2023年11月30日第250回「今月の映画」「沈黙の艦隊」

(1)私・藤森の人生に「不思議」なことがありました。

 拙著の≪≪『交流分析』の『人生脚本』と『照見五蘊皆空』≫≫は、応援をしてくださる親しい方々がいらっしゃって、僅かな発行部数でしたが、売り切れになりました。
 が、本日(11月28日)、出版社の「文芸社」から連絡があり、12月25日に、再版されることになったとのことです。私の人生にも、少しは幸運なことがあるものだと、感動しています。

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 さて、今回の映画「沈黙の艦隊」ですが、迫力満点の映画で、主演の「大沢たかお」さんの目力が凄いのにも驚きました。
また、≪≪撮影に当たって、自衛隊の方々の指導を仰いで、潜水艦にも乗られた≫≫とのことですので、映画の迫力は本当に凄いものがありました。

 ただ一つ、私がハッキリしなかったのは、ストーリーでした。≪≪<シーバット>は、日本が建造費を提供したにもかかわらず、米艦隊所属という、数奇な運命を背負った落とし子。その艦長に任命されたのが、海自一の操艦技術を誇る海江田であった。

 ところが、海江田は<シーバット>に核ミサイルを積載し、突如反乱逃亡。海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言した≫≫のですが、その流れが、やや、私にはハッキリしないものがありました・・・が、映画の迫力の凄さは、本当に素晴らしかったです。

(2)≪≪世界最新鋭の原子力潜水艦という圧倒的な力を手にした男の行動は、果たして、大義か、反逆か。揺らぐ「核の国際秩序」に警鐘をならすがごとく、禁断のテーマに挑む≫≫

 「INTRODUCTION」

 1988~96年に「モーニング」(講談社)で連載された、累計発行部数、3200万部(紙・電子)を突破する大ヒットコミック「沈黙の艦隊」(かわぐちかいじ作)。実写映画化発表は国内外問わず大きな話題を集めた。連載当時には、タブーに鋭く斬り込んだテーマ性により各方面で論争を呼び、国会でも話題になるなど社会現象を巻き起こしたこのタイトルは、30年の時を超え、現代の国際情勢を予測していたかのようなメッセージを孕んでいる。
核抑止力をもって世界平和をいかに達成するか」という真摯な問題提起が、壮大な海中戦闘アクションと重厚な政治サスペンスに乗せて驚きのストーリーで展開される、唯一無二のアクション・ポリティカル・エンタテインメント作品として劇場公開される。

 主演は大沢たかお。本作ではプロデューサーも務める。連載当初から原作のファンであり、実写化は俳優人生における夢の一つであったという熱い想いから、防衛省海上自衛隊への協力体制の構築や、原作・かわぐち氏へ企画プレゼンを行うなど、熱意をもって制作に臨んだ。監督は『ハケンアニメ!』(22)で日本アカデミー賞優秀監督賞をはじめ数々の受賞を果たした吉野耕平、制作は『キングダム』(19,22,23)や『銀魂』(17、18)などヒット作を多く手がけるクレデウス。日本映画で初めて海上自衛隊潜水艦隊の協力を得て撮影した実物の潜水艦と、日本屈指のVFX技術を融合させ、臨場感あふれる映像体験を実現する。

(3)「STORY」

 日本の近海で、海上自衛隊の潜水艦が、アメリカの原子力潜水艦に衝突して、沈没した。艦長の海江田四郎を含む全乗員76名が死亡したとの報道に、日本中に衝撃が走る。

 だが実は、乗員は無事生存していた。彼らは、日米が極秘に開発した高性能原子力潜水艦の乗員に選ばれており、事故は彼らを日本初の原潜<シーバット>に乗務させるための偽装工作だったのだ・・・・・!

 <シーバット>は、日本が建造費を提供したにもかかわらず、米艦隊所属という、数奇な運命を背負った落とし子。その艦長に任命されたのが、海自一の操艦技術を誇る海江田であった。

 ところが、海江田は<シーバット>に核ミサイルを積載し、突如反乱逃亡。海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言した・・・。

 海江田を核テロリストと認定し、太平洋艦隊を集結させて「やまと」撃沈を図るアメリカ。アメリカより先に「やまと」を捕獲しようと追いかける、海自のディーゼル艦<たつなみ>。その艦長、深町洋は、過去に起こった海難事故により、海江田に並々ならぬ感情を抱いていた・・・・・。

 大義か、反逆か。日米政府、海自の潜水艦乗組員たち、米軍までをも運命の大波に呑みこむ、海江田四郎の目的とは・・・・・?

(4)「CAST TAKAO OSAWA as Shiro Kaieda」

 大沢たかお(海江田四郎・かいえだ しろう

 日米政府が極秘に開発した、最新鋭の原子力潜水艦<シーバット>の艦長。海自一の操艦技術を誇る。<シーバット>に核ミサイルを積んで反乱逃亡する。

 <PROFILE>3月11日生まれ。東京都出身。

 <主な出演作品>【映画】『終の信託』(12)、『藁の楯』(13)、『風に立つライオン』(15)、『AI崩壊』(20)、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(21)、『キングダム』シリーズ(19,22,23)、

【TV】『JINー仁ー』(09,11)、『花燃ゆ』(15)、『大奥 最終章』(19)、『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(23/10月放送予定)

【舞台】『INSPIRE 陰陽師』(20~21)

