2005年6月30日 第35回「今月の映画」
炎のメモリアル

監督:ジェイ・ラッセル  主演:ホアキン・フェニックス  ジョン・トラボルタ  ジャシンダ・バレット

○(プログラムより)ボルティモアの穀物倉庫で、大規模な火災が発生した。仲間と共に現場へ駆けつけた消防士のジャック・モリソンは、爆発の危機をはらんだ建物の中に飛び込み、12階に取り残された生存者の救出に全力を尽くす。
恐怖に脅える生存者を力強く励まし、窓からロープで脱出させるジャック。
その直後、背後で爆音が轟き床の穴に呑み込まれたジャックの身体は数階下のフロアに投げ出されてしまった。
もはや自力での脱出は不可能。ジャックの脳裏には人命救助の熱い志を抱いて消防の仕事に就いた懐かしい日々の思い出が蘇ってくる・・・・。●(私見)主人公ジャックの上司は、トラボルタ演じるマイク・ケネディ消防署長。普段はだらしないが現場ではタフなリーダーに変貌し、部下たちに信頼されている。
一瞬を争う消防の現場での署長のテキパキさがすばらしい。平和な日本で一番失われたものがこのリーダーシップではないでしょうか。適切なリーダーシップ!●さて、脱出不可能な状態に置かれたジャック。無線で交信しながら、全力で救出作業に当たる仲間たちと、彼らを指揮するケネディ署長。
しかし、救出する仲間たちさえもが危険な状況になってくる。ジャックは壁のすぐ向こうにいるのだが、救出は不可能になってきた。
ケネディ署長は二つの交信マイクを使う。一つのマイクでジャックを懸命に励まし、もう一つで部下たちを叱咤激励する。炎に取り囲まれ、崩れ落ちる周囲の状況を見てジャックは、これ以上の救出は危険である。仲間たちを退避させるよう署長に訴える。●さすがの署長も判断に苦しむ。状況は刻一刻と危険になる。ジャックを救出できる可能性がゼロではないかもしれないが、大勢の仲間を失う可能性が大きい。
ケネディ署長は涙を浮かべて、最後の決断をする。こういう男の決断は胸を熱くします。

●今月の映画、第26回の「アラモ」もそうですが、リーダーシップを発揮するということは厳しいものです。
戦争のようなことがなくても、日々の中に、しっかりしたリーダーシップを発揮すべき事柄は多くあります。
しかし適切なリーダーシップを発揮できる能力のある日本人は非常に少なくなっているのではないでしょうか。周囲に信頼され、状況に適切な判断をくだせるような人格を陶冶するチャンスが、日本の社会から極端に少なくなってしまっているのでしょう。

●戦争の悲劇は絶対に起こしてはならないことですが、平和が人心を腐敗させ、悲劇的にさせる被害もバカにできないものがあります。
「衣食足りてますます礼節を欠く」世の中を、平和な生活をしながら克服することは可能なのでしょうか。
(「ミリオンダラー・ベイビー」は女性のボクサーを育てる主人公クリント・イーストウッドの映画ですが、意外な結末には驚きました。)

<文責:藤森弘司>

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