2022年8月31日第235回「今月の映画」「KINGDOMⅡ 遙かなる大地へ」

原作:原泰久 監督:佐藤信介 美術:小澤秀高   音楽プロデューサー:千田耕平 

サウンドデザイナー:松井謙典 主題歌:Mr.Children 

主演:山崎賢人 吉沢亮 橋本環奈 清野菜名 岡山天音 三浦貴大 濱津隆之 

真壁刀義 豊川悦司 渋川清彦 小澤征悦 大沢たかお 

(1)広大な場所での大掛かりな撮影、このコロナ禍の中、一体全体、どこで撮影しているのだろうかと思いながら見ていたら、中国での撮影!!!

 しかも、これだけ大掛かりな撮影、凄いなあと思いながら、そして、「キングダム」の原作が漫画だったということも、私・藤森は知らなかったので、いろいろ、驚きながら、楽しませていただきました。

(2)「INTRODUCTION」

 時は紀元前、中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の少年・信(しん)と、中華統一を目指す若き王・○政(えいせい)(後の秦の始皇帝)を壮大なスケールで描く漫画「キングダム」(原泰久/集英社)。

 累計発行部数9000万部超の大ヒットを記録している原作だが、その壮大なスケールから実写化不可能と言われていた。しかし、2019年に映画『キングダム』が封切られると、邦画史上最大級のスケールで描かれた本格エンターテインメント超大作として多くのファンの支持を獲得し、興行収入57.3億円を突破。その年の邦画実写作品で見事No.1を獲得し、数々の映画賞にも選出されるなど映画界に大きなインパクトを与えた。

 あれから3年。前作を凌駕するスケールへとパワーアップし、映画『キングダム2 遙かなる大地へ』としてスクリーンに帰ってくる。前作に引き続き、佐藤信介が監督を務め、脚本は黒岩勉と原作の原泰久が担当。原作者自らが考案した映画オリジナルのシーンや台詞が加筆され、映画ならではの「キングダム」が構築された。

 そして、主人公の信(しん)役に山崎賢人、○政(えいせい)役に吉沢亮、河了貂(かりょうてん)に橋本環奈、王騎(おうき)役に大沢たかおと豪華キャスト陣が再結集。また、今作から新たな登場人物として、かねてより注目を集めていた○○役に清野菜名が、秦軍の総大将である○公(ひょうこう)役に豊川悦司が決定した。

 さらには、日本を代表する国民的バンド・Mr.Childrenが奏でる主題歌「生きろ」は、命をたぎらせる強いメッセージが込められ、希望に溢れる旋律とともに本作に新たな世界を吹き込んだ。超大作にふさわしいキャスト・クリエイターの最強布陣で新たなステージへ。映画『キングダム』が魅せる夢の続きが今、始まる・・・。

(3)「STORY」

 時は紀元前。春秋戦国時代、中華・西方の国「秦」。戦災孤児として育った信(山崎賢人)は、王弟のクーデターにより玉座を追われた若き王・○政(えいせい・吉沢亮)に出会う。天下の大将軍になると一緒に誓いながらも死別した幼馴染の漂とうり二つの国王に力を貸し、河了貂(かりょうてん・橋本環奈)や山の王・楊端和(長澤まさみ)と共に王宮内部に侵入する。信は立ちはだかる強敵を打ち破り、みごと内乱を鎮圧。玉座を奪還することに成功した。しかし、これは途方もなき戦いの始まりに過ぎなかった・・・。

 半年後、王宮に突如知らせが届く。隣国「魏」が国境を越え侵攻を開始した。秦国は国王○政の号令の下、魏討伐のため決戦の地・蛇甘平原に軍を起こす。歩兵として戦に向かうことになった信は、その道中、同郷の尾平(岡山天音)と尾到(三浦貴大)と再会。戦績もない信は、尾兄弟に加え、残り者の頼りない伍長・澤圭(濱津隆之)と、子どものような風貌に哀しい目をした○○(清野菜名)と名乗る人物と最弱の伍(五人組)を組むことになってしまう。

 魏の総大将は、かつての秦の六代将軍に並ぶと噂される軍略に優れた戦の天才・呉慶(小澤征悦)将軍。かたや秦の総大将は戦と酒に明け暮れる猪突猛進の豪将・○公(豊川悦司)将軍。信たちが戦場に着く頃には、有利とされる丘を魏軍に占拠され、すでに半数異常の歩兵が戦死している隊もあるなど戦況は最悪。完全に後れを取った秦軍だったが、信が配属された隊を指揮する縛虎申(渋川清彦)は、無謀ともいえる突撃命令を下す・・・。

