2009年12月31日 第1回「トピックス」
普天間基地移転に関する重大事

●(1)2009年12月18日、日刊ゲンダイ「自民党案の名護市移転先」

 <1兆円砂利土建利権で、もうグチャグチャ>
 普天間問題の先送りで、沖縄の銀行マンが頭を抱えている。名護市への基地移設の巨大利権をアテ込み、地元ゼネコンにジャブジャブ融資したものの、県外移設の可能性が出てきたことで、回収不能の恐れが高まっているのだ。実は、普天間問題がニッチもサッチもいかない根っこには、この銀行・土建コンビの問題があるのだ。

 「環境、騒音、安全と言いながら、裏では埋め立ての利権ですから」ーーかつて普天間問題について、こう喝破したのは、小泉首相秘書官時代の飯島勲氏だ。事実、1996年の返還合意からの迷走の13年は、利権拡大の歴史だった。
 「当初、代替施設の計画は、撤去が可能な海上浮体式(メガフロート)と、くい打ち式(QIP)の2案が有力でした。しかし、代替施設を受け入れる名護市周辺の土建業者が猛反発。『新工法で儲かるのは本土企業だけ』『埋め立てで仕事を沖縄に回せ』と巻き返しに出たのです」(沖縄県政関係者)

 票とカネを土建業者に頼り切ってきた自民党政権が“スポンサー”の意向を無視するわけがない。98年に旧竹下派が中心になって担ぎ出した稲嶺恵一県政が誕生すると、撤去可能案は消え、「埋め立て案」が前提となって事業規模もドンドン膨らんでいった。
 「この間、政府内ではコストが安上がりな既存基地への併合案も浮上しましたが、常に『沖縄(の意向)に譲れ』と、自民党の有力者の横やりが入り、潰れていきました。結局、06年に日米間で合意した『V字形滑走路案』は埋め立て工事を伴うため、最低でも4000億円、下手をすれば1兆円を超える大型公共事業となったのです」(防衛省事情通)
 今も地元市長などが、騒音を理由に「現行計画より100メートル沖合いに移動せよ」と日米政府に求めているが、バックにいる土建業者が「埋め立て面積が増えて潤う」というのがホンネだ。難クセをつけて利権を拡大させるハラである。

 <鳩山首相が先送りしたのは当然>
<あの“接待王”守屋もアキれた負の遺産>

日米が合意した移設作業完了のリミットは、2014年。V字滑走路建設の工期は3~5年の予定である。膠着状態にしびれを切らした地元の土建業者は、巨額の埋め立て利権を見込んで、すでに動き出している。

 「海上の埋め立てには“キロ石”と呼ばれる巨大な岩石や、莫大な量の土砂が必要です。今から押さえなければ、入札に出遅れます。石や土砂の権利を握るには、かなり“実弾”が必要。銀行も利権をアテ込んでカネを貸しているのです」(土建業界関係者)

 それだけに、県外移設は銀行と土建業者にすればアテ外れ。巨大利権が消えてしまう。埋め立て利権を狙った名護市の土建業者の会長は、沖縄県政を裏で牛耳るドンだ。来年1月の名護市長選や秋の県知事選で、銀行サイドとタッグを組み、巻き返しに出るのは間違いない。鳩山政権が辺野古移設案を残しているのは、ドンへの配慮ともみられている。
普天間移設の経緯のすべてを知る元防衛次官の守屋武昌被告は、最新号の中央公論でこう指摘していた。
 <与野党を問わず有力政治家が普天間移設に必要な土砂の需要を見込んでどこそこの山を買っている、などといった情報が地元ではまことしやかに噂されている。これは一体、何なのか>

 ゴルフ接待漬けで刑事被告人となった男ですらアキれる利権構造。普天間問題混迷の元凶はここにある。それで鳩山首相も、「現行案通りだと、自民党利権政治の追認になってしまう」「かと言って名護市以外に移したら、どんな逆襲を受けるか分からない」と、はざまで揺れているのだ。

●(2)2009年12月18日、日刊ゲンダイ「真相を報じろ・・・ゆっくり前進で大丈夫」

 <「いらだつ米高官」「日米同盟の危機」なんて全部ウソ>
なんだか日本人は毎日、アメリカの新聞を読まされている気分だ。鳩山首相の「普天間移設先送り」に対し、以前にも増して日本の大新聞・テレビは「いらだつ米高官」「日米同盟の危機」などと批判キャンペーンを繰り広げている。「このままでは日米合意が白紙に戻りかねない」「自民党時代に合意した現行案を早く実施しろ」と、米政府の代弁まで買って出ているから、「どこの国のマスコミなのか」と言いたくなってくる。こんな報道の洪水に、多くの読者も“洗脳”されているようだが、実際のところは、米政府は、沖縄基地の移設先送りなんかに目くじらを立てていない。アフガンやイラク、イランの問題で頭がいっぱいだ。

