2010年6月6日 第25回「トピックス」
検察審査会についての一考察(7)

 ●(1)平成22年6月3日、日刊ゲンダイ

 <「検察審査会」秘密情報が次々マスコミに流れている>

 民主党副幹事長の辻恵衆院議員(61)が検察審査会に電話をかけた・・・・・と大騒ぎになっている。大手メディアが「圧力だ」「審査会の独立性を侵害している」とヒステリックに叫んでいるためだ。

 しかし、国会議員が制度を調べるのは当たり前のこと。それよりも、検察審査会の問題は別にある。極秘情報が“ダダ漏れ”の状況にあることだ。

 <こちらこそ問題だ>

 辻議員は31日の会見で「(電話をかけたことが)漏れることが問題だ」と話していたが、まったくその通り。検察審査会の情報管理が甘いためか、小沢事件では当初から審査情報が漏れまくっていた。
 「表向き、検察審査会の評議内容は開催時期すら明かされない。“完全極秘”の会議とされています。ところが小沢事件では、検察審査会が特捜部検事から意見聴取することや、議決時期まで事前に流れた。異常なことです」(司法ジャーナリスト)

 検審情報は一体どこから漏れているのか。
 「辻議員のケースでは、秘書が最初に問い合わせたのは、小沢事件の審査と関係のない第4審査会。その後、検審事務局の総務課長が対応し、辻事務所が制度論を尋ねた。これが真相です。検審事務局の職員は裁判所職員が兼ねているから、外部に情報を漏らせば当然、公務員の守秘義務違反に当たります。報道機関に誰が情報を流したのか、徹底的に調べて罪に問うべきでしょう」(前出のジャーナリスト)

 東京検審事務局は「外部電話の有無も含めて一切答えていない」(総務課)と言うのみだ。
 そもそも、検察審査会には問題が多い。とくに小沢事件を担当した検察審査会は、補助弁護士が小沢幹事長を銃刀法違反(共同所持)の共犯に問われた暴力団組長と一緒にするような説明をし、審査員は「小沢不起訴」の理由を説明した特捜部検事の説明に耳を貸そうともしなかったという。
 問題ばかりの検審制度は、やっぱり「見直し」が必要じゃないのか

●(2)平成22年6月3日、日刊ゲンダイ「自民、河村前官房長官」

 <2億5000万円、官房機密費に特捜部のメス入る>

 「官房機密費」に検察のメスが入る・・・・・。政権交代後の昨年9月、当時官房長官だった自民党の河村建夫衆院議員が2億5000万円の「官房機密費」を引き出したのは目的外使用に当たるとして、大阪の弁護士らが河村議員を背任か詐欺の疑いで東京地検特捜部に告発していた問題で、東京地検特捜部はきのう(1日)までに告発状を受理することを決めた。

 自民党の野中広務元官房長官や、平野貞夫元参院議員が「政治評論家に配った」「政治部記者の遊興費に使った」などと証言し、注目を集めている官房機密費問題。河村が何にカネを使ったのか。一日も早く白日の下にさらす必要がある。

 ●(3)平成22年6月2日、日刊ゲンダイ「官房機密費訴訟」

 <8・13 現役のキーマン官僚が証言台に>

 「官房機密費」問題があらためて話題を集めている。自民党の野中広務元官房長官や、平野貞夫元参院議員らが相次ぎ「政治評論家に配った」「政治部記者の遊興費に使った」と衝撃告白しているためだ。そんな中、官房機密をめぐる注目裁判が今夏、大阪地裁で開かれる。すべてを知る現役官僚が、法廷で初めて証言台に立つのである。

 <ダーティー政治家、新聞記者は戦々恐々>

 この裁判は、安倍晋三元首相らが官房長官時代に支出した官房機密費の詳細が開示されないのは違法として、07年に市民オンブズマンの上脇博之・神戸学院大大学院教授が不開示処分の取り消しを求めて提訴した訴訟だ。8月13日の証人尋問で法廷に立つのは、内閣官房総務官の千代幹也氏。歴代政権で官房機密費を担当してきた人物である。
 「千代氏は官房機密費の支出をすべて知る立場にいた。東大卒業後に旧運輸省に入省し、03年から内閣官房審議官を務めています」(霞ヶ関事情通)

 原告の上脇教授はこう言う。
 「これまで報じられている機密費の使途をめぐっては、政治家が外遊する際の餞別なども含まれているようだが、これは機密費でも何でもない。こうした税金のムダ遣いはまだ含まれているはず。初めての尋問で、証人は一体何を明らかにし、何を隠そうとするのか。それが分かるだけでも大変興味深い公判になります」

