2011年6月30日 第48回「トピックス」
原子力発電所の真実 (1)

●(1)以前、インターネットで、原発について書かれていることを知り、それを保存していたのですが、それを読む前に知人(鈴木重男氏)からコピーが送られてきました。私たちの多くは、多分、原発の実態を知らないと思いますので、お知らせしたいと思います。

 「100,000年後の安全」という映画を見ました。以前、この映画を取り上げたいと思っていましたが、映画としてはあまりにもつまらんくてほとんど眠っていました。しかし、「原発」の恐ろしさは十分に伝わりました。「原発」は本当に恐ろしいものなのですね。最近、テレビで「トイレ」の無いマンションのようだと言っていましたが、まさにそうなのですね。

 「100,000年後の安全」という映画の内容を、インターネットから転載してご紹介します。

●(2)原題: INTO ETERNITY

 製作年度: 2009年

 別題: 地下深く 永遠(とわ)に ~核廃棄物 10万年の危険~

 製作国・地域: デンマーク/フィンランド/スウェーデン/イタリア   上映時間: 79分

allcinema ONLINE(外部リンク)

 <解説> フィンランドのオルキルオトに世界で初めて建設されることになった、高レベル放射性廃棄物の永久地層処分場にカメラを向けたドキュメンタリー。ミカエル・マドセン監督自らすでにプロジェクトが動き出したオルキルオトに赴き、関係者たちの取材を敢行。本作は10万年間保持される予定の、地下要塞のような施設のあり方を静かに問い掛ける。実際この壮大な計画に着手することを決めた専門家たちが語る、未来へのメッセージにいろいろと考えさせられる。シネマトゥデイ(外部リンク)

 <あらすじ> 原子力発電所から多量の高レベル放射性廃棄物が排出される昨今、それらの廃棄物は暫定的に集積所に蓄積される。このままでは自然災害や人災の恐れもあるため、フィンランドでは世界初の高レベル放射性廃棄物の永久地層処分場建設を決定。雄大な北欧の大地の奥深い場所に、廃棄物は今後10万年もの間保持されることになる。

●(3)<日本熊森教会会報くまもり通信67号同封資料>2011年3月331日・日本熊森協会

 以下は、元原発建設現場監督故・平井憲夫氏が書き残された文です。現場にいた者にしか書けない内容です。
 毎年、電力会社から多額の広告費をもらっている日本のマスコミには、原発に関する負の情報は掲載されません。その結果、国民が全く真実を知らない国になっています。
 今、収束の見込みもない大事故を起こされている福島原発。取り返しのつかない事態です。
 熊森は、このような事故を予見されていた平井氏の文を、全国民に伝えたいと願っています。教科書に載せるべきです。
 最後まで読んで頂き、読後は、周りの非会員の人たちにお回しください。

●(4)<私は原発反対運動家ではありません>

 20年間、原子力発電所で働いていた者です。原発については賛成だとか、危険だとか、安全だとかいろんな論争がありますが、私は「原発とはこういうものですよ」と、ほとんどの人が知らない原発の中のお話をします。そして、最後まで読んでいただくと、原発がみなさんが思っていらっしゃるようなものではなく、毎日、被曝者を生み、大変な差別をつくっているものでもあることがよく分かると思います。

 はじめて聞かれる話も多いと思います。どうか、最後まで読んで、それから、原発をどうしたらいいか、みなさんで考えられたらいいと思います。原発について、設計の話をする人はたくさんいますが、私のように施工、造る話をする人がいないのです。しかし、現場を知らないと、原発の本当のことは分かりません。

 私はプラント、大きな化学製造工場などの配管が専門です。20代の終わりごろに、日本に原発を造るというのでスカウトされて、原発に行きました。一作業員だったら、何十年いても分かりませんが、現場監督として長く働きましたから、原発の中のことはほとんど知っています。

 <「安全」は机上の話>

 去年(1995年)の1月17日に阪神大震災が起きて、国民の中から「地震で原発が壊れたりしないか」という不安の声が高くなりました。原発は地震で本当に大丈夫か、と。しかし、決して大丈夫ではありません。国や電力会社は、耐震設計を考え、固い岩盤の上に建設されているので安全だと強調していますが、これは机上の話です。

