2006年1月31日 第42回「今月の映画」
ブラックジャック 二人の黒い医者  <緊急紹介「ライブドア」について>

原作:手塚治  <声の出演>ブラック・ジャック:大塚明夫   ピノコ:水谷優子   ラルゴ:石井真

○(プログラムより)生き物は死ぬ時には自然に死ぬもんだ。それを人間だけが無理に生きさせようとする。どちらが正しいかね。ブラック・ジャック。○<ブラック・ジャック(奇跡の天才外科医)> 天才的な外科手術の腕を持つ無免許医。高額な報酬を要求することから悪徳医師と呼ぶ者もいるが、周囲の声や権威には屈せず、自分の信念のもと手術に挑む。

○<ドクター・キリコ(死神の化身)>もうひとりの黒い医者。ブラック・ジャックの最強のライバル。「死神の化身」とも呼ばれ、苦しまずに死なせることで患者を全ての苦痛から救おうとする。
ブラック・ジャック、お前は金次第で命を助ける。おれは金次第で安らかに死なせる。似たようなものさ。

○・・・天地神明にさからうことなかれ。
おごるべからず、生き死にはものの常なり。
医の道はよそにありと知るべし。

○お前さんの覚えたことはろくでもないことだ・・・・。
本当の刀は、ものを切る道具ではない。
・・・・心を切るためにある・・・・。
・・・・この一本で世界が救えるかね・・・。

●ライブドアのビッグニュースが流れました。
昨年の3月15日第32回「今月の言葉(納得水準について)」

3月31日第32回「今月の映画(ロング・エンゲージメント)」
4月15日第33回「今月の言葉(科学は今どうなっているの?)」
で、ライブドアのフジテレビ買収問題に触れましたので、ご参照ください。●まず、昨年3月31日の「今月の映画(ロング・エンゲージメント)」の中の一番象徴的な部分をそのまま再録します。

今回のライブドアの騒動(第32回「今月の言葉」ご参照)も、アメリカでは20年前にいろいろ問題になり、改善されたのに、日本は二周遅れの騒動をやっているそうです。敵対的買収もアメリカではほとんど行なわれてはおらず、また、失敗する例が多いそうですし、日本でもいくつか中止になっています。それをお手本とするのではなく、まるで、最新の手法であり、若者たちを中心に拍手喝采的になるのはいかがなものでしょうか。私(藤森)自身、幾人かの若い世代の人に質問しましたが、全員、堀江氏支持でした。
 SBIの北尾吉孝最高経営責任者が、「他人の家に土足で上がって、『仲良くしようや』と言っているように映るが、敵対的買収はあまり好ましいものではない。米国でもほとんどダメだった」と批判しましたが、これが今回の一番適切なコメントのように、私には思えます。
今は「下克上」の時代で、不満が鬱積している多くの若者たちから支持されるのも当然なのかもしれません。特に日本という国は、ムードに強く左右され、状況を詳しく分析する、良し悪しを考えながらバランスよく判断するということが苦手な国民性のようです。(日刊ゲンダイ、2005年3月25日より)・・・・・実はI Tベンチャーブームが起きた数年前の韓国でライブドアとそっくりの企業が一世を風靡しながら、あっという間に沈没した例がある。
なかでもライブドアとイメージが重なるのが、30歳のキム・ジンホ社長が率いた「ゴールドバンク」だ。韓国のネット企業のなかでも、もっとも劇的な展開を見せた会社である。広告を主力にして急成長し、98年10月にコスダクに上場。1年も経たずに株価は60倍以上にハネ上がり、時価総額が400百億円(円換算)を超えた。堀江貴文社長(32)とキム・ジンホ社長は共通点も多い。2人ともエンジニアではなく文系出身者。マスコミでインターネットの未来や新しい企業のあり方について発言し、次々にM&Aを実行。アメリカ系ファンドと深い関わりがあった。韓国国民からは、財閥の悪習を正し、韓国経済の救世主になると期待されたものだった。
「ゴールドバンクは金融、旅行など20以上の系列会社を持つまでに急成長しました。その手法は、企業買収で規模を大きくし、また資金を集めるというもの。しかし、結局、外資に敵対的M&Aを仕掛けられ、キム・ジンホ社長は代表取締役を解任された。そのうえ、横領などに問われ刑務所に入れられています」(韓流戦略研究所・金知龍氏)
ゴールドバンクを追われたキム・ジンホ社長は、その後、日本で「M-starドットコム」というネット企業を設立。周囲から「堀江はあなたをベンチマーキングしたのではないか」とよく質問されるという。(本紙特派員・太刀川正樹=ソウル)株式分割も、堀江氏は短期間に1万分割し、現在は、1株がわずか300円代という前代未聞の処置をしました。これは違法ではないが、かなり多くの専門家の批判を受けています。良いか悪いかという問題と、違法であるか否かは別問題です。堀江氏などの多くの方は、「違法であるか否か」と、「法の精神」という二面性を混同しているか、意識的に自分に都合の良い解釈をしています。
「法律」というのは、魚を取る網のようなもので、網の目から水はこぼれます。どんなに法律を細かく詳しくしても、世の中のすべてを網羅することは不可能です。その網の目を盗んでも、違法ではないという論理は、ほとんどアウトローの世界ではないでしょうか。●今(18年1月28日)、読み返してみると、今回の逮捕劇をピッタリ予言されているのには驚きです。とすると、彼は学校秀才であって、本来の頭の良さ(智恵)は少ないのかもしれません。
上記の内容を再読してみると、韓国のキム・ジンホ氏を参考にしたのかもしれないと思いたくなります。仮にそうだとしたら、彼が逮捕されたのを知っているわけですから、その部分にも当然注意を払ってもいいわけです。しかし、彼は同じ轍を踏んでしまいました。
何故、堀江氏は逮捕されたのでしょうか?
私は「一罰百戒」的な部分がかなりあるのではないかと推測しています。今は進行中(1月28日現在)ですので、色々、変化があるかもしれませんが、少し踏み込んで述べて見たいと思います。