 官房機密費の表も裏も知り尽くした現役官僚の出廷に、関わった政治家、評論家、新聞記者は戦々恐々だろう。洗いざらいブチまけられれば、メディアを揺るがす一大スキャンダルに発展する。
 「とはいえ、機密費を扱う要職に上り詰めた官僚が簡単に口を割るとは思えません。まして現役ならなおさらです。千代氏は秋田県に出向していた時、県主催の懇談会の場所や相手方の公開を求める公文書公開の答申に対し、企画調整部長として一部拒否の方針を示した過去もあります」(大阪地裁担当記者)

 「爆弾証言」は飛び出すのか否か。8・13は注目である。

●(3)平成22年6月11日号、週刊ポスト「怒りの告発キャンペーン第3弾」<上杉隆(ジャーナリスト)と本誌取材班>

 <大新聞は1行も報道せず(東京新聞を除く)、テレビは特集番組をあわてて中止!>

 なんとも異様な事態がが起きている。新聞は、東京新聞(5月18日付で特集)を除き、どこも大々的に取り扱うことはしない。いつもなら雑誌のスクープに便乗するテレビもまったく後追いしない。なのに、編集部の電話は鳴り止まず、インターネットにも書き込みが溢れている。
 上杉隆氏によるメディアと官房機密費に関する追及キャンペーンである。早く打ち止めになって欲しいと願う記者クラブメディアには残念だが、元官邸秘書官らが次々に口を開き始めた流れは、もう止まらない。

それでも本誌はあくまで追求する!官房機密費マスコミ汚染問題、歴代官邸秘書官を連続直撃!>

▲「記者を一人ずつ個室に呼んで30万円を手渡した」
▲「総理外遊の同行記者にチャーター機内で“土産代”を」次々に驚き呆れる証言が、出るわ出るわ!

 <テレビの特集がキャンセル>

 先週、あるテレビ局の幹部との会合後、彼は親切にも私に、社内の動きを教えてくれた。政治部の幹部連中が、本誌キャンペーンに怒り心頭だという。
 「上杉のスキャンダルを探せ。全力で探せ。経歴詐称でも、女絡みでも、誤報問題でも何でもいい。とにかく潰せ」
 こうした号令が部内にかけられているというのだ。呆れるほかないが、各方面から私に対する圧力が増してきているのは確かだ。

 テレビ朝日系『ビートたけしのTVタックル』が6月1日に官房機密費の特集を収録するとのことで、私もゲストとして呼ばれていた。ところが、直前になって企画自体が中止になったのである。同じく出演予定だった評論家の宮崎哲弥氏が語る。

 「官房機密費のテーマをぜひやりたいと番組から打診を受け、上杉氏が出るというのでそれなら出たいと思っていたところ、後日番組側から、官房機密費については扱わなくなったと聞きました。野中広務氏が出ないからだという。企画内容が変わって上杉氏も出ないというので、私も出演しないことにしました」

 TVタックルのプロデューサーも、「野中氏のスタジオ出演がスケジュール的に難しく、VTRにも出たくないとのことで、企画が空洞化してしまったことが理由」と説明する。しかし、私はこれまでも何度か出演したが、当事者がいないと企画が成立しないなどということは初めてのケースだ。何か企画を中止しなければならないような「力」が働いたのだろうか。またそれ以上に不思議なのは野中氏のこの間の行動だ。5月20日には毎日新聞の取材に応じている。「政治評論家へのあいさつなども前任の官房長官からノートで引き継いだ。1人だけ返してきたのが田原総一朗さん」(毎日5月21日付朝刊)など、これまで同様、小出しの発言を繰り返している。記者クラブメディアになら答えるが、私と話すのは嫌だということなのだろうか。

 一方で、この問題の重大性に気づく言論人も増えてきた。宮崎氏は、「メディアにおける政治報道の根本的な機能は、国民の政治的意思の形成に資する適正な情報を提供することだが、それが権力によって不当に歪められている、または歪められている疑いがあることは、民主主義の根幹に関わる問題」だとして、今後問題を追及する決意を表明する。また、ITジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「この問題を報じられるかどうか。マスメディアの生死がかかってるかもしれない」、ジャーナリストの岩上安身氏は「上杉隆氏、義によって助太刀いたす」とそれぞれツィッターでつぶやいている。

