2008年6月30日 第71回「今月の映画」
相棒

監督:和泉聖治    主演:水谷豊   寺脇康文   西村雅彦   西田敏行

●(1)映画「奇跡のシンフォニー」「魚河岸三代目」共に良かったです。アメリカと日本の映画ですが、共通するものがあるように思います。

さて、社会をクリーンにするには、透明性を高めることが一番効果が上がると思います。
政治的な不正にしても、種々の偽装の問題にしても、冤罪事件にしても、社会保険庁の年金問題にしても、透明性が高まれば、多くの問題はかなり防げるか、再発の防止になるのではないでしょうか。
しかし、当事者が積極的に透明性を高めようとはしないでしょう。
そこでマスコミの存在が大きくなります。マスコミ、特に日本では4大新聞・・・朝日、毎日、読売、日経の大新聞とNHKが本気で取材をしたならば、かなりの透明性が確保できるように思えます。
田中角栄元総理大臣の「金脈問題」が発覚したときも、大新聞社の記者は、この問題を常識的に知っていたようです。偽装問題にしても、政治的な不正にしても、談合なども、彼等の多くは知っているようです。それが週刊誌や社会部の記者などが騒いで、問題化し始めるとドッと書き始めるようです。
わかっていても、彼ら「主として政治部」は、もたれあい、癒着によって、見て見ぬふりをし、後出しじゃんけんのように、後から出して、その後は先頭を走っているかのごとく記事にする傾向にあるようです。

●(2)それでは何故、このような癒着があるのでしょうか?
このホームページでもどこかで書いたように思うのですが、再度、書きますが、その前に、透明性を高めることがいかに大事かという例をご紹介します。下記の記事の中にある「元警察大学校長、元内閣情報調査室長・大森義夫氏」のような人物はなかなか出ないものですね。日刊ゲンダイ、20年6月12日、<荏原製作所 大揺れ>

元内閣情報調査室長決算に意義>

株主総会を前に大手プラントの荏原製作所が大揺れだ。
社外監査役のひとりである大森義夫氏(69)が「経理帳簿に虚偽の疑いがある」などとし、決算の承認に異議を唱えたのである。大森氏といえば警察庁の大物キャリアで、警察大学校長や内閣情報調査室長を務めた。
「経理帳簿の虚偽」とは聞き捨てならない話だ。
荏原は昨春、元代表取締役副社長らによる3・2億円もの架空支出が発覚した。弁護士団に調査を依頼して、取締役11人の責任が問われた。昨年12月に調査報告書を公表。「他に不正はない」として、幕引きをした。そうしたら、大森氏が「おかしい」と”噛み付いた”のである。大森氏が言う。
「私は何も唐突に異議を唱えたわけではない。今年の1月から監査役として9通の質問書を提出して、会社側に回答を求めていたのです。しかし、納得がいく答えが得られなかった。そこで、決算不承認の意見を出したのです」
荏原は最近、秘密義務の規制を強化した。そのせいか、大森氏の口は重い。<まだ尾を引く不正支出の後始末>
しかし、荏原の周辺では、他の不正支出が語られている。精密機械から廃棄物リサイクルまで扱う企業だけに、工事によっては迷惑料のような要求もある。現場レベルでは、イロイロあるのだ。それなのに「他の不正はない」と断じたことに無理があったように見える。大森氏はこうも言った。
「私は40年間、情報一筋でやってきた。情報の開示こそコンプライアンスの基礎だと思う。これは政治や行政の世界だけでなく、企業のガバナンスでも一緒です。私が求めたのは情報開示で、それが得られなかったから納得しなかったのです。私は今さらポストや金に執着はない。今後は監査役が決算を承認しないという事例が出てくるでしょう。私のような異議申し立てが日本の株式市場の健全化に役立てばいいと思います」
荏原製作所の広報室は「大森監査役とは話し合いを重ねてきたが平行線だった」と言う。元警察のキャリアの反乱には当局も関心を示している。
●(3)日刊ゲンダイ、18年1月7日<新聞&TV「巨大メディアのもたれ合い構図を斬る」連載③>

