2011年8月15日 第54回「トピックス」
陸山会事件に思う(3)

●(1)「陸山会事件」の裁判がいよいよメチャクチャになってきました。

 現在までの流れでは、完全に無罪の流れのようです。万一、無罪になったならば、この2年くらいの政界の大騒動は、一体全体、何だったのでしょうか。
 今や、民主党の代表選も行なわれようとしています。その後に、総理大臣を選ぶための投票が国会で行なわれます。その時、党員資格停止処分にされている小沢一郎氏は、代表選に出る資格が無いという前代未聞の状況になります。

 今や、世界中(日本、アメリカ、ヨーロッパ)がメチャクチャになりかねない金融の大問題を抱えています。その上に、日本では「東日本大震災」の復旧・復興という大問題も抱えています。一歩間違えれば、日本は破滅するとまで言われています。それほど未曾有の大問題を抱えている現在、元々、無理スジと言われていた「陸山会事件」を、でっち上げるような形で政治を停滞させた「東京地検特捜部」の行為は、「許し難い暴挙」であったということになります。

 すでにこの日があることを検察庁の上層部はわかっていて、いろいろ、布石を打っていたようです。どのような布石を打っていたのか、順を追って紹介したいと思います。

 私(藤森)は、小沢氏が清廉潔白な政治家だとは決して思っていません。むしろ、政治の世界は、悪い意味だけではなく、ある程度、薄汚い世界ではないかと思っています。一般に言われている「清濁併せ呑む」とでも言いましょうか。
 「水清ければ魚棲まず」と言います。いわゆる清廉潔白などと言われる人が政治家になると、政治家としての業績は最低になりかねません。
 東京教育大学教授だった、故・美濃部亮吉氏などもそうでしょう。都民に響きの良い政治を多数やりましたが、都政に大赤字を作ってしまい、当時のニューヨークと同様、東京都が再建団体になりかねない状態になりました。
 大赤字を作って良いならば、誰でも良い政治を行うことが可能になります。予算の範囲で政治を行なうからこそ、相手陣営から攻撃されたり、対象から外された人たちから嫌われたりします。

 「クリーンでオープン」という美辞麗句を並べた菅直人氏は、多分、史上最悪級の総理大臣になるのではないでしょうか。

 選挙のとき、投票するに相応しい人がいないとき、棄権するのではなく、ワーストではないワース(その中でも、それほど悪くない人)を選ぶのが選挙だと聞いたことがあります。

 最近読んだ本、<「世界の変化を知らない日本人~アメリカは日本をどう見ているのか~」日高義樹著、徳間書店>によりますと、民主党の閣僚や幹部がボロクソに書かれています。

 例えば、前原誠司元外務大臣は、アメリカ・フロリダ州の高速鉄道の売り込みに、JR東日本の先頭に立って交渉したが、これは一国の閣僚として最低のようです。国家意識が無さ過ぎるとのことです。
 岡田元外務大臣も、公の場での発言と、そうでない場で違うことを言ったために、嘘つき呼ばわりされた。かつての政治家はその点、誠実だったそうです。

 小沢一郎氏も、外国人の参政権問題や、中国に肩入れしていることがボロクソに書かれています(私・藤森も、外国人の参政権は不思議に思っています。ただ、批判するほど、事情をよく知らないので黙っています)。

 歴代のアメリカの大統領は、「日本人は正直で、しかも誠実である」と著者・日高義樹氏にいつも言っていたそうです。しかし、民主党は、例えば、「核の傘はいらない」と言ったり、「やはり核の傘はいる」と言ったり、政権を運営することに慣れていないからとはいえ、余りにも酷いと、ボロクソです。もちろん、自民党は政権を長く運営し過ぎて「すっかり腐敗」してしまったとも述べています。

●(2)菅総理大臣は、昨年の代表選で、小沢氏と争いました。その時、彼は「クリーンでオープン」を訴えました。その菅直人氏は、今や、史上最悪総理大臣と言われるほど薄汚い政治家であることが証明されてしまいました。

