監督:中野裕之 音楽:岡野弘幹
ナビゲーター:小泉今日子、東出昌大・出演:渡辺大、及川さきの
★★★この映画はとても素晴らしいです。まず、とにかく美しいです。いくら旅行好きの人でも、日本中を見ることはできません。ましてや、私たち普通の人間は、日本の中のいくつかの場所を“点”で見るだけですが、この映画は、日本中、200カ所を、とても美しく見せてくれます。
日本に住んでいて、緑は豊かで、景色は美しく、こんな素晴らしい国に住んでいたのかと改めて驚きました。その最大の理由は“水”が豊かだからです。今、西日本地方は水害に苦しんでいらっしゃり、大変お気の毒ですが、このような大被害をもたらすのも“水”です。
悲しいことですが、私たちは、大被害をもたらすほどの“豊かな水”に恵まれています。私のHPでは「得失一如(とくしつ・いちにょ)」という言葉を大切にしていますが、“豊かな水”もまさに“得失一如”です。素晴らしい恵みをもたらすと同時に、大被害をももたらします。聞くところによりますと、日本は世界で一番水が豊かな国だそうです。
もう一つは、このページの最後にある「(4)<COLUMN・・・コラム>」が素晴らしいです。
<<<一方、水が潤沢にある場所とはいえない砂漠地帯から生まれたのが、世界三大宗教でもあるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の一神教。生命維持に必要不可欠な水にありつくために、東西南北どこに歩を進めるかを厳しく問われる環境がそこにはある。日本のようにどこにいても水のある環境で生まれた宗教とは決定的に異なる背景を持つのだ。あくまで推論だが、自然環境が宗教観へ影響を与えたと考えても、何ら不思議はない。人間は往々にして、環境に左右される生き物だから。>>>
日本をさらに知りたい方々には必見の映画です。
(1)(パンフレットより)<INTRODUCTION>
私たちが今こそ知っておきたい、そして後世に遺したい本当の日本の美しさがここに。あなたはきっと、日本に恋する。 数年間に一度だけ、“一期一会”でしか出会えない神々が宿る美しい瞬間があります。本作は8年の歳月をかけてその瞬間を追い求め、全国47都道府県・200箇所以上で撮影された映像を厳選し、4K解像度で映画化。空からとらえた見たことの無い絶景の数々、そして知っているようで知らなかった日本人特有の精神やルーツも紐解いていく、壮大で、ドラマチックな映画が誕生しました。 本作には、2020年東京オリンピックを控え“ニッポン”が益々世界から注目される今、「日本人にもっと日本のことを知ってほしい、もっと日本に恋してほしい。」という想いが込められています。釧路湿原の空中散歩、虹色に輝く華厳の滝、雲海に浮かぶ竹田城跡、紅に染まる秋の瑠璃光院、満開の桜に抱かれる姫路城、最も美しい姿を狙って撮影された富士山、そして熊本地震により崩壊する前に撮影された天空の道・・・。日本を愛する映像作家たちが奇跡的にとらえることに成功したそれらの景色は、常に気候変動や自然災害と隣り合わせの日本に生きる私たちが、後世に遺しておきたい景色です。 |
(2)<日本のすべてを遺すプロジェクト=ピース・ニッポン・プロジェクト>
地震や台風などの自然災害の多い日本。特に東日本大震災では、景観や建物だけではなく写真やデータまでが丸ごと消えてしまい、あまりにも多くのものを失いました。思い出の景色や建物を失ってしまう前に、そのすべてを映像におさめ、日本を目に見える形、耳で聞こえる形で後世に遺す。「ピース・ニッポン・プロジェクト」は東日本大震災を経験した映像作家たちのそんな思いからスタートしました。 劇的に変化する都会の町並み。自分が通った学校と通学路。いつも使っている駅舎や、駅から見た景色。大好きな食堂や本屋の外観。歴史を物語る建造物。日々目に見えない速度でゆっくりと変化する自然。そういった景色を動画や写真として年代ごとに地層のように蓄積し、「みんな」で日本のすべてを次の世代に遺す。動画や写真が簡単に、誰でも撮影可能になった今、美しい観光地に加えてあと少しだけ「私たちが遺したい景色」に時間を使うだけで日本を後世に遺すことができるのです。 映画『ピース・ニッポン』は、このプロジェクトのアーカイブの中から、日本を愛する映像作家たちが数年間に一度だけ出会えるような一期一会の美を追い求め、日本の魅力を厳選した作品です。まずは映画をご覧いただき、日本に恋してください。きっとあなたも、美しい日本を遺したくなるはずです。 |