 この地震の次の日、私は神戸に行ってみて、余りにも原発との共通点の多さに、改めて考えさせられました。まさか、新幹線の線路が落下したり、高速道路が横倒しになるとは、それまで国民のだれ一人考えてもみなかったと思います。

 世間一般に、原発や新幹線、高速道路などは官庁検査によって、きびしい検査が行なわれていると思われています。しかし、新幹線の橋脚部のコンクリートの中には型枠の木片が入っていたし、高速道路の支柱の鉄骨の溶接は溶け込み不良でした。一見、溶接がされているように見えていても、溶接そのものがなされていなくて、溶接部が全部はずれてしまっていました。

 なぜ、このような事が起きてしまったのでしょうか。その根本は、余りにも机上の設計ばかりに重点を置いていて、現場の施工、管理を怠ったためです。それが直接の原因ではなくても、このような事故が起きてしまうのです。

 <素人が造る原発>

 原発でも、原子炉の中に針金が入っていたり、配管の中に道具や工具を入れたまま配管をつないでしまったり、いわゆる人が間違える事故、ヒューマンエラーがあまりにも多すぎます。それは現場にプロの職人が少なく、いくら設計が立派でも、設計通りには造られていないからです。机上の設計の議論は、最高の技量を持った職人が施工することが絶対条件です。しかし、原発を造る人がどんな技量を持った人であるのか、現場がどうなっているのかという議論は一度もされたことがありません。

 原発にしろ、建設現場にしろ、作業者から検査官まで総素人によって造られているのが現実ですから、原発や新幹線、高速道路がいつ大事故を起こしても、不思議ではないのです。
 日本の原発の設計も優秀で、二重、三重に多重防護されていて、どこかで故障が起きるとちゃんと止まるようになっています。しかし、これは設計の段階までです。施工、造る段階でおかしくなってしまっているのです。

 仮に、自分の家を建てる時に、立派な一級建築士に設計をしてもらっても、大工や左官屋の腕が悪かったら、雨漏りはする、建具は合わなくなったりしますが、残念ながら、これが日本の原発なのです。

 ひとむかし前までは、現場作業には、棒心(ぼうしん)と呼ばれる職人、現場の若い監督以上の経験を積んだ職人が班長として必ずいました。職人は自分の仕事にプライドを持っていて、事故や手抜きは恥だと考えていましたし、事故の恐ろしさもよく知っていました。それが10年くらい前から、現場に職人がいなくなりました。全くの素人を経験不問という形で募集しています。素人の人は事故の怖さを知らないし、なにが不正工事やら手抜きかも、全く知らないで作業しています。それが今の原発の実情です。

 例えば、東京電力の福島原発では、針金を原子炉の中に落としたまま運転していて、1歩間違えば、世界中を巻き込むような大事故になっていたところでした。本人は針金を落としたことは知っていたのに、それがどれだけの大事故につながるかの認識は全然なかったのです。そういう意味では老朽化した原発も危ないのですが、新しい原発も素人が造るという意味で危ないのは同じです。

 現場に職人が少なくなってから、素人でも造れるように、工事がマニュアル化されるようになりました。マニュアル化というのは図面を見て作るのではなく、工場である程度組み立てた物を持ってきて、現場で1番と1番、2番と2番というように、ただ積み木を積み重ねるようにして合わせいくんです。そうすると、今、自分が何をしているのか、どれほど重要なことをしているのか、全く分からないままに造っていくことになるのです。こういうことも、事故や故障がひんぱんに起こるようになった原因のひとつです。

 また、原発には放射能の被曝の問題があって後継者を育てることが出来ない職場なのです。原発の作業現場は暗くて暑いし、防護マスクも付けていて、互いに話をすることも出来ないような所ですから、身振り手振りなんです。これではちゃんとした技術を教えることができません。それに、いわゆる腕のいい人ほど、年間の許容線量を先に使ってしまって、中に入れなくなります。だから、よけいに素人でもいいということになってしまうんです。

 また、例えば、溶接の職人ですと、目がやられます。30歳すぎたらもうだめで、細かい仕事が出来なくなります。そうすると、細かい仕事が多い石油プラントなどでは使いものになりませんから、だったら、まあ、日当が安くても、原発の方にでも行こうかなあということになります。
 皆さんは何か勘違いしていて、原発というのはとても技術的に高度なものだと思い込んでいるかも知れないけれど、そんな高級なものではないんです。
 ですから、素人が造る原発ということで、原発はこれから先、本当にどうしようもなくなってきます。