(4)「大沢たかお・王騎」

 お陰様で前作をたくさんの方に観ていただくことができたので、いろいろな意味で“そこを超える続編をつくらなければならない”という共通認識をスタッフ、キャスト全員が持って、本作の準備に臨みました。

 2作目となる本作のシナリオを読んだときは、原作の素晴らしい部分をしっかり抽出し、忠実に丁寧に脚本化されていると感じました。本格的な戦場のシーンだけでなく、登場人物の細かい心理描写や感情なども生き生きと描かれていて大変チャレンジングで・・・。

 ただ、実際、本当に撮れるのかが少し不安になったことを覚えています(笑)。

 王騎を演じるときに、特に意識するようなことはないんですが・・・。「主人公の信の目から見て、憧れであり、目指す存在である」ということは、いつも心のどこかには置いていました。

 撮影現場には自分自身も前作以上に武者震いというか、緊張感に満ちた感覚で臨んだと記憶しています。

 前作から2~3年のブランクがあっての撮影だったのですが、クランクインの日にいざ現場に入ると、キャストもスタッフもそこにいるすべての人たちが前作の撮影時を遙かに超えた緊張感と熱量で、すごく圧倒されたのを覚えています。

 これはきっとたくさんの人に喜んでいただける作品になると感じました。 

 本日はご来場いただきありがとうございます。『キングダム2 遙かなる大地へ』、3年の時を経て、ようやく完成しました。 

 劇場にいらした皆様が本作を楽しんでいただけたら何より嬉しく思います。

≪≪大沢たかお・・・東京都出身。1987年にモデルとしてデビュー後、ドラマ「君といた夏」(94)で俳優としてデビュー。95年のドラマ「星の金貨」で一躍注目を浴びる。2004年公開の『解夏』では第28回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。実力派俳優として数多くの映画やドラマで活躍する。そのほかの主な映画出演作に『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)、『Life 天国で君に逢えたら』(07)、『桜田門外ノ変』(10)、『藁の楯 わらのてた』(13)、「風に立つライオン」(15)、『AI崩壊』(20)、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(21)などがある。≫≫

(5)KINGDOM PRODUCTION  NOTES」

 <プロデューサー・松橋真三が語る、『キングダム2』製作の舞台裏>

・・・まずは続編の企画の経緯からお願いいたします。

 私自身は1作目を撮っていたときから、もちろん続編をやりたいという気持ちで構想はずっと練っていました。ただ、莫大な予算がかかる上に、物語のスケールがさらに大きくなっていく。『キングダム』(2019年4月公開)が、すごく良い結果にならないと次には進めないと思っていたところ、幸いなことに大ヒットとなり、19年夏頃に正式に「続編をやりたい」というお話を原先生にさせていただきました。それから脚本に着手しました。

・・・原先生は前作に引き続き、今回も共同脚本として参加されていますね。

 連載は後戻りできませんから、シーンの追加や書き直しはできない。ご自分が漫画で描けなかったことが映画で実現できたと感じられたシーンが、前作でいくつかあったそうなんです。連載時よりも完成形に近いイメージでつくられたことが、映画づくりの一つの喜びだったと先生はおっしゃっていました。今回も原作にはない、映画ならではのシーンがいくつかあります。たとえば、信と○○のあるエピソードが追加されていますが、原先生にしかできない創作だと思います。今回も先生には、深くかかわっていただきました。こちらも原作に対するリスペクトを持って意見交換しながらつくっていきました。

・・・続編製作にあたり、豪華キャストの方々が再結集されました。

 キャストの皆に愛され、続編をやりたいと言ってもらえる作品で本当に良かったなと、大作ですから資金面の心配と、スターだらけなのでスケジュール調整の苦労はあるんですが、役者のチームワーク、意気込みという点で心配することは一つもない。本当に喜ばしいです。

 <略>

・・・中国ロケ地はどのように決めたのですか?

 19年の夏に、私含め3人で一度中国をロケハンして、蛇甘平原のシーンなどの撮影場所を大まかに決めていました。その後、20年1月に今度はメインスタッフ30人ぐらいでロケハンに行き、詳細を詰めていきました。コロナショック直前のことです。未曾有の事態により、日本での撮影を進めながら、中国ロケを後ろ倒しにと調整を重ねていたのですが、いつになっても新型コロナ関連の状況は改善されず、この調子だと中国ロケに行けないのではと思い始めました。それで考えたのが、究極のリモート撮影です。

・・・どういう方法なのですか?