(3)<LOCATION・・・撮影場所一覧>
北海道・・・美瑛町、釧路湿原、青い池、洞爺湖町、十勝連峰、初山別村、鶴居村、尻別岳、富良野上空、阿寒湖、屈斜路湖、 青森県・・・世界遺産・白神山地暗門の滝、白神山地十二湖青池、十和田湖、奥入瀬渓流、蔦沼、弘前城、弘前公園、岩木山、青森ねぶた祭り、 秋田県・・・峨龍の滝、秋田竿燈まつり、全国花火競技大会・大曲の花火、 福島県・・・三春滝桜、花見山公園、鶴ヶ城(会津若松城)、 岩手県・・・北上展勝地、 山形県・・・神山城、蔵王、 宮城県・・・伊豆沼、ひまわりの丘、 新潟県・・・蒲生の棚田、長岡まつり大花火大会、 富山県・・・雨晴海岸、 石川県・・・金沢城、 福井県・・・丸岡城、 栃木県・・・世界遺産・東照宮、龍王峡、中禅寺湖、華厳の滝、湯滝、竜頭の滝、霧降の滝、あしかがフラワーパーク、 千葉県・・・水郷佐原あやめパーク、犬吠埼、本土寺、関宿城、 埼玉県・・・こうのす花火大会、古代蓮の里、巾着田、幸手権現堂桜堤、 茨城県・・・大洗磯前神社、 神奈川県・・・鶴岡八幡宮、湘南海岸、大観山からの富士山、 群馬県・・・谷川岳、 東京都・・・北の丸公園、池上本門寺、神宮前銀杏並木、東京スカイツリー、東京タワー、目黒川、六義園、隅田川花火大会、世界遺産小笠原諸島、レインボーブリッジ、いたばし花火大会、渋谷駅前交差点、 愛知県・・・豊橋炎の祭典、 岐阜県・・・飛騨高山手筒花火、平湯大滝、根道神社(モネの池)、世界遺産・白川郷合掌集落、 長野県・・・諏訪湖祭湖上花火大会、白馬村、地獄谷野猿公苑、 山梨県・・・西沢渓谷、世界遺産・富士山、新道峠からの富士山、河口湖、忍野八海、精進湖、二十曲峠からの富士山、忍野村、新倉山浅間公園、花の都公園、 静岡県・・・三保の松原、田貫湖、柿田川公園、湯之奥猪之頭林道からの富士山、白糸の滝、浄蓮の滝、萬城の滝、清水𠮷原、まかいの牧場、 |
京都府・・・世界遺産・教王護国寺(東寺)、東福寺、南禅寺、天授庵、世界遺産・平等院、伏見稲荷大社、永観堂(禅林寺)、世界遺産・龍安寺、世界遺産・清水寺、大覚寺、毘沙門堂、法然院、嵐山、世界遺産・二条城、千光寺、源光庵、瑠璃光院、
大阪府・・・大阪城、 滋賀県・・・彦根城、世界遺産・延暦寺、 奈良県・・・奈良公園、世界遺産・法起寺、世界遺産・東大寺、世界遺産・吉野山、世界遺産・金峯山寺、世界遺産・吉水神社、 三重県・・・伊勢神宮、二見浦夫婦岩、丸山千枚田、 和歌山県・・・世界遺産・那智の滝、飛龍神社、世界遺産・熊野那智大社、世界遺産・熊野古道、世界遺産・青岸渡寺、世界遺産・金剛峯寺、 兵庫県・・・竹田城跡、世界遺産・姫路城、 島根県・・・出雲大社、稲佐の浜、宍道湖、 鳥取県・・・大山、鳥取砂丘、三佛寺投入堂、 山口県・・・錦帯橋、岩国城、 岡山県・・・備中松山城、 広島県・・・宮島、世界遺産・厳島神社、広島平和記念公園、広島城、尾道、福山城、鞆の浦、三原の海霧、 |
愛媛県・・・石鎚山、松山城、肘川あらし、
徳島県・・・阿波おどり、 高知県・・・高知城、轟の滝、大樽の滝、仁淀川、 香川県・・・丸亀城、 福岡県・・・博多祇園山笠、 大分県・・・原尻の滝、 熊本県・・・熊本城、阿蘇山、天空の道、 宮崎県・・・高千穂峡、国見ケ丘、 鹿児島県・・・世界遺産・屋久島、桜島、加計呂麻島、 長崎県・・・九十九島、 佐賀県・・・浜野浦の棚田、 沖縄県・・・久米島ハテの浜、石垣島、嘉比島、阿嘉島、安室島、 |
(4)<COLUMN・・・コラム>
<NIPPONをPEACEへと誘う 『多様性』『自然への敬意』『お互い様』の思い>(編集者・香月鉄平) <水と生命と八百万の神々> 「あまつかみ、くにつかみ、やおよろずのかみたちともにきこしめせよと、かしこみかしこみもまおす」 これは天津祝詞という、神事において神主が神前で唱える言葉の一説。「天上の神様、地上の神様、その他多くの神様たちすべてに聞いていただけますように畏れ多くもお願い申し上げます」という意味になるそうだ。 上記の言葉通り、神は唯一の存在ではなく、八百万(やおよろず)も存在するという多神教的宗教観を持つのが神道。「千と千尋の神隠し」を見た外国人の友人が「Ohlalah! どうして大根の神様がいるんだ!」と驚いたことがあった。