2002年11月第4回

①「宣戦布告」 主演・・・古谷一行(総理大臣)/財津一郎・夏木マリ・多岐川裕美

日本海沿岸。一隻の国籍不明の潜水艦が敦賀半島の沿岸で座礁した。浮上した潜水艦からは、戦闘服に身を包んだ男たちが出現し、上陸後、夜の闇の中に姿を消して行った・・・・。
「非常事態発生!」「日本壊滅の危機!!」「国家的危機に面してることがどうして官僚たちには分からないのか」「この国は喧嘩もまともにできないのか」「指揮官が優柔不断じゃやってられねんだよ」(プログラムより)さて、あなたが、この映画の総理大臣の立場ならばどうしますか?
「自己成長」に取り組む場合も同様です。いろいろな「セミナー」や「ワークショップ」に参加する場合、内容を理解したとき、それを自分自身に当てはめて考える力を養うこと、或いはそのクセをつけることが大切です。
多くの方は、ただ理解するだけで終わったり、他人事として理解してしまう傾向にあります。
自分の身に置き換えて「自分だったらどうだろうか」と考える習慣をつけませんか?
そういう方とは「本気」で、私自身や人生について語りたくなります
そうでないと、単なる「他者批判」の議論になってしまいかねません。

 


②「阿弥陀堂だより」 主演・・・寺尾聰・樋口可南子/北林谷栄・田村高廣・香川京子・小西真奈美
「現代社会の中で忘れてしまった、生きることの感動を再び」
 東京で暮らす熟年の夫婦、孝夫と美智子。医師として大学病院で働いていた美智子は、ある時パニック障害という心の病にかかってしまう。東京での生活に疲れた二人が孝夫の実家のある長野県に戻ってきたところから映画は始まる。二人は大自然の中で暮らし始め、様々な悩みを抱えた人々とのふれあいによって、徐々に自分自身を、そして生きる喜びを取り戻していく。・・・・・1年に及ぶ長期撮影が実現させた、美しい映像世界(プログラムより)。
この映画で、一番印象的だったのは、村の広報誌に「阿弥陀堂だより」というコラムを連載していた「少女の小百合」です。「阿弥陀堂」という、村の死者が祭られたお堂に暮らしていた96才の老婆おうめを、小百合が訪れ、おうめが日々思ったことを書きとめ、まとめています。
この小百合は、喋ることができない難病を抱えています。そのため、おうめとは、聞くことはできますが、話すときは筆談になります。そのときの笑顔がとてもすばらしいのです。身振り手振りの雰囲気が本当にすてきでした最近、週間文春のグラビアに、小百合役の小西真由美が載っているのを、偶然見ましたが、多分、この女優さんがすばらしいからでもあるのでしょう、このときの少女・小百合の醸し出す雰囲気は、感動的でした。

このとき、私は仏教でいう「無一物中無尽蔵(むいちぶつ・そく・むじんぞう)」という言葉を思いだしました。私たちは「物」を欲しがります。沢山たくさんほしいです。しかし、中に物が詰まれば、もう入らないし、それを守ることで窮屈な、狭苦しい人生になってしまいます。
しかし、これは理屈では分かっていても、やはりお金も物も沢山欲しくなってしまうのが、私たち凡人の悲しさです。恐らく、この少女・小百合の笑顔の美しさは、しゃべることができない・・・・つまり、私たちよりもより「無一物」に近いために与えられた、天の恵みではないかと思いました。
「禅とは、すべてのものをすて切る修行」(禅問答入門・村瀬玄妙著・日本実業出版社)。すべてとは言わないまでも、少しくらいは捨てたいものです。
そういう意味で、私がもっとも尊敬するかたは、事故で首から下のすべての自由をなくしながら、高い心境に達した星野富弘先生です。


               文責:藤森弘司

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