 <名ばかりの検査・検査官>

 原発を造る職人がいなくなっても、検査をきっちりやればいいという人がいます。しかし、その検査体制が問題なのです。出来上がったものを見るのが日本の検査ですから、それではダメなのです。検査は施工の過程を見ることが重要なのです。

 検査官が溶接なら溶接を、「そうではない。よく見ていなさい。このようにするんだ」と自分でやって見せる技量がないと本当の検査にはなりません。そういう技量の無い検査官にまともな検査が出来るわけがないのです。メーカーや施主の説明を聞き、書類さえ整っていれば合格とする、これが今の官庁検査の実態です。

 原発の事故があまりにもひんぱんに起き出したころに、運転管理専門官を各原発に置くことが閣議で決まりました。原発の新設や定期検査のあとの運転の許可を出す役人です。私も役人が素人だとは知っていましたが、ここまでひどいとは知らなかったです。

 というのは、水戸で講演をしていた時、会場から「実は恥ずかしいんですが、まるっきり素人です」と、科学技術庁の者だとはっきり名乗って発言した人がいました。その人は「自分たちの職場の職員は、被曝するから絶対に現場に出さなかった。折から行政改革で農水省の役人が余っているというので、昨日まで養蚕の指導をしていた人や、ハマチ養殖の指導をしていた人を、次の日には専門検査官として赴任させた。そういう何にも知らない人が原発の専門官として運転許可を出した。美浜原発にいた専門官は三ヶ月前までは、お米の検査をしていた人だった」と、その人たちの実名を挙げて話してくれました。このようにまったくの素人が出す原発の運転許可を信用できますか。

 東京電力の福島原発で、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動した大事故が起きたとき、読売新聞が「現地専門官カヤの外」と報道していましたが、その人は、自分の担当している原発で大事故が起きたことを、次の日の新聞で知ったのです。なぜ、専門官が何も知らなかったのか。それは、電力会社の人は専門官がまったくの素人であることを知っていますから、火事場のような騒ぎの中で、子どもに教えるように、いちいち説明する時間がなかったので、その人を現場にも入れないで放って置いたのです。だから何も知らなかったのです。

 そんないい加減な人の下に原子力検査協会の人がいます。この人がどんな人かというと、この協会は通産省を定年退職した人の天下り先ですから、全然畑違いの人です。この人が原発の工事のあらゆる検査の権限を持っていて、この人のOKが出ないと仕事が進まないのですが、検査のことはなにも知りません。ですから、検査といってもただ見に行くだけです。けれども大変な権限を持っています。この協会の下に電力会社があり、その下に原子炉メーカーの日立・東芝・三菱の三社があります。私は日立にいましたが、このメーカーの下に工事会社があるんです。つまり、メーカーから上も素人、その下の工事会社もほとんど素人ということになります。だから、原発の事故のことも電力会社ではなく、メーカーでないと、詳しいことは分からないのです。

 <藤森注・・・・・7月10日に続きを掲載します>

●(5)平成23年7月1日、日刊ゲンダイ「5億円だけじゃなかった」

 <東大、京大に流れた「原発マネー」>

 NHKテレビなどに出演して、福島原発事故のことを解説していた東大教授たちが、実は東電とナアナアの関係だったのは知られた話だ。東大大学院の工業系研究科には「寄付講座」の名目で東電関連から計5億円が10年近くにわたって流れていた。事故直後から、そう報じられてきたものだ。
 だが、それで全部じゃなかった。雑誌「SAPIO」(小学館)が最新号で、「あの東大、京大センセイたちが受け取っていた8億円原発マネー」と報じた。

 情報公開請求で、大学側が出ししぶる資金の流れを丹念に突き止めた力作だ。受託研究費、共同研究費などの名目が他にあって、電力会社、原発メーカー、政府からもカネが流れていたのである。5年間で約8億円・・・・・。

 普通は、こういうズブズブ関係の教授はテレビ局から出演依頼があっても「公正中立な立場ではありませんから」と断りそうなものだが、恥じらいもなく、同誌では「コメントが甘くなることはまったくない」と反論している。事故直後、自分たちがテレビで何をしゃべったか、録画で確認してみたらどうか。

<文責:藤森弘司>

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