2010年5月20日 第21回「トピックス」
検察審査会についての一考察(3)

 ●(1)平成22年1月27日、日刊ゲンダイ

 <民主党政権つぶしの大マスコ>

 なぜ毎日、小沢一郎を犯人扱いし幹事長辞任をはしなければ民主党は支持を失い鳩山政権崩壊すると悪意の報道を流しているのか

 <なぜ小沢を犯罪人と見るのか>

 いくらなんでもやりすぎだろう。とうとう産経新聞が民主党の小沢一郎幹事長を「容疑者」と表明した。さすがに民主党に謝罪したそうだが、これまでも産経新聞は、あたかも小沢幹事長が「牢屋」に入っているように見える写真を使ったりしている。悪意があるとしか思えない。

 こうした報道は産経新聞に限らない。大新聞・テレビは、最初から小沢一郎を「犯罪者」扱いだ。悪事に手を染めた確実な証拠があるならまだしも、「関係者によると」と出所不明の情報を流して、大悪人のように仕立て上げている。

 いい加減、大マスコミは冷静になったらどうか。検察からのリークをそのままタレ流して、「小沢=悪」という印象を国民に植え付けているが、異常なことだ。常軌を逸した大手メディアの報道には、「小沢嫌い」で知られる自民党の河野太郎までが、ブログで痛烈に批判している。

 「最近の石川某がこういう供述をしているという報道は、明らかにおかしい。日本の司法制度では、有罪が確定するまでは無罪である。被疑者の段階で、あたかも被疑者が悪人であるというような世論を作らんが為のリークを検察がするのは間違っている」

 その通りだろう。大新聞・テレビの報道は、度を越している。やりすぎだ。欧米先進国ではあり得ない。
 そもそも、大手メディアは、検察は正しいという立場で報じているが、おかしいのではないか。言っておくが、検察は正義の味方でもなんでもない。その証拠に、小沢捜査の指揮を執っている佐久間達哉特捜部長は、「冤罪」も引き起こしている。旧長銀粉飾決算事件を手がけたが、被告全員が「無罪」だった。

 <リーク欲しさに検察の犬に>

 しかも、一連の捜査が「小沢VS.検察」の権力闘争になっているということは歴然だ。検察と小沢は、生きるか死ぬかの最終戦争に突入している。なのに、対立している片方の言い分だけを大々的に報じるなんて、これでは検察の世論捜査に手を貸しているのも同然である。

 政治評論家の本澤二郎氏が言う。
 「脱官僚を掲げる小沢一郎は、聖域だった検察にまで手を突っ込もうとしていた。検察総長人事を国会同意人事にしようとした。検察にとってこんな危険な人物はいない。総力を挙げて小沢潰しに走って当然です。もし、小沢潰しに失敗したら報復されるから、どんな手段を使ってでも政治生命を断つつもりでしょう。大手メディアだって、そうした裏事情は承知しているくせに、まったく触れないのだから無責任です」

 <小沢一郎を幹事長辞任に追い込むつもり>

 リーク欲しさに検察にへつらうなんて、それでジャーナリズムと言えるのか。
 その挙句、大誤報をしているのだから、処置ナシだ。大新聞・テレビは、きのう(25日)あたかも石川知裕の疑惑を裏付ける「新事実」が発覚したかのように一斉に報じたが、大間違いだった。慌てて訂正している。

 どうせ地検のリークに飛びついたのだろうが、ハナから「検察=善」「小沢=悪」と決めつけ、ガセ情報だとは疑いもしなかったのだろう。
 それでもなんでも、どうしても大マスコミは、検察と一緒になって小沢一郎を潰すつもりだ。
 疑惑を煽り立てるだけでなく、「幹事長続投 民主に逆風」「幹事長の進退 焦点に」「民主、高まる悲観論」と、幹事長辞任に追い込もうとしている。幹事長を辞めなければ民主党は支持を失い、鳩山政権は崩壊すると書き立てている。