◆ウソ
◆口から出任せ、
◆パフォーマンス、
◆怒鳴る、喚く、
◆国家観の無さ、
◆手柄の横取り、
◆周囲に尻拭いをさせる、
◆場当たり的な発言、
◆大震災のような大災害さえもが政権延命に利用する薄汚さ、
◆麻生元総理大臣のホテルのバーの利用を高級だと批判したのにも関わらず、ある意味でそれ以上の高級な飲食を繰り返している、
◆官僚は大バカだと大見得を切って罵りながら、完全に財務省に取り込まれている、
◆「菅民主党と北朝鮮」と題して、ジャーナリストの田村建雄氏が「夕刊フジ」で連載していますが、特に、2007年に菅総理大臣の資金管理団体「草志会」から、北朝鮮にかなり縁がある「政権交代をめざす市民の会」に5000万円もの巨額を献金しています。
 恐らく、この件と、外国籍の人からの献金104万円が問題になってきたので、総理大臣を辞任することになったのではないかとも言われています。

 今回は、菅直人氏がターゲットではありませんので、これ以上、具体的には触れませんが、上記の内容には全部裏づけがあります。その中で、ある意味で一番薄汚いものを一つだけ紹介したいと思います。

◆ウソ・・・・・外国人からの献金は違法。外国籍の人からの献金が104万円あり、その違法性が明確になると、国会議員を即・辞めなければならないほどの犯罪であり、3月11日の大震災の当日、これが大問題になりました。わずか5万円の違法献金で、前原前外務大臣は即刻、辞任しました。
 104万円の献金ではかなり追い込まれるところを、大震災が発生したことで宙に浮いてしまいました。菅総理大臣は、瓦礫の処理や仮設住宅の建設などで、政治力を発揮できず、ノロノロとした対応をしているにも関わらず、この104万円に関しては、3月14日に、献金者が外国籍の人だとわかったので返金した・・・ということになっています。

 しかし、自民党は、それ以前に返金しているはずだ、だから領収書を出せと迫っています。
①まず、本当に3月14日に返金したのならば、領収書を提出すれば済むことです。それを出さないのは、少なくても、状況的には「ウソ」だと言わざるを得ません。何故ならば、「クリーンでオープン」を標榜する清廉潔白な政治家が、最大の証拠となる領収書を出さないのは、出せないというのが常識です。

②この領収書を出さない理由として、菅直人氏は「前例が無いから」としています。しかし、「佐川急便事件」のときに、細川元総理大臣は領収書を提出しています。つまり、前例があるわけです。前例が無いから提出しないと言ったわけですから、その前提が完全に崩れた今、提出しない理由はゼロになります。それでも提出しないということは、提出できない理由が「完全」に存在するということを証明しています。

 「クリーンでオープン」などとよくぞ言えたものです。いや、むしろ、私(藤森)のように深層心理をテーマにしている人間にとっては、当然の結果だと思っています。こういう理想を掲げなければならないほど、見えない部分に薄汚さがあることを証明しているものです。60年以上も人生を生きてきて、自分の中に薄汚さが一切無く、私は「クリーンでオープン」なんて言える人間は不気味か、単なるバカです。

 さて、話を元に戻して、どうやら「陸山会事件」は、いろいろな観点から、無罪がほぼ立証されてしまったような状況になっています。それをこれから紹介したいと思います。いろいろ面白いですよ。
 ただし、今回の「陸山会事件」が仮に無罪になったからといって、小沢氏が政治生活の中で、全て「クリーンでオープン」な政治家だと言うつもりは全くありません。あくまでも私(藤森)は「是々非々」の立場です。

 ただ、歴史的な大変換・・・幕末のような大変換を求められている今のこの時代には、良いも悪いも含めて、是非、活躍してほしい人材だと思っています。特に、官僚の世界や権力に媚びるマスコミの世界に大胆に切り込めるのは、多分、小沢氏が筆頭ではないかと思っています。良いも悪いも含めて、こういう長年の腐敗が積もっている「権威がある」ぞと錯覚されている分野は、東京地検特捜部がそうですが、壊さない限り、真に日本の大変革はありえません。

 天下のイギリスでも大変なことが起こっています。フランスも「AAA(トリプルA)」の格下げがありそうだということで、中東の民主化も含めて、世界中がテンヤワンヤの状態です。
 そういう中にあって、日本だけが、官僚も大マスコミも、まるで「お公家さん集団」のように「既得権益」を守らせていていいのでしょうか。とは言っても、今度の民主党代表選に登場しそうな顔ぶれは、地中深く根を張った「既得権益集団」に鋭く切り込める人物のようにはとても思えません。