●いろいろ情報を集めて見てわかったことですが、彼のような株の操作は、かなりやられているようです。
堀江氏は自身で、「法の網の目をくぐるやり方だ、だから違法ではない」と吹聴していました。ですから良し悪しはともかく、たとえ汚いやり方でも、それは仕方がないことかもしれません。
しかし、(あくまでも報道されていることで、決定したことではありませんが)「粉飾決算」など、明らかに違法なことをやっていたことは、もう紛れもない事実と言ってもよいのではないでしょうか。
法の網の目をすり抜けるようなことはダーティではあっても、神経が太ければ大手を振って歩く自由はもちろんあります。
しかし、彼は(報道されている事が事実だとすると)違法なことをしながら、騒ぎすぎたのではないでしょうか。
敵対的な買収をやって大騒ぎをしたり、衆議院選挙に立候補したり、球団買収に手を上げたり、会社は株主のためにあるといいながら、大衆の株主から搾取するような卑劣な手段を使ったり、テレビを始めとするマスコミではしゃいでは英雄扱いされ、IT時代の寵児とされて有頂天になっている堀江氏を、「一罰百戒」的に取り締まるべきだと、検察庁が考えても不思議ではないのではないでしょうか。
そうでないと万引きをやったり、車を違法改造したり、交通標識を無視してスピードを出している事などをテレビなどでチャラチャラ喋れば、警察は黙ってはいられないでしょう。それと同じで、法を犯していながらあまりにもチャラチャラしすぎたのではないでしょうか。
もし彼を頭のいい人だというならば、明らかに法を犯しているのに、警察や検察庁を挑発するかのような振舞いをすることを、なんと理解したらよいのでしょうか。しかも、韓国のキム・ジンホ氏の典型的な例があるのにです。

●彼は、多くの一般大衆を味方につけて英雄視されたり、ITの寵児ともてはやされました。衆議院選挙のときもそうです。落下傘候補でありながら、確か80,000人くらいの人が、彼に投票しました。そういう彼の味方、世間をあまり知らないであろう人たち・・・・・・・ここまで書いて、昨年の郵政選挙を思い出しました。

竹中氏とは“刎頚の友”な、それも未だ有限会社組織の広告代理業者が昨年末に「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略」と銘打って作成した資料に拠れば、「B層」とは知能指数が低く、故に刷り込み作業を繰り返せば、いとも容易に「構造改革」へ付和雷同し得る人々を意味します(日刊ゲンダイ、17年12月29日、田中康夫「奇怪にっぽん」より)。

小泉自民党は、明らかにこの「B層」を狙った選挙戦術を取ったようです。その結果が大勝利です。堀江氏もこの「B層」を味方につけてビジネスの世界で大躍進をしたと言えるのではないでしょうか。
ところが味方である、この「B層」であると思われる若者や主婦などを中心とした大衆を欺いて、つまり味方である彼らに多くの出費をさせるために「粉飾」をして詐取していたと言えるのではないでしょうか。

