2022年4月30日第231回「今月の映画」「ナイル殺人事件」
監督・制作・主演 ケネス・ブラナー ガル・ガドット エマ・マッキー トム・ベイトマン
(1)2ヶ月前に紹介した映画「ドライブ・マイ・カー」は大変な評判でしたが、私一人(?)だけがガッカリでした。
しかし、「ただ陰気な恨めしい顔をした男や女に3時間もつき合わされて、何の感情も湧き起こらずじまいで不可解でならなかったのはオレだけか」と超辛口の評価の専門家がいましたので、紹介します。 その前に、その時の文章の一部を再度、掲載します。 ・・・・・・・ さて、今回の映画「ドライブ・マイ・カー」は批評家の方が抜群の点数を上げていました。半年位前の夕刊フジ「シネマパラダイス」で、映画評論家の安保有希子氏が満点(★5つ)の評価≪≪【ホンネ】脚本、映像、キャスティングと完璧が3つもそろった物語が、心をざわつかす。中でも、好青年の仮面の裏に狂気を潜める岡田将生が登場するたび、空気が変化。何か起こりそうだと体に力が入る。見事!≫≫と完璧な評価をしていました。 しかし、運転手と後ろの座席に座っている主人公の写真が、私には全く、興味を持たせてくれない雰囲気でしたので、そのままにしていました。 ところが、今年2月5日の日刊ゲンダイでは、「映画『ドライブ・マイ・カー』キネマ旬報ベスト・テン1位、米アカデミー賞 獲得なるか」「村上文学の世界観を見事に映像化」と、大きく報道されました。 <略>すでにカンヌ国際映画賞では邦画初となる脚本賞を受賞したほか、ゴールデングローブ賞でも同じく邦画として62年ぶりの非英語映画賞を受賞。さらに映画誌「キネマ旬報」が2日に発表した2021年公開作のベスト・テンでは日本映画1位に。アメリカのみならず世界中から絶賛される状況に、ノミネートされれば日本初の作品賞受賞も見えてくる。(後略)<日刊ゲンダイ> ・・・・・・・・・・・・・ さらに、2月11日の夕刊フジでは、「オスカー阻む3つの壁『ドライブ・マイ・カー』」と、大きく報道されました。 世界最高峰の映画賞、第94回アカデミー賞の作品賞など4部門でノミネートされた濱口竜介監督(43)の「ドライブ・マイ・カー」。アカデミー賞の前哨戦にも位置付けられる「ゴールデン・グローブ賞」でも非英語映画賞に選ばれ、いよいよオスカーが照準に入ったようだが、まだまだ高い壁があるようだ。 「ドライブ・マイ・カー」は作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の計4部門でノミネートされた。日本映画が最重要の作品賞で候補入りするのは初の快挙となる。 濱口監督の歩みをみれば、オスカーを手にする確率は極めて高くみえる。昨年7月にカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞。今年1月には「ゴールデン・グローブ賞」のほか、全米映画批評家賞でも作品賞、監督賞など4冠に輝いている。 |
(2)これだけ大々的に報道されると、時間を割いて見に行かざるを得ません(?)。映画は午前10時40分スタート。朝早く出発するのは厳しい中、都合をつけて見に行きました。100人くらいの会場が満員になりました。
いつ面白くなるのか、いつ興味を持たせてくれるのか、そういう意味で、興味津々でしたが、3時間もの長い時間、私・藤森の好みとしては、残念ながら、全く面白くありませんでした。 しかし、これだけ素晴らしい評価がなされている映画ですので、紹介させていただきました。 *さて、2月15日の映画の紹介ではこのように書かせていただきましたが、しかし、とうとう、私の本音の気持ちと同じ情報を得ることができました。少なくとも、私・藤森だけではなかったことが分り、少し(大分)ホッとしました。 次の(3)で、私と同じような感想をお持ちの二人の方を紹介をさせていただきます。 |
(3)「米アカデミー賞『ドライブ・マイ・カー』見て損なしか」(日刊ゲンダイ、3月30日)
