2003年5月 第10回 「今月の映画」

今回は、取り上げたい「映画」がありませんでしたので、吉田松陰の辞世の句とさせていただきます。


 

●横浜市港南区上永谷にある「貞昌院」という曹洞宗のお寺のご住職・亀野哲雄様からいただいた「<いのち>ほほ笑む」という本(横浜市・大本山総持寺・前貫首・板橋興宗著・春秋社刊)の中にありました、吉田松陰の辞世の一句です。
この句に触れてスゴイ!と思いました。かなり激しい生き方をした松陰でしたが、さすがは天才・松陰です。●私達は「親孝行」とか、年をとった親の心配をするとか、寝たきりの親の介護をするとかの表現はいろいろありますが、そういう「親を思う子供の心」以上に、子供を思う親の心のほうが、はるかに大きく、深く、温かいものです。●同書の中に、別の「辞世の句」が載っています。

かくすればかくなるものと
知りながらやむに止まれぬ大和魂

そういう突き上げられるような大和魂で取った行動も、処刑されるその
ときになって、ここまで育ててくださった親の気持ちに思いを馳せて見れば、松陰の心、いかばかりであったであろうと切ない気持ちになります。

●この世の中で、もっとも大きな親不孝は、親よりも先立つことではないでしょうか。

●親との葛藤は、本当に大きいものです。しかし、いつか自身のフィルターを高性能に変えて、無限大の親の「愛」を感じ取れるようになりたいものです。しかし松陰のように、感じられたそのときが辞世の句では、悲しすぎます。

●日露戦争で第三軍司令官として旅順攻撃をし、苦戦に苦戦を重ねてこれを陥略した乃木将軍は、このとき二児を一時に失い、部下の多くを戦死させました。親としての悲しさ、人間としての辛さはどれほどであったでしょうか。明治天皇葬送のとき、乃木ご夫妻は「自決」しています(参考:人名事典・堀書店集英社)。

●トムハンクス主演の「プライベイトライアン」は、2人の息子が戦死した母親の3人目の息子を、戦場から救出して母親の元に届ける映画でした。

●父親でも同様ですが、さらに、お腹を痛め、自分の肉体の一部のようにして育ててきた母親の気持ちは、想像を絶するものがあります。
そういう親の純粋な「愛」に目覚めること・感じ取れるようになることこそ、自己成長の究極の目的です。
しかしそれには、高性能の「フィルター」が必要で、それを備えるための訓練が重要であることはいうまでもありません6月の「今月の言葉」ご参照)。
このフィルターとは、ガスマスクみたいなもので、汚染ガスを除去して、酸素のみを取り入れるのに似ています。

 


(文責:藤森弘司)

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