2012年1月31日 第61回「トピックス」
野田佳彦総理大臣についての一考察

●(1)平成24年1月20日、朝日新聞「首相に不都合な動画」

 <マニュフェストにないことやらない・ユーチューブに09年演説>

 「書いてあることは命がけで実行する。書いていないことはやらない。これがルールです」。野田佳彦首相が2009年8月の衆院選で、民主党のマニュフェスト(政権公約)を取り上げた街頭演説の映像が動画配信サイト「ユーチューブ」で話題を呼んでいる。

 首相は当時、党幹事長代理。自公政権がマニュフェストに明記していなかった後期高齢者医療制度を発足させたことを挙げて、「書いてあったことは何もやらないで、書いていないことは平気でやる。マニュフェストを語る資格がない」と批判していた。

 首相は今月初旬、消費増税の与野党協議に応じない野党側の姿勢を「マニュフェストに書いていないことをやるのはけしからんと言われたら、何もできない」と批判したばかりで、整合性を問われそうだ。

●(2)「記者クラブ」加盟の天下の朝日新聞に露骨な政権批判が掲載されるのは珍しいと思い、切り抜いて、ホームページに転載しました。
 ところがどうでしょうか。その後、続々と「ユーチューブ」の内容がいろいろなメディアに紹介され、国会でも取り上げられていました。朝日新聞よりもっと明確で、内容は驚くべきものです。
野田総理大臣の人間性を考える上で、とても貴重です。ご存知ない方もいらっしゃることと思いますので、さらに詳しいものを紹介します。何が問題か、日本の問題点がわかっているという点で、野田氏の演説は非常に素晴しいです。

 今まで民主党は、野党時代に鋭く政権を批判した内容が、政権交代した後に矛盾することが露呈するというブーメラン効果に何度も悩まされました。

 しかし、今度の野田総理大臣の「発言(上記、及び、下記の街頭演説)」は、過去のブーメランよりも遥かに巨大かつ重要な問題です。日本の根本の大問題が分かっていながら、それに全く切り込むことをせずに「消費税の増税」をしようというのですから、「巨大な犯罪的行為」と言わざるを得ません。

 消費税の増税は、中小零細企業に巨大な負担になるようです。私(藤森)の個人的な立場で言うならば、日本が本当に救われるならば、「消費税50%アップ」しても良いと思っています。

 何故ならば、私の子ども時代のように、貧しければ生活を切り詰めることはいくらでもできます。例えば、外食は一切止めます。喫茶店なども入るのを止めます。靴下や下着類は、継ぎはぎすれば2倍の利用ができます。タクアンに味噌汁とは言いませんが、食費もかなり節約できます。
 消費税が50%アップすれば、それに見合った生活をしますが、巷間、恐れられている「日本国破産」、あるいは「大恐慌」になったならば、個人のやり繰りではどうにもなりません。
 ですから、日本国再生のためならば、消費税はいくらアップしても良いと思っています。

 しかし・・・・・
①野田総理大臣も演説で発言しているように、穴の開いたバケツ・・・・・つまり、シロアリがたかっているので、その退治をしない限り、消費税はいくら上げても、ただムダに使われるだけになってしまうこと。まず、野田総理大臣自身が一番よく知っているシロアリを退治しろと言いたい。

②下記に紹介しますが、一方的に「中小零細企業」に巨大な負担になってしまうこと。

③私(藤森)を含めて、収入が低いほど「税負担」が大きくなる、いわゆる「逆進性」が大きな問題です。ヨーロッパなどと比較して、日本は税率が低いという極めて卑劣な議論がよく行なわれます。
 これはとんでもないことで、ヨーロッパ諸国は、生活必需品である「生鮮食料品」などは外しています。そういうものをならすと、日本とあまり変わらないと言われています。全てのものに消費税がかかる日本とは大違いです。インボイスを付けるべきです。

④輸出が中心の巨大企業は、輸出すると「戻し税」とかいうもので巨大な不当利益を得ているようです。

 以上の諸点から、まず、やるべきことをやってから「増税」すべきだと言いたい。やるだけやった後に増税が必要であるならば、「消費税50%アップ」もオーケーというのが私(藤森)の持論です。

 次回、上記の諸点を詳しく紹介したいと思います。

●(3)平成24年1月20日、夕刊フジ「“日本”の解き方」(高橋洋一)

 <「増税反対」の消せない過去>
<天下りというシロアリ退治やらずに変節した野田首相>

 野田佳彦首相の「シロアリ」発言をご存じだろうか。かつて街頭演説で語った話だ。「マニフェスト、イギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです。それがルールです」で始まる。

