2024年5月31日第255回「今月の映画」「わたしのかあさんー天使の詩ー」

監督:山田火砂子  寺島しのぶ 常盤貴子 船越英一郎 高島礼子 安達祐実 東ちづる

(1)袴田巌氏は「死刑囚」とされていますが、私の「深層心理」の専門の立場から考えますと、「無罪」に決まっています。

 しかし、5月22日の「再審公判結審」での結果がどうなるか、私・藤森は、「無罪」になることを祈っています。

 今、この「今月の映画」を入力しているのは5月19日で、本日、東京新聞が「再審公判結審」について、大きく報道していますが、次回(6月15日)の「今月の言葉」をアップするときに、私が「無罪」を確信している理由を詳しく紹介したいと思っています。

 さて、「今月の映画」ですが、「わたしのかあさんー天使の詩ー」は本当に素晴らしかったです。機会がありましたら、是非、ご覧ください。

(2)「あらすじ」

 山川高子は障がい者特別支援施設「愛清園」の園長である。知的障がいの入園者の世話を焼き、保護者からの相談に応じ、障がい者福祉に身を尽くす日々を過ごしていた。 

 そんなある日、親友優子が施設を訪ねてきて高子に母親・清子のことを本にしないかと声をかける。

 今でこそ障がい者福祉に従事する高子だが、かつては障がい者をうとみ憎んですらいた。高子は聡明な子だったが、両親は知的障がい者でありそれを恥じて苦しんだ時期があったからである。

 親友の言葉に高子は小学三年生の頃を思い出す。同級生に母親を見られたくなくて通知を隠しておいた授業参観。それを見つけた清子は授業参観にやってきて、まるで子供のように騒がしくおどけ、保護者と同級生から失笑を買ってしまう。何をやっても要領が悪く奇矯な母の振る舞いはいつも高子を傷つけていた。そしてついに知的障がい者であることを知らされ、高子は動揺する。

 母を嘲笑していた近隣の住人さえ清子を受け入れるようになったのは、清子の分け隔てなく損得を考えない生き方だった。周囲の大人たちの支えもあり、何より母清子が高子を愛する気持ちをうけ、高子の心は次第に癒やされてゆく。

(3)「監督からのご挨拶」

 私の知的障がいの長女が通った大塚養護学校で長年お世話になった菊地澄子先生の書かれた「わたしのかあさん」を映画化しました。

 知的障がい者の両親の長女として高子は生まれました。秀才だった高子が小学三年生になって両親の障がいに気がつき荒れるところからドラマは始まります。しかし、周りの人々の感化によって「障がいを持っていたのが自分だったかもしれない」と言う事に気がつき、だんだん心を取り戻していくのです。

 優秀ならIT企業などで働けば金銭的には楽だったかもしれないのに、後年、高子は福祉の道に進みます。糸賀一雄先生、田村一二先生、池田太郎先生方の影響を受けましたが、最も影響を与えたのは、無垢な心の母親です。悪は善に負けるがテーマです。母の悪口ばかり言っていた近所の人達も、だんだん仲良くなって、子供を預けるなど、母を信頼していきます。周囲の人々の心を変えていく母の姿を見た高子は福祉の道に生きる決心をするのです。

 障がいの両親役に、寺島しのぶ、渡辺いっけい、友人の父親に船越英一郎、先生役に東ちづる、糸賀一雄先生役に宅麻伸、そして成長した高子を常盤貴子、その親友に安達祐実、ほかたくさんの演技派の俳優さんが参加して豪華メンバーの素晴らしい映画となりました。福祉映画もここまで来たかと感動しています。

 幸せとは何か、貧しくとも豊かな家庭とは、泣き笑いのあるこの映画をぜひお楽しみください。

 現代ぷろだくしょん代表 山田火砂子

(4)「高子の母 山川清子・役 寺島しのぶ」

 山田監督

 又作品に呼んでくださりありがとうございました。

 人生の大先輩である監督、

 負けるもんかと強い気持ちを持って立ち向かう

 監督のお姿はパイオニアであり憧れです。

 又ご一緒できる日を心待ちにしております。 

 感謝を込めて         寺島しのぶ

 ≪≪プロフィール・・・・・1972年12月28日生まれ、京都市出身。文学座を経て舞台・映画・ドラマで活躍。荒戸源次郎監督の『赤目四十八瀧心中未遂』(2003)と廣木隆一監督の『ヴァイブレーター』で国内外の映画賞の女優賞を数多く授賞し、若松孝二監督の『キャタピラー』(2010)ではベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)を獲得し、平柳敦子監督の『OHLUCY!』(2018)ではインディペンデント・スピリット賞主演女優賞にノミネートされた。『空白』『キネマの神様』で2021年報知映画賞最優秀助演女優賞を受賞。≫≫

