2011年4月30日、第104回「今月の映画」
●(1)共に、スティーブ・マックイーン主演の映画です。立川のシネマシティの「映画祭」で、2週続けて上映されました。続けて観た映画ですが、映画の内容は真逆でした。
パピヨン・・・監督:フランクリン・J・シャフナー 1973年制作、日本公開1974年3月、製作国フランス/アメリカ ○(2)<ストーリー> 国籍を剥奪された上、二度と生きては帰れないと噂される南米仏領ギアナのサン・ローラン監獄へ追放となったパピヨンは、国防債権偽造の罪で同じく収監されていくルイ・ドガ(ダスティン・ホフマン)と知り合う。パピヨンは、脱走に必要な金を工面しようとドガの金を狙う囚人から、彼の生命を守ることを約束。 監獄に放り込まれた二人は、獄吏の買収に失敗し、ジャングル奥の強制労働キャンプに送られるが、ドガをかばったパピヨンは更に二年間の島送りとなってしまう。島の重禁固監獄は“人喰い牢”と呼ばれる恐ろしい独房。吸血コウモリとムカデの住処で天井は鉄格子。陽はまったく当たらず、与えられる食べ物はひとかけらのパンとスープだけ、囚人たちは次々に死んでいった。 パピヨンはムカデ、ゴキブリをスープに入れて命をつなぎ、餓死寸前のところで二年の刑を終えたが、脱獄の夢を諦めた訳ではなかった・・・・・。 |
○(3)<解説>
胸に蝶の刺青をしているところから“パピヨン”と呼ばれたアンリ・シャリエールが、自身の数奇な体験を綴った同名小説の映画化。彼の不屈の精神は、脚本を手がけたダルトン・トランボが赤狩りでハリウッドを追放されながらも偽名を使って脚本を書き続けた人生と重なり、トランボ以上の適任者はいないと思わせる。 アンリ・シャリエールの人生をなぞるように激しい減量を続けたマックイーンの鬼気迫る演技、それと対照的に精神のバランスを崩してしまうドガを演じたダスティン・ホフマンの怪演は、両者甲乙つけ難い。 本作を見ると、どんなことであれ、人生に目的や目標を持ち続ける事は生きる糧になるのだと理解できる。しかし同時に、持ち続ける努力は並大抵ではない事も実感できるだろう。 本作が感動的なのは目的や目標を達成するからではなく、、そこに辿り着くまで“諦めない”姿を見せつけられるからに他ならない。 ○(4)<こぼれ話> 公開当時最高額を謳われたギャラは しかし、撮影は過酷を極め、ロケ先での熱射と害虫に悩まされたスティーブ・マックイーンは、ジャングルでの撮影に相当懲りたのか、本作の後オファーのあった「地獄の黙示録」のカーツ大佐役を断っている。 また「赤毛のアン」や「ストレイト・ストーリー」で知られるスタントマン時代のリチャード・ファンズワースが、脱獄人狩りのハンター役で出演している。 |
●(5)<<<どんなことであれ、人生に目的や目標を持ち続ける事は生きる糧になる>>> <<<そこに辿り着くまで“諦めない”姿>>>というけれど、何度も脱獄に挑戦し、その都度、悲惨な結果になりながら、さらに脱獄に挑戦する姿に、私は正直、ウンザリしました。 島を脱出するために、裏取引をして、大金を渡したのに、買ったボートに乗ると底が抜けてしまう。やっと脱出して教会に入り込むと、そこのシスター(?)に通報されて、また島送り。ダスティン・ホフマン演じるドガは、完全に戦意喪失したにも関わらず、スティーブ・マックイーンは、椰子の実を集めて大きな浮き輪にして、またまた、脱出を試みるところで終了。凄い執念を見せられる貴重な体験ではありますが、ただただ悲惨なだけで、夢も希望も笑いもなく、ただ悲惨なだけという映画でした。もうイイジャンというほどの映画でした。 考えてみると、私(藤森)自身、「夢も希望も笑い」も無いただ悲惨なだけの中で、しかし、何とか這い上がろうと執念を燃やして生きてきたことを考えてみると、内容こそ違うが、私の人生そのものだったのかもしれません。 さて、次の週に観た「ブリット」は、「パピヨン」の真逆でした。面白いものですね、縁とは。 |
○(6)ブリット 監督:ピーター・イエーツ 1968年製作・上映 製作:アメリカ 主演:スティーブ・マックイーン ジャクリーン・ビセット ロバート・ヴォーン ドン・ゴードン 1969年、日本での興行記録・外国ヒットランキング1位<ストーリー>サンフランシスコの敏腕刑事ブリット(スティーブ・マックイーン)は、犯罪組織壊滅の証拠を握るジョニーの護衛役を務めていた。 ある夜ブリットが恋人キャシーと会っている最中にジョニーは何者かに射殺されてしまう。機転を利かせたブリットは、ジョニーがまだ生きているという偽情報を流し、事件の裏にある真相をつかもうと試みるのだが・・・・・。 |
○(7)<解説>
スタイリッシュな映像にスピード感溢れるカーチェイス。キャラクターの感情を独自の方法で表現する刑事アクション。 監督のピーター・イエーツはイギリス出身。レーシング・ドライバーを経て映画の録音技師や「ナバロンの要塞」などの助監督を担当。「ヤング・ゼネレーション」や「ドレッサー」などを監督した異色の存在である。「ダーティーハリー」のテーマを手がけたラロ・シフリンが、本作でもジャズを用いたサウンドトラックを書き、クールな印象をさらにつけ加えた。 出演は「荒野の七人」や「タワーリング・インフェルノ」でもスティーブ・マックイーンと共演しているロバート・ヴォーン。私生活でも朋友である「パピヨン」のドン・ゴードン、さらに「映画に愛をこめて アメリカの夜」のジャクリーン・ビセットが美しき恋人を好演している。 ○(8)<こぼれ話> 刑事という役柄探求のため、サンフランシスコ市警に協力を仰いだ監督とマックイーンは、共演者のドン・ゴードンを連れてパトロール中のパトカーに同乗させてもらう。ところが検問で職務質問に遭遇。テレビドラマでも警官役を演じていたゴードンは、本物の警官に間違えられてしまった。 サンフランシスコの坂を活かした街中での本格的なカーチェイスは本作の見所。この息をもつかせぬカーチェイスは、カーアクションの見本となりその後多くの作品で模倣されたが、スピード感を出すために実際に時速200キロという速度を出して撮影。 マックイーンが運転する1968年型フォード・ムスタングは多くのファンを虜にしたが、テレビの洋画劇場でマックイーンの声を担当していた声優の内海賢二も、マックイーンに憧れてムスタングを購入したと語っている。 |
<文責:藤森弘司>
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