 そして「消費税1%分は、2兆5000億円です。(中略)消費税5%分のみなさんの税金に、天下り法人がぶら下がってるんです。シロアリがたかってるんです。それなのに、シロアリ退治しないで、今度は消費税引き上げるんですか?」と、税金が天下り役人らにムダ遣いされている状態での消費税増税を厳しく批判する。

 さらには「消費税の税収が20兆円になるなら、またシロアリがたかるかもしれません。鳩山(由紀夫元首相)さんが4年間消費税を引き上げないといったのは、そこなんです。シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです」と続く。

 すばらしい演説だ。しかし、言っていることが今とはまったく正反対だ。野党議員は、国会でこの野田首相の演説を読み上げ、野田首相に質問したらどうだろうか。

 菅直人前首相も財務省就任前と後では消費税増税に関する発言がコロッと変わった。鳩山元首相も普天間基地問題では「最低でも県外」という言葉が一転して元に戻った。
 なぜ民主党幹部の発言はこうも180度変わるのか。政治家個人の資質もあるだろうが、最大の要因は政権交代時の民主党マニフェストがほとんど崩壊状態ということだ。

 脱官僚、政治主導、無駄削減による20兆円の財源確保、歳入庁、抜本的年改革、年金記録問題、年金通帳導入、後期高齢者医療廃止、天下り廃止、天下り機関原則廃止、八ッ場ダム建設中止、国家公務員給与削減、子ども手当2万6000円、ガソリン暫定税率課税廃止、高速無料化、格差是正などなど、これらを民主党はギブアップしている。

 これらのうちいくつかはもともと無理筋だったという事情はある。しかし、民主党が「脱官僚」を諦めて「官僚依存」になったためにできなくなったものも多い。
 今の野田首相がいい例だ。天下り廃止や天下り機関原則廃止をギブアップして、シロアリ退治をやらなくなった。その結果、無駄削減ができなくなって、そのしわ寄せは、マニフェストに書かれていない消費税増税になった。かつて野田首相が街頭演説で言っていたとおりだ。

 脱官僚を断行できなかったのは、官僚に伍するようなスタッフがいないからだ。これは政権への準備不足だ。いきなり大臣になってからスタッフを探すのでは遅い。政治家として早い段階でそうした人材は確保しておかないと、政治主導・脱官僚はできるものでない。
 (元内閣参事官・嘉悦大学教授)

●(4)平成24年1月29日、夕刊フジ

 <歴代首相・引用演説の野田首相が過去に言っていたこと>

 野田首相が施政方針演説で自民党の首相演説を引用したことに対し、野党は「抱きつきだ」と反発を強めている。そりゃそうだろう。
 09年7月の麻生内閣に対する不信任決議案で、賛成討論をしたのは野田本人だ。そこで、こう熱弁をふるったのである。

 「昨年の秋から、すでに麻生内閣で4本の予算が成立いたしました。4本です。でも、一向に日本はよくならない。国民の生活は良くならない。結果が出ない責任は極めて大きい」

 <藤森注・・・・・実に見事な演説です。今の野田総理大臣にピッタリで、まさに予想しているようです>

 「もうひとつは、官僚政治をコントロールする能力と気概がないということであります」
 「一番国民が問題にしている天下りやわたりを実効性ある方法でなくしていこうという熱意がまったくありません」

 <藤森注・・・・・まさに「気概」がなく、「熱意」がまったくないのは、ご自分であることをよ~くご存知のようですね。「深層心理」をピッタリ「投影」しています。人間は「ウソ」をつけないものです>

 「すなわち、私が申し上げたいのは、麻生内閣につながる小泉内閣、安倍内閣、福田内閣、そして今回の麻生内閣、それに連なる自公政権そのものに内閣不信任案を私たちは突きつけているわけであります」

 <藤森注・・・・・国民が「野田内閣」「不信任案」を突きつけていますよ>

 自公の歴代政権に自ら不信任を突きつけておきながら、野田は施政方針演説で「歴代総理と思いは同じ」と言った。イケシャーシャーとはこのことではないか。
 首相周辺に話を聞いたところ「引用は野田本人のアイデア」だという。きのう(27日)の国会でも真意を問われたが、野田はこう答えていた。
 「麻生元総理や福田元総理の発言を引用させていただきましたのは、逆手に取ろうなどという発想からではございません」
 「社会保障と税の一体改革は、自公政権時代の内閣においても避けては通れない重要な問題と認識されてきました。私は、歴代総理の思いを引き継ぎ、共感をこめて引用させていただいたものでございます」

 気が確かとは思えない。一度、野田のアタマの中をのぞいてみたいものだ。

<文責:藤森弘司>

トピックスTOPへ