●私(藤森)は、この冷たさが気になります。そういえばライブドアの社員は、鉛筆1本でも稟議書を書かされるとか、パソコンは自前だとか・・・・真偽のほどは明確ではありませんが、成功したものはオールオーケーという陰と陽があまりにも極端すぎる、ある意味、情け容赦もない面が感じられるのですが、一般大衆には魅力的に映るのでしょうか?
ライブドアの会社の実体とかいろいろな面が、専門家は陽炎のように見えていたようですが、私には心理的な部分がかなり気になっていました(個人の深層心理的な部分はここに載せることは相応しくないので、セミナーなどで解説したいと思います)。

●さて、小泉首相や武部幹事長、竹中大臣たちは、衆議院選挙で堀江氏を応援したことに批判が多いことに、当時はそんなことはわからなかったと言っています。
また、経団連の奥田会長は、昨年12月に経団連入会を了承したことに対する批判に「ライブドアの入会はミスった」と会見で反省したようです。
しかし、これら日本の重鎮たちは、本当に当時、ライブドアや堀江氏の実態がわからなかった、だから仕方ないと言えるのでしょうか?
現在報道されている色々な面での違法なことは、マスコミを通じて皆さんもご存知のことと思いますので、ここでは、昨年のフジテレビ買収問題の直後に報道された際どい問題などを中心に提起したいと思います。そしてそれが今回、緊急紹介したい理由です。

①(夕刊フジ、17年3月3日か29日付け)
・・・・ライブドアとインターネット専業銀行を共同設立することで最終合意した山口県の第2地銀「西京銀行」。1ヶ月半前には、ライブドアが業績開示資料の中でネット銀行の乗っ取りを宣言、西京銀との間に気まずい空気が流れたが、なんとかゴールインしたようだ。オメデタの西京銀を直撃すると、これがなんだかミョーな雰囲気で・・・・。
ライブドアは1月、西京銀と共同でネット銀「西京ライブド銀行」(仮称)を設立すると発表した。年内にも銀行免許を取得して立ち上げる予定で、出資比率は西京銀が51%で、ライブドア側が49%とした。
ところが、ライブドアが2月9日に発表した業績開示資料には、ネット銀について、こう記載されていた。
<出資比率・・・株式会社ライブドアフィナンシャルホールディングス・・・49%
株式会社西京銀行・・・51%
ただし3年以内に当社が67%超となるような拘束新株発行契約締結>
つまり、ライブドアは3年以内に西京ライブドア銀を単独支配すると開示したのだ。
そんな契約を結んだ覚えのない西京銀は当然ながら抗議。ライブドアは2月14日、「ただし3年以内に当社が67%超となるような拘束新株発行契約締結」のくだりを削除する訂正を出した。
ライブドアはありもしない契約を記載した理由について「ミス」としているが、出資比率は新銀行の根幹にかかわる重大な経営事項だ。当然、ライブドアの信用は、大きな疑義を抱かれることになる。
西京銀にこの虚偽記載問題について見解を聞いたところ、「ライブドアが67%超になるような契約はしていない。向こうにはそうした(乗っ取りの)意向があるのだろうが、こちらにとっては承知できることではない」(経営戦略室)と不信感をあらわにした。・・・・・
その意図について商法に詳しい専門家は「発行済み株式の67%超というのは重要な意味をもっている。商法の規定では、議決権の3分の2超をおさえる株主は、株主総会の特別決議を単独で可決できる。特別決議が必要な事項には定款変更、減資、合併、株式交換、会社分割など重要事項がすべて含まれる。ライブドアは西京銀を乗っ取り、意のままに扱うことを狙っていたということだ」と指摘する。
西京銀行は非上場ながら、「日本でいちばん面白い銀行」(大橋頭取)を目指すユニークな銀行だ。
・・・・・・
「ライブドアはイーバンク銀行を乗っ取ろうとしたが、経営陣と対立し失敗に終わった。ライブドア単独では信用がないため、ネット銀行の免許は下りない。そこで西京銀を前面に立て銀行免許を取得した後に、新株を引き受けて乗っ取ろうと計画したのだろうが、その狙いがバレてしまっては、信頼関係なんかあったものではない」と金融関係者はあきれる。・・・・・
ライブドアにも問い合わせたが、質問先をたらい回しにされ、残念ながら2日早朝の段階で回答はきていない。