 記者クラブメディアにも変化が起きている。幹部たちからの陰湿な嫌がらせとは対照的に、現場の記者からは「やっちまえ」との声をよく聞く。実は前号で報じた記者クラブから官邸への「メモ上納」については、以前から記者クラブ内で問題視されていたのだ。

 「森(喜朗)政権のときに、記者が夜回りして取ってきたオフ懇(オフレコ懇談会)メモが官邸に出回っていることが明らかになった。当時は手書きワープロだから、メモを集約する部長やデスクから流れていることは明らか。どうせ部長クラスは機密費をもらってるんだろうという話も加わって、上を突き上げたことがあったんです。だから今回のことは、やっぱりかと」(国会担当記者)

 いよいよ、機密費を受け取った上の世代と、それを追及する下の世代とのマスコミ世代闘争の様相を呈してきた。新聞・テレビは毎週のように、「世論調査」をする余裕があるのならば、何よりも先に社内がどれだけ機密費に汚染されているのか、「内部調査」をすべきだ。

 <番記者たちのリストもある>

 私はこの1週間ほどの間に、さらに数十人の元官邸関係者を連続直撃した。すると、メディアへの機密費バラ撒きの生々しい実態がわかってきた。
 本誌5月17日発売号で紹介した機密費リストについて、「この紙は断片に過ぎない」と教えてくれたのは、80年代に自民党政権下の官邸に務めた人物だ。彼は私が持参したメモを手に、解説してくれた。

 「これは1枚紙のメモではなく、1冊のノートの断片にずらりと書き込まれたリストの見開きページをコピーしたもの。ここにあるのは政治評論家などの名前だが、そのほかのページには番記者たちの名前や社名なども記されていた。そのリストに沿って、盆暮れに現金や商品を配っていたんだ」

 政治評論家リスト、そしていま私のもとに次々と集まってきている政治部記者らの名前が記されたリストは、それらがひとまとめにされた「機密費ノート」の断片だったのだ。
別の官邸秘書経験者も口を揃える。
 「盆暮れに記者を一人ずつ呼び出して、平均30万円ぐらいずつ配る。必ず個室で、証拠が残らない形で渡す。部数の多い大新聞や、影響力の高い一部のテレビ局の記者は10万円ぐらい上積みしていた。反対に、部数の少ないブロック紙や通信社は10万円ぐらい低かった」

 記者によって幅があるが、目安としてはA新聞と系列のAテレビ、そしてBテレビが最高ランクの40万円程度。C新聞や前記以外のテレビなどが30万円前後。低いのがD通信社で20万円といった具合だったという。
 また、前々号で紹介したリストには政治評論家の名前に続いて自民党議員や秘書の名前と、下は「50」から上は「1000」にいたる万単位の金額と思しき数字が記されているが、それにも理由があった。

 「これもすべてマスコミ対策費だね。官邸が直接渡すのと別に、有力議員や秘書を通じて評論家や記者に機密費を配っていたんだ」
 リストには、議員や秘書の名前に加え、「自民党同志会50 自民党職員350 自民党幹事長室100 自民党選対100 自民党国対100」と記されていた。これもマスコミへの経由地なのだという。こうして自民党の複数のルートを通じて、マスコミへ機密費が広く配布されていたのだ。

 このリストは引き継ぎの際、後任の官房長官秘書官が新しいノートに書き写すと、前任者はノートやメモをシュレッダーにかけるなどして、処分していたという。そして、総退陣の際、官邸に残された最後の儀式、機密費の「山分け」が行なわれる。
 「基本は総理と官房長官で山分け。余った分はそれぞれの秘書官たちがお世話になった議員や官僚、評論家や記者らメディア関係者にも配って使い切る。引き継ぐときは金庫を空にするのが礼儀だった(笑い)」(官邸秘書経験者)

 政権交代にともなう麻生内閣・河村建夫前官房長官の「消えた機密費2億5000万円」の行方を探る上で、実に興味深い示唆ではないか。
 ちなみに、元参院議員の平野貞夫氏も、「細川護煕氏が首相を辞める際に、『私は機密費を自分で使ったことがない。お世話になった方に何かしたいのだが、どうすればいいか』と相談しにきた。『官房長官に相談すれば?』といったら、数日後に銀座から2万円の靴券が届いた。100人ぐらいに配ったそうだ」と証言している。

 90年代の内閣官房の元高官が明かしたのは、よりグローバルな活動だった。
 「ワシントン支局などに転勤が決まった政治部記者に、100万円単位でつけ届けるんです。それで2年間ほど向こうからの情報を送ってくれると考えれば、安いものです」