日本人は石や木のような自然にまで神が宿ると信じる。ゆえに、自然を畏れ敬い『自然への敬意』を忘れない民族なのだと説明した気がする。 ところでこの宗教観、日本の自然が持つ『多様性』と密接な関係があるのではないか?と映像を見て思った。日本という国は、決して広大でない。しかしながら、南北に長く伸びる国土は亜熱帯から亜寒帯までと幅広い気候風土を持ち、バリエーションに富んだ生態系を育む。周囲を海に囲まれ、自然豊かな山々もる。そして、特筆すべきは豊富な水資源。人間だけでなく、動物、草木花、苔!に至るまで生きとし生けるものへ恩恵を与えてきた。万物に魂が宿るという考え方は、至る所に水の存在があり、そこかしこに生命の息吹が感じられたからこそ生まれたのだろう。つまるところ、環境の『多様性』が、宗教的な『多様性』にも大きな影響をあたえたと言えるのではないかと。 一方、水が潤沢にある場所とはいえない砂漠地帯から生まれたのが、世界三大宗教でもあるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の一神教。生命維持に必要不可欠な水にありつくために、東西南北どこに歩を進めるかを厳しく問われる環境がそこにはある。日本のようにどこにいても水のある環境で生まれた宗教とは決定的に異なる背景を持つのだ。あくまで推論だが、自然環境が宗教観へ影響を与えたと考えても、何ら不思議はない。人間は往々にして、環境に左右される生き物だから。 <「日本に恋しよう!」が育む平和の概念> ここでは、「日本に恋しよう!」というメッセージが持つ意味についても考えてみよう。私はこの言葉で中野裕之監督が最も伝えたかったのは「日本を好きになろうということは、決して偏狭な愛国心を持てということではない」と思っている。それは、神仏習合をおこなった聖徳太子の言葉「和を以て貴しとなす」からも感じ取れた。 神仏習合において、元来ある神道と仏教を上手にミックスできたのは日本人が“唯一絶対的な神”という存在を、それほど意識しなかったからなのではないか?と。もちろん、仏教で国を治めるという大義名分はあったはず。が、それを差し引いても、いわゆる排除の論理という概念が希薄だったと思うのだ。たとえばジェンダーにおいても、元来日本はその境界線が曖昧。ヤマトタケルが女装したという伝説もある通り、異性装は特段珍しいものではなかったし、宗教的なタブーがないため、同性愛的行為も多く見られた。もし二元論に基づき、白黒ハッキリつける行為が身近なもので、原理主義や排他主義がはびこる社会であればこうはならなかっただろう。それは、日本人の宗教観と精神が『多様性』という概念と高い親和性をもっていた証左に他ならない。 また映画内で語られる『お互い様』のシーン。そこから、日本人は他者への寛容さを大事にしてきた民族だということがよみとれる。何かあってもお互い様だからという、思いやりは日本人の美徳だったのだ。 <PEACEなNIPPONを見て、平和な日本に!> 長年「PEACE」という概念を世に問い続けた映像作家こそが、今回の監督でもある中野裕之氏。それは監督が被爆地の広島県出身という事とも関係があるかもしれない。その思いを強くしたのが、原爆ドームの映像と慰霊碑の「安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませぬから」というメッセージ。鑑賞後ふとしたきっかけで、ある重大な内情を知る事となる。それは中野裕之氏が被爆二世という事実だったのだ。点と点がつながるように、様々な日本の情景が一つの線で結ばれた。そう『自然への敬意』、『多様性』、『お互い様』の集合知とでもいうべきものこそが監督の考える「PEACE」であり、そこには平和を希求する思いが隠されていたのだ。 この映画はドラマではない。全編を通して明確なストーリーが存在するようなものでもない。登場人物がその思いを多く語るようなことだってない。ただ、111分の間、日本の絶景が雄弁に語りかけてくるのだ。「日本という自然豊かな国の美しさを知り、その精神性に迫る。ひいてはNIPPONへ真の愛情を持ち、より深く理解し他者を思いやることこそがPEACEへつながる」というメッセージを。日本を知らないこどもたちと、日本を忘れかけた大人たちへむけて・・・・・ |
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