報告などをもとに、「あくまで、従来の法律の範囲内で官僚的対応をしてきた<藤森注:日本的朱子学徒的>」(同ベテラン)

 2009年の新型インフルエンザの際、当時の舛添要一厚労相は省内から名前が挙がってくる専門家ではなく、独自に現場の専門家を抜擢して会議を開くなどした<藤森注:舛添氏は日本的朱子学徒(的)ではない証拠>。そうした体験から舛添氏は「加藤氏は安倍首相に異を唱えるくらいの姿勢でやるべきだ」と政治的判断の重要性を強調する。

 安倍首相は今年正月の番組で、「ポスト安倍」について岸田文雄政調会長らとともに、加藤氏の名前も挙げたが、新型コロナウイルスは弱点を露呈させた。加藤氏に近い竹下派幹部はいう<藤森注:ワンマン安倍首相にとっては、朱子学徒的な部下(イエスマン)は使いやすい>

 「加藤氏は、初期対応について逃げずに頭を下げる。そして、緊急事態宣言の切れ目になる5月6日などのタイミングで、『フェーズが変わった』として、安倍首相に専門家会議や医療体制の抜本的改革を迫るぐらいの姿勢を示すべきだ」<藤森注:朱子学徒(的)が一番できないこと。朱子学徒のプライドが許さないこと。>

 

 

(6)「歴史から新元号の今を見る 日本史縦横無尽(264回)(保阪正康氏、日刊ゲンダイ、5月9日)

<できもしない奪回計画を論じている間に兵士が犠牲になった>

 (ガダルカナル島の奪回計画で)<藤森注:日本的朱子学><略>

 陸軍省と参謀本部の調整会議が行われた。これは大本営参謀の井本熊男の書(「作戦日誌で綴る大東亜戦争」)からの引用になるが、「大本営は陸海軍共にガ島奪回方針を堅持しているのが表面的態度であった。しかし第一線にも中央部にも、今やガ島の奪回はできないという内面の考え方は強く起こっていた」というのだ。

 第17軍令部の本心は奪回の意気や確信はなかったのだ。司令部の参謀は、奪回不能との電報を打ったら、「弱いと上からいわれるいまいましさを考えていた」に違いない。

 奪回は無理、陸海軍の参謀は誰もがそう思っているのに、口に出しては言えない<藤森注:日本的朱子学徒の驚くべき自己保身>。自らの自戒もなるのだろうが、井本は次のように書いているのだ。

 「できもしない奪回計画、命令等の経緯のため一カ月を過ごした。その間のガ島のわが軍の苦しみと消耗は甚大であった。(略)あえて極限するならば、面子に捉われ、責任のなすり合いを行い、自ら弱音を先に吐くことを避けようとするような性格が両軍の中枢に凝固していた」<藤森注:日本の軍部の中枢は「朱子学」が蔓延していた幕末長州の流れがあり、空襲に竹槍を練習させたりした「日本的朱子学徒」の卑劣な人間性には驚きます。ガ島で米軍の捕虜になった日本軍兵士の激やせ写真(1943年2月)には心が痛みます。>

 <265回>の最後の部分。

 大本営参謀の回想録の中には、「中には6日間絶食という部隊も生じた」と書いているほどである。・・・しかし大本営の参謀たちとて内心ではもう無理と考えていた節があった。・・・増援の船を出せ、出せないとの論が高じて、軍務局長の佐藤賢了と作戦部長の田中新一が殴り合いをする一幕もあった。

 昭和軍人の無責任体制を見ると、あまりにも兵士の命が軽く扱われたかがわかってくる<藤森注:日本的朱子学徒が大事なのは我が身と上司だけ。部下は無視!?>

<ほさか・まさやす氏・・・1939年、北海道生まれ。同志社大卒。編集者を経て、「死なう団事件」でデビュー。「昭和天皇」など著書多数。2004年、一連の昭和史研究で菊池寛賞。>