 しかし、幹事長を辞めなければ民主党政権が崩壊するなんて、デタラメもいいところだ。むしろ、小沢一郎が幹事長を辞任したら、民主党政権が一気に弱体化することは目に見えている。

 「鳩山首相の代わりはいても、小沢幹事長の代わりはいないのが、民主党の実態です。いったい、誰が幹事長として党内をまとめていけるというのか。辞任して喜ぶのは、自民党だけです。たしかに、小沢一郎には古い体質が残っているかもしれない。しかし、彼の剛腕がなければ、腐敗した自民党政権を倒せなかったのも事実です。小沢幹事長が不在では、7月の参院選も勝てないでしょう。幹事長を辞任しなけらば、政権が崩壊するなんてアベコベ。大マスコミの報道は、小沢一郎を失脚させようという意図がミエミエです」(政治評論家・山口朝雄氏)

 <政権交代の意味が消滅>

 もし、小沢一郎が幹事長を辞めて表舞台から去ったら、「国民生活第一」という民主党の理念も消滅してしまうだろう。
 「小沢幹事長が失墜したら、前原誠司など『反小沢一派』が幅を利かせることになるでしょう。しかし、前原一派は、小泉・竹中コンビにシンパシーを寄せる『新自由主義者』『対米従属者』がほとんどです。せっかく、小沢幹事長が『国民生活第一』を訴えて政権を奪取したのに、小泉時代に逆戻り、元の木阿弥になってしまう。なんのために政権交代したのか分からなくなります」(本澤二郎氏=前出)

 いったい、大新聞・テレビは、どこを向いて報道をしているのか。さすがに、国民もおかしいと気づき始めているのではないか。
 朝日新聞の投書欄には、マスコミの報道について異論も載り始めている。
 「国民に先入観を刷り込むような報道は慎んでほしい」
 「白いものでも限りなく黒に見えてくるから恐ろしい」
 「無責任に憶測を交えた報道は国民を惑わすだけだ。現時点で報道できることは、“東京地検が3人を取り調べている”という事実だけでいいのではないか」

 朝日新聞がアリバイ的に採用したのかもしれないが、よほど一般の国民の方が冷静というものだ。
常識的に考えて、いま大新聞が書き立てている容疑では、小沢一郎を逮捕するのは不可能だ。そもそも「政治資金規正法違反」という微罪で石川知裕議員を逮捕したことだって異例ののこと。それでも、小沢の息の根を止めたい検察は、無理をしてでも「起訴」までもっていくだろう。

 本来、メディアはそうした検察の暴走を防ぐのが役割のはずだ。先進国では、検察が暴走しないように目を光らせている。なのに、この国の大新聞・テレビは、検察のお先棒を担いでいるのだから、どうかしている。

 ●(2)平成22年2月3日、日刊ゲンダイ「小沢問題よりも重大」

 <官房機密費2億5000万円>

 <大阪の市民団体が河村前官房長官を背任で告発>

 小沢疑惑よりも、こっちの公金“横領”の方がはるかに重大問題だ。自民党の河村建夫前官房長官が昨年9月、2億5000万円の内閣官房報償費(官房機密費)を引き出したのは背任罪か詐欺罪に当たるとして、大阪市の市民団体「公金の違法な使用をただす会」がきのう(1日)東京地検特捜部に告発状を出した。

 この機密費をめぐっては、別の市民団体が昨年10月、使途開示を求める情報公開請求を内閣官房に出したが、詳細は不開示。このため、市民団体は今年1月、処分取り消しを求める訴えを大阪地裁に起こしている。
 「市民団体がこの機密費を執拗に問題視するのは当然です。本来は政策推進や調査情報対策などに充てられるカネだが、河村が引き出したのは昨年8月30日の総選挙後で、しかも、それまでは1ヶ月1億円程度の支出だったのが、たった2週間で2億5000万円を引き出したのです。目的外支出は明らかで、仮に幹部で山分けしていた場合は小沢問題どころではない」(政界事情通)