 その証拠に、細野原発担当相です。彼は、原子力発電所関係の「庁」を環境省の外局にしたいそうですが、完全に独立した組織にすべきだそうです。そうでないと、今までより少し良いというだけのことになりかねません。
 今の日本は、一つずつ、根本的な改革をやっている暇がありません。そんな悠長なことを言っているほど余裕がある日本ではありません。また、海江田経産相はすぐに辞めれば、有力な総理大臣候補でした。グループ会長の鳩山前総理大臣も会談して、早く辞任するように迫りましたが、結局、辞め時を逸してしまいました。

 恐らく、これは、経産省の幹部に取り込まれて、辞めるに辞められない状態にさせられたのではないかと邪推しています。
 その一つの大きな理由は、今、マスコミを賑わしている経産省官房付の大改革論者・古賀茂明氏<第51回「トピックス」「官界に<坂本龍馬>現る!!」ご参照>を思い切って「経産省の次官」に任命してはどうかという動きがあったために、取り込まれた海江田大臣を利用して、古賀茂明氏の次官就任を阻止させたのではないかと思われます。

 その他にも、海江田大臣が辞任したならば、菅総理大臣が経産省に手を突っ込んできて、パフォーマンスや政権延命のためだけに、経産省の既得権益を引っ掻き回されるのではないか・・・ということを防ぐためにも、幹部が海江田大臣を辞めさせなかったのではないかと、邪推しています(ただし、かなり当たっていると自負していますが)。

 こういうような小粒の政治家しか、今の日本にはいません。特に、政権運営に慣れていない、理屈ばかりの政治家が多い民主党(松下政経塾出身者に多い)にはさらに大改革はムリです。
 何故ならば、そのチャンスは沢山ありました。

 一つには、「国家戦略室」を立ち上げたときです。古賀茂明氏もこれに、当初は期待したようです。次に、「事業仕分け」です。財務省に取り込まれた、単なるパフォーマンスではなく、さらに本格的な事業仕分けをやったならば、革命的な改革ができたのではないでしょうか。美人の目立ちがりや・・・・・議事堂の中でモデルをやってヒンシュクを買うほどのパフォーマンス好きでは、天下国家の一大危機には相応しくないどころの話ではありません。「節電啓発担当大臣」はどうなりましたか?

 自民党時代の渡辺喜美氏が、可能な限りの・・・・・涙を流すほどの大改革案を行革担当大臣のときに成し遂げましたが、それを全くの骨抜きにしたのが、政権交代をした民主党です。

 小沢氏にはいろいろ批判があると思います。が、土地改良なんとかという元自民党の野中幹事長が会長をやっている団体、これに毎年、5000億円くらいの補助金がついていましたが、一挙に3000億円にして、2000億円という巨額を浮かせました。
 良い悪いはよくわかりませんが、今の日本は、このくらい大胆な改革、大ナタを振るわなければ立ち行かないほどの惨状だということが、民主党を始めとして、国会議員、官僚、国民が一致して理解しなければ立ち直れません。
 座して死を待つか、可能性を信じて、欲しがりません、勝つまで・・・・・は?

 そういう中で、少なくても、小粒になった日本の国会議員の中では、何かやってくれそうな気がするのが、小沢一郎氏です。戦国時代に大活躍をした大久保彦左衛門は、平和な江戸時代になったら、乱暴者で厄介者に成り下がってしまったそうです。戦国時代には絶対に必要な人材でも、平和な国家運営には大久保彦左衛門のようなタイプは不向きでしょう、官僚が中心になった政治になるのかもしれません。

 今のような乱世の時代に相応しい人物は誰か?こういう問いかけに、小沢氏を反対する人は、実にチマチマしたことを理由にします。大災害で困窮している被災者に義捐金を送るのに、チマチマした平等主義を堅持する選良(エリート)連中みたいな評論家・・・たちが・・・・・・。

