2017年5月31日 第178回「今月の映画」
湯を沸かすほどの熱い愛
●監督:中野量太  主演:宮沢りえ  杉咲花  オダギリジョー  松坂桃李
<第40回日本アカデミー賞 最優秀女優賞受賞、最優秀助演女優賞受賞、新人俳優賞>

●(1)この映画の評判は聞いていましたが、タイトルがあまりにも安直(?)というか、安っぽいというか、三文小説っぽい印象があり、ちゅうちょしている間に立川での上映が終わっていました。
ある日、日野市民会館で上映することになり、その無料券をいただくことができました。1枚のチラシからの紹介です。
とても素晴らしい映画でした。機会がある方は、是非、ご覧ください。
やや映画のポイントから外れますが、私の立場から気がついたことは、知らないってことは本当に怖いなと、改めて思いました。親子関係でも、夫婦の関係でも・・・・・私(藤森)自身の深い反省でもありますが、良く知る=「識る」ことが本当に大事であることが、古稀を越えて、深く、さらに深く気づかされます。周囲を少し見わたして、もう少し深く思考を巡らして、もうちょっと、相手の気持ちを汲み合い、配慮し合い、

大切に思い合いたい・・・・・と我が身の反省と共に、涙が溢れます。

〇(2)<余命2ヵ月。私には、死ぬまでにするべきことがある>

銭湯「幸の湯」を営む幸野家。しかし、父が1年前にふらっと出奔し銭湯は休業状態。母は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら娘を育てていた。そんなある日、突然「余命わずか」という宣告を受ける。その日から彼女は、「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく。

①家出した夫を連れ帰り家業の銭湯を再開させる
②気が優しすぎる娘を独り立ちさせる
③娘をある人に会わせる

その母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うことになり、彼らはぶつかり合いながらもより強い絆で結びついていく。そして家族は、究極の愛を込めて母を葬(おく)ることを決意する。

〇(3)<死にゆく母の熱い想いと、想像もつかない驚きのラストに、涙と生きる力がほとばしる、家族の愛の物語>

<死にゆく母と、残される家族が紡ぎだす愛>という普遍的なテーマを、想像できない展開とラストにより、涙と生きる力がほとばしる、驚きと感動の詰まった物語に昇華させた本作。
自身が手がけたオリジナル脚本で商業デビューを飾ったのは、自主制作映画「チチを撮りに」が、ベルリン国際映画祭他で絶賛された中野量太監督。脚本を読み、「心が沸かされた」と出演を決めた宮沢りえは、会う人すべてを包みこむ優しさと強さを持ちながら、人間味溢れる普通の“お母ちゃん”という双葉役を、その演技力と熱量で見事にスクリーンに焼きつけた。

気弱で引きこもり寸前の娘・安澄には、今もっとも注目の実力派若手女優・杉咲花。母の死に向かい合い、たくましく成長していく安澄を圧倒的な力で演じ切った。そして、頼りないけどなぜか憎めないお父ちゃんを演じるのはオダギリジョー、旅先で知り合った双葉の母性に触れ、人生を見つめ直していく青年役に松坂桃李、他が新しい家族の物語を彩る。

<文責:藤森弘司>

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