 米国事情に詳しいジャーナリスト・堀田佳男氏がこう言う。
 「オキナワは知っていても、フテンマを知っているアメリカ人はほとんどいません。オバマ政権が抱える安全保障問題で、全体を100とすると、アフガンやパキスタンが80、北朝鮮、中東が15程度。沖縄の基地移設なんて5以下です。今いろいろと米国で反日発言をしているのは、アーミテージ元国務副長官など旧ブッシュ政権下で自民党議員と近かった人たちです。彼らにとっては長い間かけて決めた基地移設が棚上げされるのが許せないのでしょう」

 <オバマ政権は沖縄基地問題の遅れなんかに大して関心はない>
 ワシントン支局の日本人記者が、米国務省や国防総省の東アジア担当者にマイクを向ければ、外交テクニックとして、「困った」「早く解決してほしい」くらいなことは言う。それを何倍も強調して「いらだつ米高官」と、日本で報じているのだ。だいたい、「激怒」したことになっているルース駐日大使に対しても、米大使館関係者は「怒ってなんかいませんよ」と日本の報道に呆れている。

 それに世界を見ても、英の高級紙フィナンシャル・タイムズは、オバマ政権がブッシュ時代のミサイル防衛基地計画を中止した例を挙げて、「新たな日本政府が、徹底的に政策見直しを行なうのは当然」と報道。米ワシントン・ポスト紙も「日本はアジアの中で、最も重要で、民主的な同盟国だ」と冷めたものである。
 ささいな日米のヒビを無理やり広げて大きくしているのが日本の大マスコミなのだ。

●(3)2009年12月19日、日刊ゲンダイ「2006年9月に何があった?」

 <普天間移転をこじれさせた歴代自民党政権と役人の大罪>
 普天間基地の移転問題で揺れる鳩山政権。大マスコミは「このままでは日米関係に亀裂」と大騒ぎだが、コトをここまでこじれさせた元凶は歴代自民党政権と役人にある。とくに怪しいのが2006年9月の動きだ。日本では小泉政権が安倍政権に代わり、防衛庁長官は額賀福志郎から久間章生に交代した。このとき、何が起こったのか。鳩山政権は全情報を公開させるべきである。

 今月11日、国会で超党派の議員が集まる「沖縄基地問題議員懇談会」(事務局長・川内博史衆院議員)が開かれた。
 講師に招かれたのは伊波洋一・宜野湾市長。防衛省や外務省の担当者も顔を揃えた。
この会議で伊波氏は、米軍が普天間基地の海兵隊ヘリ部隊を、ほぼそっくりグアムに移転させる計画を持っていたことを示す証拠を出した。米海軍省グアム統合計画室が作った「グアムと北マリアナ諸島の軍移転」に関する環境影響評価書だ。文書は沖縄のジュゴンを守るために米国で起こされた裁判で出てきた資料で、全9巻8100ページに及ぶ膨大なもの。この中の第2巻と第3巻に沖縄の海兵隊移転の詳細が記述されていて、海兵隊の司令部だけでなく地上ヘリ部隊や迫撃包隊、補給部隊に至るまで、大半をグアムに移転させる計画が出てくるのだ。

 沖縄の海兵隊のほとんどがグアムに行くのであれば、日本国内に普天間基地の代替施設を造る必要はない。基地問題は解決だ。
 しかも、海兵隊の“丸ごとグアム移転計画”は06年7月、米太平洋軍司令部が作成した「グアム統合軍事開発計画」の中にも出てくる。
 「海兵隊航空部隊とともに(グアムに)移転してくる最大67機の回転翼機と9機の特別作戦機CV-22航空機用の格納庫や、離着陸用パッドなどを建設する」ことが明記されているのである。普天間に駐留する海兵隊の回転翼機は56機。全部移動させても、まだ、格納庫は余る。辺野古に滑走路なんて要らないのである。

 <米国の“丸ごと”グアム移転計画をひた隠し>
 ところが、この「開発計画」は2ヶ月後に国防総省のホームページにアップされたものの、たった1週間で削除されてしまう。
 そして、自民党政権はその後、「グアムに移転するのは司令部だけ」と言い出し、沖縄に残る実動部隊のために代替基地を造ることが“既成事実”であるかのような国会答弁を繰り返してきたのだ。「その食い違いが今回、伊波市長が公開した資料でも明らかになったわけですが、問題はなぜ、国防総省がHPを削除したのか。この時期、日米で何らかの談合、合意があり、グアム移転の詳細を曖昧にする必要に迫られたからだと思います。日本政府はグアム移転の費用のうち、61億ドルを負担する。しかし、米軍はもっと基地を強化したい。日本の税金4000億円で代替基地を造り、思いやり予算までくれると言うのを断わる必要もない。日本側は日本側で海上を埋め立て、新基地を造れば、利権になる。そのために移転の核心情報をひた隠しにし、辺野古移転をゴリ押ししてきたとしか思えません」(ジャーナリスト・横田一氏)

