2010年1月22日 第4回「トピックス」
「新型インフル」は製薬会社の仕掛け

●(1)2010年1月19日、日刊ゲンダイ「国際政治“ナナメ読み”」原田武夫

 <欧州各国が問題視>

 製薬会社が仕組む「罠」の話をしたい。
 「病気」だと考える人が増えて、初めて薬は売れる。それには、啓蒙と称してマスメディアを通じ、「この病気がこれからはやります。治療薬はこれですよ」と刷り込む必要がある。これを業界用語では「戦略的PR」と呼ぶ。なぜ“戦略”なのかといえば、いまだ発生していない事実を「事実=病気」として伝え、刷り込む=PRするからだ。

  この製薬会社にとっては定石である戦略的PRが、現在、欧米において大問題になっているのである。
  というのも欧州評議会の保健委員会がここに来て騒ぎ始めたからだ。「ウイルスを騒ぎ立てて、それが病気を大流行させるという仕掛けには裏があるはずだ。世界保健機関(WHO)と世界中の製薬企業がグルになっている。これを徹底調査すべし」と叫び始めたのはヴォルフガング・ヴォダルク委員長。ドイツ出身の重鎮だけに、その発言は大きな波紋を呼びつつある。

  しかも、これだけではない。ストーリーは違うが製薬企業バッシングに欧州委員会も走り始めた。「複数の製薬企業が、ジェネリック(後発医薬品)薬品企業に対してリベートを渡し、ジェネリック薬品が発売されるのを遅延させているのはカルテル規制違反だ」と調査をし始めた。これら2つの事案を見るだけでも、どうやら欧州勢がどういうわけかここに来て一転して舵を切り、製薬企業潰しに入ったことがお分かりいただけるであろう。

  実はこうした「潮目」の予兆は昨年末から見え始めていた。日本の大手メディアは大声で報じなかったが、まずドイツ勢が、次にフランス勢が「新型インフル・ワクチンの購入量を当初予定より大幅に削減する」と言い出したのである。季節はいまだ冬であり、本来ならばまさにこれから大流行に備えてワクチン備蓄に走りそうなものである。
  さしものWHOも、事ここに至ると完全に無視しているわけにはいかないと判断したのだろう。「ブタインフルエンザに関するこれまでの取り扱いについて精査する」旨の声明を発表せざるを得ないところにまで追い詰められた。これはまさに「潮目」である。
製薬セクターは日本勢について2010年、外資勢は2012年に大規模特許が続々切れるという「危機」を迎える。それを前にしてしっかりと稼いでおこうと得意の「戦略的PR」を繰り返してきたのが、ここに来て馬脚を現したということなのか。今後の展開から目が離せない。(隔週月曜日掲載)

 <原田武夫氏・・・・・1971年生まれ。東大法学部中退後、外務省入省。アジア大洋州局北東アジア課課長補佐などを経て、05年3月、自主退職。原田武夫国際戦略情報研究所(http://www.haradatakeo.com/)代表。>

●(2)映画「シッコ」をご参照ください<2007年8月31日 第61回「今月の映画」>

<文責:藤森弘司>

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