2009年8月31日 第85回「今月の映画」
南極料理人

原作:西村淳(「面白南極料理人」「面白南極料理人 笑う食卓」)       監督:沖田修一

主演:堺雅人(料理担当)  生瀬勝久(雪氷学者)  きたろう(気象学者)  高良健吾(雪氷サポート)
豊原功補(医療担当)  古舘寛治(車両担当)  小浜正寛(大気学者)

●(1)今月は、アニメが多く、選択するのに苦労しました。
「剣岳(つるぎだけ) 点の記」はいまいち、「アマルフィ 女神の報酬」「Rookies 卒業」アニメの「サマーウオーズ」「ポケットモンスター(アルセウス超克の時空へ)」なども面白くありませんでした。9月に入れば、少しは面白い映画があるのではないかと思います。そういう中で、あまり期待していなかった「南極料理人」、堺雅人が出るし、時間つぶしくらいにはなるかと思い、見ました。昭和基地から、さらに極点に近い場所に住居を構え、上記の専門家たち8人だけで共同生活をします。
特別の見所はありませんが、閉鎖された建物の中で、南極という極端な場所で、8人が繰り広げるほのぼのとした笑いと、想像を超えた日常生活は、気楽に見る映画としては、なかなかのものがありました。 

●(2)宇宙飛行士を考えると、食べ物の贅沢さは凄いものがあります。宇宙ロケットで運ぶものと、大型の船で運ぶものとの違いでしょうね。本当か嘘かわかりませんが、専門の料理人がいて、豊富な食べ物があり、宇宙飛行士とは大違いです。
それでも遊ぶものといえば、8人の仲間内のマージャンであったり、卓球であったり、カラオケであったり・・・・・。外は、雪や氷の真っ白な世界。退屈ですね。氷はいくらでもあるのに、水の節約にはうるさいようです。
ラーメンが好きで、夜に間食としてラーメンを勝手に食べた人たちのお陰で、ラーメンが無くなってしまってショックを感じる二人。想像を絶する世界での、ささやかな笑いとペーソス。ほのぼのとしたものがお好きな方々にはお楽しみです。

●(3)食べ物が豊富であったということ以外、状況はかなり、「アライブ・生還者」<「今月の映画」第81回>に似ているように思えます。心理の世界では、近づくと引っかきあい、離れると寂しいといいます。8人が同じ建物の中に、1年も2年も一緒というのは、人間関係がとても難しいものがあるように思えますし、連絡もままならない距離の単身赴任というのは、周囲に遊びや気分を紛らわすものもなくて、寂しすぎます。

人間関係の最も難しいものは距離感覚で、これを東洋では「間(ま)」といい、家族の中で、この「間」が不適切なために、様々な問題が発生しています。何か問題が発生した場合は、「間」の取り方が間違っていると思って間違いありません。
中国では「気の文化」、日本は「間の文化」だと言われていますが、日常用語にも「間」が多く使われています。「間違い」「床の間」「時間」「空間」「人間」「間が抜ける」「間が延びる」「間が持てない」「間が悪い」「間に合う」「間を置く」「間を配る」「間取り」「板の間」など、多数あります。

いかに「適切な間」を取る事が重要か、日本の文化はまさに「適切な間」の取り方を教えています。そして、人間関係がおかしくなったと思ったならば、「間」の取り方を工夫することです。
そんなことも考えながら、この映画を見るのも面白いかもしれません。

○(3)インターネットより

(解説)
南極観測隊に料理人として参加した、西村淳原作のエッセー「面白南極料理人」を映画化した癒し系人間ドラマ。南極の基地内で単身赴任生活を送る8人の男性たちの喜怒哀楽を、数々のおいしそうな料理とともに見せる。料理人を演じるのは、ここのところ「ジェネラル・ルージュの凱旋」など話題作への出演が相次ぐ堺雅人。
共演の生瀬勝久や高良健吾ら新旧の実力派俳優たちとともに、絶妙のアンサンブルで展開するユーモラスな物語に魅了される。

 (あらすじ)
西村(堺雅人)は南極の昭和基地からも遠く離れた陸の孤島、南極ドームふじ基地に料理人として派遣される。妻(西田尚美)と娘を置いての単身赴任生活で、彼は8人の男性南極越冬隊員たちの胃袋を満たすという大役を任される。基地では雪氷学者(生瀬勝久)をはじめ、雪氷サポート隊員(高良健吾)らが彼の料理を心待ちにしており・・・・・。

文責:藤森弘司

映画TOPへ