 菅直人氏のように、何も出来なくて「立ち枯れ」するような壊し方(壊れ方)でなく、剛腕の政治家に、建設的なぶっ壊しを期待したいです。

●(3)平成23年7月4日、日刊ゲンダイ「小沢裁判・もうやるだけ時間と税金のムダ」

 <強制起訴の根幹崩れる>

 検察ストーリーは、やはり砂上の楼閣だった。小沢一郎元代表の元秘書3人が収支報告書虚偽記載に問われた「陸山会裁判」で、東京地裁が「検察敗北」の決定打を放った。検察の供述調書38通の大半を「信用できない」として証拠採用を却下。デッチ上げと認めた調書には、衆院議員の石川知裕被告が「小沢元代表に虚偽記載を報告、了承を受けた」という調書も含まれていた。この調書が、小沢の強制起訴の唯一の証拠だっただけに、秋にも始まる裁判は根底から崩れ去ったも同然だ。無罪は確実で、裁判を開くだけ時間と税金の浪費である。

 <裁判長も怒った検察のデッチ上げ>

 陸山会裁判で、元秘書3人の弁護団があぶり出したのは、ハナから結論ありきで、脅し、すかし、泣き落としで自白調書を作り上げた東京地検特捜部のエゲツない実態だ。

 その筆頭格が、石川議員の聴取を担当した元特捜副部長の吉田正喜、田代政弘両検事である。
 「吉田検事は別件の“贈収賄事件”の調書を作成し、『こんな事件はサイドストーリーだ』と破り捨てるパフォーマンスを演じて自供を強要。田代検事は『特捜部は恐ろしい組織だ』と脅しつつ、時には『親しい検察上層部が“小沢の起訴はない”と言っていた』と甘言をささやき、小沢氏の関与が色濃い調書にサインをさせたのです」(司法ジャーナリスト)

 石川は保釈後の再聴取をICレコーダーを使って密かに録音。石川が供述を翻そうとすると、聴取を担当した田代検事が「最高権力者の小沢氏が変えさせたとの印象を持たれて(検察審査会で)小沢氏が不利になる」と再び揺さぶりをかける様子がバッチリとられ、裁判所に提出された。

 大久保元秘書の調書を取ったのは、改ざん検事の前田恒彦受刑者だったし、池田元秘書の担当検事も今回と同じように作成調書が「デッチ上げ」と過去の裁判所で認定された“札付き検事”だ。

 不良検事の吹きだまりのような捜査メンバーに、普通なら特捜部の肩を持つ東京地裁も「こいつら、オカシイ」と判断したのだろう。証拠不採用の決定文で「威迫ともいうべき心理的圧迫と利益誘導を織り交ぜながら、巧妙に供述を誘導した」と、特捜部を厳しく批判。弁護団関係者も「驚くほど検察の調書が採用されなかった。裁判長の怒りすら感じる」と語ったほどだ。

 こんなデタラメ検事たちの作文調書が、小沢関与のシナリオとなり、検察審査会で強制起訴される決定的材料に悪用されたのだ。元検事の郷原信郎・名城大教授はこう言う。
 「小沢氏の共謀を立証する材料は、石川議員らの供述調書しかありません。その信用性が崩れたのですから、検察官役の指定弁護士は戦う前から武器を奪われたようなもの。“勝負あった”と見るべきです。もはや、小沢氏を法廷にダラダラと縛りつける理由はありません。指定弁護士は早期決着を図るべきです」

 指定弁護士はサッサと白旗を揚げるべきだし、デッチ上げに便乗した大マスコミも検察と同罪だ。政権交代の立役者を潰した世論誘導の不明を恥じて、素直に国民に謝罪したらどうだ。

●(4)平成23年7月5日、日刊ゲンダイ「裁判所も認めた!世紀の謀略『小沢事件・全内幕』」

 <供述調書、全内容却下12通の異常捜査>

 東京地検特捜部はもうオシマイではないか。民主党の小沢一郎元代表の政治資金団体「陸山会」事件で、東京地裁が特捜部の取り調べを問題視し、多くの調書の証拠採用を見送った件である。検察は決定を不服とし、異議申し立てをするつもりらしいが、やれるものならやってみろだ。これで小沢の無罪は決定的だし、司法関係者の間からは「検察はもう完全崩壊だ」の声が噴き出している。

 <脅しとデッチ上げしかできない地検特捜部はとっとと解散したほうがいい>

 検察が陸山会事件で裁判所に証拠採用を請求した供述調書は38通。小沢の元秘書で衆院議員の石川知裕氏、同じく元秘書の池田光智被告、大久保隆規被告らの調書だ。
 そのうち、東京地裁の登石郁朗裁判長は石川被告の調書10通、池田被告の調書2通の全内容を却下し、他の調書の一部も却下した。ズバリ、捜査がデタラメで調書に任意性がないからだ。これが関係者に衝撃を与えているのは理由がある。元東京地検公安部長で弁護士の若狭勝氏はこう言う。