 国会で開かれた懇談会では民主党議員らが役人の説明と米国公開資料の食い違いを厳しく指摘。「どちらかがウソをついている。米国に再確認して回答を文書で出せ」と迫った。役人たちは「政務三役と相談して・・・・・」などと逃げようとし、「国会軽視だ」と激論になった。
問題がここまでこじれた以上、洗いざらい情報を公開させて議論をしなければダメだ。

●(4)過日、全米商工会議所会長のインタビューで、会長は、普天間問題は、全体からみればわずかな問題だと発言していました。
 私(藤森)は、このように思います。
 日本中が、長期の自民党支配の中で、「ヒエラルキー(階層)」を完成させてきました。その中で、衆議院や参議院の頭だけを取っただけで、それ以外の全て、つまり、人間に喩えれば、身体全体は従来の自民党の影響力が強い勢力だと思います。
 例えば経団連や御用学者などのオピニオン・リーダー、大新聞やテレビ局、検察庁、地方議会等々、そして、中央の官僚もみな、自民党支配の中で作られたヒエラルキーの中にどっぷり浸かって「いい思い」をしてきた勢力ですから、発想そのものが、あるいは、情報そのものが「認知の歪み・・・情報収集の偏り」に覆われているものと思います。
 ですから、恐らく、実状は、上記(1)(2)(3)の通りなのではないかと推測します。また、次のようなとんでもない報道がありましたので、お知らせします。
●(5)2009年12月25日、日刊ゲンダイ「藤崎駐米大使はクビにしろ」

 <クリントンからの呼び出しデッチ上げ>
こんなウソつき野朗はクビが当然だ。クリントン米国務長官が、普天間基地移設問題で藤崎一郎中米大使(62)を呼び付けたという一件は、なんと、藤崎大使のヤラセだった。相手国の大臣をダシにして、ありもしない事実をでっち上げるなど、到底許されることではない。

 21日に米国務省で行なったクリントン長官との会談について、藤崎大使は「朝、急きょ呼ばれた。普天間計画の即時履行を求められた。大使が呼ばれるのはめったにない」と神妙な面持ちで解説した。これを受けて大マスコミは早速、「中米大使、異例の呼び出し」「米国が強い不快感」と大々的に報道。日本と米国が戦争でもおっぱじめるかのように大騒ぎした。

 ところが、これ、大ウソだった。翌日、クローリー国務次官補が会見で「呼んでない。(藤崎)大使が立ち寄ったのだ」と明かしたのだ。これが本当ならとんでもないし、仮に呼び出しが事実だったとしても、真っ先にマスコミに話すことが国益になるのか。政府内で話し合うのが筋だろう。外務官僚が勝手にやっていいことではない。「本省の指示でなく、勝手にやったのだとすれば、一種のクーデターですね」
 こう言うのは元レバノン大使の天木直人氏。
 「本来なら、すぐに東京の本省に連絡を入れて対応を協議すべき内容です。それを真っ先にメディアに話したのだから怪しいと思いました。そもそも大使は、当該国の要人を呼んだり、自分が呼ばれたりするのが仕事です。中米大使に就いて2年近くなるのに、呼び出しを『異例』という感覚も信じられない。自ら『仕事をしていない』と白状していることになる」
 普段の藤崎大使は、ぶら下がり取材に応じないという。そんな人物が進んでペラペラと話したのだから、「何かある」と疑うのが当然だろう。ところが、大マスコミはウソつき男の発言を真に受けて“世論操作”の片棒を担いだのだ。とんだ赤っ恥である。

 <過去にも事実をネジ曲げた前科>
 実は、この大使、過去にも事実をねじ曲げた“前科”がある。
 「93年に在オーストラリア大使館で公金流用疑惑が発覚しました。当時、藤崎さんは会計課長で査察の責任者でした。ところが疑惑が広がらないよう、関わった職員の処分をせず、事実の隠蔽を図ったのです」(外務省関係者)