<略> 作家の麻生千晶氏は「示唆に富むいい作品でしたが・・・」としてこう語る。 「最近は夫婦の関係を深く描かない日本映画も多いのですが、夫婦の濃密な愛の世界が丁寧に描かれていた点は評価できます。しかし首をかしげたくなる点が2つありました。ひとつは海外への渡航が急きょ中止になって、自宅に帰った主人公が妻の不貞行為を目撃してしまうシーン。今どき急にキャンセルになったのであれば、携帯やLINEで連絡するのでは。あんな濃厚な関係の夫婦ならなおさらです。急に帰って驚かそうというならまだしも、疑問に感じました。 もうひとつは、みさきに暴力を振るっていた母が、『多重人格』だったというくだり。かつて三田佳子さんのドラマなどで、多重人格はとても話題になったのですが、ちょっと安易な感じがしましたね」 <評論家の評価は高いが・・・> 一方、映画監督の井筒和幸氏は、本紙連載「怒怒哀楽劇場」(2月19日付)で「まったく笑いも泣きもできず、血も騒がず肉も固まってしまった」「ただ陰気な恨めしい顔をした男や女に3時間もつき合わされて、何の感情も湧き起こらずじまいで不可解でならなかったのはオレだけか」と超辛口の評価。(後略) ≪≪私・藤森と全く同じ感想です。私も全くの同感ですが、日本だけでなく、外国にまでスゴイ評価が溢れている中では、ここまで率直に言う自信がありませんでした。 しかし、正直、私も全くの同感!!!です。どこがいいのかサッパリ分からないつまらない映画でした(*^▽^*)≫≫ さて、次の(4)と(5)は今回の「ナイル殺人事件」です。ピラミッドやスフィンクス、ナイル川、アブ・ジンベル神殿といったエジプトの名所をバックにした映像美を見せてくれます。 |
(4)映画「ナイル殺人事件」の「INTRODUCTION」
<容疑者は、乗客全員・・・愛の数だけ秘密がある・・・。> 「ミステリーの女王」として、今もなお、その作品は輝きを失わない、アガサ・クリスティ。小説の発行部数は、全世界で20億冊以上。これまで数え切れないほど映画化、TVドラマ化されてきたクリスティの作品だが、2017年、オールスター共演による映画『オリエント急行殺人事件』が、その人気を世界的に再燃させた。 クリスティ作品で最も有名な名探偵キャラクター、エルキュール・ポアロ。大雪で動けなくなったオリエント急行で殺人事件を解決したその鮮やかな手さばきと、驚くべき結末が話題を呼んだが、そのポアロがさらにドラマチックを際めた難事件に挑む。今度の舞台は、太陽がふりそそぐエジプト。エルキュール・ポアロのシリーズでも傑作のひとつとされる「ナイルに死す」を映画化した『ナイル殺人事件』だ。 美貌の資産家、リネットが、ナイル川を行く豪華客船の船室で殺害される。親友のジャクリーンから婚約者のサイモンを奪っていたリネット。ハネムーンで向かったエジプトで2人を待っていたのは、嫉妬と怒りに燃えるジャクリーンだった。しかし、事件の夜、彼女には完璧なアリバイがあった。そして客船には、リネットを殺害する動機を持った者が何人も乗船していた。 アガサ・クリスティお得意の「密室での殺人」、「誰もが犯人の可能性」というシチュエーション。そして「信じがたいトリック」。ミステリーの醍醐味がそろった『ナイル殺人事件』だが、謎解きの面白さだけでなく、ドラマとしての見ごたえ、つまり人間の「心の謎」にも引き込んでいく。それこそが『ナイル殺人事件』の魅力だ。主人公たちの愛、嫉妬、欲望が絡み合うトライアングル・ミステリーが、観る者の心を激しくざわめかせる。 さらに、ピラミッドやスフィンクス、ナイル川、アブ・ジンベル神殿といったエジプトの名所をバックにした映像美は、まさにスクリーンで味わうべきもの。極上のミステリー・クルーズを主人公たちと一緒に体験できるのが、この『ナイル殺人事件』の特徴だろう。エジプトの神殿が物語のキーポイントとなり、リネットが身につける“イエロー・ダイヤモンド”など、小道具やファッションも見どころのひとつ。ゴージャスな世界に足を踏み入れる気分も楽しみたい。 『オリエント急行殺人事件』に続き、監督、プロデューサー、そしてポアロ役を務めるのは、ケネス・ブラナー。シェイクスピア作品から『マイティ・ソー』、『シンデレラ』まで、幅広いジャンルで演出の才能を見せてきた彼が、最も得意とする「人間の感情の動き」に、より焦点を当てて描いている。 物語の中心に君臨する美貌のリネット役に『ワンダーウーマン』のガル・ガドット。