 「被告の弁護側は検察が提出してきた供述調書の中身を問題視し、異議を唱える時は2つのパターンがあります。ひとつはそもそも取り調べ段階の捜査に違法性があり、調書全体が認められないと主張するケース。もうひとつは調書の証拠採用は認めるが、中身については信用性を争うケースです。今度のは最初のケースで、裁判所もそれを認めた調書がこれだけあった。捜査の手法に相当な問題があったという証しです。

 この裁判は小沢氏の元秘書の裁判で、小沢氏本人が強制起訴された裁判とは裁判長が違います。裁判長によって、証拠の評価、判断は違いますが、最初のパターンでこれだけの調書が却下されたとなると、裁判長によって、その評価が変わるとは思えない。小沢氏の裁判にも影響があるだろうし、検察審査会は昨年、証拠申請が却下された石川氏の供述調書を重視して、『小沢氏に共謀の可能性あり』と強制起訴決議をした。その前提が崩れたとなると、検察審査会から地検特捜部への批判が出てくる可能性もあります」

 <もうこれまでのようなデタラメは通じない>

 検察と検察審査会といえば、謀略のような手口で小沢抹殺を企んだ“共犯者”だ。その両者が今になって内輪モメなんてブラックジョークだ。小沢にしてみれば「フザケンナ」だろう。東京地検で公安部の検事だった落合洋司弁護士はもっと手厳しい。

 「これまでも地検の捜査手法は問題視されてきたんですよ。否認すれば、刑が重くなるぞ、家族にも迷惑がかかるぞってね。関係者に片っ端からガサを打つぞ、迷惑がかかるぞっていう捜査をやってきた。今度の証拠申請では切り違い尋問が問題になりました。

 Aは自白しているぞ、とウソを言って、Bに自白を迫る手法です。そんなことをずっとやってきたし、検察のそういう捜査手法を警察もマネしてきたのです。それでも調書が却下されることは少なかった。裁判所が検察に遠慮してきたからです。その空気が村木事件以来、変わってきたのでしょう。大阪の裁判所は非常に厳しくなったし、それを受けて東京の裁判所も問題がある捜査、調書を見過ごすわけにはいかなくなったのだと思います」

 しかも、今回、捜査の任意性を問題視された検事は複数だ。地検特捜部全体の“体質”が問われたのである。
 「もともと、小沢氏の秘書の捜査は小沢氏に駆け上がるためのステップで、最初から筋書きができていた。だから無理に無理を重ねる取り調べになり、それがひっくり返された。もう検察は従来のような取り調べはできなくなると思います」(落合洋司氏=前出)

 ここまで悪さがバレた以上、地検特捜部はもう解散した方がいい。

●(5)平成23年7月22日、日刊ゲンダイ「陸山会事件公判・苦し紛れの検察が『推認させる』を連発」

 <前代未聞のお粗末論告求刑>

 これじゃあ「暴走」ならぬ「妄想」検察だ。きのう(20日)、東京地裁で開かれた「陸山会事件」の論告求刑公判。検察は元公設第1秘書の大久保隆規被告(50)に禁錮3年6月、衆院議員の石川知裕被告(38)に禁錮2年、元私設秘書の池田光智被告(33)に禁錮1年をそれぞれ求刑した。東京地裁が3被告の「供述調書」を大量却下し、論告の中身が注目されていたが、案の定、スカスカだった。

 <大久保、池田両被告は無罪確実

 「~と推認させる」「~としか考えられない」「~と考えるのが自然」「百も承知していたはず」・・・・・。3人の検察官が交代で2時間かかって朗読した論告書面は、検察の「憶測」交じりの曖昧な表現であふれていた。

 「『供述調書』が却下され、検察は論告の柱を失った。3人以外の供述調書や証拠で組み立てるしかなかったため、あやふや表現になったのでしょう」(傍聴した弁護士)

