2010年4月15日 第12回「トピックス」
普天間基地移転に関する重大事 PART②

 ●(1)平成22年2月11日、夕刊フジ

 <普天間受け入れ先 米自治領前向き>

 米自治領・北マリアナ諸島テニアンのデラクルス市長は10日、共同通信の電話取材に対し、在日米軍再編に伴いテニアンに米軍部隊を受け入れたいとの意向を示した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)についても「移設先になりうる」とし、受け入れに前向きな姿勢を表明した。日本政府の沖縄基地問題検討委員会は10日、在沖縄海兵隊が移転を予定している米領グアムを視察。一部議員はテニアンに立ち寄り北マリアナ諸島のフィティアル知事とも会合。受け入れに積極的なテニアンが、普天間の移設先候補になるか、検討するとみられる。(共同)

 ●(2)平成22年4月13日、読売新聞

 <テニアンへ移設「可能性を確信」>(社民・照屋氏)社民党の照屋寛徳国会対策委員長は12日、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題について「(米自治領)北マリアナのサイパン、テニアンを視察した結果、移設実現の可能性を強く確信した」と語った。平野官房長官に、日米交渉で正式に検討するよう申し入れる。
 照屋氏は、テニアン市長や議員ら約20人と意見交換し、「地元議会として米海兵隊の受け入れを支持する決議を行う」と伝えられたことを明らかにした。
 ●(3)平成22年1月5日、日刊ゲンダイ「斎藤貴男 二極化・格差社会の真相」

 <伊江島も下地島も絶対にダメだ>

 新年あけましておめでとうございます。
 自称フリージャーナリストとしては、“ひとり新聞社”の気概で仕事をしてきたつもりだ。そこで私なりの正月“社説”といこう。夜郎自大に陥りがちな国家戦略うんぬんではなく、人間一人一人の希望と未来を語りたい。

 まずは沖縄の米海兵隊・普天間基地の県内移設を許さないこと。海兵隊は外征専門の“殴り込み部隊”であり、日本が専守防衛を貫く限り不必要、否、あってはならない存在なのである。
 辺野古新基地計画への根強い抵抗の前に、小沢一郎・民主党幹事長は伊江島や下地島まで候補地に挙げ始めたが、とんでもない。米軍の爆撃演習地にされた伊江島の戦後史や、下地島の民間ジェットパイロット訓練場の建設計画が浮上した1971年、屋良朝苗(やら・ちょうびょう)・琉球政府行政主席と日本政府の間で民間用途以外には用いないとする「屋良覚書」が結ばれた経緯を少しでも承知した上で、この人は物を言っているのだろうか。

 下地島だと普天間基地よりずっと中国に近い。こんな場所に“殴り込み部隊”が展開していけば、それこそ中国に、対日軍拡への絶好の口実を与えてしまうことにもなる。
 <戦争でカネを儲けてきたアメリカ。そしてその戦争に群がりおこぼれをもらいながら成長してきた戦後の日本。そしてその軍隊といまだ決別できずに生きる沖縄。私たちと軍隊との共犯関係は、今後もこの島で暴力の亡霊を暴れさせ、人々の精神を蝕み続けるだろう>

 新垣誠・沖縄キリスト教学院大学准教授の叫びだ(「沖縄タイムズ」2009年12月30日付)。朝鮮戦争やベトナム戦争と高度経済成長との関係で、私たちは世界中に生き恥をさらしてきた。戦後史最大のタブーを、今度こそ直視しよう。
 生活第一を掲げていた新政権は、案の定、またぞろ成長戦略とやらに話をすり替えた。しょせんは1億2000万人分の財布しかない内需で大企業が満足できっこない以上、成長という名の錦の御旗は、彼らを無尽の外需志向に向かわせる。格差も貧困も、成長のためには「やむを得ない損失(コラテラル・ダメージ)」として済まされていく。

 成長はどこまでも手段のひとつでしかあり得ない。目的であるべきは、いかなる戦争にも加担せず、可能な限り平等で、公正で、誰もが幸福を感じることのできる社会。すべての政策が、その理念から導かれる国、だと私は考える。
 堕落しきった旧体制をせっかく倒したのだ。ゼロから出直そうよ。(隔週月曜日掲載)

