2010年8月31日 第96回「今月の映画」
きな子 ~見習い警察犬の物語~

監督:小林義則   主演:夏帆(かほ)   寺脇康文   山本裕典

●(1)警察犬に適さない犬を、新米訓練士が失敗を繰り返しながら、また、挫折しながら懸命に訓練して警察犬にしようとする物語は、私(藤森)の人生とダブります。人生、生きるのに苦労している私のような人たちの励ましになる映画だと思い、取り上げました。
○(2)<パンフレットより>

<「きな子」ってどんな犬?>

2002年5月15日生まれ。香川県・丸亀警察犬訓練所(亀山伸二所長)所属。今年8歳になるメスのラブラドール・リトリーバー。血統署名は、ザミー・オブ・トータスマウンテン。04年に入所した見習い訓練士の川西智紗さんとともに嘱託警察犬試験に6回挑戦しますが・・・・・。05年、地元テレビ局で取り上げられた訓練会で、障害物を越えられず、見事な顔面着地を見せたことで一躍「時の犬」に。

しかし、あきらめずに警察犬を目指すひた向きな姿に、多くの人が勇気づけられました。それからというもの、愛すべきズッコケ見習い警察犬として、香川県のみならず日本全国に人気が拡大!
現在は、警察犬試験に向けて訓練するかたわら、香川県警本部の「安全・安心まちづくり教育隊」特別隊員として振り込め詐欺被害防止キャンペーンや子ども向け安全教室・下校指導などの参加したり、警察犬普及のための訓練実演をおこなったり、またセラピー犬としても活躍しています。

○(3)<Introduction・かいせつ>

<見習い警察犬と見習い訓練士・・・実話から生まれた、心あたたまる絆の物語>

四国・香川県丸亀市。瀬戸内海に面したこの地に、日本一有名な見習い警察犬がいます。警察犬試験に6回挑戦しながら、すべて不合格。2005年の訓練会では障害物を越えることができずに顔面着地。それでも見習い訓練士の川西智紗さんとともに、何度失敗してもめげずにがんばる姿が次第に共感を呼び、今や香川県のみならず、日本中の人気者となったラブラドール・リトリーバーのきな子。『きな子~見習い警察犬の物語~』は、この実話から生まれました。

警察犬訓練士を目指す18歳の望月杏子が入所した訓練所で出会ったのは、まだ子犬の「きな子」。「きな子は体が弱く警察犬になれない」と言う所長に、杏子は思わず「私がきな子を警察犬にします!」と宣言。その日から見習いコンビの奮闘の日々がはじまります。
しかし一向に訓練に身が入らず、警察犬試験に何度も失敗を続けるきな子にも、きな子を育てられない自分自身にも、次第に失望していく杏子。そしてついに、きな子と別れ、訓練所を出ていく決心をするのですが・・・・・。

ここで描かれるのは、あきらめずに夢を目指してチャレンジする話だけではありません。警察犬になれないと言われていた犬と単純に単純に訓練士に憧れる少女が、訓練と失敗を繰り返して、別れも経て、ようやくお互いをかけがえのない存在だと知る。一頭とひとりのラブストーリーです。確かな絆を得た少女はこれをきっかけに、両親や所長、まわりの人々が注いでくれた大きな愛情にも気づき、訓練士として目覚めていくのです。

○(4)<Story・ものがたり>

どしゃぶりの雨のなか、行方不明の女の子を発見するラブラドール・リトリーバーのエルフと訓練士の望月遼一。テレビでそのニュースを観ていた8才の杏子は、母・園子に叫びました。「お父ちゃんとエルフや!うちな、大きいなったらお父ちゃんみたいになる!」

10年後。成長した杏子は、「番場警察犬訓練所」で訓練士を目指すことに。大忙しの初日がようやく終わるころ、ふと、奥の犬房に目を留める杏子。そこにはエルフと同じきなこ色の子犬がいました。体が弱く、餌もよく食べられないその子犬が心配でならない杏子は「元気になって一緒に遊ぼな」と呼びかけながら、夜通し撫で続けました。

翌朝、子犬は元気になりましたが、所長・番場晴二郎は「ここに置いておけるのは警察犬にする犬だけ。この犬は無理だ」と杏子に言いました。「私が、きな子を警察犬にします!」。思わず口走る杏子。見習い警察犬のきな子と見習い訓練士の杏子の、一頭とひとりの物語はこうしてはじまったのでした。