 そんな薄っぺらな内容の朗読にダラダラと長い時間がかかったのは、<公共工事の発注に関する利権疑惑が取り沙汰されるのを避けるための犯行><国民に対する背信行為><政治への不信感を蔓延させた>などと、苦し紛れの検察が必要以上に悪質性を強調する文言をねじ込んだからだ。

 「陸山会」が世田谷の土地購入に充てた4億円の原資についても<公にできない性質の資金>と決めつけ、政治資金収支報告書に記載しなかった動機を<(小沢元代表からの)借り入れを隠蔽するための偽装工作>と強調。東京地裁が“無視”した「裏金1億円」の水谷関係者の証言も<合理的で信用性が高い>と持ち上げる始末だった。

 <郵便不正事件の論告と同じ>

 「『公にできない資金』と断言できる証拠は裁判で何ら示されておらず、『偽装工作』と言える論拠も不明。さらに言えば、検察は西松事件について、小沢事務所に献金していた政治団体は『ダミー団体』であるかのような主張だったが、西松事件の公判では検察側証人が『ダミー団体ではない』と明確に否定する証言をしていた。あの法廷証言は一体どこに消えたのか。憶測や想像で論告するなら、裁判の意味がありません」(司法ジャーナリスト)

 元東京地検検事で名城大教授の郷原信郎氏はこう言う。
 「証拠がないから恥ずかしい論告になる。無罪判決が出た郵便不正事件の論告と同じケースです。虚偽記載の目的についても、調書の大半が却下されていたはずで、どんな根拠に基づいているのかが分かりません。水谷関係者の証言の『信用性が高い』というのも理解に苦しみます」

 最終弁論は8月22日で、判決は9月26日。裁判の展開はどうなるのか。
 「弁護側は全面無罪を主張する方針です。大久保、池田両被告の共謀については、論告でも『~と考えるのが合理的』といった曖昧な表現が多く、無罪はほぼ確実でしょう。石川被告は形式上とはいえ、不動産購入の記載をずらしたことを認めているため、裁判所の判断が注目されます」(前出の司法ジャーナリスト)

 あれだけ大騒ぎした事件にしては何ともショボイ論告である。これで、10月にも初公判が開かれる小沢裁判では「無罪」判決が出る可能性がますます強まった。

●(6)平成22年12月28日、朝日新聞「ひと」

 <逆風の中、検事総長に就任した・笠間春雄さん(62)>

 検事長定年の63歳を目前に、年金を受け取る手続きを始めていた。一転、検事総長に緊急登板。証拠改ざん事件で猛烈な逆風の中、組織の頂点に昇り詰めた感慨はない。

 検事生活37年の間に法務官僚の経験はなく、31年を捜査現場の地検で過ごした。一線検事の時期、旧日本軍を研究した「失敗の本質」という本に影響を受けた。「勇ましい意見が正論で、消極論は意気地なしとされる風潮はおかしい」。見立てと証拠が合わない時、立件を急ぐ上司にも「引くべきだ」と進言した。「諦めが良すぎる」と嫌みを言われた。

 東京地検特捜部長を務めた1999~2001年、政界捜査で村上正邦・元労相ら国会議員経験者4人を次々に逮捕、起訴した。その目に、いまの特捜検察は「暴走している」と映る。「どこに欠陥があるか承知している」とも語った。

 リクルート事件でかつて取り調べを受けた元被告は「私の言い分をよく聞き、何度でも調書を書き直してくれた」と振り返る。心がけてきたのは「自分の価値観を押しつけないこと」だったという。

 周囲をなごませるのが得意だ。元上司は「時に冗談を交えて彼が話すと、緊張した場が、すっとほどけた」。声楽をたしなむ妻の独唱会を主催し、自ら軽妙な司会で場を盛り上げたこともある。

 「捨て石になってもいい」。硬軟併せ持つベテランが、検事生活の「延長戦」に臨む。(文・小松隆次郎 写真・安富良弘<割愛>)

●(7)平成22年12月28日、夕刊フジ「小説『呪縛・金融腐蝕列島Ⅱ』登場人物のモデル」

 <新検事総長・笠間春雄氏に高杉良氏がエール>

 大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽事件など一連の不祥事を受けた人事刷新で、笠間春雄・前東京高検検事長(62)が27日、検察トップの検事総長に就任した。笠間氏がモデルとみられる検事が、高杉良氏(71)の小説『呪縛・金融腐蝕列島Ⅱ』(角川文庫)に登場することは意外と知られていない。高杉氏が当時を振り返り、笠間氏にエールを送った。

