2020年3月31日第149回「トピックス」「殺伐とした‟コロナ社会”にも、心温まる出来事が!」

(1)「殺伐とした‟コロナ社会”にも、心温まる出来事がありました。」(週刊ポスト、令和2年3月27日)

 <早朝のドラッグストアで・・・>

 埼玉県ふじみ野市に住む女性会社員Sさん(42)は、3月初旬の早朝、路上で見知らぬ中年男性に声をかけられた。
 「午前5時半頃、マスクを購入するためにドラッグストアの前に1人で並んでいたら、ふらりと男性が現れました。

 少し遠くでタバコを吸いながらこちらを見ていたのですが、近づいてきて『この店で何かイベントでもあるんですか』と声をかけられたのです」(Sさん)
 ひどい花粉症でマスクがないと外出できないこと、どこにも売っておらず困っていること、何としても手に入れたいので開店前から並んでいること・・・Sさんが事情を説明すると、男性は「大変ですね」と言い、その場を立ち去ったという。

 「ところが40分ほどして男性が戻ってきて、『これ、少ないですけどどうぞ』とビニール袋を手渡されました。
 私は反射的に『ありがとうございます』と受け取ったのですが、男性はそのまま行ってしまいました」(Sさん)
 家に帰って袋を開けると、未使用のマスクが6枚入っていた。

 「あの男性は事情を説明した私を心配してマスクを持ってきてくれたのだから、感謝して使っているということをきちんと伝えたいと思ったのです。私の体験を多くの人に知ってもらいたいとも思い、ふじみ野市役所にこの話をメールで投稿しました。」

 それを受けた市役所からの情報提供で、3月4日、埼玉新聞にこのエピソードが掲載された。
 「もらった6枚のうち最後の1枚はマスクケースに入れて、お守りとして鞄にずっと入れています」(Sさん)

 <お会計のたびに「頑張って」>

 不要不急の外出自粛の呼びかけに伴い、多くの観光地や繁華街に閑古鳥が鳴いている。
 横浜中華街もその一つ。多くの店が長期の臨時休業を余儀なくされているが、それに追い討ちをかけるように、3月3日、横浜中華街にある4つの料理店に「早く日本から出ていけ」などと中国人を誹謗中傷する匿名の手紙が届いた。

 その4店のひとつ、老舗中華料理店「海員閣(かいいんかく)」の店主が手紙の写真とともに<なんか悲しい・・・>とツイッターに投稿したところ、「がんばれ中華街」などと応援のメッセージが多く寄せられた。しかし、反響はそれだけではなかった。

 ランチのみ営業の海員閣に、「料理を食べて応援しよう」と客の長い列ができたのだ。
 「来てくださったのは常連の方だけではなく、昔1回来たことがあるとか、『初めてだけど応援します』という方もいたんです。お会計のたびに『頑張って』と声をかけられて。今回のことで、『うちもなるべく臨時休業をしないでやっていこう』となりました」(店員)
 店は盛況で、海員閣の名物であるシューマイが売り切れになる日もあったという。
 一連の出来事は3月8日付の神奈川新聞で報じられ、反響を呼んだ。

 千葉日報に報じられたのは、2月初旬に武漢からチャーター機で帰国した在留邦人らへの励ましである。
 2週間の停留を余儀なくされた帰国者らの受け入れ先が千葉県勝浦市の「ホテル三日月」に決まったときには、勝浦の街自体を敬遠する風潮が一部で見られた。そうした偏見を物ともせず、隔離生活を送る帰国者約180人に寄り添ったのは、勝浦市民だった。

 「2月6日、集まった方々がホテル前の砂浜に励ましのメッセージを作ってくれたのです。部屋からそれを見た帰国者の方がSNSにアップすると、8日朝に再び多くの方が集まってくださった。メッセージを書く様子が見えましたので、すぐにお客さまに館内放送でお伝えしました」(勝浦ホテル三日月担当者)

 千葉日報(2月8日付)によると、<砂文字作りは午前9時ごろから開始。1文字の大きさは2メートルほどで、竹ぼうきや熊手、デッキブラシなどを使って絵文字も入れて書いた>という。作ったメッセージは<心はひとつまたきてね>。

 完成すると書いた人々は横一列に並び、「滞在はもう少し。頑張れ!」などと大声で呼びか掛けたという。ホテル担当者も、「温かい励ましでポジティブな気持ちに切り替わった」と話す。

 <料理長の特製ランチ>

 3月頭から春休みまで続けて臨時休校となってしまった子供たちの居場所をどう確保するかは、現在も大きな課題だ。共働きやひとり親世帯は、子供の面倒を見るために休業せざるを得ない場面も出てくる。遊び場もなく友達に会えない日々は、大きなストレスだろう。