結婚相手のサイモン役に『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマーと、映画界最高の美男美女キャスティングが実現。さらにスターとして急成長中のエマ・マッキーが、キーパーソンであるジャクリーンを演じ、『ブラックパンサー』のレティーシャ・ライト、アカデミー賞ノミネート4度の実力派、アネット・ベニングら豪華キャストが集結。それぞれに秘められた複雑な想いを体現している。 人間の愛と欲望が行き着く、あまりにドラマチックな豪華ミステリー・クルーズの結末を、世界中の観客が息をのんで体験するのは間違いない。 悠久の歴史を見つめてきたナイル川を背景に、禁断のトライアングル・ミステリーが、ここに誕生した! |
(5)「STORY」
莫大な遺産を相続したアメリカ人の美女リネット・リッジウェイ(ガル・ガドット)は、親友のジャクリーン(エマ・マッキー)から、ハンサムな婚約者サイモン(アーミー・ハマー)を紹介される。サイモンが失業したために、リネットの不動産管理人として雇ってほしいと頼むジャクリーン。サイモンにひと目惚れしたリネットは、あろうことか自分の結婚相手に決めてしまった。 ハネムーンのために、エジプトへ向かうリネットとサイモン。しかし旅先に突然現われたのは、ジャクリーンだった。リネットもサイモンも怒りをあらわにするが、ジャクリーンは2人の行く先々につきまとってくる。私立探偵のエルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)は、リネットから相談を受けるものの、「まだ事件は何も起こっていない」と彼女をなだめるしかなかった。 ナイル川を遡る豪華客船カルナック号に乗船したリネットとサイモンだが、そこにもジャクリーンの姿があった。そしてある夜、カルナック号の船内で事件が起こった。展望室で逆上したジャクリーンが、サイモンと激しい口論となった末に、彼の足をピストルで撃ってしまったのだ。大ケガを負ったサイモンを医師のウインドルシャム(ラッセル・ブランド)が介抱する一方、取り乱したジャクリーンには看護師のバワーズ(ドーン・フレンチ)が一晩中、付き添うことになる。 翌朝、カルナック号に悲鳴が響きわたった。メイドのルイーズ(ローズ・レスリー)が、リネットの客室で、こめかみから血を流し、射殺された彼女を発見する。疑惑をかけられたのはジャクリーンだが、彼女が自室を出なかった事実をバワーズが証言。ポアロは、他の乗客の中にも、リネットに恨みを抱く者、巨額の財産を狙う者、その美しさに惹かれ、あるいは嫉妬する者がいることを知る。ナイル川に浮かぶクルーズ船という密室で起きた殺人事件、第一容疑者の完全なアリバイ。愛・嫉妬・欲望が全ての乗客を容疑者にする。灰色の脳細胞を働かせ、ポアロが真相に迫るなか、やがて第二の事件が起きるのだった・・・。 ≪≪アガサ・クリスティ(1890-1976)・・・1890年9月15日、イギリスのデヴォン州トーキーに、3人兄弟の末っ子として誕生。比較的裕福な幼少時代を送ったが、正規の学校教育は受けずに育つ。読書好きで、10代はコナン・ドイルのシャーロック・ホームズに夢中になり、自身でも小説を書き始めた。1920年に長編小説「スタイルズ荘の怪事件」で作家デビュー。以降、1976年に85歳で亡くなるまで、長編、短編、戯曲など200作以上を執筆。発行数はイギリスだけで10億冊、全世界で20億冊以上と言われて、その功績により大英帝国勲章を2度授与されている。 数多くの作品が映画化されており、「ナイルに死す」は、本作が1978年に続く2度目。他、主な映画化作品に、『情婦』(57/原作「検察側の証人」)、『オリエント急行殺人事件』(74・17/原作「オリエント急行の殺人」)、『クリスタル殺人事件』(80/原作「鏡は横にひび割れて」)、『ゼロ時間の謎』(07/原作「ゼロ時間へ」)、『華麗なるアリバイ』(07/原作「ホロー荘の殺人」)、『アガサ・クリスティーねじれた家』(17/原作「ねじれた家」)など多数。≫≫ |
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