2023年6月31日第245回「今月の映画」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」

(1)映画「怪物」は、≪≪子どもの無邪気な声で、「カイブツだ~れだ?」と問いかけるシ~ンが想像をかきたてる。映画「怪物」とは、いったいどんな作品か。公開後1週間、映画評やSNSの感想を拾い読むと、「禁じられた遊び」「スタンド・バイ・ミー」にたとえたり、複眼的な視点を「羅生門」になぞらえる形容がある。

 そのエッセンスはあるかもしれないが、社会の不条理をエンターテイメントに昇華させる是枝裕和監督と言語化できない感情の描写まで鮮明に描く坂本裕二脚本の掛け算が見事。ホラーか、サスペンスかという筆致で、“心と時間”のパズルを完成させていく。≫≫(夕刊フジ、令和5年6月11日、本紙・中本裕己氏「エンタなう」より)

 このように書いてありますが、私・藤森には全く興味が湧かない、というよりも、全く、観たくなかった映画でした。人それぞれですが・・・。

 

 さて・・・昔、私の息子が小学生(?)位だったでしょうか、「スーパーマリオ」をゲーム機で、一緒に遊んだことがあったので、その古い記憶を辿りながら、映画を観に行きました。

 ゲーム機で遊んだ「スーパーマリオ」は、ブランコではありませんが、私・藤森の薄れた記憶で考えてみると、ブランコ程度の岩だか、崖だか、そんな程度のところを飛び移る程度の「ゲーム」だったように記憶していました。

 それから数十年間(?)の「スーパーマリオ」については、全く、知りませんでした・・・しかし、しかし、この「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の凄さ、もの凄さにはビックリ仰天しました。とにかくもの凄い映画ですので、ストレスが溜まっている方にはお勧め・・・ストレス発散にドンピシャリの映画です。

 ストレスとは言わないまでも、とにかくスカッとしたい方にピッタリの映画ですので、是非、お楽しみください。

(2)<INTRODUCTION>

 世界的人気の任天堂のアクションゲーム「スーパーマリオ」シリーズを、『怪盗グルー』『ミニオンズ』『SING/シング』シリーズなどのヒット作を手がけるアニメーション制作会社イルミネーションと任天堂が共同で映画化。イルミネーション創業者クリス・メレダンドリと、マリオの生みの親である任天堂の宮本茂が製作を務め、6年間にわたり緊密に連携し話し合いを重ねて製作された本作。

 マリオとルイージに加え、ピーチ姫、クッパ、キノピオ、ドンキーコング、ヨッシーなど原作ゲームシリーズでおなじみのキャラクターが多数登場し、アクションとユーモアにあふれる映像表現を用いて観客をこれまでになかったようなスリリングかつ生き生きとした新しい世界へ誘う。

 監督は『ティーン・タイタンズGO! トゥ・ザ・ムービー』でタッグを組んだアーロン・ホーヴァスとマイケル・ジェレニック、脚本は『ミニオンズ フィーバー』のマシュー・フォーゲル。オリジナル版では、マリオの声にクリス・プラット、ピーチ姫にアニャ・テイラー=ジョイ、ルイージにチャーリー・デイ、クッパにジャック・ブラック。日本語吹替版ではマリオを宮野真守、ピーチ姫を志田有彩、ルイージを畠中祐、クッパを三宅健太、キノピオを関智一が務める。

(3)「STORY

 ブルックリンで配管工事を営む双子の兄弟マリオとルイージ。ある日、ブルックリンの地下の排水管が破損して街が大洪水になりました。

 ふたりはそれを修理しようと下水道に降り立ちますが、ふと気づくとルイージがいなくなってしまいました。

 マリオも謎の土管に吸い込まれ、魔法に満ちたキノコたちの国に迷い込んでしまいます。

 そこでルイージが暗黒の国に捕まったらしいと聞いたマリオは、キノコのひとり、キノピオの案内で、この国のお姫さま、ピーチ姫に助けを求めるためお城に向かいます。

 ちょうどそのとき、暗黒の国のカメ族大魔王クッパが、キノコたちの国を襲いにくるという報告が。

 ピーチ姫はマリオとともに、クッパを阻止してルイージを救出するための冒険の旅に乗り出します・・・。

(4)「スーパーマリオブラザーズ」(畑史進・ゲームコラムニスト、エンタジャム編集長)

 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は「マリオ」を知る人にとって待望の作品だったことだろう。スーパーマリオの生みの親である宮本茂率いる任天堂の開発チームと、『ミ二オンズ』シリーズを手掛けたイルミネーションが共同で制作。イルミネーションは3DCGアニメーションを得意としている。マリオが銀幕のスクリーンの上で縦横無尽に動き回る姿は、誰もが夢想した物を期待通りの形にするにはうってつけだった。

 マリオも1981年にアーケードゲームで展開された「ドンキーコング」のデビュー以来、長い歴史を持つ。多くの人に認知され、今もなお愛され続ける「スーパーマリオブラザーズ」(以下「マリオ1」)でゲームキャラの域を超えたスーパーヒーローになるまでには4年の月日が流れている。

 映画冒頭を振り返ると、ロケーションとなったピザハウス「パンチアウト!!」は知る通り、1984年にアーケード展開された同名のゲーム作品が元ネタで、このゲームでマリオは主人公ではなくレフェリーとして登場した。店内の壁に飾られたボクサーの写真にはどれも見覚えがあるだろう。