 <東京地検はなぜか消極姿勢>

 原告代理人のひとりで、弁護士の辻公雄氏はこう言う。
 「今回の支出は明らかに違法です。野党に転落した自民党が当時、機密費を使う必要性は全くないし、使途を明かさない性格のカネだからといって、“横領”していいはずもない。東京地検は告発状について『検討させてほしい』と言っているが、小沢事件では市民団体の告発をあっさり受理したのだから、こちらも同様に受理して捜査するべき。仮に受理しなければ、不受理を理由に提訴するし、受理しても不起訴や起訴猶予にした場合は検察審査会に不服申し立てするつもりです」

 検察の「恣意的」は捜査手法が追及されるのも時間の問題だ。

 ●(3)平成22年4月27日、日刊ゲンダイ「機密費食い逃げ疑惑に新証拠」

 <前官房長官、河村をビビらせた 野中広務の告白>

 自民党の河村建夫・前官房長官がビビりまくっているという。河村は政権交代直後の昨年9月に2億5000万円もの官房機密費を引き出したとして、大阪市の市民団体に背任容疑などで東京地検に告発されている。

 この問題に関連し、思わぬところから新証拠が飛び出した。野中広務元官房長官がテレビで官房機密費の使途を洗いざらいブチまけた一件だ。河村を告発した原告代理人のひとりで弁護士の辻公雄氏はこう言う。
 「野中氏の発言で、官房機密費があらためて情報収集に使われていないことが分かりました。野中氏の発言を載せた記事を基に先週、東京地検に証拠資料の請求をしました。河村議員の件が訴訟になれば、野中氏を裁判の証人として呼ぶことも検討したいと思います」

 <新築祝いに3000万円!?>

 野中の衝撃告白は、先週放送された「官房機密費の真実」(TBS系)番組で野中は、官房機密費の使途をバクロした。
 「総理の部屋に月1000万円。衆院国対委員長と参院幹事長に月500万円ずつ持って行った」
 「政界を引退した歴代首相には盆暮れに毎年200万円」
 「外遊する議員に50万~100万円」
 「(小渕元首相から)家の新築祝いに3000万円要求された」
 と次々に明らかにしたのだ。

 「テレビに出ている政治評論家やタレントが数百万円を提示されてマスコミ工作をお願いされたという話もある。この人たちが“毒まんじゅう”を食べていたと仮定すると、官房機密費のニュースに触れない理由が分かります」(民主党関係者)

 鳩山政権が、歴代政権の官房機密費の使途を完全公開すれば、政界と大マスコミは一気にガタガタだ。

 ●(3)検察は当然(?)だが、何故、大マスコミは、こういう事件を報道しないのか、しかも、大々的に???

 小沢問題や鳩山政権を叩くことは真剣でも、この種の問題を避けるかのような印象を与えるのは、やはりというのか、前政権との癒着(?)を勘ぐりたくなるのではないでしょうか。<トピックスの第13回「なぜか超スピードで進む鳩山・小沢事件の検察審査会」>でも掲載しましたが、千葉県知事の森田健作氏を告発している「公職選挙法違反容疑の告発」は、いつになるのかはっきりしない。
 しかし、民主党に関することは、恣意的(?)と疑いたくなるほどの超スピード。「官房機密費」の問題は、前政権の権力者のひとりだった野中氏の告白です。
何故?動かない!!!

 こういう敵(?)を相手に戦うのですから、民主党は鉄の鎖を引きずりながらの「政権運営」です。新しく何かをするよりも、壊すことに困難をきたしているようです。このあたりになると、私(藤森)の専門とする「自己成長・自己回復」と全く同じです。
 「自己成長・自己回復」が難しいのは、より良い生き方をすることが難しいのではなく、長年、生きてきた習慣を捨てる(変える)ことが難しいのです。どうしても、長年のクセ、生き方に固執してしまう「強力な自分」がいるので、変えるのに困難を来たすのです。
 このあたりは、いつかまた詳しく解説します。

<文責:藤森弘司>

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