 そんななか、京都市内の老舗料亭が、ある試みを始めた。

 「子供たちの自習室代わりに、店の空いている部屋を無料で使ってもらっています。例年なら3月、4月は歓送迎会やインバウンドのお客さん、修学旅行で繁忙期ですが、今年はキャンセルが相次ぎ、売り上げは70~80%減となる見込み。それでも営業していれば電気やエアコン代はかかる。空いている部屋を有効活用したいと思ったのです

 そう語るのは、京都市中京区にある京懐石料亭「神泉苑平八」の支配人・松原治雄氏。小学生を中心に平日の10時から夕方5時まで店で預かっている。定員は約30人だ。

 「お母さんが送り迎えする子もいれば、友達同士で連れ立ってくる子もいます。店に来たら大学生など地域のボランティアが面倒を見てくれ、勉強のほかにアニメをプロジェクターで流したり、子供たちが持参したゲームをしたりと遊びの時間も設けています」(松原氏)

 保護者にとって何よりありがたいのは、手作りの昼食を無料で食べさせてもらえることだ。
 「それほどのものではないですが、料理長らで用意しています。当初、食材はうちの持ち出しでやりましたが、京都新聞(3月3日)で取り上げられてから、取引先や知らない方々からもお米や味噌など色々な食材を提供していただくようになりまして、子供たちの食事用に使わせていただいています」(同前)

 この取り組みのきっかけは、同じ中京区にある老舗割烹料理店「松長」の女将・長谷川真岐氏がSNSで呼び掛けたことだった。

 「うちは店を使って赤ちゃん教室をやっていて、普段から子供たちがよく来る環境でした。一斉休校になる聞いて、<本当に困っている方がいたらぜひうちの店にどうぞ>と発信したんです。意外と反響が大きく、同じ地区内の神泉苑平八さんやほかの旅館さんも『うちもやります』と。親御さんからは感謝の言葉をいただきますが、こちらとしてはそんな大それたことをしている気持ちはなく、『部屋が空いているから自由に使ってくださいね』くらいの気持ちです。京都は今ガラガラで、ヒマですからね(笑い)」(長谷川氏)

 新潟日報(3月5日付)には、休校により余った学校給食の食材を活用している地域があると紹介された。
 「休校で新発田市内の小中学校計29校分の給食が中止になってしまった。余った食材を有効活用できないかと考え、民間団体『フードバンクしばた』に無償で提供しました」(新潟県新発田市教育総務課)

 フードバンクしばたは、母子家庭を中心に経済的に厳しい状況にある100世帯に、寄付などで集めた食材を届ける活動をしている。新発田市から提供されたのはごぼう27㎏、ねぎ52㎏、オレンジ650個、ひなあられ500袋などだ。

 「学校が休みになると家庭での子供の食費の負担は増えます。なので私たちは通常2~3週間に一度の食材の配達を、休校期間中はスパンを短く1週間から10日ごとにして多めに配りたいと考えていました。そうしたところに市の教育長から7000食分の食材が余ったのでその一部を提供したいというお話があり、ありがたかった」(フードバンクしばた事務局・土田雅穂氏)

 世の中、捨てたもんじゃない。

(2)「経営者目線」(ワタミ代表取締役会長兼グループCEO・渡邉美樹、夕刊フジ、3月11日)

 政府の臨時休校要請を受けて、「ワタミの宅食」では昼食に困る子供たちに、栄養バランスに配慮したお弁当を商品無料で自宅まで届ける緊急支援策を決定した。400万件をこえる問い合わせがあり、50万食のお届けを昨日(9日)から開始した。

 赤字だが、生活インフラ企業として上限いっぱい引き受ける決断をした。工場の生産体制を引き上げ、全国500営業所を動かすには、的確な指示が必要だ。現場の声を聞き、決断や指示を出し、事業責任者に「あとはおまえに任す」と、繰り返す毎日だ。

 <後略>

(3)「学童クラブに焼き菓子贈る」(東京新聞、3月31日)

 <日野の菓子工場>

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため臨時休校になって以降、学童クラブで過ごす児童を応援しようと、日野市日野に工場がある銀座ウエスト(洋菓子舗ウエスト)は30日、市内の27クラブに通う小学1~3年生約960人に自社の焼き菓子を贈った。

 工場に近い日野第一小学童クラブで贈呈式があり、佐伯敬・日野工場配送センター長が「みんながハッピーになるように」と代表の3年生約20人に手渡した。1~2年生も含め約50人がお礼に歌を歌った。

 1箱12個入りの菓子が1人1人に配られ、3年栢菅雫さん(9つ)は「うれしい。家族で食べる」と喜んだ。(松村裕子)