 選りすぐりのダイナミックなシーンを中国で現地スタッフに撮ってもらうという方法です。まずは中国の撮影に日本人スタッフが参加しないと決めた時点で、もともと中国で撮る予定にしていたシーンの絵コンテを用意し、すべてのカットを検証し、日本で撮るカットと中国で撮るカットを仕分けしていったんです。たとえば、大量の馬や兵士がいるようなカットはどうしても中国で撮る必要があったんですが、中国のロケハン自体はすんでいたので助かりました。中国での監督は、ジャッキー・チェン作品のアクション監督・何釣(フージュン)さんです。助監督は『レッドクリフ』(08)のチームが担当。大作に慣れている人たちにお願いしました。

・・・具体的には、ほしいカットをどのように伝えていったんですか?

 佐藤監督が決めたカット割りを見ながら、日本チームと中国チームがワンカットずつ検討していきました。カメラ位置はここでこういう隊列を組んでこういうカットを撮る。そのためには何が必要か、ワンカットワンカット、詳細まですり合わせていったんです。撮影期間は45日で、膨大なカット数があり、だいたい1日あたり、1000人ほどのスタッフ、エキストラが参加している大掛かりな撮影になるので、日々の計画を立てるのが本当に大変でした。エキストラといっても、ジャッキー・チェンのアクションスクールに通っている人たちにも多数参加してもらっていて、そういう方たちには撮影の1ヶ月以上前から、本作のためにトレーニングしてもらっています。衣装については、日本で使ったものと同じものを中国でつくって使用しました。こういうリモートでの撮り方をした映画は、世界的にもないんじゃないかと思います。

・・・馬も前作に続き100頭ほど?

 そうですね。日本だと、撮影用の馬を日本中からかき集めても10数頭にしかならないんです。中国だとよく訓練された馬を100頭ぐらい集めることができる。スケール感を出すには、どうしても中国での撮影が必要でした。ちなみに山崎さんは本当に乗馬が上手くなって、走っている馬に飛び乗ったりもできるんです。ほとんどのカットをご本人で撮ることができました。

・・・日本のロケ地についても教えてください。

 前作同様、日本中回りました。アクションシーンは主に長野県・東御市のオープンセットで撮影しました。これもいろんなことを検証した結果なんですけど、中国みたいな大地は日本にはない中で、広大な地での戦闘シーンを撮らないといけない。どこかに広い土地が残っていないか、スタッフがグーグルマップで探したら長野の東御市に巨大な空き地があったんです。もともと企業の用地で工場を建てる予定が、コロナ禍でストップしていたそうで、広いだけじゃなく、片側が崖なのも好都合でした。そこに巨大なグリーンバックを設置していきました。

・・・佐藤信介監督の手腕について感じていらっしゃることは?

 最新の技術を含め、あらゆる最高のものが結集しないと撮れない作品だと思うんです。佐藤監督は、映画製作の基本をしっかり学んでこられた方ですし、『キングダム』の大ヒットもあって巨匠になりつつある方だと思うんですけど、これだけの大作をまとめあげられるのは、やはり佐藤信介さんしかいなかったなと。

 日本の歴史の中に残るシリーズにしたいですし、プロデューサーとしては、監督が自信を持って世に出せるようなクオリティを担保したいと思っていました。

・・・コロナで撮影が危ぶまれた中、『キングダム2』は先陣を切って撮影されていました。

 コロナが流行りだした頃に、この業界のいろんな作品の撮影がストップしたんですよ。すると、映画って基本フリーのスタッフが多いので職を失う。ここからどうすれば、というような話があちこちで頻発していて、職を辞めようとする人もいて、先行き不安な空気が流れていました。そんなときに、『キングダム』とNHKの大河ドラマがどうするかが、業界の指標になるようなところがあったんです。この二つが撮影スタートすれば、業界的にまた撮影を始めることができるという雰囲気作りがあって、自分が踏ん張らないと撮影が中止になってしまう。どこかで映画製作を止めないということも大事なんじゃないかと思って突き進みました。もちろん無謀にではなく、病院と業務提携し、保険も用意し、スタジオでの検温消毒体制、検査体制を構築し、ものすごく感染症対策をしっかりして、撮影していきました。結果、約1年にわたる撮影中、スタッフ、キャストで撮影中にコロナに感染した人はゼロだったんです。無事、走りきることができました。

・・・改めて、『キングダム2』への思いをお聞かせください。

 日本映画界の歴史に残る作品、シリーズにしたいと思っています。技術的なクオリティはもちろん、日本のトップの役者陣が勢ぞろいして大バトルを繰り広げるというダイナミズムを含めて、期待を裏切らないどころか遙かに超えるようなクオリティで提供することを目指しましたので、ぜひ楽しんでいただきたいです。