②(夕刊フジ、17年5月28日)<ホリエモンまた勇み足><西京銀とネット銀、今度は勝手に資本増強策>
ライブドアとインターネット専業銀行を共同設立する山口県の第2地銀「西京銀行」の大橋光博頭取が、ホリエモンにまたまた不快感を示した。ライブドアの堀江貴文社長がネット銀行について100億~200億円の資本増強策を表明。これに対して、相方の大橋頭取が「まったくの事実無根で失言」と非難したのだ。この2人のトップの息は、どうみても合っていないのだが・・・。
今年1月に設立が発表された「西京ライブドア銀行」(仮称)は、出だしから互いの信頼関係にミソをつけた。
出資比率について、西京側が51%、ライブドア側が49%で合意していたにもかかわらず、ライブドアが2月に発表した業績開示資料で「3年以内に当社(ライブドア)が67%超となるような拘束新株発行契約締結」と、ありもしない契約をぶち上げた。
当然、西京銀は抗議、ライブドア側はミスとしてこれを訂正した。しかし、ありもしない契約を公表すること自体、考えられないこと。金融界には、「ライブドアはネット銀行を乗っ取るつもりとしか考えられない」との見方が広がった。
こうした経緯があったのちに、また飛び出してきたホリエモンの資本増強表明。大橋頭取は「(堀江氏の)意欲が空回りしたのではないか」とホリエモンの“暴走”をかばい、「基本的な信頼関係が崩れたわけではなく、従来の(ネット銀設立)計画に変更はない」と表面上は“大人の対応”を見せた。
出資比率や増強策は経営上の重大事項。軽々しいライブドア側の言動に西京銀は耐えている感すらある。
 「ホリエモンを西京銀側に紹介した人物の背後には、大手リース会社の存在があるとされる。西京銀とそのリース会社は事業提携している。本来なら、計画がポシャってもおかしくないが、リース会社との関係もあって西京銀は耐えているのだろう」(関係者)
金融庁からネット銀設立が認められ、実際に立ち上がるまで、まだまだ曲折がありそうだ。

③(読売新聞、17年6月23日)<ソフト会社がライブドアを提訴>
ソフトウエア開発のトランスウエアは22日、ライブドアとノルウエーのソフトウエア開発会社オペラソフトウエアASAの2社を、インターネット閲覧ソフト「オペラ」の独占販売契約を結んでトランス社に損害を与えたとして、約4100万円の損害賠償の支払いなどを求めて東京地裁に提訴した。
ライブドアは「訴状を確認していないのでコメントできない」としている。

④(夕刊フジ、17年4月12日)「金融コンフィデンシャル」須田慎一郎
<奥田トヨタと日枝フジの仲><ニッポン放送株の売却、ライブドアには“慈雨”>
「ここに来て、日本経団連の奥田会長とフジテレビの日枝久会長とのギクシャクした関係が一気に表面化しつつあるのです。はっきり言って、この両者はまさに一触即発の状態にあると言っていいでしょう」
日本経団連幹部がこう指摘する。
それでは、両者の関係が悪化したそもそもの原因は何なのだろうか。
「そもそものきっかけは、奥田会長の出身母体であるトヨタ自動車が、それまで保有していたニッポン放送株の売却に走ったことにあるのです」(前出の経団連幹部)
いささか旧聞に属する話で恐縮だが、去る3月11日、トヨタ自動車はその保有するニッポン放送株9万6000株(発行済み株式の0.29%)をすべて売却した。
東証の朝の時間外取引を利用する形をとり、1株あたり6000円で売却したもようだ。
「そもそもニッポン放送株に関して言えば、改めて指摘するまでもなくフジテレビがTOBを実施していた最中でした。しかしトヨタはこのTOBには応じないという意向を表明し、いくつかのニッポン放送の株主となっている企業が、このトヨタの動きに追随する構えを見せていたのです」(同)
言うまでもなくこの時期は、フジテレビとライブドアの間でニッポン放送株を巡る大争奪戦が繰り広げられていた。まさにその真っ最中だ。
フジテレビ幹部が言う。
「われわれとしては、トヨタはTOBには応じないまでも、ニッポン放送株に関しては継続して保有してくれるものとばかり思っていました。ところが、“時間外取引”ですべての保有株を一気に売却してしまった。当然、このニッポン放送株はすぐさまライブドアが買いに入ったようです。トヨタとしてはライブドアが買いに入ることを十分に認識した上で売却したのでしょうから、われわれにとってはまさに敵対行為となるわけです」
言うまでもなくトヨタのこの行為は違法でも何でもない。むしろ保有するニッポン放送株の価格下落リスクを回避する上では、当然の行為だったといえる。
ライブドア幹部が言う。
「とはいえ、われわれにとってはあのトヨタのニッポン放送株の売却はまさに干天の慈雨とでもいうべきものだった」
それはなぜか。
「実は、あの時期、つまり3月11日当時、市場にニッポン放送株の売り物はほとんど出てこなくなっていて、その出来高は急速に細っていたのです。前日の3月10日の出来高は、ウチがニッポン放送株を大量取得する前に付けた2月7日以来の低水準となっていたのです」(ライブドア幹部)
この3月10日前後にライブドアが取得していたニッポン放送株の保有率は45%弱。
「このままの展開が続いたならば、3月末までに過半数のニッポン放送株を押さえることは難しかったかもしれない」(前述同)
だからこそフジテレビは、トヨタを苦々しく思っているのだ。