 

 「愛清園・園長 山川高子・役 常盤貴子」

 山田火砂子監督の舞台挨拶はいつも、お客様が監督のトークを心待ちにし、大盛り上がりする。政治や福祉の話でも、歯に衣着せぬ物言い、手厳しい指摘であればあるほど、会場からは「よく言った!」とやんややんやの喝采と笑いが起こる。豊富な知識に裏打ちされたトークゆえなのだろう、監督が撮る社会的な映画に興味を持ち、観に来てくださるようなお客様方は特に、人がなかなか口に出せないようなことをスパンと言ってくれるから爽快なのだろう。今回の映画でも同様に、障害者の日常を赤裸々に描きつつも、福祉の闇までをセリフに紛れ込ませてサラリと言わせている。世が世なら・・・逮捕です(笑)膨大なセリフを覚えなければいけない私たちは大変だったけれど、映画の中で、しかもセリフとして、そんなことを言わせてもらえることに幸せを感じていたりもする。つまり・・・私たち俳優陣も、山田火砂子監督を心待ちにしている。                           常盤貴子

 ≪≪プロフィール・・・・・神奈川県出身。数多くの作品に主演・ヒロインとして出演・代表作に映画『赤い月』『野のなななのか』、テレビ『愛していると言ってくれ』『beautiful lifeー二人でいた日々ー』『グッドワイフ』など。山田火砂子監督作品は『筆子・その愛ー天使のピアノー』『山本慈昭 望郷の鐘              満蒙開拓団の落日』『われ弱ければ矢嶋楫子伝』に続いて4作目となる。≫≫(楫子が読めないのでかなり苦労して調べたところ「楫は『かじ』と読み、『梶、楫、舵』の3つがあり、3つは同じ意味で、水をかいて船を進めるのに用いる道具とありました?!?!」)

(5)「優子の父・小杉和哉・役 船越英一郎」

 私の映画初出演は現代ぷろだくしょん作品「もうひとつの少年期」です。俳優人生2年目の冬でした。山田監督はプロデューサーとして陣頭指揮を執っておられました。演技経験が極めて乏しい新人が足掻き、もがきながらも難役を演じ切る事が出来たのは、山田プロデューサーの適格な指導と叱咤激励のお陰である事は言うまでもありません。

 その大恩ある山田監督から、実に40年もの歳月を経てお声掛け頂いた事は法外な喜びであり、特別な思いを込めて演じさせて頂きました。クランクアップの際に監督の口からポロリと「あんた上手くなったね」という言葉がこぼれた瞬間、思わず熱いものが込み上げました。心より感謝深謝です!            船越英一郎

≪≪プロフィール・・・・・1960年生まれ、湯河原出身。1982年「父の恋人」でデビュー。民放全局の2時間ドラマに主演したことから「2時間ドラマの帝王」の異名をもつ。近年、バラエティ番組や情報番組の司会や広告でも活躍する。最近の作品では「赤ヒゲシーズンストック1~4」「警視庁考察一課」「テイオーの長い休日」などがあり。昨年、明治座創業150周年記念「赤ひげ」にて初めて舞台での主演を務めた。≫≫

 

 「高子の祖母・谷岡秀子・役 高島礼子」

 障害を持つ子の母親を演じさせていただき、障がい者の純粋者さ、素直さに触れることができました。セリフの中にある、「負うた子に教えられ」はまさに大人になった私たちが忘れてしまったもの、失ってしまったもの、見えなくなってしまったことに気づかせてくれるシーンでした。一人ひとりが違った感性、見方を持ち、それぞれの意見を尊重していくことの大切さを学ぶことができる作品でした。障がい者に関わる方たちだけでなく、純粋な思いからは離れてしまった方たちにも多く見ていただきたい作品です。                          高島礼子

≪≪プロフィール・・・・・1964年神奈川県生まれ。1988年にCMに出演したのを契機に、「暴れん坊将軍Ⅲ」で本格的に女優デビュー。初主演映画「さまよえる脳髄」で注目を集め、99年から「極道の妻たち」シリーズの4代目「極妻」に抜擢され代表作となる。2001年「長崎ぶらぶら節」で日本アカデミー賞助演女優賞を受賞。近年では映画「祈りー幻に長崎を想う刻ー」「いちばん逢いたいひと」に出演。≫≫