2012年2月29日 第64回「トピックス」
野田佳彦総理大臣についての一考察

●(1)平成24年2月24日、週刊ポスト「ニュースのことばは嘘をつく」(長谷川幸洋・東京新聞・中日新聞論説副主幹)

 <メディアは「議事録なし」で逃げ切りさせるな>東日本大震災や東京電力福島第一原発事故をめぐる政府の会議で議事録がなかった問題が発覚した。朝日新聞は次のように批判している。 「信じられない。政権の怠慢である。(中略)緊急対応に追われた事故直後だけならまだしも、昨年5月に議事録の不備が明らかになったあとも、今日まで放置してきたとは、どういうことか」(1月26日付社説)岡田克也副総理はあわてて「議事概要」を作るよう指示したが、普通の人は首をかしげるだろう。いくら記憶力が良くても、大震災から10ヶ月以上も経って話を思い出せないのではないかと。そんな心配は無用である。議事録がなくても、もっと生々しい手書きのメモは残っているからだ。

 官僚にとって、会議のメモをとるのはもっとも大事な仕事である。なぜメモをとるかといえば、役所に持ち帰って幹部たちと情報を共有するためだ。だれが何を言ったかをいち早く把握して、役所の失点につながるような話が出ていれば、直ちに必要な対応策を決めねばならない。

 こんなことは官僚であればイロハのイであり、入省直後から骨の髄まで徹底的に染み込まされている。
 官僚にとって議事録とは何かといえば、初めから「私たちは説明責任も果たしていますよ」という国民向けのポーズにすぎない。肝心かなめの議事メモは役所ごとにしっかり作成している。それを基に都合のいい言い訳作りとか、政治家たちへの根回し作業はとっくに終わっている。

 官僚にとって大震災や原発事故対応の会議は「終わった話」であり、議事録作成などまったく余分な仕事どころか、墓穴を掘るような話なのだ。だから、問題化するまでほっかむりしていた。本質はそういう話である。

 たとえば、放射能の拡散を予測したSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)情報の扱いだ。官僚たちはSPEEDI情報の存在を知っていながら、もしも一般に公開されれば大規模な住民避難など大仕事が降ってくるのは目に見えていた。後の責任問題を考えると、とにかく役所に火の粉がかからないようにしたい。それには情報自体を秘匿して、議論の経過もうやむやにしたほうが都合がいい。

 原子力安全・保安院や文部科学省など関係する官僚は、そんな全員一致の暗黙の了解で情報を隠し、議事録も作成しなかったのではないか。後で明らかになったように、米国にはいち早く情報を提供しながら、国民には完全に伏せていた。なぜかといえば、国民に知らせるのは寝た子を起こすような話だが、米国にノーと言ったら大事になる可能性を心配したからだろう。

 このあたりは官僚という人種がどっちに顔を向けて仕事をしているか、よく示している。ずばり、それは権力者である。「自分の身が危ない」と思えば、そっちに従うのである。
 議事録未作成問題は昨年5月にいったん表面化していた。朝日新聞によれば、その後、NHKが11月に役所に情報公開請求したのがきっかけだったという。NHKは大震災と事故の検証取材を進めていたのだろう。

 メディアがその気になれば、議事録ではなくて官僚の手書きメモだって情報公開請求の対象になるのではないか。拒否されれば、それがまたニュースになる。岡田がいうような「議事概要」でお茶を濁させてはいけない。この際、徹底的にメモを要求すべきだ。そうすれば驚くような話が出てくるに違いない。(敬称略)

●(2)実に面白く、かつ、極めて重要な問題が提起されているように私(藤森)には思えます。

 「官僚」というのは本質的にはこういう種類の人間の集団なのでしょう。

 しかし日本の官僚は、本質的にはここまで酷くはないように思えてなりません。少なくても、戦後の日本の官僚は大活躍したはずです。少なくても、私(藤森)はそのように祈っています。

 戦後のある時期から、徐々に、ここまで酷い人間集団になっていったはずです。それは一体何故か?それが今回のテーマです。

 灰燼に帰した日本は、戦後、大復興、奇跡的な大復興を遂げました。何故、大復興を遂げることができたのでしょうか。ここの反省が無かったがために、日本の官僚も、政治家も、そして国民も「ハチャメチャな人間性」になってしまったと私(藤森)は考えています。

