2017年6月30日 第129回「トピックス」
●(1)高級官僚経験者数人の意見では、加計学園問題は大したことがないらしいです。確かに、彼らの解説を読むと大した問題ではない可能性があります。
しかし、政府の対応はお粗末極まりないように思えます。対応そのものもお粗末極まりありませんが、その後も、いろいろ胡散臭い問題がボロボロとこぼれてきています。また、本来の「国家戦略特区」の目指すものとは違って、関係者の利益(権)に繋がっている傾向が強くあるように見受けられます。 仮に、大した問題ではないとしても、政府のお粗末な対応そのものが胡散臭さを増大させています。その一部をご紹介します。 |
●(2)平成29年6月21日、日刊ゲンダイ「金子勝の天下の逆襲」(慶大教授) <加計学園問題><「国家戦略特区」を改革と評価するポスト・トゥルース>日本にも「ポスト・トゥルース」が、蔓延し始めている。 加計学園が「国家戦略特区」の事業者に選ばれたことについて、「岩盤規制に穴をあけるものだ」と正当化する一方、「行政が歪められた」と訴える文科省を「抵抗勢力」と批判するキャンペーンが一部で行われている。恐らく、彼らは“事実”が見えていないか、“事実”を歪めようとしているのだろう。 そもそも「特区」を使った過去の規制緩和が、本当の「改革」だったのだろうか。これまで700以上の「特区」がつくられているが、そこから画期的な新しい産業が生まれた話は聞かない。本来は、まず特定の地域に限定して規制を外し、その事業が成功したら、新しいルールを全国に広げるというものだったはずだが、「特区」の成功で日本のルールが根本から変わった例も聞いたことがない。他方で、「特区」は「改革」利権を生み出してきた。たとえば“ミスター特区”ともいえる竹中平蔵東洋大学教授は、「国家戦略特区」の諮問会議のメンバーでありながら、自身が会長を務める大手人材派遣会社パソナが「特区」の事業者に選ばれている。 かつて規制改革・民間開放推進会議議長を務め、自社に有利な利益誘導を行い、批判された宮内義彦オリックス会長を思い起こさせる。今回、内閣府は獣医学部新設について4条件を決めている。加計学園がその条件を満たしているとするなら、内閣府には立証責任がある。 まず、ニーズがあるのに、既得権益の妨害によって新規事業の進出が阻まれているような場合に当たるのか。ノーだ。すでに獣医師は充足し、この先、需要は減る一方だと予測されている。家畜もペットも減っているからだ。さらに鳥インフルエンザなどの新研究分野という点では、研究実績を持つ京都産業大学を排除して、加計学園を選らぶ理由はどこにあるのか。説明はない。 加計学園による獣医学部の新設を正当化している人たちは、「特区」を岩盤規制に穴をあける突破口だとか、前川喜平前事務次官を「抵抗勢力」だとかいうが、700ある「特区」の実態を知らないか隠しているのだ。今こそ「特区」の「改革」利権を検証すべき時である。 |
●(3)これまで安倍は、森友学園や加計学園の問題で、「私が指示を出したことはない」「総理大臣だからといって、私の一存で決まるものではない」と決定プロセスへの関与を否定してきた。ところが講演では、決定権者として「速やかに獣医学部の新設を認めていく」と言う。自分の意向で政策はどうにでも変えられるとゲロッたも同然だ。
「しかも、一部報道によれば、獣医学部の全国展開宣言について、安倍首相は『あまりにも批判が続くから、頭に来て言ったんだ』と説明したという。頭に来たから政策を変えるなんて、絶対に為政者がやってはいけないことです。需給の問題もあるし、特区の政策意図を理解していないとしか思えません」(政治学者・五十嵐仁氏) 加計学園獣医学部の建設費は「鉄骨造り」で、約148億円。坪単価が約150万円。 一般的に「鉄筋コンクリート造り」のビルの坪単価は70~80万円。「鉄骨造り」なら55万円~65万円。建築業界関係者によると、「鉄筋コンクリート造り」なら、一般的な理系大学は120万円~130万円、高級ホテルは140万円程度。 「今治市企画課に坪単価150万円の算定根拠を問うと『わからない』『答えられない』とのこと」一方、建築営繕課は「図面と見積書が手元に来たばかりで、今チェックしている」と驚きの回答。普通は発注前に見積もりをチェックするものではないかと問うと、「普通ではないんです」とポツリ。(以上、6月29日、日刊ゲンダイ) |
<文責:藤森弘司>
最近のコメント