2010年5月5日 第18回「トピックス」
沖縄県に戦略家はいるのか?

●(1)沖縄の普天間基地の移設問題で、沖縄県も政府も政界も大揺れである。沖縄県の皆さんが、県外や国外に移設を希望するのは当然です。

 私が尊敬する曽野綾子先生がエッセイで書いていましたが、沖縄でタクシーに乗って、本音を聞くと、基地があるほうが仕事があって良いという声を聞くそうです。
 徳之島も日曜日の「ニュースフロンティア」という番組では、地権者は基地が移設されることを賛成しているそうであるが、これだけの騒ぎになると、本音が言いにくい状況があるものと思われます。

 米軍が撤収されるべきであるという意見のほうが大義名分があるだけに、仕事があるので、基地があるほうが良いという声は出しにくいことと思います。特に、基地内で働く人はかなりの人数になるだろうし、給料も「思いやり予算」で良いらしい。基地に関連しての仕事や、米軍をお客にしている仕事、例えば飲食店やタクシー会社なども、基地があるほうが良いという思いがあるかもしれないが、太平洋戦争で、唯一の戦場になって悲惨な体験をした沖縄県人としては、賛成の声はあげにくいものと思われます。

●(2)さて、本音の部分はともかくとして、大集会を開いて、かつてない参加者を集めたようですが、もし、少なくても県外移設を希望し、それが実行されるように考えるならば、そうなるための「戦略」が必要だったと私(藤森)は思います。
 反対だから反対だというのでは、少々、策がなさすぎたように思います。カウンセリングをしていて、「~しかないでしょう、先生?」と言われることがしばしばあります。「~しかないのであれば、それしかないですよ」と、私は答えます。
 例えば、「答えが13であれば、5+8しかないですよね」と考えると、「5+8」の答えしかないことになります。頭がそれ以上考えようとしません。何故ならば「それしかない!!!」のですから当然のことです。

 しかし、「答えが13の場合、5+8以外にどんな答えがありますか?」と質問したり考えたりすれば、「5+8」以外の組み合わせを考えようとするはずです。答えが得られるか否かはともかく、他の答えを得ようと考えるはずです。
 その結果、自分では答えが得られなくても、他の人から答えが得られるかもしれないし、何かの資料から答えが得られるかもしれません。また、たとえ、答えが得られなくても、他の答えを得ようとすることは「脳」の訓練になります。
 この経験は非常に重要で、工夫することの重要性・・・・・わからないことは誰かに質問すれば、さらに優れた答えが得られるかもしれないという貴重な体験になります。これを繰り返していくと、人生という長丁場を考えたならば、莫大な利益が得られるはずですが、多くの人は自分の考えに固執して、その隘路から抜け出ないで一生を終わっているようです。

 今は、このことを詳しく説明する場ではありませんので、いつかまた、詳しく解説したいと思います。

●(3)さて、本題にうつります。
 沖縄の人たちは、少なくても、建前は「普天間基地を移設」したいわけです。しかも、国外、少なくても県外に。
 ここで肝心なことは、鳩山総理大臣は、沖縄の皆さんに対して、無礼を働いたのでしょうか?沖縄の皆さんに敵対するようなことをやったのでしょうか?沖縄の皆さんの意志を無視したのでしょうか?
 当然、応えは「ノー」です。

 鳩山総理大臣が政治的にどんな思惑があったのかどうかは私にはサッパリわかりませんが、総理がおっしゃっていたことは、沖縄県の皆さんの味方になり、沖縄の皆さんの気持ちを大切にしたいと思うからこそ、「国外、最低でも県外」と発言したのではないでしょうか。5月4日に沖縄を訪れ、結果は大変落胆するものだったようですが。
 かつて、これほど沖縄の皆さんの気持ちを大切にした政治家がいたでしょうか?沖縄の皆さんの気持ちを大切にしたからこそ、迷走に迷走をしたのであると私(藤森)は考えます。総理大臣の立場として屈辱的な体験をしながらも、必死で模索したはずです。少なくても、そのように解釈すべきです。沖縄の皆さんの意志を尊重したいと思うからこそ、必死に工夫してきたものと思います。

 政権与党になって間がないために、稚拙な運営かもしれませんが、沖縄の皆さんの気持ちを尊重したいという鳩山総理大臣の気持ちは十分に理解できるのではないでしょうか。下手だ、幼稚だという意見は多くても、鳩山総理大臣が沖縄の人たちの気持ちを尊重したいという意志のもとに、幼稚なりに頑張ってきたことは、与野党を問わず、誰もが認めることのように思われますが、このホームページをご覧の皆さんはいかがお考えでしょうか。

●(4)ここまでの私(藤森)の意見に賛成していただけるならば、沖縄の人たちの対応はいかがなものかと疑問に感じます。沖縄県が、もし、「戦略」をもって、この問題に対処したならば、もっと違った結果になったように思われます。

 <私(藤森)の戦略>

 反対集会を開くのではなく、「鳩山総理大臣を守る大集会」を開きます。戦後、初めて真に沖縄のことを「政治生命」をかけて考えてくれた鳩山総理大臣が、県外、国外移設を実行してくれるよう、沖縄県人の総意で応援します。
 そして、今年の1月から、毎月、知事、市町村長が交代で、10名、20名の集団で首相官邸に面会に行き、沖縄のために頑張ってください。なんとか、長年の夢である、沖縄の基地を減らすべく、全力を出して頑張ってください。

 そして、沖縄県知事は全国の知事会で訴え、市町村長は、全国の市町村会で訴える。さらには、日本の国民全体に沖縄の基地の現状を訴えれば、もう少し、他県のエゴを減らすことが可能だったのではないでしょうか?
 あるいは、全国の有志も立ち上がるでしょう、社民党などを中心に。そして、日本という国全体の問題として対処・工夫すべく、国民感情に訴えるような活動をすべきだったように思えます。

 現在では、まるで鳩山総理大臣がダメな政策・・・沖縄県の意思に反した政策を打ち出しているような感じになってしまっていて、鳩山総理大臣としては孤立無援のような状況に追い込まれてしまっているのではないでしょうか?
 いくら対処の仕方が幼稚であったとしても、いくら海兵隊の存在理由や価値を十分に知らなかったにせよ、沖縄県の人たちに対して、まさに「友愛」精神をもって対応したはずです。その友愛精神がさらにメラメラと燃え上がるような、勇気を奮い起こすようなエールを送るべきだった、そして、沖縄の過去や現状を全国的に訴えて、沖縄県の問題から、日本全体の問題として訴えるべきだったように思えてなりません。

 鳩山総理大臣と一緒になって、国民運動になるよう戦略を練るべきだったように思えてなりません。天下の総理大臣と一緒に戦えるという「千載一遇の大チャンス」に恵まれていたのに、これを十分に活用できなかったのは、沖縄県の立場に立つと残念でなりません。

 どうやら思わしくない結果になろうとしていますが、どのような結果になろうとも、沖縄県の皆さんのために、少しでも良い条件が勝ち取れることを切に祈りたい気持ちがしています。

<文責:藤森弘司>

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