2年目の春・・・・・。先輩の訓練士・田代渉が訓練しているジャックに対し、平均台から落ちるわ、ブリッジも跳ばずにもぐるわ、警察犬への道はまだまだ遠いきな子。それでも懸命にがんばる杏子に、「数ヶ月後に開催される訓練発表会に出てみろ」と番場は言います。渉のノートをもとに、杏子はきな子の訓練計画を練るのですが・・・・・。

訓練会当日。ブリッジをジャンプするも、きな子は顔面から落下!杏子もつられて頭からズッコケてしまいます・・・・・。その夜、失敗をきな子のせいにする杏子を番場はしかりました。「未熟なのはおまえだ。そんな奴にきな子を任せられるか!」。かたわらにたたずむきな子を見つめ、杏子は「・・・・・2ヵ月後の試験、きな子を絶対合格させます」と約束したのでした。

ついに迎えた警察犬試験の日。厳しい訓練の甲斐もなくきな子は不合格に。しかも、突然倒れてしまいました。杏子は試験で頭がいっぱいで、きな子の体調にまで気づかなかったのです。車で病院に運ばれるきな子を、立ちつくしてひとり見送る杏子・・・・・。

数日後、杏子は訓練所を辞めることに。“きな子はみんなに愛されて生きた方がしあわせだ。どんなにがんばっても、できないものはできないのだ・・・・・”訓練所をあとにする杏子の背中に、きな子の悲しげな声はいつまでもひびき渡ったのでした。

夢の途中のきな子と杏子。一頭とひとりに、ふたたび夢を取り戻す日がやって来るのでしょうか?

○(5)<渉さんに聞いた警察犬についての話>

①警察犬の仕事は人捜し
警察犬を簡単に言うと、警察官や警察犬訓練士と一緒に、どこにいったかわからない行方不明の人や物を探す犬のこと。悪いことをした犯人を逮捕するのに協力することもあるんだよ。
なぜ犬に協力させるのかって?犬ってさ、人間よりも嗅覚が鋭いんだ。人間の2000倍から1億倍くらいの嗅覚があって、とにかく鼻がいいんだよ。だから行方不明の人の匂いが残っている洋服などの匂いを覚えさせれば、その匂いだけで、近くのにいるかどうかを嗅ぎ分けることができる。犬はね、「鼻の捜査官」って呼ばれているんだよ。
でも警察犬になれる犬の種類は、ドイツ・シェパード、ドーベルマン、エアデール・テリア、コリー、ボクサー、ラブラドール、リトリーバー、ゴールデン・リトリーバーの7種と決まっているんだ。

②警察犬の故郷は2種類?
警察犬を育てる場所は2種類あって、ひとつは警察。もうひとつは俺たちのいる番場さんの訓練所みたいな警察犬訓練所。きな子は民間の警察犬ってことだね。

③きな子タイプの警察犬には試験がある!
民間の訓練所で育てられた警察犬は、毎年行なわれる審査会に出場するのがお約束。合格したら2年間警察犬として働けるってわけ。民間の警察犬は全国に約1300頭いて、いつ警察に呼ばれてもいいように、スタンバイ!そうそう、警察犬はふたつの得意分野に分かれていて、ひとつは行方不明の人や犯人が残した足跡を追う犬。もうひとつは残していった物から、捜している人の物かどうか匂いで判断する犬。同じ警察犬でも役割が違うんだ。

④警察犬が生まれた国は?
最初に犬が捜査に協力したのはどこの国だと思う?警察犬誕生は19世紀末のドイツなんだって。日本は1912年12月、イギリスから来た警察犬を捜査に協力させたのが最初。警察犬の歴史は長いんだ。

⑤厳しい訓練メニューをご紹介!
警察犬は、生後4~5ヶ月目から、訓練開始!“人の命令に従う訓練”“ブリッジ、ジャンプ、トンネル訓練”“匂いを嗅ぎ分ける訓練”“足跡で追跡できるようになるための訓練”。これが基本。あと捜している人が悪い人の場合、その人から大切な物を奪われないように守る訓練や犯人に対抗できるように闘う訓練をやることもあるようだよ。

⑥警察の警察犬合格までの道のりは遠い
クリアすると試験は3つあって、生後6ヶ月の犬が挑戦できる、犬にとって初めての試験が第1科目。これに合格したら生後10ヶ月で第2科目に挑戦。合格したら第3科目に挑戦し、3つクリアして初めて警察犬として認められるってわけ。試験の種類のひとつ「臭気選別」は、匂いを当てるテスト。犬に布の匂いをかがせて、10メートル先の5つの布から同じ匂いを嗅ぎ当て、その布を訓練士に持ってくる。制限時間は1分!4回のうち3回クリアしないと、合格にはならない。けっこうハードルは高いんだよ。

<文責:藤森弘司>

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