 慶大を中退し、69年に入省。同期には普天間問題や北朝鮮の拉致問題で有名になった田中均本外務審議官(現東京大学公共政策大学院客員教授)がいるが、「中米公使時代、国防総省に日参するものの相手にされなかった話は省内でも有名」(事情通)という。もともと能力には疑問符が付く男なのだ。
 それでもアジア局参事官、北米局長などを経て08年4月に中米大使に就いている。トントン拍子に出世しているから不思議だ。
 「次官経験者もない藤崎が『外交官最高のポスト』と呼ばれる駐米大使に就任したのは、“大蔵一家”の妻のコネが大きかったとささやかれています。妻の父親は大蔵官僚出身で元東京銀行頭取・会長、母親も大蔵OBで元明治製糖相談役の娘です」(外務省事情通)
 中米大使の収入は在勤手当だけで月約70万円。これに本給や配偶者手当、住居手当などを合わせれば年収f3000万円は軽い。退職金も数千万円はもらえるだろう。まったくふざけた話である。

●(6)2009年12月26日、日刊ゲンダイ「大新聞はなぜ報道しない」「駐米大使のクリントン呼び出しデッチ上げ事件」

 <独断でやった芝居なのか、裏に誰かいるのか、岡田外相はなぜ黙っているのか>
 藤崎駐米大使の“呼び出しデッチ上げ事件”が奇々怪々の展開になってきた。普天間移設を巡り、クリントン国務長官に呼びつけられた、異例のことだ、と藤崎が騒いだ一件である。本当ならば、米側の怒りも相当なのだろうが、この話が報道されると、米側は「大使の方から会いに来たのだ」と“呼び出し報道”を全否定。当然、今度は藤崎の“自作自演”が問題になると思いきや・・・・・岡田外相は何も言わないし、大新聞も沈黙なのだ。裏に何があるのか。

 クリントン国務長官と藤崎駐米大使が会ったのは今月21日。藤崎は「長官側から連絡があった」「めったにないこと」「重く受け止める」と騒いだ。
 「クリントン国務長官は17日にコペンハーゲンで行なわれたCOP15の晩餐会で鳩山首相と隣り合わせになった。このとき、鳩山首相が普天間移設問題の解決には時間がかかることを説明したところ、長官が『よくわかった』と答えたと報じられた。長官は非公式会談の話がメディアに漏れたことに怒っていて、釘を刺す目的で大使と話したかったのは明らかです」(国際ジャーナリスト・歳川隆雄氏)

 ま、こういうことは外交上よくある。しかし、脱官僚依存の鳩山政権を面白く思っていない外務省は、ここぞとばかりに「呼び出し事件」を騒いだ。そうすることで、暗に鳩山軽率外交をなじり、普天間も現行案に戻させる。そんな狙いがあったのはミエミエだ。
 しかし、米側のスポークスマンは22日、「藤崎大使は長官から呼ばれたのではない。彼の方から会いに来たのだ」と明言。藤崎の大騒ぎは、思いっきり冷や水を浴びせられたのである。

 「もし、藤崎大使がウソまでついて米側の怒りを過剰演出したのだとしたら、大問題。更迭されてもおかしくない」(外交事情通)という話だが、奇っ怪なことに、岡田外相は沈黙している。大新聞も全然、書かない。どう考えてもおかしいのだ。
 元AP通信の記者でビデオジャーナリストの神保哲生氏は「米スポークスマンは、藤崎大使がクリントンのところにstop by(立ち寄った)という言い方をした。つまり、米側は呼んだわけでなく、たまたま来たのだという言い方なんですね。これも常識ではあり得ない話で、米側にしてみれば、居丈高に呼んだのではないと言いたかったのでしょう」と言う。

 この辺が真相かもしれないが、それにしたって、藤崎の言い方は米が驚いて否定するほど“大げさ”だったことになる。それが現政権の外交政策を後押しするためであるならばいざ知らず、足を引っ張る言動だったことが大問題なのである。
 大新聞が真相を報じないのは、こちらも普天間問題では完全に反鳩山、親米だからだ。亀井金融大臣は会見でこう言ったことがある。
「日刊紙は国益を損なうことばかり書いている。1周遅れなんだよ。アメリカの機嫌を損ねたら大変だと。何か事が起こると。そんなことがあるはずがない。一体、君たちはどこにおるのかと言いたい」

 この言葉を藤崎にも贈りたい。

●(7)藤崎大使が、クリントン国務長官に呼び出されたという「デッチ上げ事件」、これが12月26日(土)や27日(日)の政治関係の番組でどのように扱われるかと思っていたら、私(藤森)が知る範囲では、一切、報道されませんでした。
 そして、31日(木)の10ch「やじプラ号外版」では、「クリントン長官に藤崎大使が呼び出された」と報道していました。日本のマスメディアはどうなっているのでしょう???

<文責:藤森弘司>

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