 その後には「レッキングクルー」(1985年6月)で「いじわるおじさん」としてマリオに立ちはだかった「ブラッキー」ことスパイク(海外での呼び名)と揉め事に。そうして「マリオブラザーズ」(1983年)よろしく、配管修繕の仕事に向かう。このようにキノコ王国での冒険を経て我々の知るスーパーマリオになるというストーリーに併せて、それ以前のさまざまな経歴も含めてマリオゲームの歴史を振り返りながら楽しむ構成となっている。

 配管工の会社をルイージと一緒に立ち上げるも父親や親戚に小馬鹿にされ葛藤し、キノコ王国に飛ばされた後も、マリオは自分自身の壁にぶつかり、ドンキーコングの圧倒的な力の前に屈するなど、その旅路は順風満帆とはいえない。

 こうした逆境にもかかわらずマリオはなぜ全力を尽くし頑張っているのか。その答えとして劇中、ジャングル王国に入国した後にa-haの「Take On Me」が流れている。楽曲が発表されたのは1984年と「マリオ」より前。歌詞には「自分を受け入れてほしい」「順風満帆ではないけど、ゆっくり前進している」「当たって砕けろ」という意味が込められ、まさに彼の心情を代弁する格好の楽曲というわけだ。

 さて、ゲームの方に話を戻そう。ピザハウスの店に端には1981年の「ドンキーコング」の○体(文字を出せないために○にしています)が置かれている。「○体下部」をよく見ると当時はまだマリオという名称が付けられず、走ってジャンプしてレディを救いに行く主人公の愛称だった『ジャンプマン』と書かれている。ゲームに熱中する男性の服の色をよく見ると、昔のマリオのカラーリングをしている。赤い服に青いオーバーオールを着用する我々が知る現在のマリオ、ルイージのカラーはディスクシステムの「スーパーマリオブラザーズ2」(1986年6月)まで服の配色が逆で、1988年の「スーパーマリオブラザーズ3」から両者揃って現在のカラーリングに決まったという流れだ(注:ただし「スーパーマリオUSA」ではパッケージでは旧カラーで、ゲーム中では現カラーというミックスになっている)。

 今作のストーリーもゲームに照らし合わせながら軽くさらうと、「マリオ1」ではキノコ王国が滅ぼされ、さらわれたピーチ姫を救いに行くという内容だったが、映画ではルイージとはぐれたことで救出対象が彼になっている。実はゲームでは「マリオストーリー」までクッパがピーチ姫をさらう理由が明確になっておらず、「スーパーマリオサンシャイン」や近年の「スーパーマリオオデッセイ」でピーチ姫への求婚と理由が明らかになってきた。映画では面識のないピーチ姫を救いに行くという性急なものにならず、土管の先ではぐれてしまったルイージを探す先でキノコ王国が窮地に陥り、それまで行動を共にし、友情が芽生えたピーチ姫も救い、キノコ王国の平和を取り戻すというゲームシリーズの設定を交えた自然な流れに昇華されている。

 ルイージに目を向けると、映画では彼が公式に初めての単独主人公となった「ルイージマンション」の面影が随所に見受けられる。シリーズ初期の彼は性格が明確でなかったが、「ルイージマンション」から気弱で怖がりだと定着。映画でもジャンルが変わったかのようなホラーテイストでルイージに容赦なく襲いかかる構成。映画では多く登場しなかったものの彼の個性を最大限引き出し、マリオブラザーズとしての見せ場も用意されているため彼のファンも大満足するだろう。

 さて、ゲームのマリオはワールドワイドで展開する作品であることと、プレイヤーとマリオのシンクロを図るため基本的に会話をしない。マリオの表情や心情はジャンプなどのボディランゲージ、リアクション時の声のみで表現される。過去の作品を振り返っても、ミス時の表情、アクションは似通っていても、ハードの進化につれて作品を重ねるごとに豊かになっていっている。

 今回の映画においてマリオがしゃべるというのは多くの人に驚きを与えたかもしれないが、優秀な脚本家がマリオと観客の心情を共有できるようセリフを選び、舞台、シチュエーションを優秀な俳優たちがイメージを損ねずにアテレコをしているので、決して不自然な作りにはなっていない。我々の知るゲームのマリオがそのまま銀幕の上を必死に冒険している。

 このコラムにはまだまだ書ききれないほど、マリオ作品に限らず任天堂製作のゲームの小ネタが散りばめられている。繰り返し観ることで新しい発見や気付きをゲームで遊んでいるかのように得ることになるだろう。

≪≪沖縄県出身。TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」シリーズ・オールマイト役、「オーバーロード」シリーズ・コキュートス役、映画『アベンジャーズ』シリーズ・マイティ・ソー役などで知られる。最近の主な出演作に、アニメーション映画『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲EVOLUTION』(19)サカキ役、『囀る鳥は羽ばたかない』(20)竜崎篤士役、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』(22)村中努役、『THE FIRST SLAM DUNK』(22)赤木剛憲役など。≫≫

(5)「マリオゲームの歴史」(畑 史進氏)

ドンキーコング(1981)

マリオブラザーズ(1983)

スーパーマリオブラザーズ(1985)

スーパーマリオブラザーズ3(1988)

スーパーマリオランド(1989)

スーパーマリオワールド(1990)

スーパーマリオカート(1992)

スーパーマリオ64(1996)

ルイージマンション(2001)

スーパーマリオサンシャイン(2002)

スーパーマリオギャラクシー(2007)

NewスーパーマリオブラザーズWii(2009)

スーパーマリオ3Dワールド(2013)

スーパーマリオオデッセイ(2017)

マリオカート8デラックス(2017)