日刊ゲンダイ、18年1月26日)によれば、「西京銀行は、頭取がライブドアと提携解消を示唆しました」とあります。

●(同じ日刊ゲンダイ、18年1月26日)<ホリエモン好き><経団連・奥田会長>
「証取法違反っていっても曖昧やろ?何が悪いのか、まだよくわからんな」・・・堀江逮捕の一報を聞いた日本経団連の奥田会長は、周囲にそう漏らしたという。
昨年12月に経団連の会員になったばかりのライブドア。そのわずか1ヶ月後にトップが逮捕。顔にドロを塗られ、「ライブドアの入会はミスった」と会見で反省した奥田会長は、それでも怒るそぶりはないというが、もちろん理由がある。
「もともと奥田会長は、堀江のようなハネ返りの若手経営者が好きなんです。特に堀江はお気に入りで、入会が決まるまで2回ほどサシで会い、『もっと静かにやれよ』『表に出すぎや』などと親身になってアドバイスしたようです。周囲にも『(堀江が)相談したいちゅうから、会ってるんや』とまんざらでもない様子で話していました」(財界関係者)
今さら手のひら返して批判できない事情もあるようだ。
「そもそも入会には会員企業の推薦が必要で、ライブドアもオーナー系企業を中心に十数社に頼んだようですが、ことごとく断られています。最後の最後でライブドアの主幹事証券である日興コーディアルに落ち着いた。そんな紆余曲折があっての入会だから、声高に批判したら天にツバすることになるわけです」(経団連事情痛)
 問題企業に“お墨付き”を与えてしまった奥田経団連の責任は重大だ。

●時間外取引は違法性はあっても、なかなか違法と決め付けられないところがあるようですが、少なくとも専門家の間では多くの批判があります。その時間外取引を、天下のトヨタが、敵対的買収で大問題になっている一報の相手に売却することはいかがなものでしょうか?
また、ハネ返りの若手経営者が好きなのは大変結構なことだと思いますが、①問題の多い時間外取引をしたり、②アメリカでも敵対的買収は失敗するというのに、ましてや日本の文化にまったくなじまない強烈な敵対的買収をやったり、③プロ中のプロであるソフトバンク・インベストメント(SBI)の北尾吉孝CEOが、100分割など、証券市場をオモチャにしていると批判したり、④専門家ならば常識的に知っているダーティなやり方などを、日本の重鎮が知らないわけがないと思いますし、万一、知らなかったとするならば、完全にイエスマンに囲まれて、正常な情報が入っていないと言わざるを得ません。
そうでなくても、「稼ぐが勝ち」とか「心だってカネで買える」と公言している人間を安易に経団連に入会させたり、衆議院選挙で自民党本部で立候補の表明をさせたり、現職の大臣と幹事長が彼の応援演説で最大限の賛辞を送ったりすれば、一般大衆が、堀江氏を立派な人だと認識するのは当然であり、結果的に多くの一般株主が損をする事を助長したことになるのではないでしょうか。

●また、上記の西京銀行が事業提携しているというリース会社はニュアンスから察するに、政府の各種の委員をしている、そして球団を保有している会社のようですし、また、奥田会長も同様に政府の委員を務めていて、リース会社の社長とは懇意の可能性があります。
もしそうだとしたら、この二人と総理や大臣や幹事長たち、日本のまさにトップ・グループが、堀江氏の活動を公認していたと言えるのではないでしょうか。
そう解釈すれば、報道されているような違法行為を犯しながら、それは許されていることだとばかりにハシャギまくる彼の気持ちが理解できるのではないでしょうか。金融庁も東京証券市場もみな、暗黙のお墨付きを与えていたようです。