田中角栄と新聞 放送免許で利害一致>

《波とり記者》……。
郵政記者クラブに属しているが、原稿などほとんど書かない。彼らの仕事は、放送局の免許を自ら所属する新聞社が取るために、ひたすらアンテナとして情報をかき集めるのだ。昭和30年代の頃である。
「テレビが儲かる――。昭和30年代も後半に差しかかる頃から、新聞社は確実にそう踏んだ。各社が波とり記者を配置してシ烈な情報戦を繰り広げた」(旧郵政担当のベテラン新聞記者)
テレビの受信契約者が、年間に20万世帯ペースで増えていったこの頃。先行して開局した放送局の広告収入など活況を見て、新聞は地方紙も含め放送局の免許申請に一斉に踏み出した。
「波とり記者は、新聞各社の威信をかけて電波管理局など郵政官僚のところに盛んに夜回りをかけ情報を取ろうとした」(前出のベテラン記者)という。
また、この時代のキーパーソンが岸内閣で郵政大臣に就任した田中角栄だった。角栄は全国の新聞社から大量の免許申請を一気に片付けたが、その思惑はというと。
「放送局の免許をテコに、許認可によって一気に新聞を取り込もうという狙いがあった」(大手紙政治部OB)
角栄は、大臣の裁量で申請者を一本化し、放送局の代表者や持ち株比率まで調整した。こうなると新聞各社は、波とり記者だけでなく、ベテラン政治部記者までもが角栄詣でを繰り広げ、免許を競った。
「申請は、放送事業に関心を寄せる民間資本からも随分出てきていた。しかし、新聞を自らの傘下に置きたい角さんは、代表や持ち株比率などで、当然、新聞を第一に考え調整した」(前出のOB)
免許という恩恵を受けた新聞側。同時に、恩を売った角栄。双方の利害が一致した瞬間でもあった。その後、角栄が権力のトップに上り詰めたのも、田中派が(以後竹下派・小渕派と続く)永田町を牛耳ったのも、放送局の免許を契機に、蜜月関係となった新聞社が角栄をバックアップしていったからに他ならない。
テレビの創成期には、政治権力と密接に関わっていた新聞が、その開局の主導権を握ったのだ。
「波とり記者が役所(旧郵政省)のさまざまな情報を社に上げる。番記者も独自情報を上げる。そして、最後は各社のトップが集まって、まるで互助会のように角栄やさらにその上の政治家たちを囲んで(電)波の配分などが談合・調整された」(前出のベテラン記者)
新聞に支配されるテレビ。創成期の経緯こそがその呪縛の根底にある。(メディア問題取材班=敬称略・つづく)

○(4)<映画・相棒のパンフレットより>

 <特命係とは>
「特命係」は警視庁の窓際部署。”人材の墓場”といわれる杉下右京の元にリストラ要員を送り込み、辞職させるためのものだった―が、熱血漢の亀山薫が居ついてからは事情が違う。豊富な知識と推理力を持つ右京との絶妙なコンビネーションが形成され、捜査一課も手を焼く難事件や、事故として処理されてあわや迷宮入りという事件の真相を解明しているのだ。
00年にプレシーズン(土曜ワイド劇場)で始まった2人の歴史は、2時間ドラマとして3本が作られ、02年に1クール(3ヶ月)の連続ドラマとなり、さらに翌年からは毎年2クール(半年)ずつ、08年までにシーズン6を重ね、100本を超えた。徐々に進化し、熟成していく2人の関係性の変化もまた、「相棒」の見どころの1つだ。

<社会性のあるストーリー>

単に事件もの、刑事ものというだけではなく、そのストーリーが現代社会の問題点と絶妙にシンクロしている「相棒」。初期の代表的な出来事に、シーズン1第4話「下着泥棒と生きていた死体」がある。劇中、警察に保護された泥酔者が放置され、死亡した事件を署ぐるみで隠蔽した事件が描かれたが、放送直後にまったくおなじ経緯の事件が発覚。署長が虚偽の報告書の作成を部下に指示したことまで同様で、視聴者を驚かせた。
さらにシーズン4第6話「殺人ヒーター」では、自然発火するヒーターの欠陥を企業が隠蔽、告発した女性が死亡するという話だったが、こちらも放送直後に同じようにヒーターの欠陥による死亡事故が報道され、大きな社会問題となった。また、劇中の企業の欠陥隠蔽体質は、現実の賞味期限偽装問題などに通じるものだろう。
また、シーズン6第1話「複眼の法廷」では、09年からスタートする予定の裁判員制度を取り上げ、その利点や問題点を提示、考えさせられるものだった。
社会を鋭く見つめる製作者の視点が、フィクションを超えた問題提起を成しているTVシリーズ。それは確実に劇場版にも受け継がれている。

○(5)<パンフレットより>

 <警視庁特命係、最大の事件、勃発!!
謎の記号から東京ビッグシティマラソン2008へ>
 <巧妙に仕組まれた爆破計画!?> 謎の記号が残された連続殺人事件が発生。その記号が示したのは、東京ビッグシティマラソンを狙う、不気味な爆破計画だった。果たして誰が、何のために? 事件の真の目的とは? 混迷を極める捜査の展開を追う。『相棒-劇場版-』ストーリー事件の発端は、東京郊外の巨大なテレビ塔で元人気ニュースキャスターの仲島考臣の死体が発見されたこと。現場には謎の記号「f6」が残されていた―。
警視庁特命係の杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)は、内村刑事部長(片桐竜次)や中園参事官(小野了)らから、小包爆弾のターゲットとなった衆議院議員の片山雛子(木村佳乃)の護衛を命じられた。雛子は爆発物で襲われるも、無事に海外視察に出立。襲撃現場には「d4」の記号があった。陣川警部補(原田龍二)がもたらした会員制webサイトSNSの情報から、仲島と雛子の事件が予告殺人だったことがわかった。「処刑リスト」と名づけられた掲示板に被害者の名があったのだ。さらに、2週間前に交通事故死していた来生判事の名前もリストに連ねられ、その事故現場から「e4」の記号を発見した右京は、それらの記号がチェスの手を示す棋譜の記号で、一連の事件は連続殺人だと薫に説明する。
チェスの定石における次の一手「g5」が残されていた現場では、有名美容整形医・安永が殺されていた。その受診申請書から、被害者ら全員に面会を申し入れていた守村やよい(本仮屋ユイカ)が捜査線上に浮かぶ。捜査一課の伊丹憲一(川原和久)と三浦信輔(大谷亮介)、芹沢慶二(山中崇史)らはやよいを取り調べるが、武藤かおり弁護士(松下由樹)に阻止されてしまった。