 ●(4)平成22年2月23日、日刊ゲンダイ「斎藤貴男 二極化・格差社会の真相」

 <普天間は国外移設、叶わなければ東京へ>

 はたして政府・与党は沖縄・普天間基地の県内移設で決着させる腹らしい。先週末には平野官房長官が仲井真知事に、「ベストを求めるがベターかも」と宣告。一方では米側にキャンプ・シュワブ陸上部への移設案を打診しているという。
 つくづく度し難い植民地根性だ。常に米国の利益を優先し、交渉の以前に国内を彼らの戦時体制に組み込むことだけに勤しんで恥じもしない。
 マスコミも同罪。その圧倒的多数派がこの間ずっと政権と足並みを揃え、「白いご主人様に逆らうと日米関係が大変だ」と世論誘導に励んできた経緯は周知の通り。
 宇沢弘文・東大名誉教授らが呼びかけ、作家の大江健三郎氏ら340人の知識人が賛同した声明も黙殺された。辺野古を含むあらゆる県内移設に反対し、冷戦構造を前提とする日米安全保障体制の見直しを求めて1月18日に参議院議員会館で行われた記者会見も、本土のマスコミは一行たりとも報じなかった。

 私自身も署名したひとりだ。普天間は沖縄県民だけでなく、日本に住むすべての人々が真剣に考えるべきテーマだとする趣旨に共感したのだが、もはや権力の宣伝機関に堕しきった大マスコミは、そのように考える人間など排除の対象としか見なしていないということか。
 移設先の候補には、北マリアナ連邦のフィティアル知事が歓迎の意向を示している。とりわけサイパン島に隣接し、米軍再編計画の一環で海兵隊の訓練地になる予定とされるテニアン島のデラクルス市長が積極的だと、これはNHKでも報じられた事実だ。

 にもかかわらず・・・・・。そうした可能性さえもが、いつの間にかウヤムヤにされつつある。在日米軍の75%が集中させられている沖縄では、北部・東村(ひがしそん)の高江地区にヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)が建設されようとしていて、反対住民を政府が提訴するという異例事態にも至っているのだが、紙数が尽きた。
 もうこれ以上、沖縄を米軍の戦争の最前線基地であり続けさせていく権利など、誰にもない。私たちは普天間基地の閉鎖ないし国外移設に全力を尽くし、叶わなければ、東京が引き受けなければならない。
 米軍の核の傘にしろ彼らの戦争による特需を経済成長に結びつけた漁夫の利にしろ、最大の利益を享受したのは東京である。福祉でも教育でも、受益者負担が原則だとあれほど言い募ってきた日本国民ではないか。(隔週月曜掲載)

 <さいとう・たかお・・・・・1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「機会不平等」「『非国民』のすすめ」「安心のファシズム」など著書多数>

 ●(5)平成22年4月13日、日刊ゲンダイ「普天間 新たな疑惑」

 <米軍幹部がポロリ>

 <在沖縄海兵隊「1万8000人」は自民党政権のデッチ上げ>

 大詰めを迎えた普天間移設問題。大マスコミは「5月決着困難」などと、相変わらず鳩山内閣の足を引っ張ろうとしているが、重大な秘密が暴露されたことにはなぜか、ほぼ目を伏せている。
政府が普天間代替施設建設の根拠としてきた「在沖縄海兵隊の定数1万8000人」という数字が、基地利権絡みのデッチ上げだったのだ。

 今月4日に民主党の沖縄等米軍基地問題議員懇談会会長の川内博史衆院議員が沖縄海兵隊基地を現地視察。訪問先のキャンプ瑞慶覧で、在日米軍トップのロブリング中将に質問した。
「沖縄の海兵隊員は1万8000人というが、その根拠は何か」
 1万8000人とは、現行の辺野古移設計画(V字案)でグアムに移る8000人に、政府が移転後に残るとしてきた1万人を足したもの。V字案をまとめた当時の守屋武昌防衛事務次官と、額賀福志郎防衛庁長官が出してきた数字だ。

 <巨大利権を生み出すために額賀・守屋コンビが水増し>

 沖縄基地対策課の調べでは、在沖縄海兵隊員は1万2400人(08年9月末時点)。2月に北沢防衛相も「イラク、アフガンに行っているので実数は4000人~5000人」と語るなど、数字の根拠は曖昧だった。
 ロブリング中将は「部下に答えさせる」と退席。代わった在沖縄米海兵隊外交政策部のエルドリッジ次長は「(1万8000人は)日本政府が言った数字だ。私たちの責任ではない」と言い放ったという。守屋と額賀が持ち出してきた数字を否定したのだ。