●(週刊ポスト、17年8月19・26日<ニッポンの国富を飲み込む「ファンドの魔術師たち」>)<伊藤博敏(ジャーナリスト)>

・・・・・
実体のないM&Aで、見せかけの売上高と利益を急増させている上場企業は少なくない。その“詐術”で株価を10倍にした30代の社長が、こううそぶいたことがある。
「実体は、これから作るんです。株価と時価総額が低ければ、買収されるリスクがあるし、ストックオプションを持つ役員や社員のヤル気も出ない。おかげで私の資産も1年で20億円増えました。」
こうした「ゲーム世代」にM&Aのための資金を提供するのがファンドである。ケイマン島に代表されるタックスへイブン(租税回避地)などに置かれた海外資金。といいつつ、内実は日本の機関投資家や資産家のカネだ。
・・・・・
M&A、不動産売買、企業再生、資産運用などのあらゆる現場でカネの流れは直接金融に移行。主体はファンドが担うようになった。規制なきファンドの世界では、運用ノウハウを持ち、法的な知識を備え、要領よく立ち回ることのできる人間が勝者となる。
しかしそれは、当面であって永劫であってはなるまい。勤勉や努力が評価されない社会が衰退の道を辿るのは歴史の教えるところだ。
*直接金融を国民が受け入れるようになったわけだが、弊害も出ている。
北尾吉孝「資本市場をおもちゃにして、マネーゲームの場として使うような動きがあるのは許されません。私は、前職の証券会社時代を含めて、31年間、資本市場と関わってきた。米ウォール街や英シティなど世界の2大市場で働いていた当時から、どうしたら日本市場が世界と伍していけるかを考え続けていました。だから市場を汚すような行ないには『義憤の念』を禁じえない」
*その思いが、ニッポン放送買収騒動の時のホリエモン批判となったのか。
北尾「あの時、堀江氏に対して3つの『義憤』を挙げました。ひとつは彼が、資本市場を投機の場にしかねない株式の大規模分割を行なったこと。需給関係の逼迫を招いて株価を高騰させるような行為を許してはイカンのです。
次に、その買収が相手の立場を無視した敵対的買収であった。資本の理論のみに基づいて株式を買い占め、相手を支配しようとすることは、行なうべきではない。3つ目は、ライブドア証券が初幹事を務めたベンチャー企業の公開において、公募価格を37%も下回る初値で取引を成立させるような“失態”を演じたことです。その企業の株式公開自体が、時期尚早でした」

*しかし、堀江氏はルールを犯したわけではない。
北尾「自分さえよければいいんですか、ということです。『世界一の金持ちになりたい』『ネットとメディアと金融のドンになりたい』といってますが、そこには『志』などみじんもなくて『野心』だけがある。市場参加者には、正しい倫理的価値観が求められますが、野心で突っ走る堀江氏にはそこが欠けています」
*法律(ルール)を犯さなければ何をしても許される、といった発想を持つ経営者が増えた。
北尾「おっしゃる通りです。メディアも良くない。『なんでもあり』で買収を仕掛けるような経営者に対し、批判ではなく面白がり、賞賛するような記事が目につく。あるいは、一般の人の反応もそうで、インタビューには『公開している以上、敵対的買収も当然で、それが資本の論理です』というふうに答える。でも、自分の会社が敵対的買収に遭えばイヤに決まっているわけで、人の痛みとして受けとめるべきです」
北尾「『利のもとは義なり』といいます。要するに、正しいことを行なわれなければ利益は出ません。同様に、『事業の基は徳なり』なんです。徳がなかったら事業は成功しません。確かに、直接金融の時代になり、得たいのしれないファンドが『利』だけを求めて徘徊、カネ儲けしか頭にない連中が資本市場を汚すこともある。でもそれは長続きしないし、させてはならない。
そのために、『徳有る者は必ず言有り』ですから、義憤にかられた時は発言していきます。うるさがられるし、シンドイけどね(笑い)」

●こういう記事を読んでも、政財界の超一流の人たちは、時間外取引に応じるのでしょうか。また衆議院選挙のときはわからなかったから応援演説をしたといえるのでしょうか?

郵政民営化選挙で圧勝した小泉首相に誰も逆らえない雰囲気があったように、あれだけ人気沸騰して、マスコミの寵児扱いされている間は、良識ある専門家がいくらダーティだと思っても、何も言えないし、言ってもかき消されてしまったのではないでしょうか。