手詰まりとなった捜査一課をよそに、右京は「処刑リスト」サイトを管理者から乗っ取ったという正体不明の人物のアドレス「staleate@hot-free.net」にあてて、次の一手をメールしていた。意外にも返事があり、そのまま真剣勝負の対局へ。薫や角田課長(山西惇)らが見守る中、ついに右京が「チェックメイト」と告げる。その投了図は、東京ビッグシティマラソンのコース図と同じ形だった。マラソンには、薫の妻・美和子(鈴木砂羽)や右京の元妻・宮部たまき(高樹沙耶)ら市民ランナー3万人と、15万人の観客が集まる。その発起人の雛子がターゲットだったために中止の検討もされたが、発起人に名を連ねる御厨元総理(平幹二朗)の反対と瀬戸内元法務大臣(津川雅彦)のとりなしで、雛子大会への出席を辞退することで開催が決定した。

大河内監察官(神保悟志)の提言によって小野田官房室長(岸部一徳)が手配した結果、右京と薫は武藤立会いのもと、やよいと彼女の父・木佐原芳信(西田敏行)から話を聞くことができた。2人は、5年前に南米・エルドビア共和国で起きた人質事件で殺された木佐原渡(細山田隆人)の父と妹だったのだ。退去勧告を無視して難民救助活動に従事し、ゲリラに処刑された渡とその家族は、自業自得だとバッシングを受けていた。やよいは、渡の親友だった塩谷和範(柏原崇)が、復讐のために事件を起こしているという。仲島や安永、来生や片山らは政府の判断を支持していたのだ。
さらに、新たに陣川が持ち込んだ情報から、SNS内の「メッセージ」にたどり着いた右京は、そこで謎の「Sファイル」の存在と、チェスの対戦相手だった塩谷の真の目的を知る。それは、渡を見殺しにしたこの国すべての人間への復讐―東京ビッグシティマラソンでの無差別テロだった。
残された棋譜を解析した右京は、彼が何かを仕掛けたらしい場所を探し出し、薫を差し向けた。爆弾のダミーに薫が翻弄されている頃、指令本部に詰める米沢鑑識課員(六角精児)は塩谷がマラソンに参加していることを突き止める。伊丹や芹沢はランナーたちを追うが、その膨大な人数にとても見つけきれなかった。追い詰められる本部の中、右京は棋譜のヒントから、塩谷の狙いが臨海大橋にあることを知り、急ぎ赴いた。

臨海大橋のたもとで不審なボートを発見して川に飛び込んで追った薫は、伊丹のサポートもあって無事にボートの爆破を阻止した。本部に安堵感が広がる中、右京はまだ腑に落ちない顔。橋上は一般の見学が禁止されている上、ランナーたちはまだ到着していない。爆発を仕掛ける場所とタイミングが合わないのだ。塩谷の計画にまだ裏があると推測した右京は、やよいからの電話で判明した塩谷と渡の思い出の場所・ヨツバ電機の倉庫に向かい、薫はやよいを探してマラソンゴール地点へ赴いた。
たどりついた廃倉庫で右京が見たものは、毒物を飲んだ塩谷と彼に取りすがって泣くやよい、そして爆発寸前の時限爆弾だった。駆けつけた薫の目の前で爆弾が炸裂!
が、右京とやよいは間一髪で無事だった。塩谷死亡で事件は解決したかに思えたが、右京はさらに裏があるという。特命係はマラソンの表彰式の会場に急行、真犯人・木佐原を確保するのだった。

木佐原は病で余命半年。外務省に封印された「Sファイル」を公表させ、渡の事件の真実を明らかにするために事件を起こしたという。小野田ら上層部によって全てが揉み消されるかと思いきや、鹿手袋(西村雅彦)の協力を得た雛子の会見で、真実が白日の下にさらされた。父と兄の真意を知ったやよいは、晴れ晴れとした顔で旅立っていった――。

!POINT
東京ビッグシティマラソン

東京ビッグシティマラソンは、国立競技場(新宿区)をスタート地点にし、東京都心部を走る市民マラソン。浅草雷門前や東京タワー横などを走り、有明コロシアム(江東区)にゴールするという東京名所巡りといった風情が話題となっている。ランナーとして参加するには抽選が必要で、計測用チップによって、パソコンや携帯電話からランナーの現在地が確認できる仕組み。大会の発起人は御厨紀實彦元総理、瀬戸内米蔵元法務大臣、片山雛子衆議院議員ら。

<文責:藤森弘司>

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