 笠間氏は1974年に検事に任官し、東京地検特捜部でリクルート事件や証券会社・銀行の総会屋に対する利益供与事件などの経済事件を手がけた。99年に東京地検特捜部長に就任、「KSD事件」などを指揮した。

 高杉氏の小説『呪縛』は、総会屋への利益供与事件の舞台になった都市銀行で、「4人組」と呼ばれる中堅行員が腐敗した組織の改革に取り組むというストーリー。
 架空の銀行名や人物名が使われているが、97年に第一勧業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)で起きた総会屋への利益供与事件と重なる部分が多い。

 小説では、捜査を受けた銀行の顧問(元会長)を担当する加納という検事が登場。顧問は事情聴取の直後に自殺する。
 顧問の死後、加納検事は拘置所に拘留中だった銀行専務に電話をかけ、「わたしの事情聴取の仕方に問題があったと思いますか。わたしはこれでも注意深く、慎重に事情聴取してきたつもりなんですが、わたしに落ち度があったのでしょうか」と尋ねている。銀行専務は「加納検事には実に紳士的に対応していただいています」と応じる。

 実際の第一勧銀事件では、宮崎邦次元会長が97年6月に自殺。加納検事は、第一勧銀事件を担当した笠間氏と重なる。
 高杉氏は「拘置所への電話については(第一勧銀の)元専務から取材しており事実です」と明かし、こう振り返る。

 「検事が拘留中の容疑者に電話してまで捜査のあり方を考える姿勢を見せたことが強く印象に残り、小説に取り入れました。特捜検事の厳しい取り調べを受けた金融マンには後々まで検察を恨んでいる人も多い。しかし笠間氏については偉ぶらず紳士的という評判で、悪く言う人は誰もいなかった」

 高杉氏は検察組織の現状について「『呪縛』の舞台になった90年代よりも検察が傷んでいるのは間違いない」と指摘。
 その一方で、「特捜部をなくすという意見には反対です。検察機能が低下すると悪がはびこるだけで、国家の危機とさえいえる。笠間さんには組織を立て直したうえで、事件にもしっかり対応してもらいたい」とエールを送る。

●(8)平成23年2月19日、日刊ゲンダイ「供述調書至上主義を見直せ」

 <異例の検事総長訓示は「小沢と手打ち」のメッセージ>

 「陸山会」事件は改めて無罪の公算が大きくなってきた。笠間春雄検事総長が16日の「検察長官会同」で、「供述調書至上主義」の見直しに言及した。全国の高検検事長や地検検事正らが集まる中で、検察トップとしては異例の訓示である。

 「検察官自身が意図する供述調書ばかりを取ろうとするなら、相手方からの信頼を得られず、信頼関係の構築はできない。『供述調書を取れば一丁上がり』というような、供述調書至上主義」は、一連の検察不祥事の元凶だ。筋書きありきで捜査し、コイツと決めたら事件をデッチ上げてでも身柄を引っ張り、狭い部屋に押し込んでギュウギュウ締め上げる。どんな手を使っても、検察のシナリオ通りの供述調書を作ろうとするのは、裁判で「検面調書の特信性」が認められ、有罪に持ち込めるからだ。

 そのため“特高警察”式の捜査がまかり通り、証拠改ざん事件や、陸山会事件のようなメチャクチャなことが起きるのである。
 「『陸山会』事件の“前身”である『西松事件』が起きたのは09年初め。当時、最高検次長検事だった笠間総長は当初から、東京地検特捜部の強引な捜査に異論を唱えた。しかし、広島高検検事長に異動した途端、見計らったように特捜部は民主党の小沢元代表の公設第1秘書だった大久保隆規被告を逮捕し、暴走を始めた。笠間総長が調書至上主義の見直しに踏み込んだのは、当時の忸怩たる思いがあるのです」(司法ジャーナリスト)

 笠間総長はなぜこのタイミングで発言したのか。ある民主党議員はこうみる。
 「『陸山会』事件を意識しているのでしょう。大久保被告の調書は証拠申請を撤回するハメになり、衆院議員の石川被告は“脅迫”再聴取が問題になっている。まさに2人とも『調書至上主義』で調書を作成され、その任意性や信用性が問われている。肝心の裁判も、起訴事実と関係のない裏金の立証というメチャクチャな展開。笠間発言は『小沢サイドと手打ちする』というメッセージだと思います」