そういう中にあって、
●(日刊ゲンダイ、18年1月28日「小泉3本柱が崩れ始めた」)
昨年9月の総選挙。広島6区に乗り込んで、
「堀江のような男は絶対に国会議員にしてはいけない」と街頭演説したのがこの人だ。「小泉政治・全面批判」(日本評論社)をこのほど出版した政治評論家の森田実氏に、改めてライブドア事件jと小泉政治を聞いてみた。
「この5年間、私は終始一貫、小泉政治はペテンだと批判してきた。それを一冊にまとめたのですが、ブッシュ米国と創価学会、それに広告代理店・大マスコミ連合に支えられてきた小泉政権は5年間も続いてしまった。でも、ライブドア事件で完全に化けの皮がはがれました。小泉政権の終わりの始まりです」
森田氏が注目するのは大マスコミの変化だ。
 「『稼ぐが勝ち』とか『心だって金で買える』と公言する堀江のような男は、政治が否定しなければいけない。間違っても政治家にしてはいけない人間です。それを選挙に担ぎ出し、しかも自民党圧勝に最大限利用した小泉首相、武部幹事長、竹中大臣の責任は万死に値する。ところが堀江逮捕後も、国民に潔く謝罪する謙虚さはなく、子供じみたいい訳で逃げ回っている。これでは身内の大マスコミだって、批判的にならざるを得ない。まして小泉首相の『ホリエモンを最初にヨイショしたのはマスコミでしょう』といった責任のなすりつけ発言が溝を深めている。首相と大マスコミの亀裂はこの5年間で初めて。これは重大なことです」
小泉政権を支える3本の柱の一角が崩れ始めたのだが、それだけではない。
「大マスコミの変化のウラにあるのは、米国の小泉離れです。靖国問題で中国を挑発するだけの小泉首相を飛び越えて、中国に接近しています。それは石油高騰で潤うロシア、イランの復活を牽制するためですが、この米国の動きをジッと見ているのが創価学会。池田名誉会長も、小泉後をニラんで、中国との関係重視に動き出した。小泉切りが静かに始まっているのです。加えて大マスコミが離れだしたらどうなるか。早ければ3月終わりに、小泉首相は政権を放り出すと見ています」
加藤紘一、福田康夫氏などに続き、空気を察知した自民党内から小泉離れの発言が相次いできたら、政権崩壊は待ったなしだという。

●(日刊ゲンダイ、17年11月?「小泉チルドレン」騒ぎを嗤う)<「小泉無気力政局の裏側」伊藤惇夫>
 ・・・・・・
イギリスやフランスの政党は早くから優秀な人材をスカウトし、育ててから議員に送り出すシステムを持っている。その背景には、優秀な人間に政治を任せないと国が滅びる、という過去の経験に基づいた思いがある。
日本でも、少しは真面目に政治を考えないと、痛い目を見るのは我々のほうなのだが・・・・。

●(夕刊フジ、18年1月28日、「御手洗時期会長、奥田路線と一線を」)<「ザ・トップ、あの深層は・・・」針木康雄(月刊『BOSS』主幹)>
1月23日、日本経団連で正副会長会議が開かれ、新しい会長にキャノン社長の御手洗富士夫氏を内定した。
・・・・・・・・
心配されるのは、内定後の第一声で「奥田路線を踏襲する」と言ったことだ。礼儀といえばそれまでだが、奥田路線とは何か。小泉総理の靖国参拝に反対する以外、小泉内閣の言うがままで、政界・財界の緊張関係が全くなくなってしまった、とある財界人が嘆く。
一言で言えば軽い。「財界総理」として求められる発言の重みがない。ライブドアの経団連入会を認めたことに「あれはミスった」などと、ひどい軽さ。「消費税を段階的に16%まで持っていくべき」などと国民感情を逆なでする発言もあった。
そこで思い出すのは、風格のあった過去の「財界総理」たちである。石坂泰三氏は「政府は泥棒をつかまえて火事を消すぐらいで十分だ」と自由主義の原点を説いたし、土光敏夫氏は金権政治に怒って政治献金にストップをかけた。「政府の不況対策はなってない」と怒鳴って「怒号さん」などと恐れられた。稲山嘉寛氏は「我慢哲学」を経営者に説いて、いきすぎた競争を戒めた。
財界総理が軽くなったのは、斉藤英四郎氏時代、親しい仲間を集めて経団連をサロン化したのが始まりだ。以来、平岩外四氏、豊田章一郎氏、今井敬氏と、温厚な人たちが続き、歯をむき出して政府に直言するという経団連らしさがなくなった。
そこで御手洗氏に一つの提言がある。奥田氏が委員をつとめる経済財政諮問会議に入らないことだ。あれは財務省にかわって、予算の骨格を決める政府の別働隊である。奥田氏が政府に取り込まれてしまい、自由な発言ができないところがいまの問題なのだ。「財界総理」は政府と一線を画すべきではないか。

