2003年9月第14回 「今月の映画」「踊る大捜査線」
投稿日 : 2018年3月11日
最終更新日時 : 2018年3月11日
投稿者 : k.fujimori
2003年9月 第14回 「今月の映画」
レインボウブリッジを封鎖せよ!
監督:本広克行 主演:織田裕二 柳葉敏郎 いかりや長介
●(私見)この映画を取り上げたのは、前作で織田裕二が「事件は現場で起きているんだ!」と叫んだ有名な言葉を取り上げたかったからです。
●湾岸署の刑事たちが犯人を追っていて、重大な局面になったとき、警視庁の会議室で事件を指揮しているエリート官僚は、刑事が現場に突入する要求に「待て!」と指示した。そのとき、主演の織田裕二が「事件は現場で起きているんだ!」と叫んで、現場に突入。
●日本にはこういうことが意外に多いのではないでしょうか。
週間ポストに連載中の「逆説の日本史」の中で、井沢元彦氏は、蒙古襲来のとき、手柄を立てたある武将に「勝手に行動した」からと、中央の官僚は恩賞を与えなかったと書いています。
●阪神大震災のとき、外国からの応援で、捜索用の犬を連れてきたチームを、検疫していないからと1週間、入国させなかったのも、結局、この関連です。震災は現場で起きているのに、中央が了解していないことは一切許可しないということでしょう。
●作家の堺屋太一氏は阪神大震災の後、週間現代平成7年2月11日号で次のように書いています。
昭和39年の新潟地震では、断水になったので、当時、通産省工業用水課にいた堺屋氏は、現地に来ていた方々と一緒に全国の消防ポンプのホースを集めて、水の出ているところからホースを10kmほど延々とつないで市内の各所に給水、市民に喜ばれたが、あとでこれにはクレームがついたそうです。
●さて、自己成長の分野について少し述べてみたいと思います。
例えば「育児」がそうです。面白いことに、事件は現場で起きているのに・・・・手元にいる乳幼児の状況をよく見ずに、「育児書」を見ている。
●私の妻が医者にかかったとき、私の専門の立場からも、妻の症状を知りたいと思い、大きな病院の一室の診察室に、妻に遅れて入りました。
仕事のできそうな女医さんは検査結果や資料に真剣に見入っていて、私の挨拶に全く気づかず、また、妻の顔をも見ずに、結果は大したことはなく、薬を出すのでしばらく飲むように指示を出したが、最後まで、私が同席したのに気がつかなかったようです。
●心理のカウンセリングも同様です。クライエントの方にどのくらい沿っているか否かが中心なのに、カウンセラーの考えや理論が優先してしまうおかしさ。
だから、○○の資格のように、社会人になって活躍し生計を立てている人間に、大学院の修士を取得することを条件にして、門戸を閉ざすことを平気で行なう。学者養成と間違えているのではないでしょうか。実際にクライエントの方を前にして対応するのは「職人」の技術であって、大学院で修士を取得せよというのは、学者になるのに必要な資格です(いつか「今月の言葉」で、「学者と職人」の違いについて書く予定です)。
●学者ではなく、現場の心理の専門家の実力を問うのならば、そんな無駄でナンセンスな塀を作ることは全く必要ありません。
「あなたの父親と母親についてレポート用紙に10枚書きなさい」これで十分です。これが生きたカウンセリングです。
上記のような、学者を育てるかのような塀を設ければ、現場(クライエントの方)を知らない心理の専門家(たとえ実際に体験しているとしても)ばかりが溢れることになってしまいます。
●「踊る大捜査線」の前作では、警視庁の上司からの命令で、柳葉敏郎は仕方なく現場に「待て!」の指示を出したが、今回は最後に現場の判断に任せています。こういう一瞬は本当に感動的です。
日本は今や、権威のあるところほど「より多くの構造改革」が必要のようです。 |
(文責:藤森弘司)
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