2011年7月31日 第108回「今月の映画」
ニュー・シネマ・パラダイス

 ●(1)大須賀発蔵先生がお亡くなりになりました。

 このホームページをご覧くださっている皆様は、多分、大須賀先生のご指導を受けたことがあるか、ファンの方が多いのではないかと思います。5月26日、88歳で永眠されました。慎んでご冥福をお祈り申し上げます。
私自身は24年前に、「東京セルフ研究会」という市民活動の会で、先生のご講演を初めて聞かせていただきました。「仏教カウンセリングを通して学ぶ」というお話で、私は大変感動しました。それをご縁に、私が主催する勉強会で、「善財童子について」と題してご指導いただき、以後、長期にわたり、公私ともに大変お世話になりました。先生の中心テーマである「仏教とカウンセリング」の融合、これにより私は、一般にいうところの「カウンセリング(藤森流にいうと「自己回復」)」の考え方が非常に深まりました。

<行の不同(ふどう)を知る陀羅尼門(だらにもん)>
<差別相(しゃべつそう)即平等性(びょうどうしょう)>

<一人ひとりが違いますが、平等に存在するということの教えです。これは人間が存在する上で、最も根本の精神であり、貴重な教えです。お互いの違いを理解し、尊重し合う存在でありたいものです>

大須賀先生は、カウンセリングの精神を活用した華厳経研究は驚異的で革命的、茨城カウンセリングセンター理事長、元茨城いのちの電話理事長、昭和62年仏教伝道文化賞受賞、カウンセリングを日本に最初に導入した方です。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

●(2)今回は、これといった映画がありませんでした。アニメ「コクリコ坂から」はとても良かったのですが、でも、何か、取り上げるようなインパクトが、私(藤森)にとってはありませんでした。

そこで、今、立川の「シネマシティ」で「午前十時の映画祭」・・・毎週1本、名画を上映(全部で50本)していて、その中の「ニュー・シネマ・パラダイス」を取り上げることにしました。
前半は、それほどのことはありませんでしたが、後半、特に、終盤が良かったです。子どもを思う母親の気持ちがとてもよく表れていて良かったです。

また、「今月の言葉」の第11回「温かい愛と冷たい愛」に書いた「冷たい愛」が素晴らしく表現されていて、私はとても感動しました。現在の甘ったれた日本の社会・・・・・「イニシエーション」が無くなってしまったバックボーンのない日本の社会にはとても重要な意味を含んだ映画だと思いました。

●(3)監督:ジュゼッペ・トルナトーレ  主演:フィリップ・ノワレ(アルフレード)  ジャック・ペラン(トト:現在)  サルヴァトーレ・カシオ(トト・少年時代)  マリオ・レオナルディ(トト:青年時代)  アニューゼ・ナーノ(エレナ)

受賞歴
1989年 カンヌ国際映画祭 審査員特別グランプリ
1989年 ヨーロッパ映画賞 主演男優賞(フィリップ・ノワレ)、審査員特別賞
1990年 ゴールデン・グローブ賞 外国語映画賞
1990年 第62回アカデミー賞 外国語映画賞
1990年 セザール賞 ポスター賞
1990年 毎日映画コンクール 外国映画ベストワン賞

キネマ旬報ベスト・テン:1989年度(外国映画)第7位
キネマ旬報創刊80周年映画人が選ぶオールタイムベスト100(外国映画篇)21位

○(3)<パンフレットより>

<ストーリー>

現在のローマ。夜遅く帰宅した映画監督のサルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(ジャック・ペラン)は、故郷の母(プペラ・マッジョ)からの電話で、“アルフレードが死んだ”と知らされる。“アルフレード”、その名を耳にした途端、サルヴァトーレの脳裏には、シチリアのジャンカルド村での少年時代の思い出が甦るのだった。

当時、母マリア(アントネラ・アッティーリ)と妹との三人暮らしだったサルヴァトーレ(サルヴァトーレ・カシオ)は“トト”と呼ばれ、母親に頼まれた買物の金で映画を観るほどの映画好きだった。そんなトトを魅了していたのは映画館パラダイス座の映写室であり、そして映写技師のアルフレード(フィリップ・ノワレ)だった。

トトはいつも映写室に入り込む機会を窺っていたが、アルフレードはうるさがって彼を追い返そうとする。が、そのうち2人は不思議な友情の絆で結ばされてゆき、トトは映写室でカットされたフィルムの切れ端を宝物にして集めるようになった。しかしある日、フィルムに火がつき、パラダイス座は瞬く間に燃え尽きてしまう……。

○(4)<解説>

映画が娯楽の王様だった時代を、ノスタルジーたっぷりに描いた作品。映画愛に溢れたエピソードの数々は、映画ファンの共感を呼んだ。監督はこれが長編2作目のジュゼッペ・トルナトーレ。音楽を担当したエンニオ・モリコーネとは、本作をきっかけにコンビを組むことになる。モリコーネの手がけたテーマ曲は郷愁に溢れ、感傷的なその旋律を、サウンドトラックのベストに挙げる映画ファンも多い。

本作が巧妙なのは、観客達の映画的な記憶を信用している点にある。劇中に登場する作品を知らなくとも、“映画館で映画を見るというのはどういうことなのか”、という事を知っていれば、劇中の映像が自ずと観客自身の記憶と連結し、共通の記憶へと変換されていくのである。それがこの映画の生み出す“感動”の正体なのかもしれない。

○(5)<こぼれ話>

本作は日本初公開時、シネスイッチ銀座で観客動員約27万人、40週という大ロングランを記録した。
完全版では大人になったトトとエレナが再会するが、大人になったエレナを演じたのは「禁じられた遊び」のビリジット・フォッセー。

クライマックス・シーンの映写室で映写技師を演じているのは、トルナトーレ監督自身だが、映画のラストにふさわしい人物としてフェデリコ・フェリーニに出演依頼をしたところ断られたそうだ。その理由をフェリーニがこう答えている――「私のような顔を知られた者が出る事は、これほどまでに感動的なシーンの邪魔になる」。

<文責:藤森弘司>

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