 暴走検事の“A級戦犯”コンビ、佐久間達哉(大津地検検事正)大鶴基成(最高検公判部長)らにぜひ、笠間発言の感想を聞きたいものである。

●(9)平成23年7月30日、日刊ゲンダイ「西松・陸山会捜査を指揮」

 <哀れ・・・佐久間元特捜部長・左遷された>哀れなモノだ。暴走捜査の落とし前は「左遷」で償うハメになった。8月1日付の法務・検察人事で佐久間達哉・大津地検検事正(54)が東京都府中市にある「国連アジア極東犯罪防止研修所」(アジ研)の所長に異動する。

 佐久間氏は東京地検特捜部長時代に民主党の小沢一郎元代表を狙い撃ちにして、西松事件と陸山会事件の捜査指揮にあたった人物だ。東大法学部卒で、法務省経験の長い“赤レンガ派”のエリートとして順調に出世街道を歩んできた。昨年7月に大津地検検事正に就任した祭には「地方検察の中でも大津の検事正は出世コース。小沢捜査の“論功行賞”で同期の中でも一番早い出世だ。栄転だ」と、検察内部でもてはやされたものだ。それが1年で外されたのである。

 「アジ研なんて検察内部でもあまり知られていない組織です。あからさまな左遷人事で、佐久間氏は検察の主流から追放されたも同然。特捜部長経験者は最低でも主要都市の高検検事長ポストまで昇格するのが慣例ですが、その道も断たれたのではないか」(元大阪高検公安部長の三井環氏)

 過去20年のアジ研の所長の前職を調べると、佐久間氏のように地検トップの検事正まで任された幹部が就任したケースはゼロ。
 露骨で異例の降格人事の背景に、供述調書の大量却下を招いた「小沢捜査の失敗」があることは言うまでもない。

 「検察トップの笠間春雄・検事総長は小沢捜査に最初から反対だったといわれています。いわゆる『現場派』のエースの笠間氏の慎重意見を振り切って捜査にゴーサインを出したのが、『赤レンガ派』の強硬派だった佐久間氏であり、後見役の樋渡利秋・元検事総長でした。笠間総長は現在、小沢捜査のほか、郵便不正事件の村木裁判や証拠改ざん事件など、前任の樋渡体制で起きた数々の不祥事の尻拭いをやらされています。当然、面白いわけがない。赤レンガ派に対する『一罰百戒』の意味を込めて、佐久間氏を徹底的に干し上げるつもりです」(検察事情通)

 検察は当時の現場責任者を左遷させた以上、小沢捜査の失敗を自ら認めたのと同じだ。ますます無用な裁判を続ける理由はない。

●(10)平成23年8月6日、日刊ゲンダイ「やっぱりトンズラ」

 <暴走前検事が手にする巨額退職金>

 「やっぱりトンズラしちゃったよ」。検察庁内で、一部の上層部がこう呆れているという。矛先は、定年退官まで7年近く残し、1日付で辞職した大鶴基成・前最高検公判部長(56)に対してだ。

明らかにムリ筋だった「西松事件」や「陸山会事件」を主導し、検察不信の“元凶”をつくったとされる大鶴氏。地検特捜部の部長を務め、身分も賃金も保障された「検察官」を辞めるのは、それなりの覚悟が必要だったろう。その大鶴氏が去った検察内でなぜ、今も悶々とした空気が漂うのか。

 「巨額の退職金を手にするからです。検察官の年収は、検事長一歩前の検事1号クラスで、だいたい2300万円前後。大鶴氏のように特捜部長を歴任した検事なら同じくらいの年収があったとみていい。定年退官した場合の退職金は8000万円前後だから、辞職とはいえ、残り期間がわずかの大鶴氏は5000万円以上の退職金を手にするとみられています」(司法ジャーナリスト)

 検察の「裏金」を告発して懲戒免職された元大阪高検公安部長の三井環氏に退職金は払われなかった。正しいことをした検事は退職金ナシで、ムリ筋捜査で退職金アリとは許せない話ではないか。

<文責:藤森弘司>

トピックスTOPへ