 こうなると記者はちょっとした諜報員である。元官邸関係者らは、ほかにも生々しい実態を教えてくれた。
 「昔は総理外遊などの際は政府チャーター機の中で機密費を政治部記者にお土産代として配っていたが、経済部などよそ者がいる場合は後で個別に配っていた」
 といった受け渡しの詳細や、「記者を吉原や川崎のトルコ(風呂)に連れて行った」という風俗接待の有様、「夜中に酔っぱらうとしょっちゅう機密費を無心してきた」「50万円から100万円にといった金額のランクアップを要求してきた」政治評論家の所業まで暴露。渡した側はみな次々と証言してくれる。

 <官邸は機密費の目的を知らない!?>

 私は5月25日に行なわれた岡田克也外相の記者会見で、機密費がマスコミに渡っていた疑惑に関する見解を問うた。これに対し大臣は、「マスコミ対策に使われたかどうかは承知していない。それは内閣官房に聞いてもらいたい」と答えた。これに関しては平野博文官房長官の問題であると明言したのだ。

 さて、その平野氏はというと、同25日、衆院議員の鈴木宗男氏の質問趣意書に対して何とも珍妙な答弁書を示した。官房機密費がいつどんな目的で設けられたかについて、「初めて計上したのは昭和22年度だが、『何のために作られたものであるか』は確認できなかった」というのだ。河村前官房長官からの引き継ぎに関しても、具体的な使途についての説明や、引き継ぎの帳簿は存在しなかったとしている。

 平野官房長官は5月14日に、政権発足後の6ヶ月で国庫から支出された官房機密費3億6000万円のうち、未使用分の約1620万円について国庫に返納したと発表している。裏を返せば、いまでも毎月約6000万円ずつ機密費を使っていることを明らかにしたわけだが、「何のために作られたものであるか」もわからず、「具体的な使途」も知らされないままにこれだけの税金を使っているとすれば、それこそ問題だ。

 平野氏は事の重大さを理解しているのだろうか。政治とジャーナリズムの癒着をめぐる全面戦争の火ぶたは、とっくに切って落とされているのだ。

●(4)マスコミ界の大御所が挙って「機密費」の汚染を受けていれば、世論を操縦することは簡単にできることです。これから少しずつ、世論が変わってくるかもしれませんが、今までは、週刊誌やタブロイド紙などがいくら特集を組んでも、大新聞・テレビが取り上げない限り、大した問題になりませんでした。

 逆に、大新聞・テレビが取り上げ、特集などを組むと、それは大問題になります。つまり、自分たちの損得、欲得で世論をかなり操作(?)してきた可能性があります。どう考えても、検察のリークがなければ書けないような記事が溢れていた「小沢事件」などは典型例ではないでしょうか。

 近く、「小沢一郎氏についての一考察」を書きたいと思っていますが、大改革をやろうとしている小沢氏は、既得権益の確保にやっきになっている大新聞・テレビ界にとっては非常に邪魔な存在で、抹殺(?)したかったはずです。
 私は、日ごろから、一番、「権威」があるところや「権力」があるところが、一番、遅れていると思っています。そういう「権威」や「権力」があるところが「抵抗勢力」になると、絶対多数の国民は操作されてしまいます。

 私の専門とする心理学的な観点からみると、小沢氏に関しては、一般にかなりの「認知の歪み」があるように思います。「認知の歪み」があるというよりも、「認知を歪まされ」ていると思っています。
 私たちの人生には「認知の歪み」が満ち溢れています。「禅」はある意味で、「認知の歪み」を修正する修行と言えます。

 「認知の歪み」に関しては、下記をご参照ください。

第53回「認知の歪み(1)」
第55回「  〃    (2)」
第56回「  〃    (3)」
第58回「  〃    (4)」
第59回「  〃    (5)」
第60回「  〃    (6)」
第61回「  〃    (7)」
第64回「  〃    (8)」
第65回「認知療法とは何か?」
第66回「認知療法における認知の歪み①」
第67回「      〃           ②」
第68回「      〃           ③」
第69回「      〃           ④」
第70回「      〃           ⑤」
第71回「      〃           ⑥」
第72回「      〃           ⑦」
第73回「      〃           ⑧」
第74回「      〃           ⑨」
第75回「      〃           ⑩」

 「検察審査会についての一考察」はあと1回か2回、続けたいと思っています。

<文責:藤森弘司>

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