(5)<INTERVIEW>

・・・・・まず、大沢さんが原作から受けた印象と、映像化に託されたものを教えてください。

 原作が描かれたのは30年以上前ですが、むしろ今のほうがリアルで色鮮やかに感じられる作品だと思いました。日本や未来についての考え方でも納得できるところがあったので、そうしたテーマやメッセージを押しつけがましくなく、エンタテインメントのアプローチで描く作品が日本にもあっていいんじゃないかというのがスタートでしたね。
 規模や予算はもちろん、題材としても難しい作品ではありますが、タブーから逃げていてはいけない。原作者のかわぐちかいじ先生にお会いしたときにも、この作品の要素を真っすぐに実写化したいということはお伝えしました。映画として楽しんでいただきながら、議論してもらえるような作品というのが目指したところです。

・・・・・海江田四郎という人物をどう理解して、どう作り上げていこうと思われましたか?

 今はもう勧善懲悪の時代ではないと思ったので、正義の主人公っぽい感じではないアプローチにしたらどうだろうということはプロデューサーの松橋(真三)さんからも提案をいただきました。善か悪かはわからないけれど、海江田の中に彼なりの確かな考えがあれば、観ている方たちがそれぞれそこに答えを見出してくれるだろう、と。
 吉野耕平監督と最初にお会いしたときにも、海江田は周りに刺激を与える人で、彼自身が変わっていくわけではないという話になったんです。
   良く言えばカリスマ、悪く言えばテロリストともなるかもしれないけれど、海江田が起こすアクションのインパクトを受けて、深町や政治家たちが成長していく。そんなことを監督が言われて、僕もそう感じていたので、あとはもう役や作品に関する話し合いは要らなかったです。

・・・・・寡黙にして冷静で本音が読めないということでは、かなり難しい役どころですよね。

 吉野監督の演出としても出来る限り抑えた表現にしてほしいというのがあったんです。最初、後ろを向くのもなしで、じっと前だけを向いていてほしいと言われて、かなり難しかったんですね。表現として、ここでは何をどこまで見せていいのか、そういった細かなところはよく監督に聞いていました。
 普段はあまりそういう確認はしませんが、別々に撮影した<たつなみ>や政治パートとのテンションの兼ね合いもあったので、不安だったんですよ。だからテストを2回やるとして、1回目と2回目で芝居を変えてみて、どっちのニュアンスが正解かを監督に確かめて、それを詰めて本番でやってみたりもしていました。その中でも海江田には海江田の希望や絶望があって、そのために淡々とミッションをこなしているということは常に頭に置いていました。

・・・・・まさに見方によってさまざまに捉えられる海江田ですが、彼自身は自分の表情が相手にどう映るのか、自分の言葉が相手にどう響くのか、どこまで理解していると思いますか?

 彼は自分のやり方に対して相手がどう動くのか、パズルを嵌めていくように考えていると思うんです。核を切り札にトラップを仕掛けていったり、誘い水を向けたり、最初からすべて計算している。それを言葉にはしていないので、伝わらないかもしれないけれど、信念だけで突き進んでいるわけじゃない。自分のやるべきことを遂行するために、完全に俯瞰で物事をみているんですよね。やっぱり艦長になる人で、ある意味では軍人なので、そこはものすごく冷静に策を練っていると思います。

・・・・・撮影に当たって、自衛隊の方々の指導を仰いで、潜水艦にも乗られたそうですね。

 いろいろ教えていただきましたが、我々が日々楽しく美味しいものを食べたり、暖かいところで寝たりしている生活を陰ながら支えてくれている方たちがいるということを何よりあらためて感じました。隊員の方たちだけでなく、もっと広く関係者の方たちともお会いして、皆さんのおかげで自分たちの暮らしは守られているんだな、と。それは乗組員役の若いキャストの方たちにも話して聞かせました。艦内を細かく案内して説明してくださったり、所作指導を受けたり、本当にたくさんの協力をいただきました。

・・・・・深町洋を演じられた玉木宏さんについて聞かせてください。

 理解も表現もとても深い上手な役者さんなので、僕としては何の不安もなかったです。深町はある種、海江田の“対”みたいなところがあって、常に海江田の中には彼という存在がいる。どこか兄弟みたいで、ライバルでもあるのかもしれないけれど、海江田にとって深町は必要な存在で、彼の強さと熱さのエネルギーは実は海江田が一番欲しているものだと思うんです。その深町の役が玉木さんで本当に良かったです。

・・・・・今回はプロデューサーも務められていて、作品に関わる心構えや作品の受け止め方において何か変化や発見はありましたか?

 プロデューサーといっても事前の準備に関する事がほとんどで、芝居のときは芝居のことしか考えていなかったです。本業はやはり俳優で、プロとしてそこをちゃんとしていなければいけないというのが大前提ですからね。ただ、もともと作品全体のことばかり考えてしまうほうではあって、役自体に関しては最後なんです。その作品がどうすれば面白くなるか、その中で自分はどうあるべきかというのが僕のスタンスで、それはデビューのときからずっと変わっていないかもしれないですね。

・・・・・艦長役でプロデューサーということでも重なるものがあるように思えますが、お話を聞いていると、何より大沢さんご自身の姿勢と海江田の姿勢に重なるものを感じます。

 いえいえ、僕自身はあんなツワモノではないです(笑)。海江田はツワモノどころか、バケモノですからね。恐れ多いと言いますか、敵に回したらあんな嫌な相手はいないです。とても彼のようにはなれないですね(笑)。