●(読売新聞、18年1月29日、「ホリエモンと改革の“影”」<政治を読む>高木雅信)
・・・・・・・

昨年冬のライブドアの季刊誌の特集で、自民党の武部幹事長と対談した堀江容疑者は「小泉内閣の規制緩和のおかげで、非常に商売がしやすくなった」と述べた。
武部氏も「民間が無知だから、行政が事前に規制して、悪いことをさせないと言ってきた。これからは、自己責任が原則で、創意工夫を生かして何でもやってください、と変えていかなくては」と語っている。

●これを読んでも、自民党や経済財政諮問会議の奥田氏が、堀江氏と非常に深いつながりがあることがわかります。これだけ胡散臭さが漂う堀江氏を「違法性を知らなかった」という理由で政権政党が応援したり、経団連が入会を認めることが適切でしょうか。
明らかに胡散臭いことをやっていて、本人も法の網すれすれのこと、胡散臭いやり方をしていることを公言しているのに、自民党や経団連が受け入れることが問題なのであって、彼らの言うように違法性があったことを知らなかったという問題ではありません。
私たちは、お互いにそれほど立派な生き方をしているものではありません。しかし、堀江氏のように法の網を潜り抜けるやり方、ダーティに近い、グレイなやり方をしていることを公然と言っていて、なおかつ「稼ぐが勝ち」「心だって金で買える」と公言する人を政権政党や経団連が応援し、かつ一般大衆が拍手喝さいするということは、日本文化の危機ではないでしょうか。
それとも、堀江氏はスケープゴートにされたのかもしれません。大改革が行なわれるときは、それがどんな意味を持ち、社会にどんな影響を及ぼすかは誰もわからないのではないでしょうか。
画期的な薬を開発したけれど、どんな副作用があるかハッキリしないので、急いで副作用の人体実験をするかのように、堀江氏に好きなだけやらせて、その結果、効用と副作用がわかったので、実験終了させたと考えると納得するのだけれど。

●さて、テレビのワイドショウで、あるコメンテイターが言っていた事ですが・・・・・・・
ライブドアを英語で書くと<LIVE DOOR>となります。このスペルを全く逆にするとこのようになります。
<ROOD EVIL><ROODとは(キリストが処刑された)十字架><EVILとは邪悪な、凶悪な>と辞書にあります。偶然なのでしょうか?


追加(18年2月1日、夕刊フジ、「鈴木棟一の風雲・・・永田町」)<「堀江のもうけを没収せよ」「時間外取引」真相究明へ>

ライブドアが1年前にニッポン放送株を大量に取得したが、これは「時間外取引」だった。その直後、伊藤達也金融担当相が会見して言った。
「TOB(株式公開買い付け)の規制の対象にならない」
この時間外取引は「適法」との判断だった。これを「おかしい」と感じたのは検察であり、ほとんどの証券関係者だった。
そのうちの1人がこう言った。
「政府は規制緩和の美名のもとにグレーゾーンをつくった。堀江のやったようなことはわれわれ昔から株をやっている者は犯罪だからやらなかった。堀江もわかっていた」
わかっていてなぜ踏み込んだ。
「そこで物を言うのは政治力で、しかも堀江は初心者だから過信した」
あの時、ライブドアに800億円を貸し付けたリーマンブラザーズが事前に「この時間外取引はOKですか」と問い合わせて、OKをもらった、と伝えられる。
「許認可をする役所に、これはOKですか、と聞くなどかつてなかった。だれが、いつ、どこで、だれに問い合わせたのか。真相を明らかにする必要がある」
あの時間外取引は「事前に話がついていた」との声が当時から多かった。
「できレースで打ち合わせてやっていることは確か。これではTOBシステムが崩壊する。この点も調べるべきだ」
あの時、金融庁が調べていれば、これほど22万人もの株主が大損害を受けずにすんだわけだ。
「金融庁は大臣も役人も即座に『適法だ』と答えて動こうとしなかった」
出向で証券監視委に行った検事が『密告がたくさん来たのに監視委は動かなかった』と言っていた。
「金融庁がやる気がなかったから、外局の監視委はできなかったのだ」
ホリエモンの本質は。
「ほとんど詐欺。粉飾決算で大衆に株を買わせて換金した。ニセ札を刷ると捕まるが、株券を刷っている分には捕まらない、という発想だ」

これからの注目点は。
「規制緩和の名のもとに幅をきかせた裁量行政をどう断罪するか。堀江の不正で得た金を没収し、同額のペナルティーを科す処分ができるか。できなければ同類がまたやるだろう」

<文責:藤森弘司>

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