 「歴代の自民党政権は在沖縄米軍の数を水増しして、利権を拡大させた疑いが濃厚です。沖縄に残る海兵隊員が現実よりも多ければ、代替施設は大きくなる。V字滑走路という巨大な公共事業をつくるため、数字をデッチ上げたのです」(軍事ジャーナリスト・神浦元彰氏)
 本当にフザケタ話だ。当の米軍は、06年7月の「グアム統合軍事開発計画」や、08年8月の「グアム軍事統合マスタープラン」で、普天間基地の機能および全部隊のグアム移転を発表済みだった。米軍にとって普天間の代替施設は必要なかったのだ。なのに、自民党政権は巨大利権を生み出すため、根拠となる数字をデッチ上げてまで、V字案をまとめたのだ。

 政権交代がなければ、こうした利権絡みのインチキは永久に闇の中だっただろう。普天間問題をことさら、日米間の重大事のように煽り立て、民主党政権イジメに走る大マスコミも、いい加減に目を覚ますべきだ。

 ●(6)平成22年4月16日、日刊ゲンダイ「普天間移転 潰そうと動き始めた反対勢力」

 <鳩山首相の“腹案”はグアムか>

 鳩山首相の優柔不断な「普天間移転」発言が、大マスコミの格好の標的にされ、「5月退陣説」が広がっている。オバマ大統領との直接交渉も不発だったことで、ドン詰まり論はさらにヒートアップだ。しかし、「迷走は最初からのシナリオ」という“深読み”が関係者の間で囁かれだした。ウルトラCがあるというのだ。

 国会の党首討論で「腹案はある」と言った鳩山首相。マスコミは「それは徳之島案だ」「キャンプ・シュワブ陸上案だ」と勝手に決めつけたが、それは違う。どうも「グアム移転案」らしい。「グアム移転は最善策です。米国がまとめた文章にも海兵隊だけでなく、ヘリ部隊などすべてを移転すると書かれている。受け入れる準備はあるのです。沖縄県民は歓迎だし、鳩山政権の公約も達成できる。資金援助は必要ですが、三方丸く収まるのがグアム移転案なのです」(軍事問題評論家・前田哲男氏)

 これは鳩山首相も百も承知のことだ。だが、最善策のグアム移転案は早期の段階で消された。その後は社民党が主張した程度で、話題にもならない。なぜか、ここからが“深読み”だ。政府関係者が言う。
 「グアム案を最初から本命に挙げると、潰されるからです。鳩山首相や周辺はそう考え、隠したのでしょう。国外移転ではウマミがなくなる日米安保マフィア、メンツが立たない外務・防衛官僚、せっかく手にした普天間や辺野古を手放したくない米軍の一勢力・・・・・。とにかく、敵ばかりだから、どんな妨害が出るか分からない。で、わざと、あり得ない沖縄県内移転や徳之島、馬毛島などの名前を出して、可能性を潰しては時間稼ぎをしている。国内のすべての候補地が地元の反対でダメとなったとき、それならどうする、グアムしかないかという形で打ち出すつもりなのですよ」

 大マスコミの一部は、このシナリオに気づいたらしく、グアム特集をやって地元の「移転反対」を大きく報じていた。だが、社民党の説得にテニアン市長が「可能だ」と答えたように、金銭面の交渉次第で、グアム、テニアン移転はどうにでもなる。

 <早く打ち出して参院選の争点にしないと支持率低下を食い止められないぞ>

 問題は反対勢力の存在だけだ。前出の関係者が言う。
 「だから鳩山首相は、5月末を期限にした。参院選の公示日直前の決断なら、政治的影響から反対派も動きにくい。オバマ大統領に対しても、沖縄県民は県外移転に希望を持ってしまった。今さら元の辺野古に戻したら政権が持たなくなるし、反米感情も強まると、そんな理屈で承知してもらえると計算しているはずです」

 「沖縄の犠牲の継続か」それとも「日米関係の一部見直しか」・・・・・そんな争点で参院選をやろうと考え、鳩山首相はあえて自分から普天間問題をこじらせ、大きくしているという見方もある。
ともあれ、それはそれでいいのだが、これ以上、普天間問題の“迷走”で支持率がガタ減りしては鳩山首相の決断も軽くなるばかりだ。シナリオは幻で終わりかねない。
 「5月末」なんて悠長なことを言っている場合じゃないのだから、腹案が「グアム移転」ならば、早急に打ち出すときだ。意外と潮目は大きく変わるかもしれない。

<文責:藤森弘司>

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