2003年10月 第15回「今月の映画」

シモーヌ(SIMONE)

監督:アンドリュー・ニコル    主演:アル・パチーノ    レイチェル・ロバーツ


 

●(プログラムより)短編でアカデミー賞にノミネートされたこともあるアル・パチーノ演ずる映画監督、タランスキー。彼の栄光は過去のもので、長編作品は大コケ続きだった。
落ち目のタランスキー監督は、人気女優・ニコラを主演に起用して再起を図る。が、二コルのわがままに耐え切れなくなったタランスキーはついに爆発。ニコラは映画を降板し、完成間近だった作品も製作中止になってしまう。●ある日、失意のタランスキーのもとに、コンピューター・エンジニアのハンクという男が現われる。タランスキーの映画のファンだという彼は、「CG女優をつくる画期的なソフトを開発した。自分のイメージを具現化できる芸術性豊かな監督はあなただけだ。一緒に映画を作りましょう」持ちかけてくるが、この男は研究のために目に腫瘍ができて、絶命してしまう。●この画期的なソフトから、完全無欠、絶世の美女演じる映画が次々と大ヒットを飛ばす。今やCGの美女もタランスキー監督も、大人気となるが、CG人間のため、表に出られない。そこからあの手この手の工夫やドタバタが非常に面白い。
やがてタランスキー監督はこのCG美女をもてあまし、外国での奉仕活動中にウィルス感染して死亡ということにして、葬儀を行うと、今度は警察が乗り込んできて、殺人犯として逮捕されるというドタバタがまた面白い!●(私見)CG美女でも、すばらしいと思えば、最高にステキな女性であり、CGだったと思えば、な~んだ、となります。つまり私たちの人生って、こんなものではないでしょうか。何がCGで、何が本物か・・・実は、私たちが日ごろ目にしているものも全く同様だと思いませんか?●例えば、恋愛中や新婚ホヤホヤのころは、相手はまるで「完全無欠・絶世のCG美女」かのように思え、やがて「な~んだ」と思い始め、気がついたら・・・・・・・?!・・・でも同じ相手なんですよね・・・・・惚れて惚れて惚れつくして、気持ちがさめると、顔を見るのも嫌になる?●今まで、変わり者で、ただの研究オタクだと思っていた人が、ノーベル賞を取ると途端に、ありがたい人になる。ボクシングの世界チャンピオンだと思うと、大勢の人が寄ってきて、チャンプでなくなって、落ちぶれると誰も寄り付かなくなる。●心理学に「認知療法」というのがあります。これは「事実」をどのように受け止めているかを考える心理学です。私たちは多くの場合、自分固有の思い違いをしているものです。例えば、自分がこのように感じたから、それは事実だと思いがちです。
しかし、多くの場合、私たちは、ある事実を認知・認識するとき、事実を見たり感じたりしていると思っているが、実は、自分の好みや偏見で受け止めているものです。例えば、相手の方が「好意」でしたことでも、受け取る側が好ましく感じられないと「悪意」に解釈してしまうものです(認知の歪み)。

●私自身がそうでした。若いころは、思い返すも恥ずかしいくらいに、自分勝手なとらえ方をしていました。自分の受け止め方が歪んでいるなどとは全く、想像もしませんでした。時には、相手の方が好意で行ってくださったことさえもが、悪意に受け止めることが多々ありました。
相手の気持ちなど関係なく、自分がどのように感じたか、どのように思ったかが価値観の中心でした。
この「認知療法」は、すべての心理学、自己成長を目指す方々に取って不可欠の心理学です。何を勉強しても、何に取組んでも、この認知が歪んでいては、全く何にもなりません。「認知療法」は、すべての心理学のベースにすべきものだと私は思っています。

●主として13個の歪みのパターンを学ぶ「認知療法」は、来年の1月にセミナーを行いますが、この認知療法を思い出しながら、興味深く、そして楽しくこの映画を見ました。

 

(文責:藤森弘司)

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