 日本人は、自力で戦後の大復興を成し遂げたと勘違いしているのではないでしょうか。
 日本が大復興を成し遂げられたのは、実は、アメリカの政策だったのです。日本の国土を守り、戦争の危険性を排除してくれ、その中で、昔懐かしい「エコノミック・アニマル」に専念させてくれた結果、日本は奇跡的な復興ができたのです。
 もちろん、ここまでは多くの専門家は十分に理解していることと思います。特別、目新しいことではないでしょう。

●(3)問題はここからです。
 大成功の結果、日本人に「慢心」が出てきてしまったのだと思います。アメリカ自身が、ここまで日本人の精神が壊れてしまうとは夢にも思わなかったのではないでしょうか。
 詳細を説明できるほどの情報も才能も持ち合わせていませんが、とにかく日本人は「慢心」したのです。その最大が「自民党」でしょう。官僚の言うことを聞いていれば、大臣も総理大臣も問題なくこなせる。おいしい政権与党でもいられる。野党も、官僚の振付に従って与党を攻撃していれば、それなりのエサにありつける。

 官僚は官僚で、日陰の身に甘んじさえすれば、天下りや豪華な公務員宿舎を筆頭にしたおいしい「エサ」は十分に手に入れられた。十分どころではなく、「取り放題」状態ではなかったでしょうか。
 だからこそ、「私はシロウトの大臣ですから」などとホザく看護師出身の大臣でも、官僚は十二分に支えて、何の問題も起こさず、大臣の任期を全うさせてきたのだと思います。

 つまり、戦後のある時期から、自民党の政治家が、あまりにも政治に無知であり、あまりにも責任をとらなすぎたから、<<<ここまで酷い人間集団>>>、ここまで酷い官僚の習性ができたのだと思っています。

 天下の超一流大学をトップクラスで卒業したエリートも、「豊富なエサ」を前にして、「女衒」のような仕事に甘んじてこられたのだと思います。
 多分、「女衒」という言葉を使ってはいけないのでしょうね。「女衒(ぜげん)」ではなく、「男衒(ぜげん)」、あるいは「女衒=男の魂(ぜげん)」、はたまた、「国会議員コロガシ=ぜげん」「大臣コロガシ=ぜげん」。最近は、「総理大臣コロガシ=ぜげん」。

●(4)さらには「日本国民」です。

 私(藤森)を含めて「日本国民」は、それなりに腹いっぱいの食料にありつける現状に甘んじきって、国会議員が「二人羽織」で振付けられていることもわからず、エサにかじり付いていた「太ったブタ」だったのです。
 日本中(一部の目覚めた人たちを除きます)が太ったブタ状態になったからこそ、「二人羽織」状態の自民党を支え(投票し)、政権交代を望まなかったのです。

 しかし、自民党はどうしようもないことがわかって「政権交代」を実現させたところ、民主党も同じ、いや、経験不足の分だけ、「二人羽織」よりも酷い政治になってしまいました。この酷い状況はもはやいかんともしがたいものと思われます。

●(5)さて、これからが「議事録」問題です。

 私(藤森)がマスコミ界の「勝海舟」と呼ぶ長谷川幸洋氏の上記の「ニュースのことばは嘘をつく」を再読してみてください。「議事録」が記録されていなくて本当に良かったと私は思っています。

 多分、議事録は若干、脚色されるものと思われます。議事録が無いことを幸いに、<<<もっと生々しい手書きのメモ>>>のほうこそ重要視すべきです。
 もし「議事録」が残されていたならば、決して日の目を見ることは無いし、要求もできなかったであろう<<<もっと生々しい手書きのメモ>>>を要求できる絶好のチャンスです。絶対に<<<「議事概要」>>>ではダメです。

 メディアだけでなく、野党も挙って要求すべきです。原発の問題だけでなく、政治家の裏を生々しく見ることができる、まさに「戦後政治の総決算」「世紀の大チャンス」です。
 野田総理大臣の政治姿勢を試す絶好の機会でもあります。「事故調査委員会」も、そして権威ぶって何かをやるところの何もかも信用できないこのご時勢。<<<もっと生々しい手書きのメモ>>>以上に信用できるものはありません。絶対に日の目を見させるべきです。
 (次回に続く)

<文責:藤森弘司>

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